山本基 個展 たゆたう庭
@eN arts
京都府京都市東山区祇園北側627 円山公園内八坂神社北側
075-525-2355
4/2(金)〜4/30(金)金土日のみ
12:00〜18:00
MOTOI YAMAMOTO "Floating Garden"
@eN arts
627,Gion-kitagawa,Higasiyama-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu
075-525-2355
4/2(Fri)-4/30(Fri) only Friday to Sunday (appintment only on anather days)
12:00-18:00
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この複雑で豊かな動線を備える特異な空間で、あの塩のインスタレーションが創り上げられるのであれば、それが素晴らしくないはずはなく。。。
eN artsでの山本基さんの個展です。極めて美しく、そして深い異次元が創出されているのです。
このギャラリーでの展示でいつも楽しみにしているひとつがエントランスで、真向かいに八坂神社の和の気配が横たわるシチュエーションをどう活かし、何で魅せ、その世界へと誘ってくれるか・・・やや急な坂を少し登って辿り着いた最初に目にする展示がどうなっているか毎度期待しているのですが、山本さんはここで、今回の出品作品のなかで最小のものを展示。広い壁面に、あたかも気配が凝縮されたかのような感覚に満たされ、一気にこの先の世界との対峙への「覚悟」のようなものがもたらされます。
中へと足を踏み入れると、いつもとは異なる塩のラインの広がりが視界に捉えられます。
今回メインで展開されているインスタレーションは、僕が山本さんを知って以来これまで拝見してきた迷宮のシリーズではなく、より有機的に展開される、敢えて表現するとしたら無秩序のレース模様を思い起こさせる展開で、「迷宮」でも感じるような理知的な風合いは保たれつつも、その幾何学的な構造とは一線を画しているような印象で、静かでありながらもより感覚的に、そしてより衝動的に空間を「浸食」していっているようなイメージがもたらされ、横たわる圧倒的な静謐の奥に潜むその感性の生々しさに圧倒されるように思えます。
眼前の情景からいろんなイメージも重なってきます。
例えばさざ波にわき立つの水泡。打ち寄せて消えゆく感触を思い浮かべると、ある瞬間が捉えられているかのような緊張感が心にすうっと入り込んで、さらにその刹那な雰囲気に引き込まれたり。。。
全景を捉えることを一旦止め、部分に焦点を当てていくと今度は空間への浸食の過程を思い起こさせてくれます。
未だ終わらぬ空間の対峙。このまま時間が経てば、床全体にヒビが入るかのようにびっしりと塩の線に覆い尽くすのでは、などという壮絶な情景の想像も浮かんできます。
部分的にコンクリートの床にあるヒビに沿うようにして塩の線が走っていたりして、その関係性にも好奇心が煽られます。
壁面に展示される平面作品も、比較的小さなものが多いながらも実に深い風合いを醸し出しています。
大小どちらのスケールへもイメージを深めていける濃密かつ静謐な抽象世界。より有機的な描写により、妖し気な雰囲気をそのなかに色濃くもたらしているように思えます。
地下には「迷宮」の世界が。
さらにブラックキューブでのインスタレーションも楽しみだったのですが、意表を突く展開に一瞬唖然とさせられた次第。
塩のインスタレーションは材質の特性により床への展開意外に考えられず、実は拝見する前に「もし山本さんの塩のインスタレーションが壁面に展開されたら...」というあり得ない想像を思い描いていたところでこの空間に接し、実際に壁面に「迷宮」が展開されていて驚かされ、それらが僅かな白い明かりにその姿をほんのりと現しているその緊張感に呆然。黒の壁面に浮かびあがる塩の白の繊細さにただ純粋に感動させられます。
和室には縦長の画面を2点並べた作品が。
白と黒のコントラスト、砂状の何かが画面に塗布されそこに枯れた葉が乗る儚げな気配と黒の画面に鋭く走る縦の線の硬質さ、それらがせめぎあってもたらされる緊張感にも引かれます。
圧巻のアブストラクトワールドに今回も引き込まれ、その深遠な静謐さをじっくりと体感いたしました。
そして、会期終了後しばらく経った5月15日土曜日15時から「海に還る・プロジェクト」が行なわれるとのこと。もし時間が合えばぜひ参加してみたいと思っています。