白土舎常設展示
@白土舎
愛知県名古屋市中区錦1-20-12 伏見ビル地階
052-212-4680
11/2(火)〜11/30(火)日月祝休
11:00〜19:00
Hakutosha collection
@Hakutosha
1-20-12-BF,Nishiki,Naka-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken
052-212-4680
11/2(Tue)-11/30(Tue) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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感謝を込めて。
長きに渡って名古屋の現代美術を支え、紹介されてこられた白土舎の最後の展覧会、これまでこのスペースで個展でフィーチャーされたすべてのアーティストの作品が一堂に会し、このギャラリーのどっしりとした本格の風合い漂うディレクションに引き込まれます。
設楽知昭さんの2009年制作の油彩作品「海豹」。個展で最後に紹介されたアーティストで、この画面を拝見すると個展も観たかったなぁ、とあらためて感じた次第。濃密な色彩とマチエルが渋く深い気配を導き出しているように思えます。
鷲見麿さん、1977年制作のパステル画の小品「畑」。小さな画面ながら、黒のマット紙に収められることで緊張感がもたらされ、そしてどこか儚い気配に魅せられます。
生川晴子さんの油彩小品2点「ひとつまみ」「仄明り」。このたゆたうようなゆるやかさを備えるタッチがゆったりとしたイメージを届けてくれます。
もっとも新しく紹介され、今年個展を開催された鋤柄ふくみさん。その展示を拝見し、もっとも印象に残った作品。もう一度拝見できて嬉しい限りです。
岩城直美さんの2000年制作の油彩画「TV-Geese-」。岩城さんの作品はART@AGNESで拝見していて、素朴な構図にしっとりと立ちのぼる重厚な気配が印象に残っています。こちらの作品は10年前ということもあり、その画面の風合いに渋みももたらされているように感じられます。
ここで知ったアーティストのなかでもひときわ思い入れが深い坂本夏子さんの2007年制作のペインティング「Tiles, 髪」。タイルを描いた初期の作品なのだそうで、この時期はタイルは整然と描かれていたのだなぁ、と興味深く思った次第。その一方で、風呂から半身を露にする女性の後ろ姿に近作における独特のテクスチャーの気配が色濃く感じられます。
Charles Worthenさんの1996年作品「HAPPY SHAFT」。丁寧に編まれた筒の鮮やかな色彩が展示に軽快なアクセントをもたらしているように思えます。
先日のBASE GALLERYでの個展も印象的だった高橋信行さんの1997年作品「隅田川」。パターンの配置と色彩の解釈に現在の作風と通じるユニークさが感じ取れるように思えます。その一方で、配色のクールな風合いも印象的です。
松井紫朗さんの金属を用いた立体作品。光沢の圧倒的な美しさと床に静かに転がされている佇まいの落ち着いた風合い、ひとつのスティック状の造形の中にシンプルな要素が整然と注がれ、不思議な気配を醸し出しています。
森北伸さんの2002年のドローイング作品。イメージのコンセプトのようなものが描き留められたさまざまな絵がぎっしりとケースの中に収められ、軽やかなカオスがそのなかに満ちているように感じられます。その臨場感が今なお、新鮮さを伴って静かに醸し出されているようにも思えます。
藤城凡子さんのタブロー。かわいらしいキャラクターの無垢で、どこか淋しげな存在感に静かに引き込まれます。鮮やかな青の清々しさと、画面中央の地球のようなモチーフの壮大さなど、不思議な雰囲気が創り上げられているように思えます。
そして、奈良美智さんの1999年制作の小作品が、事務所の上の壁にさり気なく飾られ、ふわりとあたたかな気配を醸し出しています。
僕は最後の数年しか関われなかったのですが、その間だけでも充分にその独特の深く穏やかな視線で選び抜かれた力強いクリエイションを拝見することができ、充実したたくさんの得難い体験をさせていただきました。重ね重ね感謝致します。
このスペースで定期的に展示が拝見できなくなるのは残念なのですが、何かかたちを変えてぜひとも美術界と関わりを持ち続けていただきたいと切に願います。