白子勝之 個展
@eN arts
京都府京都市東山区祇園北側627 円山公園内八坂神社北側
075-525-2355
6/4(金)〜6/27(日)金土日のみ
12:00〜18:00

Katsuyuki Shirako exhibition
@eN arts
627,Gion-kitagawa,Higasiyama-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu
075-525-2355
6/4(Fri)-6/27(Sun) only Friday to Sunday (appintment only on anather days)
12:00-18:00
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eN artsでの白子勝之さんの個展です。
白子さんの作品は今年の京都市立芸術大学での修了制作を拝見していて、今年もっとも印象に残っていたこともあり、この展示も楽しみにしていたのですが、配される有機的で爽やかな艶かしさを奏でる造形がeN artsの瀟洒な空間にしっとりとした緊張感をもたらしているように感じられたのが印象に残っています。
エントランスに展示されている、豊かな弧が幾重にも重なる作品。
本来は建築資材らしいボードを削り出し、またそこに漆が塗布されたパーツが組み込まれて、程よい張りを思い起こさせる艶やかな造形が創り上げられています。
いくつかあるスタイルの作品のうち、壁面に設置されているこのシリーズはさまざまな密度での展開が楽しいです。
正面奥の壁面に並んで展示されている2点は重なる弧の密度が相当に上がり、複雑な展開に意識が一気に引き込まれていきます。
現代生け花を彷彿させるような有機的な美しい弧の重なりは、素材のナチュラルな色彩と漆の艶とが響き合い、独特の瑞々しい空気感が繊細にもたらされているように思えます。
そして驚かされるのが、これがホントに1枚のボード、板から彫り上げられているということで。。。
漆が塗布されているパーツこそ別製ではあるものの、それ以外の部分は二重、三重にかさなるような部分もその隙間を彫って制作されているとのことで、そのことに対して驚き、さらに感じ入る次第。
ふたつの色調の、そしてふたつの質感のコントラストも楽しいですが、おそらくシンプルに造形に注目してもその素晴らしさは充分に伝わってくるような気がします。
小さな棚に置かれる小品。その造形も見事のひとことに尽きます。
一転して、数多くの木製の部品で組み上げられ、作り込まれる作品。
その内側の部分に漆が塗布された部分が覗かれて、その濃厚な色調が潜む感じは生命のイメージもその小さな造形のなかに誘い込んでいるかのようにも思えます。
ひとつひとつのパーツの造形の鋭さにも感じ入ります。
尖った先がスリリングなイメージを届け、相当に繊細な風合いがそこから奏でられてくるように思えます。
数点、写真作品も。こちらのアプローチもユニークです。
さまざまな有機物が部分的に漆で仕上げられて、そこに独創的な違和感を持ち込んでいるように思えます。
羽の根本であったり、植物の茎の部分であったり。一部が艶やかな色彩に染まることでもたらされる違和感が澄んだ緊張感に転化されて、なんとも不思議な感触が届けられます。漆の表現としての展開のユニークさにも興味を覚えます。
修了制作でも発表されていたスタイルの作品。
こちらの造形には言葉を一瞬失います...。
おしらくこれだけでも充分に見応えがありそうな、中央のアールの美しさ。
そこから羽と棘とが交互に生えるようにして、ひとつの造形が導き出されています。
小さな棘を彷彿させる造形に漆が塗布されていて、微妙な色調の差異と艶の有無とが交互に続いていき、その可憐な風合いにもスムーズに引き込まれていきます。
聳えるような造形に、このサイズの作品であっても充分に圧倒されます。
大きく広がるような佇まい。何か具体的なものへとイメージが微妙にストレートに導かれない、それでいてその謎めきへのもどかしさは一切ない、すなわち絶妙な抽象性にも大いに魅せられます。
和室には小品と写真作品とが展示されています。
現代的な造形であっても、和の空間とのマッチングが悪かろうはずがなく。。。
白の清々しい気配が心地よいアクセントとなってこの空間を静かに淡々と満たしています。
漆の表現として、そのユニークさに大いに感嘆させられます。
おそらく漆芸表現としては異端であると思われるのですが、それでも失われない本格の風合いに痺れます。
これからの展開も楽しみです。