岩崎貴宏「Phenotypic Remodeling(フェノタイピック・リモデリング)」
@ARATANIURANO
東京都中央区新富2-2-5 新富二丁目ビル3A
03-3555-0696
10/22(金)〜12/4(土)日月祝休
11:00〜19:00
Takahiro Iwasaki - Phenotypic Remodeling
@ARATANIURANO
2-2-5 -3A,Shintomi,Chuo-ku,Tokyo
03-3555-0696
10/22(Wed)-12/4(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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ARATANIURANOでの岩崎貴宏さんの個展です。
岩崎さんの作品を初めて拝見したのは2007年秋から2008年初春にかけて開催された六本木クロッシングで、天上から吊り下げられた割り箸でできた塔寺にまず驚かされ、さらにその場に雑然と置かれていた布に一瞬戸惑い、近づいてそこに糸で鉄塔が建てられていてさらに驚かされるという・・・とにかく相当に大きなインパクトを受けたのですが、今回の個展でもその緻密な造形による圧巻のインスタレーションが繰り広げられ、ギャラリーに足を生み入れた瞬間にガリバー的巨人感覚に通じるワクワクした高揚感に一気に包み込まれます。
入り口から右手に広がるジオラマ風のインスタレーション、これがとにかく凄い!
さまざまな小さな看板がずらりと立ち並び、ひとつの風景が創り上げられています。もとより目を惹くようにデザインされているロゴがひとつひとつ掲示され、そのかわいらしさに感嘆させられます。
すべては雑誌や新聞の折り込み広告などから拝借されたものだそうで、それらを用い、さらに岩崎さんの地元である広島に実際にあるものを再現しているとのこと。岩崎さんから伺ったお話では「都市計画が東京のコピー」といった印象だそうで、目に馴染んだロゴが溢れるのもなるほど、と思う一方で、ローカルなものも紛れていて、残念ながら広島は中学の修学旅行以来ご無沙汰の僕には分からないものの、その辺りの臨場感がしっかり織り込まれているところにも唸らされます。ただジオラマ的な風景を再生するというところに留まらず、しっかりと現実とリンクさせることでそれによってさまざまな想いがよぎり、イメージもいっそう豊かにじんわりと広がっていくように思えます。
で、その外れにさり気なく立つユニクロの看板。
実際のタグから切り抜かれているわけですが、その小ささ、仕事の丁寧さに大いに感嘆しつつ、よくよく見るとプラスチックの紐の部分がカットされていないのに気付かされ、「えっ・・・?まさか・・・?」って感じが結構ツボで。。。
その造形自体に唸らされる、栞の繊維を解してその1本1本をパーツに見立て、緻密に構築されたクレーン。紐で結われて捨て置かれる文庫本の束の塊に新しい時間が生まれているような、どこかファンタジックな風合いも感じられるのも印象的で、クレーンの緻密でシャープな造形の格好良さや焼けた古紙のノスタルジックな気配とともに独特の雰囲気を醸し出しているように思えます。
さらに、胸ポケットに縫い込まれたロゴマークを用いたコカコーラの看板が。
解された糸によって鉄塔もさり気なく建っていたりして、ひとつの空間が創り出されているように感じられるのが痛快です。
実際のゴミ捨集積所にもありそうな青のネットにもさまざまなかたちの鉄塔が!
ペットボトルがなどが詰め込まれたゴミ袋に被せられているあたりも、その情景を現実と繋ぐ感じが提示されているように思え、それがいっそうの深みを感じさせてくれます。
赤と白のストライプのシャツには、東京タワーに代表される実際に目にすることもある赤と白のツートーンの鉄塔が聳えます。
続いては結束ベルトでつくられた歩道橋。
階段部分はもちろん、手すりや街灯に至るまで実に丁寧に再現されていて、その臨場感におおいに魅せられます。
実際に手にすると相当に硬い素材感も活かされているような印象で、模型、素材両面における構造物としての硬質な感触もしっかりと伝わってきます。
ここまででも充分に驚嘆させられているわけですが、よくもまあ、とさらに唸らされるのがこちらのマクドナルド関連2点。
ストローのパッケージって相当に薄い紙が用いられてますけど、それを敢えて使ってプリントされているロゴからミニチュア看板が作られているあたりの凄まじい繊細さに高揚させられ、そして茶紙袋のロゴの看板は実際に見るとこれまたちょっと嬉しくなるような、しかし妙にのんびり淡々とした仕掛けがあったりして痛快で。
木の枝の表皮を削って作られた作品。
削られた表面の爽やかな木の色調、角ばった仕上げのシャープさに見入りつつも、俯瞰しただけでは何なのかよく分からないのですが...
その表面には文字やロゴが。
枝と同じかたちをした路線にさまざまな情報が施され、そのユーモアがまた堪らなかったり。。。
そして思わず見逃してしまいそうなほどに隅っこにさり気なく置かれる鉄塔、実際の髪の毛を用いて創り上げられているとのこと。髪が同じ太さの素材としてはもっとも強いという話を聞いたことがあるのですが、その強靭さが結構強く感じられるのにも圧倒されます。
展示されている作品はその構造の緻密さと造形の繊細さだけでも充分に見応えがあり、唸らされるのですが、そのいわゆるテクニカルな部分、工芸的な面白さだけに留まらないコンセプチュアルな部分が強くその世界観に横たわっているように感じられることに圧倒されます。
用いられる素材はほぼ全て使用済みのもの、新聞広告も一度配達されていたり、結束ベルトも捨てられたものから採取されているそうで、すべては一旦実社会を通過し、それぞれ何らかの形で末端のユーザーと関わっているということを意識すると、その深みにさらに感じ入る次第。看板のロゴなどもおそらくインターネットなどから採取すればもっと楽なはずなのですが、敢えてそうしないあたりに尋常でないストイックな姿勢が感じ取れ、そしてそのことにより、少なからず注がれるユーモアにもあたたかみと面白味が増して表出しているようにも思えるんです。
かわいらしさと深みとが豊かに満ちる空間が創り上げられています。
ぜひとも直にご覧いただきたい展覧会です。



