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2006年09月25日

interview:谷山恭子

昨年の終わり頃から今年にかけて印象的な展示を拝見する機会が多かった谷山恭子さん。このブログを始めてからもふたつの展示を通じてすごくポジティブなイメージを受けました。
これはGALLERY 360°でのグループ展の会期中に谷山さんがさまざなまスタイルのアーティストたちと共有するアトリエに伺ってインタビューしてきたものです。

展示のレビューはvoid+での個展がこちらGALLERY 360°でのグループ展のがこちらです。

また、谷山さんのサイトに詳しいですが、各所で谷山さんのパブリックアートを観ることができます。ちょっと近くに行った際は気にかけてみると楽しいです。

−谷山さんのコメントをいろいろ読んでいたら、谷山さんの作品には『記憶』っていうキーワードがあるんですね。

「そうですね、普通の日常というか、そういう時間軸を基準にしてますね」

−『記憶』というキーワードを見て、『過去』が空間に織り込まれているのがよりユニークに感じられるんです。

「立体的な空間、自分を取り巻く空間というものに昔から興味があったんですね。例えば日が傾いていくと空気感が変わっていくような、そういう常に流れていく時間が自分の一部となって、記憶に折り重なって蓄積されて私が生きているっていう。あとは幼少期に引っ越しが多かったりして、そのぶん変化も多く経験してることが、自然に空間と時間を繋げてるんだと思います。幼稚園の頃、そのとき住んでたお家に『あと何年住むんだろう』って思いながら日記をつけてみてたりとか...そこの家の風景と過ごした時間が重なるっていう感覚はすごく意識してたんだと思うんですよ」

−無意識でも、時間と空間とを意識していた感じなんですね。

「単純に彫刻っていうと『もの』があって、どうしてもそればっかり見てしまうようだけど、彫刻って『置かれる』ことでその周囲を空間的に構成しているんですよね。だから『もの』に固執するんじゃなくて、何かを置くことで起こる空間的な変化っていうのにすごい興味があって。それで、やっぱり美しいってこと...綺麗に見えるとか、そういうのがすごい好きだから、デザイン的にそういうものを構成していくようになったところに、自分がもともと持っている時間みたいなのが混じって私の作品は出来てるのかな、と思うんですけど」

−谷川さんの作品を拝見したのって、GALLERY SPEAK FORでけっこう広い空間を使ったものと、つい先日までやってたvoid+の展示なんです。どちらも空間に入ったときの印象が強くて。ものすごい異空間に入った感じがしたんですよね。

「void+のほうが天地が逆になっている感じがあって、より異空間的ですよね。あの空間が良かったんです」

SPEAK FORでの展示では、本棚に本があったり、イメージしやすい光景なんですけど、それが全部金属で出来ていたのがすごいな、と。目から物質感が伝わってきて、すごく不思議な感じがしたんです。

「ちょっと変なのがいいかな、といつも思っていて(笑)。SPEAK FORで展示していた全部スチールで出来ていた本とかは、あれは表慶館での展示に出展したものだったんですよ。その空間に合わせて作っていて、ガラスケースがあるいわゆる美術館だったんですけど、その中に『見たことあるんだけどちょっと何だろうあれ』っていうものを閉じ込めたくて。で、スチールで全部作っちゃったりするだけで絶対に『変なもの』になってしまうんですけど、同時に立体CGみたいにペラペラなもので作ることが、物事を記号化していく作業なのかな、とも思うんですよね。日々の風景をアイコンとして表すことで、すごく分かりやすくなってると思うんですよ。情緒的であったりうつろうようなものを削除してものすごくシンプルにすることによって、観る人が自分をそこに投影しやすくなるんじゃないかな、と。無機質ともなんともいえないけど、ちょっと歪めたような変な感じを織りまぜつつ、でもすごくシンプルに空間を構成しようと」

−たしかにすごくシンプルでしたもんね。

「シンプルなのが好きなんです」

−感じてほしいものがすごくストレートに伝わってくる空間になってたと思うんです。

「そういう感想は嬉しいですね。ホントにいろんなリアクションがあるんですよ、デザインされたものがピンとこない方とかいらっしゃったり。SPEAK FORのは、それまでの作品を集めて再構成した空間なんですよ。いかにしてあの空間を日常的でありながら日常的でないものに構成するか...そういう風景が見る人に伝わりやすいような動線を設定したり。ただ、本来は空間は全部新作で作りたいと思っているんで、時間的なことなどでそれができなくて、正直なところ満足できない部分もあったりしたんです。そういう意味ではvoid+のほうがダイレクトに空間にアプローチしてるし、今の自分とあの空間との『距離』を測って考えているので、かなり正直で自分らしいと思います。あと、例えばスチールを使わなきゃとか、最近はそういうものに囚われなくなって、思考やコンセプトをダイレクトに人に伝えたいってことを優先するようにもなれたんですね、今までよりも。『伝わってほしい』というよりも『感じてもらえたらいいかな』みたいな。360°でもそうだけど、ちょっと肩の力が抜けてきたというか、もう『作らなきゃ!』という無理な追い込みみたいなのがなくなってきた感じで。なんかもうピュアに『いいといいな』でよくなってきた。そこが活きるといいし、みんなが入り込みやすいものをもっと作れたらいいな、と思っていて、だからSPEAK FORのときよりもvoid+であり360°での展示のほうが、私としては正直な今の自分の感じだと思うんですね」

−void+と360°のは、与えられた空間に、谷山さんの今までの経験とか記憶から持ってきたアイデアが加えられて、それらを再構築した展示なんですね。そうやって構成していくと、納得いくものもできる。

「そうですね。毎回新しくありたいと思ってるんです。まず、その場所性を考えるのが前提で、ただ以前は、私や私の記憶といったフィルターを通して昔の風景を作り替えて、家具みたいなものでインスタレーションしてたけど、最近はそれもなくなってきて。もっとライブ感があるというか、ダイレクトに人が入っていけるものを、というのを大事にしてる感じです。360°での展示も、ああいうふうに普通にプラントを使って影をモチーフにすれば分かりやすいですよね。アクセスしやすいものにしていきたい、インスピレーションが生まれるまでのタイムラグをもっと短くしていきたい、そういう感じです」

−世界の『入口』は思いっきり入りやすくして。

「そうそう、いろんなことにあまり固執しないで、私の作品を観てもらってちょっと考えてから拾える人は拾って拾えない人はそれでいいっていうのじゃなくて、好きか嫌いかでもいいと思うから、空間に入った時にぱっと受け取れるような、そういうコミュニケーションが始まるまでの時間を短いものにしていきたいなっていうのがあって、そういう方向にちょっとずつ変化してきているんですけど」

−なんかすごく良く分かる気がします。だからこそシンプルに、というのも。いらないものを外していってシンプルな世界が空間に提示されることで、何もない部分に観る側がどんどんイメージを投入していける、詰め込んでいけるっていう。そのコンセプトは『入口』になり得てると思います。

「だといいな、と思ってますね。そうだとすごくいいなと思うのと、匿名性が高いのもいいと思うんですよ。サインがない状態。なんかこう、自分っていうことよりも、『みんな』かな、みたいな(笑)」

−ああ、いいですね、ピースフルですね(笑)。それにしても、360°での作品は分かりやすくて楽しいですよね。

「360°のは植物に頼ってるんだけど、あのプラントも『すごいいいなあ、この人』と思って買ったんです。彼女か彼か分からないけど、プラントに『がんばってね、よろしくね』みたいな(笑)。1ヶ月も人目に晒されると植物も大変だと思うし、そんなふうにしてるからあれだけど強そうな人だったからいいかな、と。『お願いします私の変わりにいてね!』って感じで(笑)」

−観葉植物のほう。

「そうそう、葉っぱのほう。観葉植物のほうが成長していって影の部分は虚像になっていくというか、植物は変容していって影は昔の記憶を残す感じで、例えば絵画のような別の存在に変質していくと思うんですけど、造花のほうは、人間が美を保とうと思って作りあげたものとそれが完全に時間が止まった状態を表現していて、そのふたつを対比させる感じで用意したんです。まあ、そこまで読み込んでもらわなくてもいいんですけど(笑)」

−片方が造花って分かった時点で、なんとなくこういう時間の対比というコンセプトはすごく伝わってきたんです。

「そうですか、嬉しいです。私の今ままでのやり方って物質的なものをそのままストレートに出すのが多かったから、今回のはタイトルを情緒的にもっていってみようかな、とも思ったんだけど、ポエティックな感じにするのは今回はまあいいや、と。それはもっと大きい作品を作る時にやろうかな、と思ってるんです。あと、void+でもそうだったけど文章をつけるっていうのは、私のやり方としてこれから面白いかな、と思っているんですけど」

−ちょっと補助的なものを。

「そうですね。void+の展示は『蝶々の羽ばたき現象』をテーマにしたんですけど...蝶々が向こうで羽ばたくとこっちで津波が起きるって話があるんですけど、私はホントだと思っているんですね。で、地球を人間に置き換えたら、その目の前にあるきれいなブルーを目にした時、それは静かな感じなのに体の中にはなんか熱く沸き立つものもあるのと同じかな、と思って。それに時間的にも、今観たものは10年後にリンクしてくるし、過去と今は点同士で繋がって隣り合わせにあるから、そういう提示があってもいいんじゃないか...まあ、『もしこのイメージを拾ってくれる人がいたら拾ってね(笑)』みたいな、そんな感じですね」

−あと、谷山さんの空間ってすごく色が特徴的だな、と思うんですよ。すごくクリアな色が使われていて。それも意識的なんですか?

「いや、あのね、例えばvoid+では、あの空間に入った瞬間に、奥にどうしても青が欲しいと感じたんですよ。なんか空みたいな、月の影みたいな。狭いし空間だし、あそこはどうしても空でありたくて、そうしたときに見えてきた色が、ああいう色で。で、発色がいいのはパンチカーペットだっていうのは分かっていて、その青がイメージに近くて。ハード面からもこんな具合にあの青がまず決まって、そこから他の色を決めていったんです」

−最初から使う色が用意されているわけではなくて、空間の中で1ケ所決まったらそこから派生するように他の色が決まってくる。

「そう、前に大阪でやった展示ではどうしても『赤』が見えたんですよ。空間のある部分に赤が見えて、そこから他がばーっと見えてきたのと同じで、これをこういうところに置かないと締まらないっていうこだわりが自分の中にどうしてもあるらしくて。色だけじゃなくて、じーっとそこに入った時に見てると『ここに台が欲しいな』とか思うんですよ。そういうのを基に、自分の中をこう『見る』ような感じで選んでいく。で、色見本帳とかいろんなので色を探すんですけど、隣り合わせた時にどうしてもこれじゃないと合わないっていうのも自分の中にあるんですよ。色彩に関してはそういう構成なんですね」

−なるほど。

「以前、恐竜の化石のレプリカを作るっていう変わったバイトをしていて、古びた化石をまったく本物と寸分違わず表現するために中途半端な色を作らなきゃいけないから、おかげで色を観る訓練はかなりできて、じーっと見てると『この色とこの色とこの色を混ぜるとこの色になる』というのが分かるようになったんですね。それから色に興味がでてきて」

−面白い縁ですね。

「私は絵を描いてる人でもないし、色のセンスなんて絶対にない、私が色なんて絶対おこがましいってずっと思ってたんですけど、いろいろやってみたら、どうしてもこれじゃなきゃやだっていう色があるんだって気付いて」

−作品からはむしろ『色彩感覚』で持っていく人なのかな、という感じもしてたんです。

「最近はそういう面もあるんですけど、色に頼っているっていう(笑)。良いのか悪いのか分からないですけど、今はそうですね。そのうち変わるとは思うんですけどね」

−360°での展示が終わったら...。

「現時点ではしばらく予定はないんですけど、月島のお家のほうをもっと改装しようかなと思っていて。もちろんギャラリーとか美術館のお話があったらいつでもやりたいんですけど、自分からももっと発信していく形、『場』から作るっていうのも良いなと思って、ちょっとずつ、ゆっくりなんですけど身の丈にあったペースで前へ歩いていこうかなと」

(6/12、アトリエにて)

谷山恭子1 谷山恭子2 谷山恭子3
posted by makuuchi at 07:49| Comment(0) | TrackBack(0) | interview | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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