昨年のミヅマアートギャラリーでの個展で作品を拝見して以来、ずっとお目にかかりたいと思っていたアーティスト、青山悟さん。
今回のミヅマ・アクションでのグループ展ではご自身の新作とともにロンドンで活躍中のアーティスト4名の作品が出展された、ユニークな展示でした。
今回のインタビューでは、今回の展示である「THE SOUVENIR MINE」の話を中心に。
展示の感想はこちらです。
「今回はこれにかかり切ってしまってあまり自分の作品が多くないんですよ」
−それはアーティストのセレクションから来日の手配とか、そういうのも含めて。
「そうそう」
−今回の展示のロンドンでの手配とかは全部青山さんがなさった感じなんですか?
「そうですね、だいたいミヅマさんと二人でやったんですけど。この展覧会はブリティッシュカウンシルから協賛もらってるんですよ。それで、アーティストも3人日本に呼んだんですけど、その彼らの飛行機代とか...そういうのを捻出するためにファイル作ったり、いろいろ大変で(笑)。まあ、そういう雑用的な話はいいんですけどね(笑)」
−今回選ばれた方々は向こうで青山さんと交流が結構ある方のようですね。
「そう、僕のスタジオメイトや、けっこう長い友達だったりして。みんな同い年くらいのアーティストで、彼らもロンドンだとけっこう活躍してて、去年おととしくらいから名前もよく耳にするようになってきたアーティストですね」
−そういった旬のアーティストを日本で、というか東京で紹介するいい機会が今回できた。
「はい、あと実際に自分の新作を見せたい展覧会でもあるんですよ。いままで日本で3回かな、ミヅマと水戸芸術館のクリテリウムとで個展やってますけど、自分の作品について、例えば『細かさ』だったり、そういう技術の部分で語られてたことってすごく多かったと思うんですよ。でも、やっぱりそれだけじゃないじゃない?僕はロンドンにいてロンドンでアートはじめたわけで、やっぱり自分の見てきたものや生活している環境の中からしか表現って出てこないと思うんだけど、そういうのをもっと理解してもらわないことには、本当に深い作品に対する理解は得てもらえないのかな、と思うんですね。まあ、細かいは細かいでいいけど何で細かい作品を作ってるんだとか、なんでミシンなんだとか...。とにかく環境とか(歴史的な流れという意味での)文脈とか、自分の作品の背景を見せるための展覧会(笑)」
−青山さんの作品を分かりやすくプレゼンテーションするのに、青山さんの作品だけとなるとどうしてもミニマムな方向に視点が行きがちなところを、他のいろんなスタイルのアーティストの作品と並べることで、もっとフラットな状態で見てもらえるようになっている感じなんですね。
「それもそうだし、あと西洋人にとっては現代アートも宗教画の頃から脈々とコンテクストが続いてるわけじゃないですか。で、もちろん自分の作品もその西洋の正当なアートの文脈の中に位置付けたいんだけど、そういうことを意識して、今回はこういう一見ストレートなイコン画をやってみたんです。それで、ロンドンのアーティストと一緒に作品を並べることによって、どういうふうに自分が自分を位置付けているかっていうことを人に提示したかったっていうのと、あと別に『細かいの自慢』をしたいわけじゃないんですよっていうのも(笑)。自分にとってはそういう展覧会でもありますね」
−5人のアーティストの作品を並べて拝見していて、映像インスタレーションもあるしダイナミックな立体もフリーキーなドローイングもある、これだけ大胆なバリエーションのなかに青山さんの作品があることで、青山さんのロンドンのシーンでの立ち位置がすごく分かる感じがしたんですよ。
「でもみんなやっぱり僕と同じような視点でものを見てるところがあって、それは宗教感みたいなものもあるし、YBA(Young British Artists)みたいなすごい派手なムーブメントのあと、次の世代としてはどういうものがいいんだろうって思った時に、決して意識的にではないけれど、伝統回帰主義、トラディションへ回帰していくって方向性っていうのは潜在的に全員の中に共通の意識としてある気がするんですよ。ピーター・ドナルドソンのビデオの作品も、ハンス・ホルベインっていう宮廷画家が「ダンス・オブ・デス」っていう死者が生きている人を連れていくというテーマの宗教画があるけど、それの現代バージョンなんですよね。ニール・ラミングはトラディショナルなペインティングの持つ力っていうのにフォーカスを当てていて、ペインティングの持つランゲージのためだけのペインティングっていう、そういう感じなんですよね。手段はドローイングだったりビデオだったりするんだけど、根本的には見てるところが一つ前の世代と違いますよね。バラバラなようでいて共通の問題意識とか、そういうものはありますよね」
−そういうアーティストが向こうには結構いる中で、今回はこの4名をピックアップしてきた感じ。
「その中でも彼らはYBAの次の世代を代表するような存在で、実際もう認知されているんじゃないかな、ロンドンでは。で、たまたまあそういうのがスタジオメイトですごい仲のいい友達だし、うん」
−東京でもいろんなアーティストと話す機会もあるんですけど、さまざまなアーティストのグループっていうか、コロニーのようなものに接すると、やっぱりスタイルとかクオリティである程度そのグループに集まるアーティストが揃っていく感じはすごくしていて、この展示を観て今の青山さんのお話を伺うと、ロンドンでもやっぱり同じように近い距離に面白いアーティストが集まっているのかな、と。それはすごく自然なことのような気がするんですよね。レベルの高いアーティスト同士が近くにいてこそ切磋琢磨できるっていうのはあるとは思うので。
「それはそうかもしれないですね。この中だと、彫刻と小さなドローイングが同一作家(Graham Little)なんだけど、彼なんかがいちばん最初にシーンに出てきて。僕達の世代は彼に引っ張られているところがけっこうあるんですよ。そんなアーティストが身近にいるとやっぱり影響は受けますよね。そういう意味では、近くにいるから切磋琢磨してっていうのは、もちろんありますね」
−今回のイコン画を取り上げられたのは、さっき伺ったように青山さんの向こうでのルーツの提示ということでしたが、僕が拝見して...僕が青山さんの作品を実際に拝見するのは昨年の個展以来で今回が2度目なんですけど、その時観た印象と、あと過去のファイルも拝見してみて、よりご自身のスタイルの精度をさらに高めているというか、もっと追求している感じがすごくしたんですよ。
「それは『技』という意味で?」
−もちろんその感動もあるんです。例えば絵の具だったらベタ塗りすればいいところも、細かい部分と同じテンションで色を埋めていかなきゃいけないですよね、青山さんの手法では。だから、スキルは否が応でも上がっていくものだと思うんです。
「そうですね」
−そのうえでさらに、りんごの艶や十字架の光が透過してる様子だとか、敢えて難しいテーマを取り上げて表現してみようっていう、そういうものすごい旺盛なチャレンジ精神が感じられたんです。そして実際にその光の反射や透明感が驚くほど美しく再現されていて。
「ありがとうございます(笑)。それはもちろんありますよね、そういうところはね。でも、宗教画をモチーフに選んだのはやっぱりさっき話したのが一番の理由なのと、あと、自分が『日本人』だからこういう西洋人にとってセンシティブな題材を取り上げられるっていうのもあるんですね。一般的に日本ではキリスト教に対する概念がないといってもいいくらい希薄じゃないですか。だから、宗教的なイメージがポップイコン化してると思うし、そういうものに対してある意味空っぽな部分があるんですよね。日本人がイコン画みたいなのをやるっていうことの唐突さというか、その空虚さみたいなのを提示したかった、というのもあるんですよ。もっと大きな文脈で言うと日本人がいわゆる『アート』をやるっていうこと自体も唐突かもしれないと思うんですよ」
−ああ、それはちょっと分かる気がします。
「それも表したかったんですよね。アートが宗教画から文脈が続いているのに、日本はこういう宗教とはかけ離れたところから来てるんだよっていう。でもそれって別にネガティブなことじゃなくて、だからこそ面白いってところはあるわけで...西洋人の現代アーティストでもおそらくこんな作品作らないと思うんですよ。日本の展覧会だから僕もこのテーマを敢えてやってみたんですけど、海外でだったらやっぱりこういう『obvious』なもの、明らかすぎるものは避けますよね。もう。この展覧会のためだけの作品ですよね」
−東京のこの場所っていうのは、青山さんが発表する場としてはある意味すごく貴重なんですね。
「完全にその通りですね。今回の僕の作品は日本での展覧会だからこそ許される作品なんだと思うんですよね」
−僕みたいに、日本にしかいないと分からない感覚かもしれない...。
「そうかもしれないですね」
−ロンドンは相当長いんですよね。
「ロンドンはもうけっこう長いですね。ロンドンだけだったら10年くらい。高校のときもイギリスの田舎の日本人学校にいたんですよ。まあ、そこでは外出禁止だったりもするし、ちっちゃい日本の中にいるような感じだったんですね。だから実際にロンドンに出て外人として生活し始めたのは大学に入ってからなんです。で、途中2年間アメリカのシカゴにいて。それは大学院で。だから海外は長いですね」
−ちょっとまた違う話なんですけど、ペットショップボーイズの作品なんかを拝見していると興味が出てきて聞いちゃうんですけど...制作される時ってやっぱり音楽聴きながら、とか。
「ああ、もうずっと流しっぱなしですね、音楽は。i-Podのなかに好きな音楽だけ詰めこんで。音楽は聴きますよ、すごく」
−foglessっていうサイトの青山さんのインタビューを拝見して、そこでもご自分のスタイルを「宅録」って言葉で表現されてたのを読んで、きっと音楽は好きな人なんだろうな、と。
「ライブにもけっこう行ったりするんですよ。あと、例えばメジャーとかマイナーとか、そういうのをアートの変換して考えるのも面白くて、いろんなイメージの参考にもなりますよね」
−エンターテイメントとしてはアートも音楽もいっしょですからね。
「いっしょですよね。でも、音楽はコピーの文化だから、どれだけ売れたっていうのがはっきり数字で出る。その面からいうとアートはそういうものでもないし。ただ、二次活用映えする作品っていうのもやっぱり存在していて。幅広いところに使われて認知される作品ってけっこうあると思うんだけど、そういうことを考えると僕の作品なんて二次活用映え最悪ですから(笑)」
−(笑)いちばん難しい手法ですよね。
「そうそう。でもまあ、いろんな種類の音楽があるのと同じようにいろんな種類のアートもありますからね」
−いろいろ観ていて、いろんな方がいらっしゃる中で、刺繍でここまで世界を作り上げられる青山さんみたいなアーティストを見つけていくのも、アートを観て回る楽しみのひとつなんですよね。
「そう言ってもらえれると嬉しいですね」
−青山さんの作品をステディに観られる場所が欲しいと思うんです。青山さんの作品って、実際に本物を観てもらわないとこの面白さや凄さが伝わらないですから。
「ホント、ミュージシャンだったら『ライブに来てね』っていうようなもので(笑)」
−この展示が終わると、今後の青山さんのご予定は。
「次は日本では今秋かな、横浜市民ギャラリーでコンテンポラリーのプログラムが年に1回行われているんですけど、今年はそれに『糸と布の展覧会』っていうコンセプトのようで、それに参加予定です。あと海外でもいくつか予定があって。国内で個展をやる時はまたぜんぜん違う作品を出したいですね。大変なんですよ、同じオーディエンスに3回4回とやるというのは(笑)」
>*****
−同じ人が観にくるから、作る側が変えていかないといけない。
「そうそう、それはありますよね。やっぱり同じものばっかり見せられても飽きるじゃないですか(笑)」
−いや、青山さんの作品が観られるのは毎回刺激的ですよ。
「いやいや(笑)。でも、どんどん先に進んでいかないとね」
−そういう意味ではそうですね。アーティストにそういう意識があるから、僕も観ていて『今回もすごかったし、次もきっと...!』っていうふうに期待するんだと思うんですよね。
「そういってもらえると嬉しいんですけどね。まあ、頑張ります(笑)」
−こちらこそ楽しみにしてます。ありがとうございました!
(6/17、ミヅマ・アクションにて)
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2006年07月16日
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Excerpt: youtubeで作品が見れるようになりました。時間があるとき見てみてくださいNow, I resistered youtube. So you can watch my work with youtu...
Weblog: 濱口 直輝 (Naoki HAMAGUCHI)
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