会期は終わっていますが、さる6月8日に柏のTakuro Someya Contemporary Artで、大塚聡さんにインタビューしてきました。
郊外に出現した新しいアートスペースで最初に紹介するアーティストとしてピックアップされた大塚さん。大きなスペースをたっぷりと使ったインスタレーションが構築されていて、大塚さんのポテンシャルとともに、TSCAはこれからこのクオリティを提示していくんだ、という意志も強く感じる展示だった印象が残っています。
展示の感想はこちらです。
−ベルリンにはどれくらい滞在なさっていたんですか?
「1年半弱くらいですね。ポーラ美術振興財団のグラントで1年間いたんですが、その滞独中にベルリンでの展覧会の予定が入っていたんで、在外研修終了後帰国してちょっとアルバイトして(笑)、また戻ってしばらくいたんです。最終的には一年半くらいいました」
−向こうでのリアクションはやっぱりこちらとは違うんでしょうか?
「まず歴史が違うからだと思うのですが、ぜんぜん違うように感じました。例としてはオープニングの日の動員数が違いましたね。自分の眼で見ることに対して惜しまず足を向ける人の数がかなり多いように感じました」
−身近な場所にあるアートの面白さが浸透していけば、足を運ぶ人はもっと増えてくると思うんですよね。アートが音楽や映画と比べて広がりきれない理由は、基本的にそれを楽しむ時間を自分でつくり出さなきゃいけないからだと思うんです。2秒でも観たうちに入るし、それこそ買って家に飾って一生いっしょに過ごすっていうのも楽しみ方のひとつではある。ただ、そこまでいくには、それぞれの人が感性を育てていかないと、やっぱり難しい。音楽や映画は時間を預けられるじゃないですか。それが楽しい楽しくないというのはあるにしても、最初から過ごす時間がある程度決まってるところが強みだなって思ってて。そういう視点でいえば、大塚さんの作品には動きがあって、観る時間をちゃんと提供してくれる。そういういところが素晴らしいと思うんです。
「アートがこの国で浸透して行くかどうかについては幾つかの問題があると思うんですが、今回の展示では展覧会が比喩的にシアターのように構成出来たらいいなぁとは思っていました。以前はそういうことをあまり意識しなかったんですけど、千葉市美術館でのグループ展(2002年に開催されたジ・エッセンシャル)をして以降、展覧会の考え方について少し変わってきましたね。結局のところ、それは観賞者にとって体験になる訳ですから、何か単純に感動出来たり、何かを考えるきっかけになったり、感情を喚起させてくれたり、個人の日常の中に寄り添うような体験を提供できるような構成に出来たら良いなと思っています。確かに作品の観賞には5秒でも、1分間でも3分間でもそこには個人差がありますよね」
−はい。
「でも例えば映画が1時間半とか2時間かけて1本の作品を観賞することを考えると、観賞のシステム自体に違いがありますが、一つの体験としてそれぞれに良さはあるとは思うんです。実際に展覧会に足を運んでもらって、それぞれの作品の関係性等を考慮しつつ、自分の時間で観てもらえるような空間を与えられるようにしたいなという意識があったんですよね。それからですね、展覧会で使うメディアにも変化が出てきました。1秒毎に明滅しつつ鏡面上を移動していく光や、自分で撮った写真と海外で収集した骨董フィルムの写真でスライドショーを構成したり...それぞれの作品の中に時間を導入することによって、体験する人の時間に繋がる何かを作り上げられれば面白いんじゃないかな、と。そういう展覧会を目指したかったんです。極端にいえば2秒鑑賞しただけで意識を一気に拡張できる、そういうものを誘発する瞬発力がアートにはあると思うんですよね。2秒でも、あるいは1分でも一気に違う世界に連れていってあげられる。展覧会では鑑賞者自らの時間で空間を歩き、立ち止まり、鑑賞する体験ですから、自由な時間が約束されていますね」
−アートの場合、楽しむ時間やイメージを自分でつくり出さなければいけないところが難しいところでもあって、逆にそこが僕は面白いところでもあると思うんです。つくり出さなきゃいけないから同じ作品を観ても感じ方が相当違うし、そこからインスパイアされるものにも人それぞれに差があって、その差は映画なんかと比べるともっと 幅が広いものだと思うので、そういうところがすごく面白い。そう感じるところから、僕はアートの方にどんどんのめり込んでいったというのもあったりするんです。すごく自由なんですよね。
「そうですね」
−預けられる情報が少ないぶん、イメージはいくらでも喚起できる。気分によって見え方が変わってくるのもまた面白かったり。いろいろ観てるとたまらなく楽しくなってきたりします(笑)。ところで、大塚さんの作品には、かなり未来的な要素があるように感じているのですが、例えば先端の技術などを先取りするようなイメージはお持ちなんですか?>
「僕自身はむしろ根源的で原初的なところへ向かおうとしているような気がします。シンプリティーを極めたいと思っているんです。抽象的な言い方になってしまうけど、僕にとって作品は常にその時代の風景や環境に自分自身を反映させて行く過程の余白から生まれていくものじゃないかな、と思うんですよね。そこから新しい風景を作っていくということなのかな、そんな欲動があるように思います」
−作品にLEDを使われるようになったのはけっこう前からなんですか?
「以前の作品は、鏡像の中に光の筋が一点だけ存在するものだったんですけど、そのなかに時間の概念を導入させて、鏡面上で光を移動させたいというアイデアを紙の上で具体的にし始めたのがドイツにいる時だったんです。でもその時はデバイスを制作する為の環境がないし、ドイツ滞在中に実現できるような状態じゃなかったので、アイデアだけは温めてたんです。で、帰国して、展覧会に向けて、専門の方に協力してもらってデバイスを制作して、作品のコンセプトやデバイスの条件にいちばん合う光源体としてLEDを使おう、と。LED自体はそれ以前の千葉美の展覧会で、観客の脈動がそのまま光に変換される作品にも使ってたんですけど」
−インタラクティブな感じで。
「そうですね。その時は作品に直接に触れることで成立する作品でした。実際はLED以外での制作も可能だったんですけど、この時もコンセプトやデバイスに対していちばん合う光源として選びました」
−千葉美の展示のあとにベルリンへ行かれたんですよね。
「はい」
−今回の展示の「波をかぞえる」というタイトルを、どの辺りから引用されてきたのかも気になるんですが。。。
「海辺に自ら出向いて一日波を数える...そういうお坊さんの修行の話を以前耳にしたことがあって、それが素敵な行為に思えたんですね。インスタレーションのなかに時間の概念を導入したいという考えとリンクするところがあって、タイトルとして面白いんではないかと思いました」
−作品自体が水とかをイメージしたというよりも、修行として波をかぞえる行為が、鏡の奥へと続く光の明滅を眺めている時の感覚に近いように感じられて。
「もともと作品を作る上で『全体』と『部分』の関連性に興味があって、そのお坊さんの行為自体が、時間を通して『全体』と『部分』を考察するにはそれを如実に語っているんじゃないかと思いました。今回の新作にもそのコンセプトがあったので、新作のタイトルにもしようと。そしてこのタイトルは新作に対してだけじゃなくて、インスタレーション全体としても機能するようなものにしたいと思って展覧会のタイトルとしたんです」
−その『全体』と『部分』の関係のように、背反する要素を作品のなかに持ち込んでいるんですね。他にも鏡の作品における『虚』と『実』とか。そういうイメージも大事にされているんですか?
「それは大事にするっていうか、作品を作る時にはいつも出てきちゃうんですよね。制作する上で、背反する概念が常に入れ子のように交互に入れ代わることで世界を捉えようとしているとことが僕にはあって、それが結果的に鏡と光を使うことであったりとか、直接透明アクリルの定規にマウントされた写真のイメージと定規の目盛りが同一の平面上に存在する関係とか、その辺に出てきてるかな、と思うんです」
−自然に織り込まれる感じなんですね。
「そうですね。。。あるいは逆にそういうことを強く出してしまうと面白くない気もするんです。大事にしたいのはそれら作品同士の関係性やインスタレーションに落とし込まれる時間や体験であって、そしてそこから生まれてくる言葉のほうがもしかしたら面白いんじゃないかと思うんです」
−今後、新しい作品の展開もあるんでしょうか。
「いろんなアイデアはあります。平面を基板とした表現をして来ましたが、今後はいきなり立体かも知れないですけど(笑)」
−いろいろ広がってほしいです。情報が出てくるのを心待ちにしてます!
(6/8、TSCA KASHIWAにて)
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2006年06月30日
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