さかぎしよしおう展
@GALERIE ANDO
東京都渋谷区松濤1-26-23
03-5454-2015
11/9(火)〜11/27(土)日月休
11:30〜19:00

SAKAGISHI Yoshiou
@GALERIE ANDO
1-26-23,Shoto,Shibuya-ku,Tokyo
03-5454-2015
11/9(Tue)-11/27(Sat) closed on Sunday and Monday
11:30-19:00
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GALERIE ANDOでのさかぎしよしおうさんの個展です。
毎年思うのですが、僕の中ではさかぎしさんのこの空間での個展は「秋の季語」です。俳句に使うにはずいぶん長い言葉ではあるのですが(笑)。
細かい粒を積み上げて創り上げられるセラミックのオブジェは、最初の白から白と青のコンビネーションを経て、昨年より深いグリーンに。さらに粒子の積み方にも変化がもたらされ、それによって造形もより豊かなバラエティがもたらされているように感じられます。
深いグリーンは白の空間に映え、またその色彩の濃さが引力を生み、遠目に眺めていても意識が自然に吸い込まれていくように思えます。また青と白の作品のどこか爽やかな気配を放っていたのとは対照的に、しっとりとした雰囲気がやさしく奏でられているような印象も届けられます。
縦への積み上げから煉瓦積みへと粒の積み方に変化がもたらされたことが、より複雑な造形を可能にしています。
どっしりとしたキューブ状の造形、その内側に段差と隙間が施され、また積み上がる粒同士の目が詰まって、見えない本体部分にも重厚な密度のイメージが思い起こされます。
また煉瓦積みによって構造がより強固になり、薄い造形も可能になったようです。
壁を彷彿させる造形、2列の粒子の並びで紡がれる薄い造形がちいさな空間的な余白を包み込み、それが豊かな空間性を生み出しているように感じられます。自分自身が小さくなってそのなかに入り、見上げて「うわぁ」って...そんな想像も浮かんできます。
インスタレーションも美しいです。
緩やかな弧を描きながらスペースに並ぶ台座、その流麗なリズムも心地良く感じられます。
比較的オーソドックスな造形、その中にもたらされる細い隙間がアクセントとなり、内側へのイメージを膨らませてくれます。
城壁のような造形。
そのかたち自体は感覚的であり、抽象的でありながら、それでいて淡々と積み上げられる粒子が奏でるリズム感の自然さがスムーズに観る者の感性を掴み、小さなサイズでありながら充分に壮大なイメージを届けてくれます。
隙間なく積み上げられた様子が伝わる側面の質感はいっそうの重厚さを奏で、ゆったり、どっしりとした存在感も醸し出されているように思えます。それでいてくりりと折れる部分の丸みがなんともかわいらしく、そして美しく感じられたり...。
ひときわ小さなサイズで展開されるさまざまな造形もホントに楽しいです。片方の手の平に乗るほどの小ささにきゅっと詰まったたくさんの粒子、どこか健気な印象も心に湧いてきて、かわいらしさがいっそう強く感じられます。
4つの楕円の筒が並ぶ作品も興味深いです。
居並ぶマンションを彷彿させるような...今回発表されている作品としては比較的大きなほうではありますが、それでも軽々と持ち上げられるほどの小ささ、しかしおおらかなイメージが膨らみ、台座の上に創出された空間に壮大なスケール感がもたらされているように感じられます。上から眺められるにも関わらず、むしろ上から観られるような展示になっていながら、思わず見上げたくなるような無邪気な衝動が湧いてくるんです。
驚かされるのがこちらの作品。
一列の粒子の並びによって創り出される造形、内側にいくつもの隙間が生み出され、全体のスマートな造形とは裏腹の心地よい緊張感が醸し出されています。このかたちに保たれていることの奇跡に感嘆させられます。
初めて拝見した時から常に保たれる作品の精度の高さ、そこに必ず新たな要素や進化がもたらされ、青と水色から緑への色彩の変化こそ相当に大きく感じられたものの、少しずつその世界が押し拡げられ、豊かになっていくことに感じ入ります。
単純にさかぎしさんの作品を、そして展示を観られること自体が充分に嬉しいのですが、そこに必ず発見があって、その発見に出会うたびに純粋に感動させられます。
瑞々しさや凛とした風合い、ぜひとも実際にご覧いただき、その世界観にゆったりと浸ってほしいと思う次第です。