2008年07月05日

review:Just like yourself 鳴海愛 山崎龍一 mayu《7/1、7/3》

Just like yourself 鳴海愛 山崎龍一 mayu
Shonandai MY Gallery
東京都港区六本木7-6-5 六本木栄ビル3F
7/1(火)〜7/8(火)
12:00〜19:00(最終日:〜17:00)
Just like yourselfDM.jpg

Just like yourself Ai Narumi Ryuichi Yamazaki mayu
Shonandai MY Gallery
7-6-5-3F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo
7/1(Tue)-7/8(Tue)
12:00-19:00(last day:-17:00)
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素朴も知性も毒気も含んだファンシーな世界。



Shonandai MY Galleryで開催されている、3名のユニークなクリエイションを展開するアーティストがパッケージされたグループショーです。

それぞれ、高いクオリティで繰り広げられている独自の世界を持っていて、それらが調和して実に面白い空間が展開されています。



先日開催されたGALLERY b.TOKYOでのグループ展での作品も楽しかったmayuさん。
目にした瞬間、そのポップでキュートな展開が気持ちを高揚させてくれる。キャッチーなクリエイションが
ずらりと並んでいます。


mayu006



鮮度高めの色のチョイスの爽快感、さまざまな箇所で見受けられるグラフィカルなパターン、整った配列のケレン味のなさなど、眺めただけの印象の痛快さは相変わらず!
そして、これらの作品に多く挿入される、いろんな色のさまざまな「かたち」はご本人曰く「mayu語」という言葉なのだそう。ひとつひとつのかたちがそれぞれ仮名と対応しているそうで、その配列は読むこともできるとのこと。

そういった話を伺うと、見え方が変わってきます。
もちろんそのかわいらしさ、究極的なファンシーな雰囲気の心地ょさはそのままに、そういった要素を隠れ蓑にするかのように、意味が潜んでいることが、「じゃあ読み取ってみようか!」なんて好奇心を煽ってきます。

以前、イギリスの田舎の大学に留学した僕の友人から聞いた話で、東南アジアからのルームメイトが日本語の本を目にし、意味こそ分からないものの、助詞として繰り返し登場するひらがなを見つけて、そこから法則を導き出してその聡明さに驚いたらしいのですが、それと同じようなアプローチで、そこに挿入されたセンテンスの意味を見つけてみたくなってきます。


mayu005 mayu008 mayu007

mayu004



いたるところにさまざまなかたちでmayu語が挿入される作品を続けて製作されているmayuさんですが、今回はそのmayu語が入っていない大作も発表されています。
ちいさくかわいくデフォルメされたたくさんの動物たちが画面いっぱいに広がり、そこにスピーチバルーンもたくさん描かれ、不思議な奥行き感と緩くておおらかな時間性を醸し出しています。


mayu003 mayu002

mayu001



相模原での個展に行けず残念に思っていた鳴海愛さんの作品も拝見できて嬉しい限りで。
石粉粘土を用いたオブジェです。

まず、その精度に目を見張ります。
壁に設置されたちいさな棚に並ぶさまざまな食材。それぞれの素材のユニークなフォルムをていねいに再現し、いい塩梅で作り込みを終えていて、ほのぼのとした温かみ溢れる質感が伝わってきます。


鳴海愛02 鳴海愛03 鳴海愛01

鳴海愛04



壁を這うカタツムリも。
過剰に磨き込まれることなく、ちょっとざらついた独特の表面の質感と、空間とのかかわりが醸し出す味わい深さなど、ちいさな展開ながらもその素朴なかわいらしさややさしさが印象に残ります。


鳴海愛06

鳴海愛05



これまで折りに触れ拝見している山崎龍一さん。
もう、おなじみの白いフードを冠ったやんちゃそう、お転婆そうな子供が、相変わらずそのやんちゃっぷりを余すところなく発揮しています。

今回の展示では平面作品が多めです。
そこに込められた遊び心、破られたパネルの表面などから顔を出す仕草が何とも


オッ!!Σ( ̄口 ̄;)


な感じで、ちょっとした驚きをそのユーモアから感じます。


山崎龍一206 山崎龍一205

山崎龍一204



パネルに直描きのドロ=イング作品も。
こちらも、やっぱりそのいたずらっぽい仕草や表情が堪らないです。


山崎龍一201 山崎龍一202

山崎龍一203



おなじみのオブジェも展示されています。
ていうか、今回は布団をかぶってうつぶせに寝る状態のがもっとも大きな作品で、妙に達観したような表情や、ほぼ実物大に近いサイズの臨場感なども相変わらずの精度とインパクトでじわじわと迫ってくるような感じです。


山崎龍一209 山崎龍一208

山崎龍一207



で、毎度おなじみの


そこか!Σ( ̄口 ̄;)
そこにいたか!Σ( ̄口 ̄;)


的な展開も。


山崎龍一210



取り合わせの楽しさも印象的です。
それぞれ醸し出す雰囲気は異なっているものの、このキャラクターの幅の広さは、例えば学校のクラスみたいに、ある集まりにそれぞれの個性がアクセントをもたらしているのと似ていて、それぞれのユニークさが他の二人の面白さをそれぞれのかたちで引き立てあっているように感じられるのも興味深いです。

作り手、選び手、その両者の楽しさが伝わってくる展覧会です。


鳴海愛山崎龍一01
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2008年07月04日

review:はまぐちさくらこ展 -STORY-《6/28》

はまぐちさくらこ展 -STORY-
YOD Gallery
大阪府大阪市北区西天満4-9-15
6/18(水)〜7/5(土)日月祝休
11:00〜19:00
はまぐちさくらこ080618.jpg

Sakurako Hamaguchi exhibition -STORY-
YOD Gallery
大阪府大阪市北区西天満4-9-15,Nishitenma,Kita-ku,Osaka-shi,Osaka-fu
6/18(wed)-7/5(sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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とてつもなくポップに展開するエネルギッシュな世界・・・!



YOD Galleryでのはまぐちさくらこさんの個展です。
はまぐちさんの作品をしっかりと拝見するのは今回が初めてで、さまざまな媒体でその作風には触れてはいたのですが、実際にあのサイズで作品を拝見すると、そこに詰め込まれたエネルギーというか、弾けまくってパンパンに膨らんだようなポップな世界に一気に気分が高揚します。


はまぐちさくらこ11



ずらりと並んだ作品群、それぞれでさまざまな表情のシーンが展開されています。
バラエティに富んだ色彩が背景に取り入れられて、「スパーン!」とケレン味なくもたらされる空間の広がりのイメージからして痛快で。
そしてそこに描かれるこれまたさまざまなキャラクターが、伸び伸びとやりたいことをやりたいようにやりたい放題やってる感じで登場しているのがさらに痛快です。


はまぐちさくらこ02 はまぐちさくらこ03

はまぐちさくらこ01


展示されている作品には、側に言葉が壁に直接書き加えられていて、それがキュートさを加速させているようにも感じられます。


はまぐちさくらこ04



もっとも大きな作品、まず背景の前面に迫るような鮮やかな青が気持ちいいです。
そこに、「どーん!」と登場している猫のような動物の頭部、


目が!Σ( ̄口 ̄;)


目がでけぇ!!!!Σ( ̄口 ̄;)


とそのインパクトに下方の赤い丸とともに圧倒されてしまった次第。
なんかもー、このむちゃくちゃなスケール感にいろんなことがどーでもよくなってくるような感じもしてきます。

で、ぱっと目に入った瞬間のポップな雰囲気のなかにサディスティックな表現もするっと織り込まれ、全体のヴィヴィッドな色調とポップな雰囲気がその感覚を逆に際立たせ、危険なムードも鋭く漂わせているような感触も印象的です。


はまぐちさくらこ08 はまぐちさくらこ06 はまぐちさくらこ07

はまぐちさくらこ05



さまざまな作品が一堂に展示されていて感じるのが、そのバラエティの豊富さ。
背景の色のチョイスといい、キャラクターの描き分けといい、それぞれが重ならない物語を展開しているような印象を受け、興味深く感じられます。
1話完結の小品を集めた短篇集のような感じの展覧会。しかし、それぞれのシーンが放つボリューム、時間的な奥行き感はかなりダイナミックに思え、猛スピードで吹き荒ぶ色彩の嵐が痛快な圧迫感をもたらしてくれるような感じです。


はまぐちさくらこ13 はまぐちさくらこ09

はまぐちさくらこ12



展示空間の至る所にちょこんちょこんと添えられた落書きも楽しい!


はまぐちさくらこ15 はまぐちさくらこ16

はまぐちさくらこ14



今回の展覧会ではライブペインティングも行われていて、個展会期中に外壁に設置された横長のパネルに描き加えていく、というかたちで進行していっているようで、ライブということもあり、その激しさにより臨場感が備わった世界が展開していたのも印象に残ります。


はまぐちさくらこ10
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2008年07月03日

review:宮本佳美展 華を去る視界《6/28》

宮本佳美展 華を去る視界
ギャラリー16
京都府京都市東山区三条通白川橋西入ル石泉院町394 戸川ビル3F
6/24(火)〜7/5(土)月休
12:00〜19:00
宮本佳美080624.jpg

Yoshimi Miyamoto exhibition
ギャラリー16
394-3F,Sekisenin-cho,Higasiyama-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu
6/24(Tue)-7/5(Sat) closed on Monday
12:00-19:00
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モノクロームのおおらかで繊細な色香。



ギャラリー16での宮本佳美さんの個展です。
展示スペースに入る刹那、緻密で鮮やかなグラデーションを駆使して描かれる大輪の花が目に届き、不思議な縮尺感のほのかな痛快さが心にすっと広がります。


宮本佳美09



描かれるモチーフは押し花なのだそう。
そして、用いられる「黒」も、そのなかに厳選された色彩も混ぜ込ませてあるようで、作品により、その黒にほのかな青など、単にモノクロームでは収まらない絶妙の色として現れているのが伝わってきます。


宮本佳美03 宮本佳美04 宮本佳美02

宮本佳美01



大作がずらりとダイナミックに展示されていて、その画面には拡大された花の姿が見事に描き上げられているのですが、このサイズでありながら、細密画を観ているような感覚で、実に繊細な風合いが漂い、その儚さが放たれる光の動線を思わせるような広がりをもたらしているように感じられます。


宮本佳美06 宮本佳美07

宮本佳美05



透けるように描かれた花弁は、その薄さや、そこを伝う脈の臨場感などがていねいに描き上げられ、色調なども相まって未来的に感じられるのも興味深いです。
また、モノクロームで描かれることで、生命としての臨場感が発せられているようにも感じられます。おそらく本来のヴィヴィッドな花の色が充満させるいきいきとした感触は抑えられ、その儚い部分、脆い部分が神々しく立ちのぼるような印象も浮かび、未来的な風合いとも絡んで、「今」とは異なる時間の存在を思わせます。


宮本佳美08

宮本佳美11



ほぼすべての作品で、花の全像が描き上げられているのですが、小品ではその花の姿がトリミングされ、拡大されたような感触が、サイズにとらわれないダイナミックな迫力をもたらす構図になっていて、より壮大なイメージを創出させてくれているような気がします。


宮本佳美12

宮本佳美13



描写力に脱帽させられるのはもちろん、彩色、構図、空間性においても緻密さが伝わります。
モノクロームであることがさまざまな効果をもたらしていて、先述した通りに未来的なイメージをもたらしてくれ、そして独特の深遠さ、静謐感も漂います。また、大作であるのに迫るような感触が抑えられ、むしろ吸い込まれるような風合いも印象的です。
そして、それぞれの作品に流れる時間のイメージのユニークさもたいへん興味深いです。


宮本佳美10
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2008年07月02日

〜7/1のアート巡り

《6/27》
大城カズ Untitled Recordings
CLEAR GALLERY
東京都渋谷区渋谷4-2-5 Place Aoyama
6/27(金)〜8/2(土)日月祝休
11:00〜19:00
大城カズ080627.jpg

!!!Σ( ̄口 ̄;)

マジかよ!!!Σ( ̄口 ̄;)

必見でございます。



太郎智恵藏展 二つのタワー ビルディングの幻と山水
第一生命南ギャラリー
東京都千代田区有楽町1-13-1
6/27(金)〜8/6(水)土日祝休
12:00〜18:00
太郎千恵藏080627.jpg

広々とした空間に、ダイナミックな大作がずらりと並び、実に見応えのある構成となっています。
ポップでヴィヴィッドな色調で構築されるさまざまな景色や光景、独特の壮大さで迫り、天地を揺るがせ、震わすような迫力を伴いつつもそこにいる人のカラフルなシルエットからは何故か素朴さが伝わってくるような印象も。
漆黒の巨大なFRP製の立体作品も迫力充分です。



山田純嗣展 "DEEP FOREST −既視感の森−"
日本橋高島屋6階美術画廊X
東京都中央区日本橋2-4-1
6/25(水)〜7/15(火)
10:00〜20:00
山田純嗣080625.jpg

ユニークな行程を経て制作される山田純嗣さんの作品、今回は銅版で刷られる線が今まで以上にさらに緻密に、かつ洗練された風で、モノクロームの世界がさらにユニークに展開されています。
その写真に乗る細かい線の密集、ノイズがノイズでなくなる瞬間が堪らないです。



Art Scope 2007/2008 -Face of Existence
原美術館
東京都品川区北品川4-7-25
6/28(土)〜8/31(日)月休(7/21は開館、7/22休)
11:00〜17:00(水:〜20:00)
Art Scope 2008パンフ.jpg

国内外の4名のアーティストをフィーチャーした展覧会、レセプションで大勢の方がいらっしゃってたこともあり充分に展示を拝見していないのですが、加藤泉さんの展示は、僕がこれまで拝見した中でもダントツに素晴らしいと思います。1階の広いほうの展示室が加藤さんのコーナーなのですが、おなじみの平面と木彫の作品で、空間との調和が尋常でない気がします。
夜にご覧になることをお薦めしたいです。



古川弓子 渡辺泰子 二人展 TRANSACTION
GALLERY SIDE2
東京都港区東麻布2-6-5
6/27(金)〜7/25(金)日月祝休
11:00〜19:00
古川・渡辺080627.jpg

古川弓子さんの木を用いた作品、これまでの展示で拝見した作品の繊細に放つ知性がいくぶんか抑えられ、よりポップで丸みを帯びたやさしい感触が印象的です。
渡辺泰子さんは、さまざまなメディアを軽やかに行き交ういかにも渡辺さんらしい構成で、写真、ドローイング、映像とバラエティ豊かなに展開されています。



黒川知希「ユース」
NANZUKA UNDERGROUND
東京都渋谷区渋谷2-17-3 IBIS Bldg.B1F
6/28(土)〜7/27(日)月火休
13:00〜20:00
黒川知希080628.jpg

おそらくこのサイズでないと表現できない、伝えられないイメージがあるのだ、という鮮烈な主張がヴィヴィッドに立ちのぼり、充満しているような、痛快な雰囲気に満ちています。



《6/28》
今年4度目かの関西。
時間の都合でFUKUGAN GALLERYや児玉画廊、studio Jなど足を運べなかったギャラリーもあったものの、充実した時間を過ごせて満足です。


はまぐちさくらこ展 -STORY-
YOD Gallery
大阪府大阪市北区西天満4-9-15
6/18(水)〜7/5(土)日月祝休
11:00〜19:00
はまぐちさくらこ080618.jpg

弾けるような色彩とキャラクターの振る舞いや出で立ち、表情などなど、ぱっと観たときの痛快さ、爽快さが堪らない!
そして、徹底したポップさのなかにさまざまな危うさも潜んでいて、それらが放つアクセントとしてのパワーにも圧倒させられます。



冨倉崇嗣展
O galley eyes
大阪府大阪市北区西天満4-10-18 石之ビル3F
6/23(月)〜6/28(土)
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
冨倉崇嗣080623.jpg

東京で拝見したときはもっと曖昧なフォルムの印象だったのですが、くっきりとしたシャープな色彩構成や色面のかたち、あるいは描いた痕跡が絵の具の盛り上がりとともに大胆に残る部分など、さまざまな要素が力強く存在を主張しているように感じられ、迫力が伝わります。


冨倉崇嗣06 冨倉崇嗣05 冨倉崇嗣08

冨倉崇嗣07


それぞれの作品から感じるイメージも幅広く、表面的に描かれているものに留まらず、そのさまざまなテクスチャーによって隠されたイメージへも入り込んでいくような面白さがあるように思われます。

もっとも大きな作品は、深い色の展開も実に印象的で、ゆったりとおおらかに広がる景色のダイナミズムと、そこかしこに見受けられるシュールな感触もあり、さまざまなイメージが過ります。


冨倉崇嗣04 冨倉崇嗣03 冨倉崇嗣02

冨倉崇嗣01



澤田知子展「BRIDE」
MEM
大阪府大阪市中央区今橋2-1-1 新井ビル4F
6/24(火)〜7/16(水)日月祝休
11:00〜18:00
澤田知子080624.jpg

一度拝見したら忘れない、さまざまなシチュエーションに身を投じるセルフポートレイト作品がおなじみの澤田知子さんの個展。
個展で拝見するのは初めてなのですが、やはりその迫力には圧倒させられます。
今回は花嫁衣装を纏い、洋装と和装との組み合わせでウエディングドレスと白無垢が背景の艶かしい赤に浮かび上がり、独特の迫力を生み出しています。


澤田知子03


上の今回のすべての写真をひとつの額におさめた作品の他は、洋装と和装の写真がが1対となって並んで展示され、空間をぐるりと囲んでいます。
すべて同位置に頭部が収まるような写真の構成の精度と、展示のリズム感とが、何故か杉本博司さんの「海景」シリーズを思い起こさせてくれました。


澤田知子02

澤田知子01



坂井淑恵 近作展
GALLERY ZERO
大阪府大阪市西区京町堀1-17-8-4F
6/16(月)〜7/5(土)日祝休
12:00〜19:00(土:〜17:00)
坂井淑恵080616.jpg

色の艶やかさ、素朴で大胆な展開が印象的です。
粗いキャンバス地にがっしりと食い付くような絵の具の盛り上がりの力強さなどにも目が向かいます。
さまざまな景色や人物像が、その独特の筆運びによってまろやかに、曖昧に描き変えられ、ぬくもりと穏やかさ、おおらかさが伝わってくるような印象を受けます。
「観る」だけでなく、「眺める」という若干アクティブさを抑えた接し方でも充分に味わい深さを堪能できる作品群です。


坂井淑恵04 坂井淑恵03 坂井淑恵02

坂井淑恵01



奥田文子展
58(Gallery Den)
大阪府大阪市西区京町堀1-13-2 藤原ビル5F
6/9(月)〜6/28(土)日休
12:00〜19:00(土:〜17:00)
奥田文子080609.jpg

GALLERY MoMoでの展示も印象的だった奥田文子さん。
白の爽快さと曖昧さが漂うフォルムで描かれる光景の爽やかで軽やかな深みが印象に残っていますが、今回の個展では主に冬景色をを思わせる光景が描かれ、さらに一歩押し進んだ感のある楽しい遊び心もそこかしこにさり気なく挿入されていて、さらに見応えも深みも感じられます。


奥田文子004 奥田文子003 奥田文子002

奥田文子001



ちいさく描かれる人の姿が醸し出す縮尺感も面白いです。
ときおり「何故そこにいる!Σ( ̄口 ̄;)」と思わざるを得ないのもあったりして。
そこの光景の白が陽射しを浴びてさらに輝きを増したかのような、煌めく風景の軽やかな力強さはなんとも心地よく感じられます。


奥田文子007 奥田文子005

奥田文子006



宮本佳美展
ギャラリー16
京都府京都市東山区三条通白川橋西入ル石泉院町394 戸川ビル3F
6/24(火)〜7/5(土)月休
12:00〜19:00
宮本佳美080624.jpg

モノクロームで描かれる押し花。
さまざまなサイズの画面に描かれ、若干青味がかって感じられる独特の黒での展開と緻密な表現に見入ってしまった次第で。美しさも儚さも伝わってくるような気がします。



大田ゆら展 −覆う眺め−
imura art gallery
京都府京都市左京区丸太町通川端東入ル東丸太町31
6/4(水)〜6/28(土)日祝休
10:00〜18:30
大田ゆら080604.jpg

シェル美術賞やトーキョーワンダーウォールなどで拝見して印象に残っている大田ゆらさん。
独特のブルーなどを背景、というか地面にして小さくたくさんの人々の姿が緻密に描き込まれ、そこに大胆な空間性を持ち込んでいるのが痛快で、イメージも膨らみます。



シリーズ企画「ズレ」その2 小寺絵里 〜メガロごっこ〜
ギャラリー揺
京都府京都市左京区銀閣寺前町23
6/17(火)〜6/29(日)月休
12:00〜19:00(最終日:〜17:00)
小寺絵里080617.jpg

以前から伺ってみたかったギャラリー揺
銀閣寺方面、哲学の道を通って辿り着くギャラリー、家屋をそのまま活かして畳の間と板の間、そして中庭でインスタレーションが繰り広げられ、シュールさが印象に残ります。蟹の甲羅の作品もユニーク。
緻密にさまざまな情報が詰め込まれているドローイングも興味深かったです。



下出和美個展
voice gallery w
京都府京都市上京区河原町通今出川下ル梶井町448 清和テナントハウス2F
6/7(土)〜6/29(日)月休
13:00〜20:00(最終日:〜18:00)
下出和美080607.jpg

それ以前から存じ上げていながら、今年のART AWARD TOKYOでもっとも印象に残り、そのクリエイションの魅力に引き寄せられた下出和美さん。
主にオレンジ色と黒の組み合わせで、どこかメルヘンチックでメランコリック、そしてシュールな世界が描かれます。色合いの深みが心地よく感じられます。



《6/29》
TEAM14 竹村京 Apart a part
トーキョーワンダーサイト渋谷
東京都渋谷区神南1-19-8
6/28(土)〜8/31(日)月休(月曜日が祝日の場合開廊、翌日休)
11:00〜19:00

TEAM13 雨宮庸介 ムチウチニューロン
トーキョーワンダーサイト渋谷
東京都渋谷区神南1-19-8
6/28(土)〜8/31(日)月休(月曜日が祝日の場合開廊、翌日休)
11:00〜19:00
雨宮・竹村080628.jpg

TWS渋谷での、共に空間に作用させる展開を繰り広げるアーティストがパッケージされた展覧会。
自然光の清々しさと透明感が醸し出す時間の曖昧さがユニークな竹村京さんのクリエイションと、雨宮庸介さんのダークな世界と独特の味わいのユーモアとのコントラストも鮮烈です。
雨宮さんの映像インスタレーションはおよそ40分くらいということもあり、時間をかけてイマジネーションの刺激を得たい展覧会です。



《7/1》
Just like yourself 鳴海愛 山崎龍一 mayu
Shonandai MY Gallery
東京都港区六本木7-6-5 六本木栄ビル3F
7/1(火)〜7/8(火)
12:00〜19:00(最終日:〜17:00)
Just like yourselfDM.jpg

三者三様のキュートさが堪らない!
鳴海愛さんのリアリティ、山崎龍一さんのおなじみの白いフードの子供の生意気さ、こちらもおなじみのmayuさんのキャッチーでファンシーな世界。それぞれにもちろん深みもあり、さまざまな面白さに満ちています。



華雪ノ展示 雨日
ギャラリーMITATE
東京都港区西麻布3-16-28 le bain1F
7/1(火)〜7/13(日)月休
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
華雪080701.jpg

圧巻の「書」。
未来的なショールームに配された力強い筆の運びを感じさせる書がずらりとインスタレーションされ、そのひとつひとつに魅入られます。
書の奥行きということに興味があり、じっくりと眺めて、「文字を書く」という刹那が種となり、実におおらかな風景がその文字の中に感じられ、深遠なイメージが湧き起こります。
posted by makuuchi at 08:46| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年07月01日

review:小池一馬+冨田結+西成田洋子 生まれ出る形と繋がり《6/24、6/30》

小池一馬+冨田結+西成田洋子 生まれ出る形と繋がり
clementsalon*workshop
東京都港区南青山4-26-16-B1
6/25(水)〜7/21(月)火休
11:00〜20:00
生まれ出る080625.jpg

Kazuma Koike+Yu Tomita+Yoko Nishinarita Birth of shapes and relations
clementsalon*workshop
4-26-16-B1,Minami-aoyama,Minato-ku,Tokyo
6/25(Wed)-7/21(Mon) closed on Tuesday
11:00-20:00
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鮮烈に漂うアバンギャルド性。



clementsalon*workshopでの、小池一馬さんを中心に集められた3名のアーティストによるグループショーです。
三者三様のクリエイションが力強く、その個性を主張しています。



展示スペースの外側での展開、小池一馬さんのインスタレーションがまず目に飛び込んできます。
今回は合板を組み合わせた木彫作品が出品され、その巨大な風貌に圧倒されます。


小池一馬111



合板の目が生み出す幾何学的な美しさも充分に活かされた木彫作品。
ヤスリでなめらかな仕上げが施されていることで、表面にあらわれる合板のリズミカルなストライプの模様が際立ちます。
また、一昨年の個展や昨年SCAI THE BATHHOUSEでの展示などでも発表された溶かした紙を再定着させた立体作品でも感じられた、丸みを帯びてざっくりとしていながらも緻密さを感じるフォルムは健在で、紙よりも硬質な素材であるからか、羽を広げて逆さに着陸している鳥の足や両羽のダイナミズムにも、より壮大で重厚なインパクトと説得力がもたらされているような印象を受けます。

奇妙なかたちで置かれたこの鳥の木彫、天上へと突き出される脚部の幾何学的な面白さに加え、これだけのサイズのものを見下ろしていることの痛快さと一抹の申し訳なさが、イメージの幅を広げてくれている気がします。


小池一馬103 小池一馬102 小池一馬104 小池一馬105

小池一馬101


ちなみにこちらの作品には背中に部分にエクステンションが付いていて、吊るして展示することも可能のようで、その状態でもぜひ拝見してみたいです。

インクによるドローイングも数点出品されています。
こちらは、特に今回の展示ではその洗練された感触、透明感溢れる色彩で描き上げられたシルエットのクールさがより際立って感じられます。とにかくかっこよくて、そこに描かれているシーンのスリリングさに感情をすぱっと射られるような、鋭い鮮烈さが印象的です。


小池一馬108 小池一馬109 小池一馬110

小池一馬107



本来の展示スペースは暗めの照明設定で、ダークでグロテスクな世界が構築されています。

西成田洋子さんの作品。
ドローイングや小品も展示されていますが、なによりもまず、大きな立体作品にぎょっとします。


西成田洋子05



布や段ボール、紙紐など、身近にあるものを素材とし、特に布は細かく縫って締め上げられていることで、頑丈で有機的な雰囲気を力強く放っています。
蠢くような生命の感触がまず心の中で沸き立ちます。
全体のフォルムの過剰なまでにグロテスクな風合いと、至近で眺めたときの重なる段ボールや紙紐のテクスチャーが放つリズム感とが、渾然一体となっ容赦なく迫るような印象を覚えます。その迫力に圧倒されっぱなしで。


西成田洋子04 西成田洋子03 西成田洋子02

西成田洋子01


で、西成田さんから伺った話で興味深かったのが、この作品を幼稚園で飾ったところ、ジブリ映画などで慣れているからか、子供達は恐がるよりむしろ「なんかすごいものがある!」みたいな感じで楽しんでいたのだそう。
その光景もみてみたい気がします。


冨田結さんの油性インクの木版画は背景の黒と顔の黒く塗りつぶされたような目とが、力強く観る者の感性を容赦なく圧倒してきます。
木版画が持つレイドバックした質感が、尋常でない深みに、さらにイメージ的な奥行きを与えているような、実に重厚なパワフルさを秘めたような作品群。
描かれる女性の身体のラインは思いのほかなめらかであることがアクセントとなっているのも印象的です。


冨田結02 冨田結01

冨田結03
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2008年06月30日

review:携帯電話の電源を切ったとき、絵画は雄弁に語りだす 小池真奈美 樫木知子 Firoz Mahamud《6/7、6/21》

携帯電話の電源を切ったとき、絵画は雄弁に語りだす 小池真奈美 樫木知子 Firoz Mahamud
OTA FINE ARTS
東京都中央区勝どき2-8-19-4B
6/7(土)〜7/12(土)日月祝休
11:00〜19:00
Ota Fine Arts 080607.jpg

OTA FINE ARTS
2-8-19-4B,Kachidoki,Chuo-ku,Tokyo
6/7(Sat)-7/12(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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OTA FINE ARTSでの、小沢剛さんのキュレーションにより3名のアーティストをフィーチャーした展覧会です。

3つのクリエイティビティが画面に映し出すアイデンティティが、その違いに留まらず、イメージされる風景としても実に奥行きを感じさてくれるコントラストを築き上げているように感じられます。


今回はじめて拝見する、バングラディシュ出身のアーティスト、Firoz Mahamudさん。
遠目でぱっと拝見したときは「手漉きの紙の切り絵かな」と一瞬錯覚するような味わい深い色使いと色面構成で、壁画を思わせるダイナミックな大作が並びます。


Firoz Mahamud 07



くっきりとしていながら一言で言い表せないひとつひとつの色の独特の色調は力強く重厚で、絵の具の乗る素材としての臨場感にも惹き付けられます。
自然の光景に直結しない深い色彩で描かれていながらも、そこに広がる世界からは独特の温かみが滲んで、同時におおらかな感触は大地のイメージを思い起こさせてくれます。
充分に大きな作品でありながら、思い浮かぶのはさらに雄大な光景、分厚い時間、歴史だったりするのも興味深いです。


Firoz Mahamud 06 Firoz Mahamud 04 Firoz Mahamud 05

Firoz Mahamud 03



メインスペースの入口付近に展示されている楕円状の半球体の作品もあり、独特の色使いと色面が生み出す工芸的なユニークさが引き出されているような。


Firoz Mahamud 02

Firoz Mahamud 01



昨年のギャラリーなつかでの二人展、先月大阪のMEMとCASOと続けて拝見する樫木知子さん。
乾いた薄いベージュ色が大きな画面に繊細に広がり、そこに儚げな色調で女性の姿や光景が描き込まれます。


樫木知子204



この乾いた色彩とマチエルから、風のイメージが思い浮かんできます。
ほのかに美人画を想像させる女性の独特の表情と仕草、佇まいは、その色調や儚げな線描と相まって何故だかレイドバックした時代性を醸し出しているような印象を受けます。
描かれている風景に登場するさまざまなものは現代的なのに、そういった昔のイメージが彷佛されるのがなんだか不思議で、その曖昧さに包まれるのがまた心地よかったりします。


樫木知子202 樫木知子203

樫木知子201



そして、おおきな画面での大胆な空間性も、あるインパクトを放ちます。
空虚ささえも思い起こさせてくれる奥行き感、そこにもたらされる淡々とした時間のイメージ。
すごく遠くの景色を眺めているかのような印象も浮かび、しかし、その空虚なところにぽつんと何かが描かれていたりするユーモアが、遠い時代と現代とを繋げてくれているような気もしてきます。


樫木知子206 樫木知子208 樫木知子207

樫木知子205



一転して、小池真奈美さんの作品からは、あたかもそこだけ湿度が増しているかのように、ウェットな臨場感が迫ります。


小池真奈美005



色彩のひとつひとつの瑞々しさ。
それらで描き出される女の子の鮮やかな着物の模様、黒髪の艶やかさ。
ほんのりと滲んだ風合いでていねいに、緻密に紡がれ、蜃気楼のように揺らめくようにそれぞれの場面が描き上げられていて、そのシーンのユーモラスさは妖しげな雰囲気へも転化しているように感じられるのも興味深いです。


小池真奈美002 小池真奈美003 小池真奈美004

小池真奈美001



一にもニにも、描かれる着物の女性の妖婉さに魅せられます。
くっきりとして落ち着きをももたらす空間性、ウェットなマチエルと滲むフォルムが、鮮やかな色彩にさらに艶やかさをもたらします。
樫木さんの乾いた雰囲気と対を成すことで、その独特の、ある温度も思い起こさせる瑞々しさの臨場感が際立って感じられます。


小池真奈美008 小池真奈美007 小池真奈美009

小池真奈美006



ここでフィーチャーされている3つのクリエイションを眺めていて、期せずして「土」「空気」「水」の3つの要素をそれぞれの作品から感じた次第です。
また、それぞれから思い起こさせてくれる時代性の差異もそれと同時に興味深く感じられます。

もっとも僕のなかに浮かんできたこのイメージが展示の主旨にどれだけ沿っているかは分からないのですが、こうやってひとつの企画にパッケージされることで、個々では思い浮かんでこないイメージがそれぞれの作品からより鮮やかな臨場感を伴って伝わってきたことも、たいへん興味深く感じられ、それぞれのクリエイションへの奥行きもぐんと深まった気がします。

おそらくほかにもいろんなイメージをもたらしてくれる展覧会だと思います。
空間のポテンシャルを活かし、それぞれが思い切りのいい大作を発表されていることも実に嬉しく感じられます。


小池真奈美010
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2008年06月29日

review:山口智子 個展 "ききょう" 《6/15、6/21》

山口智子 個展 "ききょう"
LA GALERIE DES NAKAMURA
東京都新宿区早稲田鶴巻町574 富陽ビル
6/13(金)〜7/6(日)木休
12:00〜19:00
山口智子080613.jpg

Tomoko Yamaguchi exhibition "kikyo"
LA GALERIE DES NAKAMURA
574,Waseda-tsurumaki-cho,Shinjuku-ku,Tokyo
6/13(Fri)-7/6(Sun) closed on Wednesday
12:00-19:00
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現実と幻想をゆるやかに行き交う...つなぎ合わせていく...



LA GALERIE DES NAKAMURAでの山口智子さんの個展です。

1階と2階のふたつの広い空間に小さなものを中心にさまざまなサイズの作品とインスタレーションが配されて、山口さんらしい、ビターな甘さを連想させるような、ほのかにメロウでセンチメンタルな雰囲気が緩やかに漂います。



山口智子002

山口智子001



それぞれの壁にさまざまなかたちで作品が掛けられて、その空間の表情が豊かに、そして同時にメランコリックに彩られている、そういう印象が伝わります。
絵の具を筆でキャンバスに擦り付けるような感じで、薄くさらさらと塗られて描かれた作品群。そこに生み出されている透明感を滲ませるグラデーションが、絵の中の世界を現実から遠ざけて、懐かしいようなイメージへと誘ってくれます。
追いかけても追いかけても消えゆくような儚さ、立ち止まるとやさしく包んでくれる淋しさ、そういった、言葉にしようとすればするほどに曖昧さが際立ってしまうような印象が心によぎります。


山口智子008



絵の中に登場する女の子たちは、一様に不思議な表情や仕草、佇まいをたたえています。
シチュエーションも、そこに描かれるアイテムの組み合わせも、なんだかシュール。
潤んだ瞳と意味不明さとが相まって、その絵の中の世界に、そこにいる女の子が醸し出す雰囲気に引き寄せられていくような感じです。
「いったい何を考えているんだろう...」と思う一方で、そこに実は答えを求めてはいなくて、そういう曖昧な感触に浸るのが心地よいのかな、とも思ったりします。


山口智子003 山口智子006

山口智子007



山口さんの作品は、今回も昨年のギャラリー小柳での二人展で発表されたときと同様に、側面も彩色されています。
今回の空間は、鉄筋の凹凸をそのままに白く塗られた壁面や柱、窓からも通りを走る車や買い物をする人など普段の光景が目に飛び込んできたり、などなど、展示空間として、より身近で日常に近い雰囲気が満ちているのですが、その臨場感と絵の中の世界とを隔て、同時につなげるリボンのようなイメージが浮かんできます。

そのほんの数センチ、数ミリの僅かな幅の色が、絵画の「もの」としての存在を際立たせるだけに留まらず、そこに描かれた場面を、「ここから違う世界なんですよ」というふうに「とくべつなもの」へと押し上げているような感じで、そんなイメージがさらにこの空間を独特な、特別なものにしているような。。。


そんな絵の中の「違うどこかの世界」が、インスタレーションによって空間に現れているようなところもあって、この存在が山口さんが描く世界と普段の時間とをキャンバスの側面のリボンとは違うかたちで繋げているような印象も受けます。


山口智子005



今回の個展と合わせて、山口さんの画集もリリースされています。
爽やかでかわいらしくて、ちょっと気恥ずかしいような感じも伝わるような。
メランコリックでかわいらしいシュールさを秘めたいろんなシーンがページを捲るごとに現れます。


山口智子009



どこか淋しげな雰囲気がやさしく漂う空間。
広がる朧げでなんとなく遠いような風合いが、山口さんが紡ぐ世界に臨場感をもたらしているように感じられ、そこから得るイメージに深みをもたらしてくれているように感じられます。

そのイメージは、観る人の数だけ、きっとあるだろうな、と。
静かに、そこから得られるイメージに心を委ねて、緩やかに流れる時間に浸りたい展覧会です。


山口智子004
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2008年06月27日

review:山本太郎展 風刺花伝《6/18、6/22》

山本太郎展 風刺花伝
新宿高島屋10階美術画廊
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
6/18(水)〜7/1(火)
10:00〜20:00(金土:〜20:30)
山本太郎080528.jpg

Taro Yamamoto exhibition "Fushi-kaden"
Shinjuku TAKASHIMAYA 10F Art Gallery
5-24-2,Sendagaya,Shibuya-ku,Tokyo
6/18(Wed)-7/1(Tue)
10:00-20:00(Friday and Saturday:-20:30,last day:-16:00)
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日本画とコンテンポラリーアート、この両方の面白さを放つ「ニッポン画」でおなじみの山本太郎さんの、新宿高島屋10階美術画廊での個展です。

まず正面の柱に展示された桜とジェット機がお出迎え。めくるめく「ニッポン画」の世界へと誘ってくれます。


山本太郎001



画廊内をパーテーションで区切り、その手前のスペースでは額装された作品が並びます。

キラーチューンならぬキラーモチーフの炸裂。
コーラの缶から溢れる赤い流線、ガードレール、こんもりと盛り上がる山を水平に横切る舗装道路などが、いわゆる日本画的なモチーフと同居し、キッチュなコントラストを奏でます。
普段過ごす日々の視点では缶やガードレールなどのモチーフが身近なはずなのに、「絵画」のなかではそういったものが描かれていることに違和感を感じ、むしろ桜や梅の美しく描かれた姿のほうが身近に感じられるのが興味深いです。


山本太郎006 山本太郎003 山本太郎002

山本太郎004



昨年のVOCA展で放たれたスマッシュヒット、誘導ブロックの作品も。
独特の臨場感にコミカルさを感じつつも、おそらく普段接している、日常当たり前に目にしているはずのこういう景観へのさまざまな思いも過ります。


山本太郎005



1点、軸装の作品も。
縦の動線の見事さ、松の緑と缶から流れる線の赤、そして雲のように湧く箔の金の色彩の調和とモチーフ同士が醸し出すユーモラスなコントラストがいろんな面白さ、味わいを放ちます。


山本太郎007



奥のスペースには、屏風の大作が飾られ、ダイナミックな空間が演出されています。
今回に限ったことではないものの、暗めの照明設定と黒光りする床により、山本さんの作品に多用される箔がいつになく全面に押し出されているように感じられ、その輝きが鋭く、おおらかに空間を彩ります。


山本太郎011



屏風の大きな画面では、そこに描かれるストーリーにもよりダイナミックな展開が持ち込まれているような印象を強く感じ、さらにそこに今回の展示のタイトルにもある「風刺」の視点も伝わってくるような気がします。


山本太郎009 山本太郎010

山本太郎008



廃れたビニールテントの中で禅を組む僧侶。
そこに生えるセイタカアワダチソウ。
繁殖力の強い印象があるこの黄色い花は青のビニールシートに映え、棄てられたような傘や布切れを従え、細身ながらも力強い生命力を見せつけているように思えます。その奥で簾から姿を覗かせる僧侶の存在に何故か哀れみを感じてしまうのもなんだか不思議です。


山本太郎015 山本太郎014 山本太郎013

山本太郎012



山本さんの作品を拝見する度に感じるのは、描くこと、表現することに対する真面目な姿勢です。

例えば貼られる箔のていねいさ、桜や梅や松などのモチーフの日本画としての個性などが、自らの作品を日本画と呼ばずに敢えて「ニッポン画」と呼ぶことに説得力をもたらしているように感じられます。無論、絵の精度として他のモチーフもていねいに描き上げられることは言うまでもなく、さらに、モチーフ同士の組み合わせや空間性についても、しっかりと考え抜かれているような印象を受け、それが確固たるオリジナリティを作り上げているように感じます。

これからも、どんな組み合わせで僕らを笑わせ、考えさせてくれるか、その展開が興味津々です。
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2008年06月26日

review:佐藤栄輔展「アイスクリームをのみこむ」《6/7、6/14》

佐藤栄輔展「アイスクリームをのみこむ」
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
6/7(土)〜7/5(土)日月祝休
12:00〜19:00
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Eisuke Sato "I Swallow My Ice Cream"
GALLERY MoMo
6-2-6-2F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo
6/7(Sat)-7/5(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
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洗練された筆致で現される狂気。



2年ぶりの、GALLERY MoMoでの佐藤栄輔さんの個展です。
前回の個展ではどこか遠くへと視線を送るような達観した雰囲気が印象に残っているのですが、今回はひとつの画面にさまざまな情報を詰め込まれてぐんとアグレッシブに展開され、マッドな痛快さが堪らない作品が多く出品されています。


佐藤栄輔007



ヴィヴィッドな色の重なりが、より騒然としたシチュエーションを現し、ダイナミックな動きのイメージももたらしてくれます。
どの箇所をピックアップしても、そのひとつひとつの筆致が実に正確でフラットに仕上げられ、絵の具の素材としての迫力にほぼ一切の力を借りることなく、「何を描くか」という1点において徹底して突き詰められた狂気、という感触が鮮烈に貫かれているような印象です。


佐藤栄輔005 佐藤栄輔002 佐藤栄輔003 佐藤栄輔004

佐藤栄輔001



独創的な人物像も強烈なインパクトを持ち合わせています。
つるりとした色面のエッジの美しい曲線のフォルム、そこに配される顔のパーツの潰れたような鋭く鈍く、サディスティックな感触。
特に目のかたちは印象的で、さまざまな状況においても沈むような醒めた感覚が伝わり、その冷徹な重厚さが独特の雰囲気を漂わせています。


佐藤栄輔010 佐藤栄輔011

佐藤栄輔009



小品群も当然小粒ながらも、そこに向かう引力があるかのような力強い存在感をそれぞれの画面が発しているように感じられます。
小さな画面だからこそ、肖像の存在にスポットを当てるような構図で、ある意味大作群よりも大胆なアバンギャルドさ、ときにユーモラスでもあったりして、より具体的なイメージをもたらしてくれるようなインパクトを内包しているように思えます。


佐藤栄輔012 佐藤栄輔013 佐藤栄輔006

佐藤栄輔014



構図といい描写力といい、実に巧みで、描かれた世界のシュールさは格別の面白さです。
描かれている非現実的な場面は、それを佐藤さんの脳内でイメージされたものとの乖離は小さいような気さえします。
それぞれの作品は背景などからは一見して関連がなさそうにも思えるほどにバリエーションに富んでいるのですが、それでもひとつの物語の上に存在している、そう感じさせてくれる説得力があるように感じられます。

この2年で「静」から「動」へと変化した感もある佐藤さんのクリエイション、今後どんな景色を見せてくれるか、次の展開も待ち遠しく感じられます。


佐藤栄輔008
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2008年06月25日

〜6/24のアート巡り

《6/18》
山本太郎展 風刺花伝
新宿高島屋10階美術画廊
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
6/18(水)〜7/1(火)
10:00〜20:00(金土:〜20:30)
山本太郎080528.jpg

山本太郎さんが描く「ニッポン画」、やっぱり楽しいです。
今回の個展では、全体的に暗めの照明設定が合う新宿高島屋10階美術画廊ということもあり、画面を覆う箔の輝きが今まで以上に冴えを増し、そこに昔から連綿と続く桜や富士山などの「いかにも」といったモチーフと、身近で現代的、現在的なアイコンとがひとつの画面に共存して、ふたつの「和」の響きが不思議な世界を構築しています。
手前の額装の作品、奥の屏風の大作群と、それぞれの空間にユーモアと艶やかさが満ちています。



吉田茂規 IDENTICAL LIGHT
東京画廊
東京都中央区銀座8-10-5-7F
6/18(水)〜7/12(土)日月祝休
11:00〜19:00(土:〜17:00)
吉田茂規080618.jpg

モノクロームで切り取られるさまざまな風景。
ケレン味のなさ、切り取る風景に求められたディテールの実にセンシティブな質感など、動かない時間が淡々と提示されるようなシーンの連続。
人口建造物の内装なども多くの作品に登場し、そこに存在する幾何学的なフォルムの美しさがシャープな陰影で際立ち、フューチャリスティックな静謐を発しているように感じられます。



《6/19》
NEXT DOOR vol.6 佐藤修康 佐賀永康 大久保具視 小西美紀子
T&G ARTS
東京都港区六本木5-9-20
6/19(木)〜7/17(木)日月祝休
11:00〜19:00
NEXT DOOR vol.6DM.jpg

今年最初のNEXT DOOR。
今回はヴィヴィッドな色彩感でアバンギャルドな毒気を表現したような力強い存在感を放つクリエイションが揃っているような印象を受けました。
1階の佐藤修康さんの作品の、大きな画面に焦燥をそのままぶつけたようなダイナミックな配色、さまざまな素材のかたちなども活かし、平面の中に立体的な表現もケレン味なく繰り出す大久保具視さん、2階での小西美紀子さんの敢えてそこを取り上げるか、というサディスティックさとナイーブさとを発しているような写真群と映像、壁全面を顔の絵で覆い尽くした佐賀永康さんの圧巻のインスタレーション、それぞれさまざまな温度のイメージを提示しているかのような印象も興味深いです。



《6/21》
MUGA MIYAHARA EXHIBITION
EMON PHOTO GALLERY
東京都港区南麻布5-11-12 TOGO Bldg.,B1
6/17(火)〜7/12(土)日祝休
11:00〜19:00(土:〜18:00)
宮原夢画080617.jpg

広尾の瀟洒な雰囲気が広がる裏通りにあるEMON PHOTO GALLERYでの宮原夢画さんの個展です。

ふたつのコンセプチュアルなシリーズの写真作品が空間を隔てて展示されています。

「TOKONOMA」、心の動きなどをさまざまなモノを使って床の間の狭い空間で表現したインスタレーションをモノクロームで撮影したシリーズ。タイトルが現す感情と、それを表現した床の間の光景。イメージの一致を探る面白さ。
もう1方の「Nulla nasce dal nulla」は、ひとつのストーリーが紡ぎ上げられています。展開も、ひとつひとつの場面もシュールで、展示されている作品を続けて拝見して1本の実験的なショートムービーを観終わったかのような、なんともいえない不思議な達成感が心に広がります。



中川トラヲ「おとなう」
児玉画廊|東京
東京都港区白金3-1-15-1F
6/21(土)〜7/26(土)日月祝休
11:00〜19:00
中川トラヲ080621.jpg

確固とした捉えどころがない不思議な縮尺感の抽象的な景色に薄い色彩が重なり、もりもりとした奥行きと、それを平面的な空間に押し込めたような感じの同居が独特のユーモラスなユニークさを生み出しているような印象を覚えます。
薄い白のオーバーダブが施されない作品もあり、それらのくっきりとした色彩の臨場感が、薄い白が被さる作品の平面的な感触により臨場感をもたらしているように感じられます。



肥沼義幸 untitle
GALLERY TERRA TOKYO
東京都港区麻布台2-3-5 NOAビル1F
6/21(土)〜7/19(土)日祝休
10:00〜19:00
肥沼義幸080621.jpg

青を基調としていながらも実に重々しい印象の色調と筆致で描かれた、現実感と幽玄な雰囲気とが混ざりあった場面が独特の臨場感で描き上げられています。
てらてらと照明の光りを反射する油絵の具の質感のインパクトや、一見荒々しく思えてその実緻密な筆遣いも随所に垣間見られます。



高山恒展 [鬱景]
exhibit Live & Moris
東京都中央区銀座8-10-7 東成ビルB2
6/16(月)〜6/21(土)
12:00〜19:30(最終日:〜17:30)
高山恒080616.jpg

Art Complex Centerでの個展が印象に残っている高山恒さん。
前回は生殖器や原子爆弾などの生々しいモチーフを緻密な鉛筆画で描き切ることのインパクトが衝撃的だったのですが、今回の個展では風景を取り入れ、実に深遠な世界が相変わらずの隙のない鉛筆画で表現されていました。


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高山恒001



絶妙な濃淡により、細部まで徹底して精緻に描かれる、荒廃したような世紀末的な世界。
小さく描かれる人影が、この世界の空間的、印象的な奥行きをより深くへと押し拡げているような印象を受けます。
またすぐに再びArt Complex Centerでの個展が開催され、そのときはまた以前の作風に一旦戻られるようなのですが、こちらの展開もぜひ続けて、更に深遠な世界を描き上げてほしいような気がします。


高山恒008 高山恒007 高山恒006

高山恒005



松本三和「昼」
Gallery FURUYA
東京都中央区銀座2-11-18 銀座小林ビル1F
6/16(月)〜7/5(土)日休
11:00〜19:00