@TOKIO OUT of PLACE
東京都港区南麻布4-14-2 麻布大野ビル3F
7/31(金)〜8/29(土)日月火祝休
12:00〜19:00
4-14-2-3F,Minami-azabu,Minato-ku,Tokyo
7/31(Fri)-8/29(Sat) closed on Sunday,Monday,Tuesday and national holiday
12:00-19:00
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TOKIO OUT of PLACEでの3人展、国内外の女性アーティストをフィーチャーし、軽やかさと深みをたたえる空間が創り出されています。
まず、今回初めて伺ったTOKIO OUT of PLACE。奈良にあることは以前から存じ上げていたのですが、さすがにそこまでいくことは難儀でいつか伺えたら、などと考えていたところ、今年に入り東京へ進出。昨年のART OSAKAではベテランの写真家のクリエイションを多く紹介されていた印象があるのですが、今回の展覧会のような比較的若手のアーティストのレコメンドへも期待が湧いてきます。
明治通り沿いにあるビルの3階、比較的コンパクトな空間で、エレベーターを降り、ちょっと狭めのカウンターの前を通り過ぎて辿り着くギャラリースペース。トーヴェ・クレイストさんのインスタレーションがそのすぐ右手の一角に現れます。
わずかな空気の揺れでくるくると緩やかに回転する、押し花の要領で乾かされた葉っぱ。それらは茎を真ん中にして右左に生える葉を畳み、重ねて押されています。乾いて独特な色味を帯び、ほんのりと透ける葉脈が不思議な雰囲気を醸し出すだけでなく、あたかも虫がついて食べたように欠けているのが実はパンチングマシンで施され、開けられた穴であったりと、さまざまなユーモアも潜みます。
そのなかに紛れるようにして、ちいさな板の上にちいさなフィギュアがちょこんと。
おそらく銅の板、そこに施される緑は七宝によるものだそうで、葉っぱの色と馴染んでいるのもまた面白く、葉っぱ状のかたちをしていると思いきや、ものによってはそこに乗っている人のシルエットか象られていたりと、だんだんといろんな要素が静かに立ち上がってきます。
その真下に置かれるジオラマ風の情景もかわいらしいことこの上なく。
佇む摩天楼の素朴さ、錆びた金属板で形作られる木々、そしてここにも人々が。
なんとも不思議な味わいを醸し出す空間です。
平面作品も数点展示されています。
トレーシングペーパーを何層か重ねて構成された作品、その層がもたらす空間のイメージも興味深く感じられます。
ひとつ向こうの紙に描かれ、わずかにぼやけた風合いを奏でる線と、もっとも手前の表面の強い黒。そのコントラストが豊かな情景感を導き出しているように思えます。仄かに妖し気な気配も漂わせながら、随所に施されるパターンのリズムの唐突さ、緻密な描写の草花とひっそりと描く加えられたかのような人物の縮尺のズレなども加わり、なんとも不思議な印象です。
この3人展のなかにあって、隠崎麗奈さんの立体作品の発色の勢いは群を抜いています。
造形のシュールさ、いったいこれは何のかたち、と謎めかせつつも、圧倒的にポップな配色がその曖昧さを払拭してしまっているように感じられます。
ひたすらにキャッチー、その佇まいは痛快です。
壁面に展示された作品も同様に、その造形には濃い謎を伴います。
なんとなく甘いお菓子を想像させるのですが、どこから眺めてもただただポップなイメージを膨らませてくれるのが楽しく、またパステル調の軽やかな色彩も爽やかです。
Gallery Terra Tokyoでの個展も印象に残る源生ハルコさん。今回はお馴染みの金魚を封印し、モノトーンと鮮やかな色調とのコントラストを駆使しながら、独特の情景を創出しています。
写真と見紛うような緻密な描写が奏でる圧倒的なリアリティ、それで無垢な女の子の表情を描かれていることが、謎めく情景により深い混迷をもたらしているように思えてきます。
縮尺は統一されているはずなのに、鮮やかな色彩で臨場感たっぷりに描かれる蝶と毛虫のインパクトが相当に危うい臨場感をもたらしているように思えます。
モノトーンで精緻に捉えられる光の表情、女の子の肌の脆弱さ、そして「いったいいつ?」を思わずにはいられない、懐かしいようでも未来ていでもあるような気配感。そこに登場する蝶と毛虫は、圧倒的な現実感を誇り、それがむしろ、煮詰まり濃度を過剰に増した幻想世界のもののようにも思えてきたりして、その想像の飛躍も新鮮だったり。
粗目の支持体が採用されているのも印象的です。
丁寧に下地が作られていて、そこに広がる背景の白も描かれる女の子の無垢な気配を深めていると思う一方で、側面の支持体のものとしての生々しさが、また異なるギャップを導き出しているように思えます。
まさに三者三様のクリエイションが揃っているのですが、これがひとつの空間に収まって、見事に調和しているよう感じられるのも興味深いです。
女性らしい作品の仕上がりそのものへの繊細さ、そして作品に込められるセンシティブな印象など、いろんな気付きがもたらされる展覧会です。
この度は『こわくないもん』展をご高覧下さり、そして素晴らしいレヴューを書いて下さり、心からお礼申し上げます。作家3人のそれぞれの些細なしかし重要な点をご観察されていることに深く感銘しています。作家達もよろこんでいることでしょう。本当にありがとうございました。今後もどうぞよろしくお願い申し上げます。