O JUN展「O JUNの山」
@ミヅマアートギャラリー
東京都新宿区市谷田町3-13 神楽ビル2F
03-3268-2500
3/24(水)〜4/24(土)日月祝休
11:00〜19:00
O JUN "Mt. O JUN"
@MIZUMA ART GALLERY
3-13-2F,Ichigaya-Tamachi,Sinjuku-ku,Tokyo
3/24(Wed)-4/24(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)
国立国際美術館での「絵画の庭」と国立新美術館での「アーティストファイル」。このふたつの大規模な展覧会への参加、それぞれ大きな容積を持つ空間を活かしきり、ボリューム感たっぷりのファットな壁面インスタレーションを展開されたO JUNさん。「絵画の庭」は既に会期を終えていますが、ほぼ同時期に3つの展示を通じてひとりのアーティストの個性に触れられたのは大変貴重な体験のように思えます。
前出の美術館での展示が、それぞれ趣は異なるものの、過去の作品も含めたアーカイブ的な構成であるのに対し、昨年末のミヅマ・・アクションでの二人展を経て満を待してのミヅマアートギャラリーの新スペースでのO JUNさんの個展、和室を除けばペインティングのみで構成され、作品点数こそ少なめに抑えられつつ、それでもその旺盛な制作意欲が充分にエネルギッシュに反映され、またオイルペインティングの面白さ、美しさも詰まった充実の展示が創り上げられているように感じられます。
O JUNさんの作品を眺めていると、何て言うか、
あー、わかんねー!(≧∇≦)ノ゛
ぜんぜんワケわかんねー!(≧∇≦)ノ゛
みたいな想いがぶわっと膨らんできて、でもその「解らない」ことをポジティブに受け入れているという・・・さらにそのことがどうしようもなく痛快で嬉しく感じられるんです。。
謎めいていて妖しさが充満していても、そこに「暗さ」はなくて、得られるイメージはむしろひたすら楽しい・・・!
そんな感触はO JUNさんの真骨頂のような気がします。
入り口の扉を開けると正面に展示された巨大なペインティングが眼前に迫ります。
天地2枚の画面による組み作品。
描かれているのが上は船舶、下が飛行機。このふたつの画面を繋ぐ色彩の重鈍な青は海と空、おそらくそれぞれの画面を単独で眺めても世界観として成立していると思うのですが、こうやってアクロバティックな状況を敢えて生み出すかのごとく組まれる画面が凄まじくシュールな雰囲気を生み出しているように思えます。
そこにある要素のひとつひとつに
何でだよ!?Σ( ̄口 ̄;)
・・・と叫びたくなる感じがまた堪らない!
そもそも飛行機の状況が分からない、不時着したようにも見えるし、もしかしたら飛行しているのかもしれないし、だとしてじゃあ何故上に船舶もとい海が、などなど...でもそのどれもが
オーケーオーケー!!!(≧∇≦)ノ゛
って感じに収まっちゃうんですよ、いや判るか判らないかって言われたら「判んないですー」ってなるんですよなんだか不思議なんですけどその「説得されちゃう感」っていううの、なんだか書いていて支離滅裂なのはさすがに判っていてそれでも書き直さないですけど、まあ要するに痛快至極。
キャンバス作品、そのひとつひとつが持つ「濃い世界観」に引き込まれます。
画面にたっぷりと乗る絵の具の臨場感、ひたすらに艶やかで溌剌としていて、フレッシュな感触も届けられます。用いられる色彩は軽快でありながらも、なお残る絵の具の湿り気が醸し出す妖しい風合いにも惹かれます。
加えて構図の面白さ、ケレン味なく広がる白の白さとそれが赤のアグレッシブさを鮮烈に際立たせ、また画面左下の青のラインとによって崖を思わせる壮大なスケール感も導かれます。もっとも赤を中心にさまざまな色彩が混ざり込む絵の具の塊の混沌として抽象的な感触にも惹かれつつ、これがある風景に見えるのだとしたら、じゃあ上方の画面側面に施される青は何なの、と。
ひとつのイメージは他の要素に強化され、また別の要素に破壊されて、しかし右往左往するのも「(いやぁ、やられた≧∇≦)ノ゛」と嬉しくなるんです。
広いスペースの右手、和室の側の壁面に展示された作品は、とにかく緑が美しい!
この作品を拝見し、これまでにさまざまなメディアの平面作品を制作されるO JUNさんならではというか、ああこの人は油絵の具が好きなのだなぁ、そしてその良さを引き出すことに長けているなぁ、と感じ入る次第。
とにかく濃厚な絵の具の臨場感、生々しさは尋常でなく、筆やおそらくナイフなどを用いて画面に乗せられる絵の具はフラットに広がったり、はたまた筆が画面から離れる瞬間のスリリングなマチエルがもたらされるなどさまざまな表情が導き出され、「描く」という行為の痕跡のひとつひとつ、それらが生み出す豊かな表情に好奇心が大いに刺激されます。
加えて、大胆な色彩感にも感嘆させられます。どっしりと広がる濃い緑と、そこにノイジーに混ざり込む明るい緑。そのコントラストは鮮やかに響きます。無論他にもさまざまな色彩の関係性が楽しくてしょうがない・・・!
飛行機と船舶の大作と向かい合うように展示された小品も実に不思議な物語性を醸し出します。キラキラと光る顔料なども用いられ、空間に小気味よく痛快なアクセントをもたらしているように感じられます。
奥まったスペースには、大作と同じく粗い麻布が支持体に採用された作品が。
分かりやすく風景を思い起こさせる構成で、麻布の質感に加え、その支持体を染めるようにして塗られる絵の具の色彩の深みや筆使いによる味わい深さになんだかあったかい気分に...しかしこの作品も、右側の赤いラインが一度深まったイメージを崩し、広々とした遠景が一転、支持体の麻布の生々しい質感がその見たままのサイズで迫るんです。
和室はオンペーパーの作品やパステルの作品などが展示されています。
紙というフレキシブルな素材であることもあってか、油彩とはまた異なる実験的な風合いが、これはこれでさまざまなイメージと謎めきを呼び込んでくれたり。
いやー分かんないですねーっていう気持ちが嬉しいっていうのが嬉しいです。
ただ分からないといっても、それを超えて余りある「感覚的な確信」のようなものは得られているかと。
ズレや歪み、無くてもいいものもいっぱい絵の中にはあって、でもそれらは必要と思わせてくれるくらいに絵の世界を面白くしているように感じられます。
そして、やはりペインティングとしての「美しさ」も堪能!画面に乗る絵の具の溌剌として艶やかな発色、そして豊かな表情を観るにつけ、それを観る喜びにひたすら浸っていたい、そう思わせてくれるのも楽しいです。