もともと日本画をなさっていた感性も随所に活かされ、さらにユニークなオリジナリティ溢れる風合いを展開される阪本トクロウさん。今月27日までで個展が開催されているギャラリー本城にて、お話を伺ってきました。
今回の「阪本トクロウ "chronic pain"」のレビューはこちらです。
−こういう風景を描かれるようになったきっかけは...?
「最初、学生の頃に抽象画みたいなものも描いていたんです。観てくれた人ができるだけいろいろなことを想像してくれるように、広く面をとって、その色面で想像させるように描いていたんですけど、なんとなく自分でも訳の分からない方向に行きそうになっていたんですね。それで、個人的な要素を少し入れて、風景画として描く、という方向に変わっていったんです」
−観る側に預ける部分、想像してもらう部分は抽象画の頃から今もそれほど変わりはなくて。
「そうですね」
−ただ抽象画のままだと、どうしても分かりにくい方向へ向かっていってしまう... 。
「すべての人に分かってもらおうとしてもぜんぜんそれは有り得ないっていうことに気付いて、そこで一旦、思考を停止してしまったというか...。何をしたらいいのか分からない状態になったんです。それで、風景であるとか具象物を加えていって、概念的な頭で組み立ててみて構成している、という感じです。絵の中の空間自体は実際の風景というのではなくて、概念空間というか...アトリエの中でほぼすべて考えるんですよ」
−絵を描くために外に出るということはあまりない。
「外を歩いていて『あ、これだ』と思ったりして、そうやって見つけた風景をそのまま絵にするというのはほとんどないですね。アトリエで、撮っておいた写真を見ながら頭の中で組み立てていくんです」
−風景のコラージュのような感じ。
「コラージュしたり、余計なものはなくしたりと操作して。写実の部分は写真の形、実際の形をほとんどそのまま描いています。その『物』自体の魅力を描きたいということでは必ずしもないので、現在は写真に撮ったものを利用しています。形とかはほとんど変える必要もないですし、むしろ変えたくないってところがあって」
−あとは画面の構成で、何もない部分を広く残したり、という感じで。
「色も形も、技法についても普通のやり方で。そのうえで、余計なものをなくして描いていくっていう表現方法ですね」
−特別なことは何もやらないで、どこまで観る人のイマジネーションを喚起できるものを構成できるかって感じでしょうか。
「そうですね。片方がイマジネーションを喚起する、もう一方は思考を停止させるようなもので」
−あ、なるほど。思考を停止させるっていうのは分かる気がします。
「『無』にさせる、というか。何もない面は、本当に何もない。ぼかしもほとんど入れないで」
−何もないところはフラットに、描くところはそのものをしっかりていねいに描いて、という感じなんですね。抽象を描かれてた頃は岩絵の具だったんですか?
「岩絵の具が中心でしたね。まず作品が今みたいな感じに変わって、それを表現するのに岩絵の具は合っていなかったので、アクリル絵の具にしました。岩絵の具の持っている素材の力みたいなものが不必要だったんですね。岩絵の具の粒子の輝きであるとか...素材の存在感がちょっと強すぎて。岩絵の具を使うんだったらもっと素材の面白さを活かさなければ、と思ってるんですけど、今の絵ではそれは必要ないんです。アクリル絵の具は同じ水彩なので割りと違和感なく移行できました。最近はアクリル絵の具よりアクリルガッシュのほうが多くなっています。艶のない質感が岩絵の具や泥絵具に近いところもあって気に入っています」
−絵の大きさというのも気になるんですけども、パネルの大きさが構図に影響したりするんですか?
「やっぱり、画面が大きければ広い空間で展示されて、その空間で観てる人を包み込むくらいの大きさが伝わると効果的なので、そういう圧倒的な茫漠とした空間性のある作品になったり、小さい画面だとそういうことができないので、より構図の面白さを見せていったり。画面構成なども含めた美意識は、見せ方や大きさによってけっこう違ってきます」
−阪本さんの絵を拝見していると、知らないはずなのに知っていた風景を思い出すような感覚があるんです。それでいて逆に未来的だったりもする。どの時間、時代を思い浮かべて絵を観ているのかが曖昧になっていくのが面白い感じがします。
「僕の絵の場合、モチーフは『どこにでもある』っていうのが選ぶ基準のひとつで、だから観終わったあともきっと似たようなものを目にすることもあると思うんですね。普段から見る風景として存在していると思うので」
−人が登場しないのも独特ですよね。
「人を描くと、その感情であるとかがすごい現れちゃって。僕自身も人を描くとそれに気持ちが引っ張られてしまうし見ている人もやはりそこに感情移入しちゃうので、それは排除しています。でも、人がいた気配を感じさせるものは多く登場するんですけど」
−なんだか『お休みの日』みたいな感じがするんですよね。
「昼間なんにもしていない、無職の人のイメージかもしれないです。真昼に公園に座って何もしていない人が見る風景の感じですよね」
−たしかにそういうイメージがありますね。いらないものがどんどん外されていていることで意識が向かっていないところが全部なくなっている感じがして。はじめて拝見した時も、不思議と自然にすっと絵の世界に入っていった感じがしたんですよね。細かく描かれているところがあって、あとは何もない色面、そのふたつの要素がひとつの画面に収まっているギャップが気持ちいいな、という感じがしたんですよね。
「何か物を描いているところは、作品世界に入るきっかけとしてのものなので。コンセプトの一部として平面的なところはありますけど、画面の中に入り込ませるような絵作りにはなってると思います」
−すごくキャッチーな絵だと思うんです。分かりやすいところはすごく分かりやすい。ただそれだけで終わってない感じがして、描き過ぎず、むしろいらないものはすべて外している潔さが気持ち良かったり。しかもその潔さに鋭さはなくて、先ほどおっしゃった、ひとりで公園でぼーっと見てる感じというか、そういう緩い気持ちになってくるんですよね。阪本さんの絵からはたぶん独特の時間が流れているんでしょうね。アートって結局その作品とどう時間を過ごすかってことだと思うんですよ。そういうった意味では阪本さんが描く絵は他の人にはない時間の流れというか、特別な現実逃避じゃない形で日々のテンションから解放されるような感じがして。だから展示の度にそういう風景に出会えるのが楽しみだったりするんです。
「例えば外国から日本に帰ってきた時の空気っていうか...あとは、のんびりしているというか。実際はそうじゃないんですけど、その緩い感じのなんともいえない時がある。そういうのを表現してみたいというのも今の作品の方向性へのきっかけとしてありましたね」
−今回の展示も、絵の配置がけっこう考えられている感じがします。
「展示場所によって最適な、絵を観る『距離』がありますよね。ここでは観る人は至近から1m以内くらいで観ると思います。展示の仕方もずらっと横に並べたり、他の作品との関係でも観てもらえるようにインスタレーションしてます」
−空の絵の上に道路の絵があるという並べ方にも、不思議と違和感がないですね。
「これは、道路のを下にすることも考えたんですけど。このグレーがあることによって他の色をきれいに見せるとか、そういう効果もあります。ぱっと観た時の抽象的な色のイメージは、あれがあの位置にあるのとないのとではまた別の見え方になると思います。個展で主に発表しているので1枚ですべてを見せるというよりも全部の作品で表現していくような展示になってきています」
(5/13、ギャラリー本城にて)
「ULTRA002」、多くの皆様のご来場ありがとうございました!
エマージング・ディレクターズ・アートフェア「ULTRA002」
10/29(木)〜11/3(月祝)11:00〜20:00
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こちら↓で展覧会のレコメンドを書いてます!基本的に毎週月曜日朝更新!
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***美術犬(I.N.U.)第三回シンポジウム開催のお知らせ***

「美術犬(I.N.U.)」第三回企画シンポジウム『批評』
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パネリスト:粟田大輔、沢山遼、土屋誠一
司会:雨宮庸介
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2006年05月20日
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