山口晃展「いのち丸」
@ミヅマアートギャラリー
東京都新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2F
03-3268-2500
10/27(水)〜11/27(土)日月祝休
11:00〜19:00
YAMAGUCHI Akira Exhibition "Inochimaru"
@MIZUMA ART GALLERY
3-13-2F,Ichigaya-Tamachi,Sinjuku-ku,Tokyo
03-3268-2500
10/27(Wed)-11/27(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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満を持してのご登場!
ミヅマアートギャラリーでの山口晃画伯の個展でございます。
市谷田町に移転後初となる今回の個展では、「いのち丸」なるヒーローを主人公に据え、波瀾万丈魑魅魍魎抱腹絶倒東西南北和差積商焼肉定食な物語が展開されているのでございます。
重たい扉を開けるといきなりふわりと浮かぶ光が出迎えてくれるのでございます。
そのふわりほんのりと広がる光に近づくと、花弁のような影が白の壁に浮かんでいるのでございます。
・・・ていうか...
壁に描いてあるだけなんですけど!Σ( ̄口 ̄;)
いやはや、絶妙。
早速画伯マジックに心が絡めとられてしまった次第でございます。
さてさて、この広い空間に巧みに建て込まれたる動線に従いまして歩みを進めてまいりますと、おっといきなり、早速のいのち丸とのご対面っ!
・・・グロい!Σ( ̄口 ̄;)
・・・グロすぎる!Σ( ̄口 ̄;)
いのち丸、その御名前からしててっきりかわいらしい御童子を想像しておりましたところ、随分とまあご立派な...。
そして素手ですか、敵の面の皮ひっぺがしてそのなかのメカメカしい何やらかんやらを露にし、そこでどっしり見栄を切る!
への字にきりりと結ばれた口許、こんもりとふくれた鼻筋、往年の杉サマも顔負けの鋭い目。流麗可憐な稜線は肢体隅々の筋肉に込められた力を豊かに現し、また壁伝いに垂れる粗相や上方へと飛び散る黒の飛沫の生々しさも相まって、尋常でない気配に賊の眼球さながらに圧倒されてしまうのでございます。
引き続いては真っ黒の画面が。これはまた大胆な...。
しかして山口画伯のなさること、そこには何かがあるに違いなく、心眼を凝らして対峙するのでございます。
そうすると見える見える、その澄んだ黒のなかに力強いいのち丸の勇姿やお袋の面影や娘の艶姿やギャラリーのならびにあるいつも行列ができてるラーメン屋のまだ見ぬおそらく絶品のラーメンから立ちのぼる湯気や年末ジャンボ宝くじの当たり番号やそれはそれはいろんなものが都合よく浮かんでくるのでございます。
今度は未来都市を彷彿させる俯瞰図が。
美しい円を重ねたようなおおらかで洗練された道路計画にほれぼれわくわくと刷るのでございます。
そして随所に書き込まれる謎の文字、きっと示唆に富んだ言葉が記されているに違いないのでございます、決して「お腹空いた」とか「メモ、明後日納品」とかいうのではあり得ない、と信じるのでございます。
・・・と明るく華々しい未来像を見せられた刹那、今度は桃源郷が。。。
いやぁ、渋い!渋すぎる!
このぼんやりとした筆致、忙しなくごちゃごちゃ蠢くところがあるかと思えばおっとりのんびりとした太い線があったり、はたまた三角四角の緊張感が絶妙の塩梅でそこに奥行きをもたらしていたり、と、山口画伯としては実に珍しい抽象的な世界でありながらそこに巧みに織り込まれたる濃淡と緩急で深い情景が紡ぎ出されているのでございます。
さて次は通をおおいに唸らせる問題作!
展示されているのは枠だけ!
文字通りの木枠だけ!
しかーし!
何といいますか節くれの配置やら木目の流線の滑らかさ、それがシンプルに組まれる角材の随所に現れ、その絶妙さに唸らされるのでございます。
でも心眼凝らしても壁しか見えないから気をつけろ!
もとい。
心眼の凝らし甲斐があるのはそのお隣、断然こちらでございます。
実に見事な水張り。ぴんと張られた紙の美しさ、まさに水張りかくあるべし、お手本のような画面でございます。紙の繊維も淡々と細やかな拍子を刻んでいるのでございます。
さてこちらの画面にはどんな絵が描かれていくのでございましょう。瞑想するいのち丸か、究極の電柱か、はたまた原始人ののどかな修羅場か...。
一見して無地の軸。
しかし、三たび心眼を凝ら・・・すまでもなく、そのなかに山並みが浮かび上がってくるのでございます。
やや厚めの紙に丁寧に施される折り目。それが連なり重なり、峰々がどこまでも遠くへと続いている雄大荘厳な景色が綴られているのでございます。
・・・ええ、決して「ちゃんと仕事しろ!Σ( ̄口 ̄;)」とか心ないことを言ってはいけません、いけませんってば。
・・・。
ちゃんとしご(ry
なんだかそろそろ凝らしすぎて心眼がショボショボしてきたような気もしますが、えーいもとい、今度はざわめく黒で全体が塗り込まれた画面に灯る白と黒の点。たったふたつの要素で人の顔が思い起こされ、そこから想像も広がっていく、画面を覆い尽くす妖し気に霞む黒、そのなかに漂う流れへも気配が感じられるのでございます。
さてさて、基本的に展示空間を反時計回りの順で展示作品を拝見していったのですが、作品の合間合間に飾られる小品がこれまたいちいち絶品。
紙の上を走る線、その太い細いの如何を問わず、たとえ感覚的に流れているものであってもいずれも強靭、溌剌、そして渋みをも備え、さらに山口画伯ならではの飄々とした風合いがそこに加わり、バラエティに富んだ想像を届けてくれるのでございます。
一転して画伯の想像の無軌道さが良い意味で度を過ぎると凄まじい混沌がそこから立ちのぼり、濃く深い世界が導き出されるのでございます。
それでいてそれぞれの線には表情が、それも人情味と温もりに満ちた表情が溢れているのでございます。
すうっと引かれる線が醸し出す豊かなうねり、それらが重なって壮大な空間を築き、さらにちみちみと細やかな線によってメカニカルなモチーフが描き込まれることで、未来的ななイメージの想起も促され、実に複雑にさまざまな時代が絡み合い混ざり合うなんとも不思議な世界が繰り広げられるのでございます。
おっとふたたび登場のいのち丸!
今度は牙を生やした鯨を彷彿させるヘッド部分を装備した空飛ぶバイクに跨がり空を駆け巡る勇姿がダイナミックに描き上げられ、その爽快さに破顔してしまうのでございます。
いやはや立派になられましたないのち丸殿ぉ!と思わずかけ声を放ってしまいたくなるような勢いに満ちた場面。深い巧みな陰影と幾何学的、機械的な描写とのギャップ、メカと武士とが共存する世界のシュールさなど、全ての違和感も許せてしまう、むしろもっとやってくれと懇願してしまいたくなるようなどうにも痛快な、とにかく楽しくてたまらないのでございます。
で、空間にもたらされる立体物(およびそれに準ずる造形)、こちらもなんともいい感じの遊び心がふんだんに挿入されていて、またミニチュア然の空間のかわいらしさとか画面に備わる小さな穴から放たれる白い光の輝きなど、いろんな発見に心が踊らされるのでございます。
そして最後に現れる扉。
この中にも作品が飾ってあるらしいのでございます。
しかし中に入ることは出来ず、なんとか開けた扉から半身を乗り出して覗き込んでようやく、開いた扉にほぼ隠れてしまった画面のおよそ端っこが認識出来るというなんとももどかしい、いやはやもどかしい...
カウンターに備えてある一覧でタイトルを見ると、ちょい見せから想像が膨らむ膨らむ・・・。
・・・とまあ大いに賑やかな物語が創り上げられているのでございます。
そのダイナミックなうねりに心を委ね、押し引きが巧みに織り込まれた動線に誘われて、ひたすらその豊かな世界に浸るのが楽しいのでございます。
もうひとつ唸らされたのが、高い天井の空間に薄い幕を張り、それでやや圧迫したシチュエーションをつくり出して視界だけでなく意識を展示されている作品へとしっかりと向けさせるような建て込みが施されているところでございます。薄い幕なので空間の三次元的な広さも失われていないのでございます。
こんな感じでやや暴走しながら感想なぞを書いてみたのでありますが、いかがでしょうか山口画伯!
・・・・・おらんがな ('A`)