ヤノベケンジ個展「レヴィテイション」
@山本現代
東京都港区白金3-1-15-3F
03-6383-0626
11/6(土)〜12/4(土)日月祝休
11:00〜19:00

YANOBE Kenji 'Levitation'
@Yamamotogendai
3-1-15-3F,Shirokane,Minato-ku,Tokyo
03-6383-0626
11/6(Sat)-12/4(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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山本現代でのヤノベケンジさんの個展です。
ヤノベさんの作品というと僕は一連の「トラやん」のシリーズしか拝見しておらず、その印象が強かったこともあり、今回の個展で展開されている世界観は相当に衝撃的で。
重厚さと神々しさとが混ざり合い、緊張感を伴った迫力がそれぞれの作品から届けられ、その気配に眼前で起こっていることに対する驚きも加わって、得難いイメージに一気に蹂躙されるような感触が痛快です。
エレベーターを降りてまず目に入ってくる、小さな台座の上のショーケース。
・・・浮いてる!
いや、詳しくは分からないですが理論的には可能なことなのだと思います、しかし眼前でその状況を見せられるとやはり驚かざるを得ず...。
赤い目、手のひらに金色の球体を乗せ、座禅を組む姿、メタリックの重厚な色合いも相まって、小さなサイズでありながら充分に力強い存在感を放っているように思えます。
続いて現れるショーケース、こちらもやはり浮いてる、しかも回転しています。
金属の板のパーツが組み込まれ、表面に鋭いトゲをもつ球体の構造の重厚感、それだけでも充分に魅せられます。そしてそれが一定のスピードを保ちながら淡々と回転していて、その無機的な動き自体にも美しさを感じます。
そして、宙に浮かぶ巨体が・・・!
白い枠の天井部分に設置された電磁石に引き寄せられる巨体、下方に取り付けられたワイヤーのピンと張った状態が、そこに引き起こされている磁力の凄まじさを現してるように思えます。
最初に登場した座禅を組む姿がさらに巨大化したような造形。その表面の錆びたような風合いや繋ぎ合わせられる金属板の仕上がりの生々しさなど、サイズの大きさと作り込まれる質感からさらに濃厚で重厚な気配がもたらされ、その巨体が上方の磁力に引き寄せられて浮かんでいる事実がいっそう強烈なインパクトとなって迫ってくるように感じられます。
また、上部の磁石は前後にふたつが設置されていて、数分ごとに前後の磁力が入れ替わり、その瞬間の巨体の移動の迫力も尋常でなく。。。
ドローイングも数点展示されています。
描かれるイメージのほんのりとかわいらしい感触にも惹かれ、不思議とふっくらと和やかなイメージが漂ってきているようであったり、どこか宗教的な深い気配が醸し出されていたりと、平面ならではの世界観が紡ぎ出されているように感じられるのも印象的です。
創り出される独特の世界観、「トラやん」でのユーモラスさは抑えられ、ストイックな雰囲気が空間全体に横たわり、その重厚な気配に圧倒されます。
また、テクノロジーを駆使して提示される浮遊の緊張感にも感じ入る次第。単に「こういうことができる」ということの提示に留まることなく、そのことによってひとつのファットで分厚い物語性、深遠な世界観が築き上げられているようにも思えます。
何よりとにかく、どうしようもなく格好いいインスタレーションが構築されています。神々しさと未来的な感触、素材の質感の錆びた風合いから導き出されるアバンギャルドさと儚げな気配...さまざまな要素が交錯し、混ざり合って、アブストラクトな世界が立ちのぼっているように思えます。