TWS-Emerging 140 佐藤翠「Blissful moments」
@トーキョーワンダーサイト本郷
東京都文京区本郷2-4-16
03-5689-5331
7/3(土)〜7/25(日)月休(祝日の場合開館、翌火曜休)
11:00〜19:00
TWS-Emerging 140 Midori Sato "Brissful moments"
@tokyo wonder site Hongo
2-4-16,Hongo,Bunkyo-ku,Tokyo
03-5689-5331
7/3(Sat)-7/25(Sun) closed on Monday (If Monday is a national holiday,the following day will be closed instead.)
11:00-19:00
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トーキョーワンダーサイト本郷3階奥のスペースで開催の佐藤翠さんの個展です。
佐藤さんの作品は今年のART AWARD TOKYOで拝見し、ウィンドウのなかでのインスタレーションで、その独特の沈んだパステル調の色彩と、キャンバスに乗る絵の具の質感とが醸し出す不思議な艶かしさが印象に残っているのですが、今回は比較的コンパクトな空間でその情景、状況が展開されていて、よりその雰囲気に臨場感が伴っていて、包まれるような感じがした次第です。
何というか、「つくられたパーソナルな空間」に入ってしまったかのような臨場感。。。
なんとも得難い、現実と幻想とが混ざり合った気配にスリルを感じます。
ペインティングは、やはりその色彩と質感に目を奪われます。
ひとことで表現するのがなかなか難しい色調が乗り、また粗いストロークをベースに描き上げられるモチーフは抽象的な風合いも持ち合わせながら、なんとも不思議な空間をそのなかに生み出しているように感じられます。
階段状に折れ曲がるカーペット、その両脇に並べて置かれる靴。
佐藤さんのペインティングを眺めていると、そこに現れている空間の不思議さ、奇妙さにだんだんと引き込まれていきます。
ART AWARD TOKYOで展示されていたクローゼットの作品もそういった印象だったのですが、比較的奥行きが具体的に表現、提示されているのにも関わらず、すべてが同じ距離感にあるような感じがするんです。この不自然な感じがなんとも面白く、興味深く思えます。
ところどころにちょこん、と展示される小品の醸し出す雰囲気にもおおいに惹かれる次第。
ちいさな画面にシンプルにモチーフが描かれていて、独特の色彩感や質感もしっかりと収められているのがなんともいとおしい印象を抱かせてくれます。大きな画面の作品から生み出される得難い迫力とはまた違う味わい、仄かに儚げな気配さえ漂ってきているように思えるんです。
額に収められた、女性を描いた作品からはまた違うテイストが奏でられています。
この空間にあると、絵が額装されて展示されているというよりも、「額に入った絵」という立体作品がインスタレーションのなかの一つの要素として配されているような感じもしてきます。
手前の広い壁面には、壁いっぱいの作品が。
これほどまでの大きなサイズがこの空間にパーソナルな雰囲気をもたらしているようにも感じられます。
書架とクローゼット、そこにはひとつの空間が描かれているのにも関わらず、やはり不思議と奥行きの喪失感がそこにあって、それでいてその至る所に額装されたドローイングなどが絵の上から掛けられていたりして、独特の臨場感が漂ってきます。「ある場所」にいる実感と、その場所に「至っていない」感覚との交錯がさらに不思議なイメージを沸き起こさせてくれます。
この空間の入り口と対角の位置に展開されているインスタレーションが、さらにこの空間の気配を独創的なものへと押し上げているように思えます。
実際に「もの」が配されることでいっそう濃く、強くなる臨場感。そこにも・・・鏡面にすら・・・ざっくりとしたストロークによる絵の具の色彩が施され、ただそこに「戸棚」や「姿見」があるのとは違う、現実からやや乖離した場所のイメージを届けてくれているように感じられます。
さまざまな要素に個性を感じ、それらがひとつの空間に落とし込まれることでその独特の気配が濃く届けられているように思え、不思議な妖しさに包み込まれ、得難いイメージに浸れるように思えます。
このインスタレーションでは充分に空間的な「余白」は観る側にもたらされるイメージでほぼ満たされるような印象も持った次第です。