@TSCA KASHIWA
千葉県柏市若葉町3-3
9/20(土)〜10/25(土)日月祝休
12:00〜19:00

Yoshitaka Yazu "Holy and Commom"
@TSCA Kashiwa
3-3,Wakaba-chi,Kashiwa-shi,Chiba-ken
9/20(Sat)-10/25(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
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回転運動が放つアーティスティックな光。
TSCA KASHIWAでの矢津吉隆さんの個展です。
矢津さんはあのANTENNAの元メンバーで、主にドローイングを担当されていたそうなのですが、今回の個展ではまさに一転、さまざまなものを回転させ、そこに現れる像の美しさ、鮮やかさをアーティスティックに提示するという、実にドリーミーなインスタレーションを展開しています。
まず、吹き抜けの部分に設置される、花畑。
どこかのんびりとのどかでありながら、回転のスピードのヴィヴィッドさが、コンクリートむき出しの空間が放つソリッドな雰囲気に鮮烈に立ちのぼります。
階段を上がって2階のロフトへ。
いつもと異なり、壁面などが真っ黒に塗られた空間。
壁に設置されたキューブのなかで、さまざまなものが高速回転しています。
何せ回転しているので分かりにくいのですが、目を凝らして観てみて、予想外の物が回っていることに驚かされます。
思いもつかない手法によって引き出される美しさ。ただ単に回転させているだけ、そのシンプルな手法が逆に大きな意外性を導き出しているような印象で、感心や感動がふわっと広がり、心地よい高揚感に包まれます。
続く長いスペースには、写真作品が展示されています。
被写体は、先ほどの回転体。静止画に収められた時の美しさもひときわ鮮やかです。
平面に収められる残像、そのフォルムが放つフューチャリスティックなシャープネス。
静止画だからこそ感じ取れる、揺らぐような、溶けるような光の広がり、滲みによって提示去れるさまざまな光の色彩の表情。この鮮やかさへ至る道程に思いを馳せてさらにイマジネーションは刺激され、それ以前に美しいものを美しいと、かっこいいものをかっこいいと感じるプリミティブな感性で楽しめる一角です。
最後のスペースは暗室になっています。
そして、これまでは基本的に既成の物を回転させた作品でしたが、ここからは作品そのものが発光し、回転、それが実に鮮やかで、シャープな微睡みを提示してくれるかのような感触が堪らない空間となっています。
ここで展示されている作品すべて、回転する羽のようなものに設置されたダイオードがランダムに発光し、その表情を変化させながら、さまざまな光景が導き出されています。
まず、入って左、床置きにされた3点の赤い回転体。
ひとつの色彩、しかも赤、という強く深い色。3つの回転体がランダムにさまざまなかたちの組み合わせを提示し、変化が更に複雑に提示されています。
ランダムに光の色も変えていく、壁面に設置された作品。
色の変化がとにかく楽しく、加えてかたちの変化もイマジネーションを刺激してきます。
少し高い位置に設置されている、小さめでひときわ強く鋭い白色の回転体。
光そのものの強さが、強烈な存在感を放っているように感じられ、シンプルであることがかたちの変化を臨場感たっぷりに展示してくるような感じです。
いちばん奥の壁面に設置されている巨大な(敢えてこの言葉で表現させていただくと)謎の重機。
このサイズ、連続作動はおよそ10分で、ひとたび回転が始まると、その風圧もリアルな臨場感を醸し出します。
そして、さすがにこのサイズだけあって、迫力もケタが違うような印象です。
変化もさらに複雑で、最初はシンプルなフォルムを提示ししていながら、時間が経つにつれてランダムにさまざまな光景を提示してきます。
とにかく見応えのある展示です。
回転する作品は、写真だとやはりその臨場感が伝わらず口惜しい限りなのですが、ぜひとも足を運んでいただいて、このユニークなクリエイションに直に触れていただきたいです。
モーターやダイオードなど、テクノロジーを駆使しながらも、アートがアートとして面白い大事な要素である「手仕事」だからこその面白さ、さらにそれが手法やアイデア、技術の提示だけに留まらず、動くそれぞれの作品を観ていて斬新な刺激をたっぷりと受けた次第です。
冒頭で矢津さんがANTENNAのドローイングを多く手掛けられたと書きましたが、今回の個展でも事務所にタブローが展示されていて、これも実に良い味わいなのです。
ひとりのアーティストが持つ奥行きとしては相当な深さを感じます。
これからの展開もすごく楽しみです。