先月のフタバ画廊での個展の際に伺った、篠塚聖哉さんへのインタビューです。
MOT ANNUALから間を置かずに開催された個展。ていねいに作り上げられた空間のなかで、作品について、そして今後の展開のことも簡単に語っていただきました。
展示のレビューはこちらです。
「コンセプトは、昨年の個展や東京都現代美術館の時とまったく変わっていません。それと合わせて展示のたびに作品の楽しみ方の提案をどんどん追加していきたいと思っています。『Floating(浮遊している)』というタイトルは、観る人の視点が画面のなかに入っていった時に立ち位置が分からないような、そういう浮遊してる感じを体感してもらえたらと思ってつけました」
−例えば写真であったり、または実際に外でスケッチするように、何か具体的なものを見ながら描いているのではないんですね。
「そうですね」
−敢えて見ずにというのは、曖昧なままの状態を出したいから...。
「『見ないで描く』というよりも、『見ながら描かない』のほうが正しいかと思います。そのほうが画面にリアリティがでるんですよね。ただいろいろなものを『見て』はいるんですよ。電車の中で見た色の記憶であったり、散歩しながら目に飛び込んできた風景から『あー、あの形を使おう』というふうにインスパイアされたり...それは『見ている』わけですよね。でも、それを見ながらではなくて、やっぱり一度自分のなかで熟成させてというか、どうしてもそういった過程を経ないと色や形がツルンと出てこないので、そうやって描いてますね」
−ひとつの絵のなかに描き込まれる風景の情報は、案外ひとつの場所ではなくて。
「もう、ぜんぜん一ケ所ではないですね。いくつも入ってますし、ひとつの絵を描く前に簡単なドローイングしてから描きはじめるんですけど、実際に描く行為は相当に行き当たりばったりで、そんななかで色や形を変化させながら良いほうへ良いほうへと向かっていく感じです。以前制作した絵で『ハバロフスク(こちら参照)』っていうタイトルの作品があったんですけど、それもハバロフスクの風景というのではなくて。タイトルは描き終わったあとに『音合わせ』をする感覚でつけてます。画面から感じる音と言葉から感じる音とを合わせているんです。『音合わせ』と『意味ずれ』ですね。そのずれ方がリアルじゃないかな、と思っていいるので。例えば、大事な話を流暢にされるとその内容にリアリティを感じなかったりもするんですが、そういう感覚と近いところはありますね」
−敢えて額装せずに、上下をマスキングしただけの絵を紙のまま展示したりするのも、横の広がりを感じてほしいという意図があるんでしょうか。
「そうですね。雑誌のレイアウトや本の装幀からヒントを得ているんです。そういうものを利用したり。あとは、自分の本質っていうのは基本的には変わらないものだと思っているので、見る人にそれを楽しんでもらうための『音合わせ』であったり、レイアウトだったり、こういった展示の具合も含めて楽しみ方の提案をすることで本質を変えずに『入口』を増やしていこう、と。ポピュラーなものが作りたいというのもあって、楽しみ方はたくさん提案したいと思ってますね」
−『ポピュラーなもの』っていのはちょっと意外な言葉って気がします。
「あ、そうですか」
−僕の観た印象だと、どちらかというと『内に内に』っていう感じだと思うんですよね。
「『内に内に』と向かっていった結果、ツルンと出てきた色や形をどう楽しんでもらうかなんですよね」
−内に入り過ぎるとどうしても世界がすごく狭くなってしまいがちですよね。ただ、それを観る人に楽しんでもらわないとエンターテイメントとしての絵画の広がりはないと常々思うところがあるのですが、この面で篠塚さんの作品は、おっしゃったようにタイトルと作品のずれであったり構図であったり、そういうところに作品の世界に入ってきやすいきっかけを作っているんですね。そこから楽しんでもらおうと。
「そうですね。もちろん賛否両論好き嫌いがあっていいと思うんですけど、面白いって感じてもらうための入口は提供できると思うんです。たとえ作品が頑なに内面に向かったものであっても、観る側の入口を閉ざすような感覚は持たないように意識していますね」
−抽象画を描いているという感覚はないんですか?
「それはないです。かといって具象画を描いているという気持ちもないですけど(笑)。画面に描いたものに反応して描いてるっていう感じです」
−もともと岩絵の具を使われていたんですよね。
「そうですね。ただ大学1年生とか2年生くらいの時までで、それ以降はいろんな画材を使ってます」
−MOT ANNUALでは日本画の括りで取り上げられたんですよね。篠塚さんがもともと日本画の方っていうのは知ってはいたんですけど、オイルパステルの作品であっても、日本画をなさってた方が描く絵という点で、あの中でぜんぜん違和感を感じなかったんです。
「どういうところが?」
−なんでしょうね、えーと...。
「僕の作品を展示していて、日本画出身ですって言うと、『あ、だからこういう掛け軸っぽい感じなんですね』とかはよく言われたりしますね。それが、観る人にとって楽しみ方のきっかけになればぜんぜんOKなんですけど」
−多分に先入観というか、事前に知っていたことが大きいとは思うんですけど、色の使い方に日本画的な感じがするんですよね。
「それはありますよね、自分で描いてても色の重ね方には『見たことがある』日本画的な要素があるような気がしますね」
−仮に、オイルの方って聞いていたらそういうふうに見えちゃうのかもしれないんですけど(笑)。
「そうかもしれません(笑)」
−でも、篠塚さんなりに日本画から積み上げてきた経験が今、こういう形で現れているような感じもするんです。
「積み重ねという点ではそうですね。一夜漬けではなく、積み重ねからしか自分の色と形がツルンとでることはないと思っているので。ただ、学生の頃から絵は描いてましたけど、日本画を描いているという意識はまったくなかったですね」
−しばらくはこういう画風の作品を制作されるんですか?
「少し変化はあって、新しい作品の方が映像が具体的になってきているんですよね。今の形態の作品はしばらく作り続けるんですが、それとは別に次回の展示のために120号の作品を制作しています」
−篠塚さんの大きい作品は観てみたいですね、ぜひ。
「大きい作品のほうがより本質を感じてもらえると思います。次の個展は来年の秋くらいを予定ですね。楽しみにしていてください!」
−1年以上先ですが、待ち遠しいですね。楽しみにしてます!
(5/27、フタバ画廊にて)
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2006年06月11日
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インタビュー待ってました。
TBもありがとうございます!
>見ながら描かない
納得!
>大きい作品のほうがより本質
まずは見てからのお楽しみということですね!
どのような感じになるのでしょう…。
篠塚さんの次の展示はずいぶん先ですが、ホントに待ち遠しいですね!