■7/7 Wed
福原寛重 ”Binary”
@Ai Kowada Gallery
東京都渋谷区恵比寿西2-8-11ー4F
6/26(土)〜7/31(土)日月火休
12:00〜19:00
再訪。黒で塗布されたアルミ板に鉛筆による線が展開し、エキゾチックな情景が紡ぎ出されていく作品が並びます。これらの作品は表面が相当に脆いというか、何かが触れると鉛筆の線が消えてしまうとのことで、それぞれにアクリルカバーが被せられ、それが独特のスリルを思い起こさせてもくれます。
下描きなしで描かれるとのことで、画面を浸食するように展開されていく線描が導き出す有機的なモチーフの重なりのバランスもユニークに思え、さらにバリエーションの多彩さにも感じ入ります。
支持体にパネルを採用した、今回出展されているなかでもっとも大きな作品。画面のサイズに従ってその臨場感も増して届けられるようにも感じられます。より大きく描き出されるモチーフは。そのまま迫力に転化され、黒に黒という色と素材のチョイスの敢えて認識しづらい感じから膨らむようにその世界観が展開されているような印象です。
方形の画面の作品が並ぶ中に1点、馬のシルエットを模した板に描かれた作品が。
スクエアな画面のなかに有機的なモチーフを綴っていくのとは異なり、かたち自体が有機的なイメージを彷彿させる状態からさらに別の世界をその中に展開していく行程に面白さを感じます。
泉イネ展「未完本姉妹 影の冬光」
@MA2Gallery
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
03-3444-1133
7/7(水)〜8/7(土)日月祝休
12:00〜19:00
泉イネさんの作品というと、「紺泉」のお名前で活動されていた頃から拝見していてファッショナブルな雰囲気をたたえ、再現性の高い細やかな描写がなされているという印象を持っていて、そういった作品を観られることを期待していったのですが、ひとあし先に始まったTKG Contemporaryでの展示と今回のこちらでの展示を拝見し、予想していた印象と相当にギャップがあって戸惑わされ、それでいてそのギャップに対して何らかの意味というか、観る側の適正な距離感があることを暗示しているような雰囲気があり、なんだか確信的に謎めきを持ち合わせたままじっくりと鑑賞した次第。
しかしなかなか分からないなぁ、捉え難いなぁ、などとぶつくさ思いつつ思ったことをいっしょに拝見していた方々と言葉にして話しながら、そのタイミングで来廊された今回の「本姉妹」の「長女」の方のお姿、それも被られていたハンチング帽に「あ・・・!」と。そこからするするとここに横たわる世界に引き込まれていくという...。
なんだか、いつのまにか物語に関わっていた...ような、なんというか自分の回りに起きるスピンオフ、みたいな感じです。ステキな展覧会です。
■7/10 Sat
Painting vol.2 源馬菜穂×門内幸恵
@GALLERY CAPTION
岐阜県岐阜市玉姓町3‐12 伊藤倉庫
058-265-2336
6/26(土)〜7/24(土)日月祝休
12:00 〜18:30
今年のART AWARD TOKYOで1点のみの出品ながらやわらかな浮遊感を漂わせる印象的な雰囲気をたたえたペインティングが印象的だった源馬菜穂さんと、以前名古屋でのグループ展で拝見し、独特の濃厚なペインティングの風合いが面白かった門内幸恵さんがフィーチャーされた展覧会。それぞれに展示スペースが分けられ、門内さんはコンパクトな空間に組み作品を配してどっしりと濃く、そしてほんのりシュールな雰囲気を創出、源馬さんは広めのスペースにそれぞれ同様の構図の作品を並べ、そのバリエーションの豊かさで爽やかな空気感をそこに導いてきているような感じで、それぞれの個性がしっかりと伝わる構成が嬉しいです。
伊藤彩展
@TOMIO KOYAMA GALLERY,Kyoto
京都府京都市下京区西側町483(西洞院通/新花屋町通 西南角)
075-353-9992
6/25(金)〜7/10(土)日月祝休
11:00〜19:00
めくるめくシュールな空間性!
小品を中心に、陶作品や立体なども織り交ぜながら賑々しくも不思議な雰囲気をコンパクトな空間に充満させている感じが堪らなく思えた次第。
そして、今回はそれぞれの作品の基となった画像も見せていただき、あの不思議な空間はこうやって創り出されるのか、と大いに感心させられたりも。
スピード感とまったりした雰囲気とが絶妙な塩梅で混ざり合っている感じが痛快です。
Naoko Tamura / J. Parker Valentine
@Taka Ishii Gallery Kyoto
京都府京都市下京区西側町483(西洞院通/新花屋町通 西南角)
075-353-9807
6/25(金)〜7/31(土)日月祝休
11:00〜19:00
手前のスペースに展示されている田村尚子さんの写真作品。それらが醸し出す繊細で澄んだ、朧げな雰囲気がとにかく印象的です、
フランスの精神病院での光景、そこで行なわれたレクリエーションを撮影された写真が並んでいます。しかも、やや色が飛んだような、光が画面に溢れるようなものが選び抜かれ、それによってここに持ち込まれる気配に独特の臨場感ももたらされているように感じられます。
階段から向かって右側に病院内で撮影されたもの、その向かいには病院の外で
撮られたものと分けて展示され、しかしそれぞれの写真から届けられる気配の差異は限りなく近くて、内と外とが一体となったような印象が届けられるのが興味深いです。
そして、それぞれの写真における、光がそこにある「もの」のかたちを霞ませているような風合いに、なんともいえない幻想性が脳裏に浮かんでくるのも印象的です。
宮永亮「メイキング」
@児玉画廊|京都
京都府京都市南区東九条柳下町67-2
075-693-4075
7/10(土)〜8/14(土)日月祝休
11:00〜19:00
先に東京で開催された個展で発表された作品を,京都の広大空間で再構成。
スタッフの方のお話では東京ではスペースの都合上上映ができなかった映像もこちらではコンプリートで上映されているとのことで、またそれぞれが大きく映し出されていることもあり、さらに重厚な臨場感がもたらされているように感じられます。
大画面で拝見するメインの作品の迫力は、言うに及ばず!
さらに、撮影で実際に使用された車もいっしょに展示され、持ち込まれる臨場感はこれ以上ないほどの濃密さ。
使い込まれた車の生々しさにも圧倒され、イメージもどんどんと膨らんで、この硬質な、そして静かでありながらもアグレッシブな雰囲気に引き込まれていきます。
中岡真珠美展
@O Gallery eyes
大阪府大阪市北区西天満4-10-18 石乃ビル3F
06-6316-7703
7/5(月)〜7/17(土)日休
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
お馴染みの白のカシューによる立体的な画面にさまざまな色彩とストロークが展開していく、未来的な風景を思い起こさせる抽象性の高い作品を描かれる中岡さん。今回の個展では、少なくとも僕が拝見したなかでもっとも大きな、複数の画面による組み作品が発表されていて、いつもよりもダイレクトに壮大なスケール感が届けられている感じが嬉しく思えた次第。
また、網状のパターンを展開されている作品などもあり、その爽やかな個性を維持しつつも新たに世界を広げているように思え、そのことも印象的でした。
Art Court Frontier 2010 #8
@ARTCOURT Gallery
大阪府大阪市北区天満橋1-8-5 OAPアートコート1F
06-6354-5444
6/25(金)〜7/24(土)日月祝休(7/11開廊)
11:00〜19:00(土:〜17:00)
昨年は選者として参加させていただいた「Art Court Frontier」。そのときは平面のアーティストが多く参加されていた印象でしたが、今年はメディア的にもユニークな個性が集められた印象で、それぞれに独創性の高い面白味に触れられたのが楽しく思えた次第です。
なかでも圧巻なのが、大西康明さんのインスタレーション。天井近くに配された網からグルーを垂らし、それによって丘状のシートが浮かび上がっているような不思議な構造が創出されていて、そこを潜るときのなんともいえない不思議な感触が堪らなかったり。
北城貴子展
@Gallery Nomart
大阪府大阪市城東区永田3-5-22
06-6964-2323
7/10(土)〜8/7(土)日祝休
13:00〜19:00
先日の東京でのたった2点だけで構成された個展も、それはそれで充分に印象に残っている北城貴子さん。今回は広いスペースで、大作2点を含むさまざまなサイズの作品を発表され、昨年京都で拝見した個展で感じた鬱蒼とした印象からの変化が興味深く、より光を画面に取り込み、それが溢れるような雰囲気を創出しているような感じが印象的です。ポジティブな荘厳さに満ちた空間が生み出されているように思えます。
三宅砂織 [Image castings 2]
@FUKUGAN GALLERY
大阪府大阪市中央区西心斎橋1-9-20-4F
06-6253-3266
7/10(土)〜8/7(土)日月火休
13:00〜20:00
ユニークな手法によるフォトグラム作品、これまで拝見してきた作品は女の子が登場していたりメリーゴーランドがあったりと、幻想的でメランコリックな雰囲気が静かに流れ出すような印象だったのですが、今回の個展で発表されている作品はこの手法でここまで表現できるのかと驚かされるほどに細やかな「描写」が繰り広げられ、描き出される「風景」に現実的な臨場感も感じ取れるほど。階段などの人工建造物の表現に目を奪われ、そして噴水などの描写における動的な迫力にも感じ入った次第です。
■7/11 Sun
この日はまず国立国際美術館で始まった,横浜美術館より巡回の束芋さんの個展「断面の世代」へ。
1度拝見し、体感している作品ですが、なかには空間が異なることが作品の印象にも作用しているものもあったりして、それを実感できたのが嬉しいです。
あと、あらためて吉田修一さんの小説「悪人」の挿絵をじっくりと観ることができたのもありがたく。それぞれのモチーフに、「これはあの場面かな・・・?」と想像を巡らすのが楽しかったです。
そして、ART OSAKA 2010へ。
今年は4フロアのうちの2つはすべてのゲストルームが個展形式で構成され、展示としてメリハリが効いていて楽しめました。はやりソロで空間を構成されるとその分印象も強く、ARTCOURT Gallerycでの山野千里さん、レントゲンヴェルケの桑島秀樹さん、SUPER WINDOW PROJECTの松延総司さんあたりはそのユニークさが際立っていて相当にインパクトがありました。