新世代への視点2011 小川浩子 - Janus -
@Gallery Q
東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F
03-3535-2524
7/25(月)〜8/6(土)日休
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
Focusing on a new generateion in Tokyo 2011 Hiroko Ogawa - Janus -
@Gallery Q
1-14-12-3F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
03-3535-2524
7/25(Mon)-8/6(Sat) closed on Sunday
11:00-19:00(last day:-17:00)
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ギャラリーに入ると眼前に鈍い光沢を放つ鉛黒色のものが硝子のテーブルにうずたかく積まれた光景が飛び込んできて、刹那深遠な気配へと意識が沈み込んでいきます。
まず、それ自体が何で出来ているか、素材が何なのかということに興味が向かいます。
同じようなかたちの集積なので何かを型で取って作っているのかと思いきや、全て手彫りの作品とのこと。しかも素材はグラファイトで、独特の光沢にも納得した次第。
モチーフは百合の花の雌しべなのだそうで、素材の光沢から感じ取れる硬質なイメージとのギャップもさまざまな想像をもたらし、押し拡げてくれます。
もうひとつの台座は高く設定されていて、こちらには白い造形が積まれています。
こちらは百合の花の雄しべの造形で、また素材は岩塩なのだそう。雌しべを表現しているのが黒いグラファイトであることを思うと、それぞれの材質は黒と白という対比を明確に出すために色合いで選ばれたのかも、と思ったりもします。
メインとなるこの雌しべと雄しべの造形の集積は、深遠な世界観を提示しながら静かな心持ちを届けてくれて、同時に作業の分量へと想いが至ったときにそのすごさに対してあらためて唸らされます。実際に目にするとそのインパクトは相当なもので、素材の色合いや質感の特異性も斬新な印象に転化され、また手で彫られていることの有機的な仕上がりが醸し出す深みにも感じ入ります。
モチーフの対比はそれぞれの素材のチョイスにより、黒と白、鈍い光沢と半透明など、さまざまなかたちでさらに際立たされます。
壁面には黒と白の大小の平面の作品が展示されています。こちらはそれぞれグラファイトと岩塩の削り痕を定着させたものとのこと、奥の壁面に設置された大きな黒の画面を覆い尽くす鈍い黒の光沢は、それだけでその削り痕の分量を思い知らされ、気も遠くなります。同時に、画面表面を研磨して平滑な仕上がりがぐっと引き上げられている様子にも魅せられます。行為の提示としての説得力に感じ入る次第です。
ちいさな画面には岩塩の削り痕が定着されているのだそうで、塩という素材の水溶性からなかなか分かりづらかったりもするのですが、そのことも行為の提示としての存在感が際立っているように感じられます。
雄しべと雌しべの集積のうち、ひとつずつに糸が繋げられていて、空間に作り上げられる物語性に緊張感をもたらしています。つがいになるイメージで、多数のなかから結びつく一対、という神々しい印象も浮かんできます。
様々な表情が潜む深遠なインスタレーションです。全体にモノトーンが保たれ、そのことも気配の抑制に繋がって、繊細な重厚さが生み出されているように感じられます。