@TARO NASU
東京都千代田区東神田1-2-11
03-5856-5713
10/30(金)〜11/28(土)日月祝休
11:00〜19:00
Hirofumi Katayama "Exchangeable" (Gallery 1)/Akira Rachi "frames" (Gallery 2)
@TARO NASU
1-2-11,Higashi-Kanda, Chiyoda-ku, Tokyo
03-5856-5713
10/30(Fri)-11/28(Sat) closed on Suncay,Monday and national holiday
11:00-19:00
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TARO NASUで開催されている、ふたりの写真家/アーティストをそれぞれ個展形式でフィーチャーした展覧会です。
改題を降りてまずは、良知暁さんのインスタレーションから。
比較的身近なところにありそうな、さまざまな風景をシンプルに捉えた写真が空間内に配され、淡々とした気配に満ちているように感じられます。
眼前に現れ、視界が捉えた風景を実にユニークな構図でトリミングされ、その構図の面白さによって画面ごとに無機的な空間が生み出され、それぞれの冷静な気配からシャープな知性が放たれているような印象をも覚えます。画面に捉えられていない風景についても、現実とはまったく異なる、もっと硬質な情景が続いているかのように、想像も独創的な方向へと膨らみます。
ひとつの写真に収められるさまざまな構図、それらが複数パッケージされると今度はそれぞれのかたちや色彩が作用し合い、さらにユニークな構造が導き出されます。
その風景にある幾何学的な要素、地平線か人工建造物のフォルムまで、さまざまなかたちyや角度で走る直線がさらに画面を溢れて延長され、その外側で別の画面から伸びる線と交錯、そういったイメージが膨らむにつれ、収められた景色の有機的な気配は消失していき、硬質な響きがもたらされるような印象にも感じ入ったり・・・。
そしてそのアプローチは実際に3次元の要素を取り込むことにより、さらに複雑な空間を創出していきます。
ある場所をそのまま空間ごと、そして実物大でトリミングしてきたようなインスタレーションが唐突に展示スペースの真ん中に現れ、この静かな存在感に意識が沈みこんでいきます。
切り取られる壁面のシャープさと無機的な生々しさ、合わせて写真の額までもがカットされ、臨場感もより鋭く伝わり、そこに収められるかたちや線もいっそう幾何学的な面白さを前面に押し出しているように思えてきます。
捉えられる風景自体は何の変哲もない、だからこそ景色の切り取り方の面白さが際立って感じられ、たとえ人工物であっても人の気配さえ感じられないその冷徹な風合いが、しかし淡々として穏やかに響いているのが心地よいです。
奥のスペースでは片山博文さんのインスタレーションが。
これまでも何度か拝見しているのですが、個展で観られるのをずっと楽しみにしていたので、今回の展示に接することができて感無量。
良知さんが展開するのとはまた異質の無機的な情景が並びます。
こちらもまた一見して何の変哲もないように思える、現代建築の内装などを捉えた画像。しかしさらに硬質な、無機的と言ってしまうにはあまりにも硬質な雰囲気が漂っているように感じられます。
僕自身も、今年の初めにこちらで開催された写真家の新作展で拝見したときにスタッフの方に教えていただいたのですが、この作品はすべてPC上で制作されていて、即ち目にしている画像は一切が数値であることを知らされ、大いに驚かされた次第。
そう聞かされると、この圧倒的な静謐感、過剰に無機質な気配にも納得がいきます。
しかし、コーナーなどの線がシャープに描き出されるのはなんとか理解できるとして、当たるライトの光の広がりや樹脂製の床に映り込む壁面の滲むような虚像など、この微妙な表情さえも緻密に再現されているところに、いっそうの凄みを感じずにはいられないという...。
全体がぼやけるような展開も印象に残ります。紡がれる気配自体の臨場感は相当に濃密で。
PC上でエフェクトをかけてこういう質感が生み出せるようなのですが、だとしてもこの曖昧な気配感が導き出されていることに感じ入る次第で。単にぼやけただけではなく、つまりは一度シャープにモチーフを再現したところから像を歪ませているのだと思えてきて、その過程にも強い興味が向かっていきます。
圧倒的な写実性、そこに動きがあるのであればそれすらも緻密に描ききってしまっているほどのリアルさは、一見すると単なる写真にしか思えず、しかしその凄まじいほどの再現性が、重厚な面白さを力強く発しているように感じられます。一切の隙のない展開、そして描くモチーフのチョイスや構図の生々しさは、むしろアバンギャルドにも思えてくるほど。このアクロバティックなクリエイションがさらにどんな展開を繰り広げていくかへも、好奇心が膨らみます。