高山陽介「彼女のウィンク。それをみた私。」
@GALLERY HASHIMOTO
東京都中央区東日本橋3-5-5 矢部ビル1F
03-5641-6440
2/22(火)〜3/11(土)日月祝休
12:00〜19:00

Yosuke Takayama "Her wink. I saw it."
@GALLERY HASHIMOTO
3-5-5-1F,Higashi-Nihonbashi,Chuo-ku,Tokyo
03-5641-6440
2/22(Tue)-3/11(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
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ガラス越しに展示を目にした瞬間、違う作家の個展かと思ってしまったほどに、これまでの丸みを帯たどこかかわいらしさを感じさせる作風からがらりと大胆に変化した作品がずらりと。
用いられている素材を思えば紛れもなくそれらは木彫作品であるものの、「彫る」というより、鋸の刃を当てた痕跡が生々しい造形はむしろ「刻む」と表現するほうがしっくりくる、圧倒的なアバンギャルドさが備わった作品です。
あからさまに過剰に粗い仕上がり、木の塊の感触を強く残す作品。おそらくはチェーンソーを用いて作られたと思われるのですが、その道具のエネルギーを持て余すかのように細部にわたっては全くコントロールの効いていないような印象を受けます。
しかし、全体を俯瞰しているとそれぞれの造形は不思議と人の姿へとイメージの中で変換されていくんです。そしてその過程で目にしているアバンギャルド極まりない造形がだんだんとぬくもりに満ち、さらにユーモラスな味わいも醸し出たものへと変わってきます。
不器用ながらもぎりぎりのところで道具のエネルギーを制御して作り上げられる造形は、独特のスリルと迫力をそこから滲ませてきます。濃い色で彩色され、さらにニスらしき素材がべったりと塗布されてギトギトした艶やかな仕上がりが施された作品は、全体的にプリミティブな魅力に溢れ、粗野な風合いも力強く感じられます。そしてそれが人の姿に置き換わっていくにつれ、何とも言えないいとおしさも心の中に湧き出してくるんです。
鋸の痕はたっぷりと塗布される塗料とその上から被さる艶やかな素材によって、生の木材の時点でのざっくりとした質感はずいぶんと丸みを帯びて、それも造形の粗さとは裏腹なかわいらしさ、まろやかさをもたらす一因になっているように思えます。
ひときわアクロバティックなアプローチが試みられている作品。
ネットのように数本の軸が交錯する部分における、このスタイルの作品としては相当に複雑な造形に魅せられ、また何層にも重ねられる色彩がもたらす抽象性と艶やかな仕上げの奥で露になる生の木の目とのコントラストの面白さ、表面の凹凸の無秩序なリズムなど、さまざまな要素は観る側のイマジネーションに圧力をかけてきます。
奥にはひとつの台座に複数の立像が踊るように配された作品が。
ほぼ黒で覆い尽くされていながら、熱を帯びた賑やかな気配がそこに漂っているように感じられたのも印象に残っています。
複数の造形が収められていることでその空間に奥行きが生み出され、またそれぞれの関係性がこの情景に物語性も導き出します。
ものすごくチャレンジングな展開のように感じられた次第。
凄まじく粗い表面はそれぞれの造形に活き活きとした雰囲気をもたらし、アバンギャルドさに加えてユーモラスな仕草が相まって、賑々しい気配となって空間を満たしていました。