吉岡雅哉 庭いじり
@GALERIE SHO CONTEMPORARY ART
東京都中央区日本橋3-2-9 三晶ビルB1F
03-3275-1008
2/4(金)〜3/12(土)日祝休
11:00〜19:00(土:〜17:00)

Masaya Yoshioka Niwaijiri
@GALERIE SHO CONTEMPORARY ART
3-2-9-B1F,Nihonbashi,Chuo-ku,Tokyo
03-3275-1008
2/4(Fri)-3/12(Sat) closed on Sunday and national holiday
11:00-19:00(Sat:-17:00)
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描かれる場面の酷さ、エログロ両面において敢えて過剰に振り切るような情景をチョイスする吉岡さんのペインティングは新しいものほどむしろその感触がさらに押し進められているような印象を受けます。特に今回の個展では、描かれる場面だけを取り上げると目を背けたくなるようなものがずらりと並んでいて空間を満たす雰囲気といったらそれはもう相当なカオスそのものだったのですが、それでもじっくりと観てしまうのはやはりそれぞれの作品のペインティングとしての深み、面白みが備わっているからなのでは、と感じられた次第。
日本家屋で繰り広げられるアバンギャルドな光景。
その場面自体はなんだかもう無茶な感じがするのですが、それを描き出すテクスチャーに意識を向ければ、濃い色彩はそれぞれが艶やかな深みが備わっていてその風合い自体に引き込まれ、またファットなストロークがより肉感的な雰囲気を生み出しているような印象を受けます。
さまざまサイズの作品が纏めて展示された一角、ひとつひとつの作品における空の青さや浮かぶ雲のもりもりとした感触、瑞々しい緑などの鮮やかな色彩にポジティブなイメージに満たされます。そのペインティングとしての面白さに魅せられるのとは裏腹に、描かれる場面が場面だけに「うわぁ...」という気分も湧いてきて、何とも言えない感触が心の中でせめぎ合います。
小さく奥まったスペースに展示されていた小品。
直接的にエロティックな女性の表情が描かれていて、その独特で絶妙なバランスの写実性に惹かれます。画面に乗るストロークにはいわゆる精緻な表現を生む動きは感じられないにもかかわらず、そのひとつひとつは気配をしっかりと捕らえていて臨場感をそこにもたらし、艶かしい雰囲気をいっそう強めます。
バラエティに富んだ場面が展開されていたのも印象的です。
夜空に浮かぶ月とその姿を映し出す水面、鳥居などが日本的なエキゾチシズムを奏で、遠くに漂う夜景や海面を描き出すダイナミックなストロークの重なり、それらが醸し出すしっとりとした、そして深い気配も、二組の男女の姿で逆にひっくり返り、どうにもシュールな場面となって迫ってきます。
ストレートに和室が描かれた作品も、律儀な構図や再現性が画面の左右それぞれに描かれる人々の姿により、何とも異様な情景となって届けられます。
奥のコンパクトなスペースでは、アグレッシブな事故場面を描いた作品が。
吉岡さんの作品に以前より登場するコンビニ前での情景、これらの場面を表出するストロークはいっそうの激しさをもって画面に乗り、凄まじく動的なインパクトが放たれています。
ひとつの情景にいくつものグロテスクなモチーフが詰め込まれ、強烈なカオスが画面から漂ってきます。しかし用いられる色彩の鮮やかさがその凄まじさを一方で加速させながらもどこかユーモラスで長閑な雰囲気を生み、独特のギャップが得難い雰囲気をそこにもたらしているように感じられるのも興味深いです。
さらに奥のスペースでは、室内の女性のポートレイトが。
そこまでの作品の激しいタッチから一転し、淡々とその情景を描いているようなテクスチャーによりどこか落ち着いた雰囲気がしっとりと漂います。ほぼ同様の構図の作品が並べられることでもたらされていた静かなリズムも印象的で。
理性の枷を外したようなアグレッシブで衝動的な場面がダイナミックなストロークで描かれることで、圧倒的なエネルギーが生み出され、またその刹那的な描写は独特のユーモアをも醸し出します。この世界観は以前より持続されていて、今回はさらに過剰さを増したような印象ですが、例えばこの先に全く普通の場面を吉岡さんが描いたらどんな雰囲気やイメージが届けられるだろう、と想像すると、それはそれでまた独特の気配が創出されるような気がして静かに好奇心も盛り上がってきます。