村上友重 それらすべての光を粒子と仮定してみる
@CASHI
東京都中央区日本橋馬喰町2-5-18-1F
03-5825-4703
10/29(金)〜11/25(木)日月祝休
11:00〜19:00

Tomoe Murakami ”The universe is fine photic particles, I imagine.”
@CASHI
2-5-18-1F,Nihonbashi-bakuro-cho,Chuo-ku,Tokyo
10/29(Fri)-11/25(Thu) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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CASHIでの村上友重さんの個展です。
入ってすぐ、とにかく大きく引き伸ばされた夜空の写真が眼前に現れ、その闇の色面のダイナミックさに圧倒されます。
目の前に広がるその大きな闇のなかには飛行機の軌跡を捉えたと思しき一筋の光の痕跡が現れ、そのシャープな線とドットの並び、そして何らかの数式を現実世界に現したかのような繊細な輪郭を伴う像に引き込まれます。
床に設置された台上にも同様に大きく引き伸ばされた写真が。
このサイズのプリントとなると「もの」としての存在感も重厚に感じられ、広々とした黒の深遠さと、画面がたわんで生まれる歪みがもたらす立体的な陰影とで無機的な幻想空間がそこに生み出されているようにも感じられます。
この大きな闇夜の写真と対峙し、広い画面を埋め尽くす黒はその僅かな光の軌跡によって奥行きが提示され、そこに捉えられているものが「情景」、そして「空間」であることを認識させてくれるようにも思えます。
そしてその光の軌跡は濃厚な闇のなかで際どいほどの繊細さを醸し出し、同時にたわみによって黒が照明を反射させて白く輝く様子なども、それ自体はおそらく意図されたことではない要素であるとはいえ、さまざまな角度での空間の認識がそこから届けられ、イメージもさらに深まっていくようにも感じられるのが興味深いです。
ギャラリーのスペースはおよそふたつのコーナーに分割され、奥では一転して明るい時間帯も情景を捉えた写真が、比較的オーソドックスなサイズにプリントされて展示されています。手前と奥とのコントラストも鮮やかに提示されます。
そしてこちらは霧がかった自然の風景を撮影した作品で構成されていて、闇がそうであるのと同様に、眼前に現れる情景は具体的に認識されることを拒むようにその輪郭を消し、仄かに現れる景色がその曖昧な景色に奥行きをもたらしているように感じられます。
霧のふわりとした気配が奏でる幻想的な風合いも印象的です。
淡々とした静かな気配は豊かさ、深さをそこにもたらし、その空間的なおおらかさが奏でる清々しい静謐に魅せられます。
夜空と霧の風景、それぞれ「自然」を捉えた写真でありながら、むしろ無機的な印象なのが興味深いです。
霧の風景の写真は文字通り「風景の写真」としての純粋な美しさが、夜空の写真では光の軌跡のシャープさが感じられ、それぞれにおける写真の「眼前にあるものをそのまま捉える」というシンプルな面白さはしっかりと備えているように感じられます。しかし、むしろそれぞれの画面に収めようとしているのはむしろ、その闇や霧で一旦失われた景色の輪郭のなかに残される情報によってあらためて奥行きの認識を促すようなプロセスのようにも感じられます。