@Bunkamura Gallery
東京都渋谷区道玄坂2-24-1
12/28(金)〜1/7(月)1/1休
10:00〜19:30(12/31、1/2、1/3:〜18:00)
The Entire Picture of Hideki Nakazawa - Paintings in Symbols and Colors -
@Bunkamura Gallery
2-24-1,Dogenzaka,Shibuya-ku,Tokyo
12/28(Fri)-1/7(Mon) closed on 1/1
10:00-19:30(12/31,1/2,1/3:-18:00)
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中ザワヒデキさんの各年代の作品が出品され、これまでの軌跡を俯瞰できる展覧会です。
あらためて、捕らえ所のないアーティストだなぁ、というのが第一印象、しかし、それぞれの作品のコンセプトに思いを馳せると、そこには確固たる新年というか、確信に基づいたクリエイティビティの匂いが充満しているような印象を受けます。
まず、オーソドックスな絵画が入口すぐのコーナーで目に飛び込んできます。
これがかっこいい!
1963年生まれの中ザワさんの、今から20年少し前に制作された絵画群。
マティスを彷佛させる色彩やフォルムの作品や、チーズか何かのパッケージをコピーしたユーモラスな毒をはらんだ印象を受けるもの、そして、メタリックカラーが大胆に取り込まれた風景の作品と、ペインティングひとつとってもこれほどのバリエーションの幅の広さに感服です。
なかでもメタリックカラーの作品に興味が湧いてきます。
ここから先、実際に金属素材をそのまま作品に取り入れ、マテリアルを強調したような作品が出てくることを思うと、金属的なものへの傾倒はこのあたりから始まっていたのかな、という想像が起こります。
脳内混色絵画のシリーズ。
明るい赤、青、黄の矩形がグラフィカルにパネルを覆う作品。
クリアでグラフィカルなモチーフからドライな印象を受けるのですが、脳内では色の三原色によってグレーを認識するそうで、これらの作品も想像な距離をおいて眺めたらグレーに見えるらしい...。
例えば、どこかの屋上にこの作品を展示して、それを六本木ヒルズ森ビルの展望台から眺めたらホントにグレーに見えるのかな、見てみたいな、と。
もっとも、そういうコンセプトうんぬんを抜きにして、この鮮やかさが放つポジティブな風合いには心踊ります。
続いて、少し前のCGを用いた作品。
モノクロームの矩形のアミ点が拡大されたようなダイナミックな絵。
全像のイージーな感じと、矩形による計算されたような理知的な感触とのギャップがユーモラスに思えてきます。
また、広い画面が分割、印刷され、それぞれが貼られて組み合わせられているという、アナログな作業の痕跡も妙に印象的だったり。
「これでいいのか・・・?」という疑心が湧けば湧くほどに、「・・・だからいいのだ!」という確信も思い起こされるという、なんとも不思議なイメージの惹起をもたらしてくれます。
ひたすら単語単位での回文が並ぶ作品。
アルファベットの羅列で、もしかしたらもっと緻密な法則性もあるのかもしれないのですが、わざわざ母音を挟み込んで音声のイメージが得られるようになっているのが心憎い(笑)。
読もうと思ったら読めてしまう、しかし相変わらず意味不明。このもどかしさにしてやられたような感触を覚えます。
アクリルケースに文字がびっしりとプリントされた作品も数点展示されています。
逆さまのひらがなの連なりと、複雑な漢字の羅列が繰り広げる究極の知的ファンタジー。
ちゃっかりサインと制作年が織りまぜられているのも魅力だったりします。
このほか、脳はドローイングや硬貨をつかったもの、分銅のミニインスタレーション的な作品などなど、さまざまなメディアの、敢えていうと「インチキ臭さ」と「考え抜かれた理知的な雰囲気」とがごちゃ混ぜになったような作品が並びます。
「だから何?」というツッコミが、逆にむしろ楽しさの要素となっているように思えるクリエイションです。
中ザワさんの経歴を拝見すると、医学部のご出身だそう。
アートを感じるひとつひとつの行為、例えば「観る」ことや「考える」ことへの独特のこだわりはこの辺りにもルーツがあるのかも、と思ったりします。
その独特のスタンスが強烈な「違い」を放つクリエイティビティ、今後どんな世界へと向かうのか、興味が月ないのです。