阿部未奈子展
@BASE GALLERY
東京都中央区日本橋茅場町1-1-6 小浦第一ビル1F
03-5623-6655
12/16(木)〜2/10(木)日祝休
11:00〜19:00
Minako Abe exhibition
@BASE GALLERY
1-1-6-1F,Nihonbashi-Kayaba-cho,Chuo-ku,Tokyo
03-5623-6655
12/16(Thu)-2/10(Thu) closed on Sunday and national holiday
11:00-19:00
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BASE GALLERYでの阿部未奈子さんの個展です。
もう、圧巻です。これはぜひ実際に観てそのスケール感と高密度の展開を体感してほしいと思う次第。
マスキングを駆使したクリアな配色で巧みに歪みを施した風景を描くお馴染みの展開は今回もしっかりと保たれ、さらにそこに大胆な歪みと色面構成が繰り広げられ、壮大さ、爽快さがいっそう増しているように感じられます。
阿部さんの作品としては比較的オーソドックスなスタイルのものでも、緻密な階調の色面が積み重ねられて聳えるように広がる奥行き感を目にしてイメージも一気に膨らみます。
3面の画面で構成される超大作はとにかくそのスケール感が尋常でない。。。
これまでで最大のサイズで表現される歪んだ風景、この広大さをして隅々まで一切の隙のない丁寧な仕上がりには思わず溜め息も漏れるほど。
パノラマ風の展開がその壮大さをさらに強調し、また風景に歪みをもたらす力強い感触もいっそう際立って、観る側の感覚にも作用しぐんぐんと意識が呑み込まれていくように感じられます。
全体を俯瞰しての圧倒的なスケール感に加え、それぞれの画面を分割して眺てもそこに数多くの見所を備えていることも嬉しいことこの上なく。
右端の画面、その右側の水平方向に伸びる多彩なグリーンの刹那的な気配や画面上方のカオティックなほどに複雑な色面構造、洋館の外壁の梁や柱が数学的に負荷がかけられて精緻な歪みがもたらされているような部分、一方比較的整然とあるままに描写される屋根の並びなど、ダイナミックな歪みがかけられた部分とそのまま残される部分とのコントラストが強烈です。
中央の画面では、まず画面の左下にわずかにある赤に視覚が捕われます。画面をグリーンがほぼ覆い尽くしているような状況にあって、その赤の鮮烈さは異様なほどに際立って放たれているように思えます。
中央部分だけあってか水平方向に引き伸ばされるような歪みは抑えられているものの、淀むように広がり覆う濃い緑のなかに明るい鮮やかな緑が鋭くインサートされていくような画面上方の構成の重厚さと加速する気配感が混ざり合うような風合いにも惹かれます。
左端はなんといっても広がる水面の青に魅せられます。
色の割合も他の画面と比較しても緑とそれ以外の色彩の比率が緑に偏っておらず、並ぶ画面のなかでもそのバランスがひときわ斬新に感じられます。
そこに架かる橋がまた痛快、俯瞰の視点で描写されるその細いラインは画面全体に施される歪みによる付加がかけられて揺らめき、ギリギリの緊張感でその構造を保っているようなスリリングなイメージが湧いてきます。
流れる大河を彷彿させる青の色面は画面の上の方に向かうに従ってそこに濃い影が被さり、横たわる景色が遠くにいくほどにより重厚になっているような感じの展開も圧巻です。
横長に2枚の画面を連ねた作品は、全体的に暗めのトーンが印象的です。
明るく広がる空の青の爽快さが、鬱蒼とした情景の重々しさを和らげつつ、そこに横たわっている深い気配の重厚さも際立てているように感じられます。
また、大きく広がる深い緑が町並みのさまざまな色彩の存在のアクセント感も強めていて、その部分での高密度の色面構造の面白さもさらに鮮烈に伝わってきます。互いに複雑に絡み合いながら、それでも互いの色自体は浸食しないシャープでクリアな配色に引き込まれます。
配色のバランスが極めて大胆な作品。この奇妙というか、むしろ謎めいても感じられるような展開が醸し出す異様な迫力は強烈です。
画面下部を覆い尽くす黒に近い緑。ひとつの色彩がここまでの広さで表出されていること自体が珍しく、しかもその色の暗さも相まって、他のさまざまな要素の高密度さや調度の鮮やかさもいっそう強く感じられます。
そして、そのダークな色面にするすると入り込む右下の赤とブラウンの展開がアクセントとして実に良く効いています。歪んだような感じは伝わってくるものの、もとが一体何なのかもはや判別不能、完全に抽象性が立ち上がっていて、その気配の異空間性にも意識が引き寄せられていきます。
それぞれ相当なサイズの画面で、大作がずらりと配された空間はそれだけで圧巻、それらを俯瞰してその壮大さに包み込まれるのも気持ちよく、さらに複雑な歪みで随所に生み出される緻密な展開の面白さにも魅せられ、さまざまな発見や刺激を得ていくのもとにかく楽しいです。
そしてペインティングとしての「美しさ」にも感じ入ります。一切の妥協が排除され、ひたすらストイックに隅々まで精緻に仕上げられた画面の洗練された感触も嬉しく思えます。