大島梢展「星図」
@ミヅマ・アクション
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
03-3793-7931
1/12(水)〜2/12(土)日月祝休
11:00〜19:00

OSHIMA Kozue Exhibition "STAR ATLAS"
@Mizuma Action
1-3-9-2F,Kamimeguro,Meguro-ku,Tokyo
03-3793-7931
1/12(Wed)-2/12(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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ミヅマ・アクションでの大島梢さんの個展です。
重厚な印象だった前回の個展の流れから考えると、そこから闇のなかを一気に駆け抜け、辿り着いた世界では閃くように時間が交錯、ポジティブで爽やかなエネルギーが生み出され、鮮やかな透明感が朝の澄んだ空気に触れた瞬間のような清々しい高揚を届けてくれます。
入り口を入って正面に展示された今回出展されている中でもっとも大きな作品、目がそれを捉えた瞬間から一気に意識が引き寄せられ、吸い込まれます。
眼前に壮大なスケールで広がるファンタジー。このサイズの画面にして、一切の隙を見せない圧巻の密度は隅々まで徹底され、それがひとつひとつのモチーフの存在感に凛としたしなやかさをもたらします。その緻密なタッチで描き切られた情景はどこまでも遠くへと続き、おおらかな空間にうねりや歪みを生み出しながら天地創世を連想させるようなエネルギッシュな気配を伴って観る者の感性に力強く迫ってきます。
そして繊細なタッチが奏でる色彩の軽快さも嬉しいです。これほどまでに荘厳な風景が現されていながらも、そこにいわゆる圧迫するような重たさはなくて、むしろ上昇気流が湧き起こり、さまざまなイメージもそれに煽られてぐんぐんと浮遊していきます。その気配を生んでいるのも、すべての要素が線で描かれていることでその隙間から覗く下地の白の清々しさがしっかりと保たれているからのように思えます。
夜を連想させる情景も、暗がりから煌々と湧き立つ明かりの瑞々しさが画面の随所から奏でられています。ふわりと灯るたくさんの光はさわさわと風にそよぐ葉が響かせる繊細なノイズのイメージとともに清々しく届けられ、心地よい静けさが横たわる無垢な幻想世界に意識が導かれていきます。
一転、曼荼羅を彷彿させる作品は濃い世界観が印象的です。
力強い生命の感触が描き込まれるひとつひとつの緻密なモチーフからもたらされます。水晶のような美しい大小の円のなか広がる情景はまるで生き物の進化の過程を辿り、振り返っていくような壮大な物語性を思い起こさせ、その一方で本や紙といった人為的な要素は理知に溢れる何らかの暗喩のように感じられます。大島さんの色である青をすらりと織り込みつつ、絨毯の柄のようなパターンにおける赤や縁の部分の黒などひときわしっとりと渋い色調で整えられた画面には淡々とした気配が備わり、それが知性に刺激をもたらしてくれます。
メインスペースに並ぶ小品のひとつひとつにも目を奪われます。
植物と蝶とのハイブリッド。シンプルにひとつの構図が画面の正面に描かれます。洗練されたタッチは鋭さをたたえながら高い密度を保ち、どこか色香をも彷彿させながら、それぞれの画面に独創的な凛とした美しさを紡いでいます。
奥のスペースにはモノクロームの作品が。
ちいさな画面でありながら、さらに複雑に破天荒とも評せるほどに大胆な世界が展開され、それが何とも痛快です。
線路の上に佇む車両、その上に創造されるダイナミックな世界。
機関の描写からは細密画の面白さが溢れ、メカニカルな表現の圧倒的な格好良さに魅せられます。自然と人工物とのハイブリッドはそれだけで何かの深い暗喩が込められているようにも思え、それでいて丁寧に描き上げられるモチーフの密集と唐突な要素の連結にはエンターテイメント性が貫かれ、それだけで想像は膨らみ、ひたすら持続する痛快さにも感嘆させられます。
もっとも小さな作品のひときわ抽象的なアプローチも興味深いです。
菊の花びらのようなモチーフが有機的に溢れ、その空間を満たすほんのりと艶かしいうねりが新鮮です。
ちょうど市谷田町で開催されていた池田学さんの個展と入れ替わるようにして始まった大島さんの個展、立て続けにお二人の展示を拝見することができ、細密表現という共通の面白さに感じ入るのとともに、それぞれが男性的、女性的な世界観を備えているようにより強く感じられたのも印象的です。