@GALERIE ANDO
東京都渋谷区松濤1-26-23
7/10(火)〜7/28(土)日月休
11:30〜19:00

資生堂ギャラリーでの個展に続いて始まった内海聖史さんのギャラリエ・アンドウでの個展。
おおきさもかたちもまったく異なる空間で、そのうちの壁一面を覆う細かいドット、そしてそれと対峙するひとつの円環。
無数の視点が壮大なイメージを喚起させてくれます。
空間に響く色彩。
資生堂ギャラリーの大きな空間を充分に活かした素晴らしい個展の直近で開催された内海聖史さんのGALERIE ANDOでの個展にさっそく行ってきました。
空間の容量こそ資生堂ギャラリーと比べるとおそらく相当に小さいはずなのに、むしろスールの大きさはもしかしたらこちらのほうが大きいかも知れない、と感じさせてくれるほどに、今回も渾身のインスタレーションが展開されています。
ギャラリエアンドウというと、ちいさくてすごく変わったかたちの空間という印象がかなり強く、ここで内海さんがどんな展開をしてくるのか、ここでの個展の情報をいただいたずいぶん前から楽しみだったのですが、瀟洒な扉を明けてくぐった瞬間に視界に飛び込んでくる壁一面に広がる紫の色彩のグラデーションにただただ圧倒されてしまった次第です。
いつだって、僕の期待は内海さんのクリエイションに追い付いたことはないのです。
なにより、「紫」という色彩のチョイスが今回の展覧会のもっともユニークなポイントのひとつのように思えます。
内海さんからもオープニングの日に伺ったのですが、紫というとその色の印象の幅がたいへん広く、「赤っぽい」紫も「青っぽい」紫も、ごく自然にイメージできるわけですが、その色彩がもたらしている幅の広さを活かし、さらにそこに黒や緑、黄色といったものも加わりながら、細かいドットが合わせて10枚のパネル構成されるこの画面にびっしりと広がり、さらにその奥に、こちらもまた驚くほどに多種の色彩による下地が施され、視線が向かう場所ごとに隣り合う色彩や色調、画面の質感などが調和したり反発したりしながら響きあって、イマジネーションを複雑に刺激してくれるのです。
また、展示されている壁は左手の角が鋭角に折れているのですが、その部分の空間的な処理にも唸らされます。
そこに現れる隙き間の絶妙具合といったら。ぎりぎりまで大きく取られた画面であるのに、しっかりとその緊張する部分に余裕ももたらされているように思え、こういう空間的ディテールへのこだわりも強く感じます。
この大きな作品、単純にその大きさだけで計れば無論前回の資生堂での個展に出展された作品のほうが圧倒的に大きいのですが、その展覧会を経験していることも大きく作用しつつ、今回の展覧会も前回に劣らないダイナミズムが繰り広げられているのです。
例えば、この極小サイズのドットが前回のサイズへと拡大したら...などと考えるだけでも。
この大作を、向かい合う壁で受け止めるのが、およそ5cm四方の画面12点で組み上げられる円環。
それぞれの画面に一色ずつ。それらが連なってひとつの色彩の流れを作り上げています。
大作が、すべての世界をその色彩で覆い蹂躙し尽くすような「力による力」だとしたら、円環は雲間にふっと浮かび上がるような神々しい力、そういう印象です。
空間の構成としても、ホントに感服です。
内海さんの作品を拝見する度に感じるのは、イメージの自由さと、そのイメージが何らかの具体的なものに限定されないこと、そして、そのイメージを限定する唯一の例外が内海さんのクリエイションそのものであって、単純のそのかっこよさ、素晴らしさだけでさまざまにイメージを喚起してくれる、ということで。
特に抽象作品を「面白い」と感じるために、さまざまイメージや知識、経験を動員しなければいけないことはままあるのですが、内海さんのクリエイションの場合、少なくとも僕にとってはそれがないのです。
そこにあるクリエイションを、それが「面白い」というシンプルな動機付けだけで「面白い!」と感じられることの幸せというか。。。
無論、僕にとってそういう素晴らしいクリエイションとの出会いはこれまでにもたくさんあるのですが、そのことにあらためて気付かせてくれる展覧会でした。
この展覧会、もちろんたくさんの方々に、この場所で直に空間を体感してほしいですし、特に資生堂の展示をご覧になった方にはぜひともチェックしていただきたいです。