岩田俊彦展
@ラディウムーレントゲンヴェルケ
東京都中央区日本橋馬喰町2-5-17
03-3662-2666
10/29(金)〜11/20(土)日月祝休
11:00〜19:00
Toshihiko Iwata
@Radi-um von Roentgenwerke AG
2-5-17, Nihonbashi Bakuro-cho,Chuo-ku,Tokyo
03-3662-2666
10/29(Fri)-11/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)
ラディウムーレントゲンヴェルケでの岩田俊彦さんの個展です。
斬新に引き出される漆の魅力。表面の平滑さが放つシャープな美しさと、古くから連綿と引き継がれる素材そのものの深みとが響き合い、さらにそこにほどよく「和」の気配を醸し出す幾何学的なパターンと、妖し気なモチーフとが描き込まれ、実にユニークな世界が展開されています。
1階、階段踊り場と手のひらに乗るほどの小品が続きます。
岩田さんの小品は、側面も含めたその小さな表面全体に複雑な画面構成が繰り広げられます。かたちの面白さや線のケレン味のない美しさが、漆特有の艶やかな質感と渋い色調で紡がれているのが印象的で、そこに施される整然としていながらもユーモラスな情景に惹かれます。
重なる漆の層がもたらす微妙な立体感にも感じ入ります。
描かれるひとつひとつが程よく主張し、すらりと走る線はさらにしなやかに、そして色面となって現れる部分は澄んでいて同時に濃厚な風合いを醸し出し、コンパクトなサイズのなかに豊かな魅力が静かに満ちているように思えます。
大きな作品では、その表面の平滑さが迫力となって圧倒してきます。
広い表面に加え、壁から突き出る分厚さがひときわ強烈なインパクトを感じさせてくれる作品。その大きな朱の広がりが放つ凄まじいスケール感に呆然とさせられ、真ん中に登場する髑髏が生える骰子の小さなモチーフ、そのクールな佇まいと熱を帯びる存在感にイメージもぐっと深められます。
さらに、表面縁の部分に走る線のシャープさが「収める」感じをいっそう際立たせ、さらに側面の黒の深みも加わり、そこに唐突に創り上げられている空間の違和感がどうしようもなく痛快に感じ取れるんです。
深い緑と黒との組み合わせで表現されるシャープな情景。
スクエアの画面のスマートさは、鏡面と化した漆黒の艶と平滑さも相まってフューチャリスティックなイメージも放たれているように思えます。同時に斜めに交錯する直線と門が僅かに面取りされる菱形の凛とした佇まい、そして咲く花を思い起こさせる有機的なモチーフの端麗さと妖しさなど、表出される要素のひとつひとつが関わりあって抗い難い魅力を奏で、クールな美しさと格好良さに大いに惹かれます。
漆黒はそこに関わるさまざまな色彩の美しさ、艶やかさを引き立てます。
パープルが乗る作品、そこに繰り出される大きな花のパターンのどこかコミカルなリズム、そして未来的でありながらも確実にそこに備わる「和」の風合い。右上の角に一カ所だけ施される螺鈿の円形がアクセントとしても効いていて、全体に横たわるダークな情景に鋭く深い鮮烈さを導き出し、その部分が異空間となって現れているようにも思えます。
整然として凛としたリズムで繰り出されるパターンと、そこにさらに投入されるクールなモチーフ、その絶妙なバランスが深遠な気配と澄んだ緊張感を生み出しているように思えます。
そして、この世界が漆で表現されていることの嬉しさにも感じ入ります。素材としての意表を突く感じが堪らなく、しかも漆本来の美しさはしっかりとそこから感じ取れることも痛快に思える次第です。