エレベーター付近の一角と、メインの空間とで、それぞれのユニークな個性がその感性を力強く放っています。
今回はエレベーターでのみ入れるようになっています。まずは内海陽介さん。
[ghostwork]内海陽介
@magical,ARTROOM
東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F
8/8(金)〜9/7(日)
12:00〜20:00

Yosuke Uchimi "ghostwork"
@magical,ARTROOM
1-18-4-3F,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo
8/8(金)〜9/7(日)
12:00〜20:00
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昨年のART AWARD TOKYOの準グランプリ受賞も記憶に新しい内海陽介さん、出品数は5点と少ないものの、ジオラマ的、演劇的なシチュエーションをダークに描いた作風はそのままに、さらに緻密な描写により、そこで起こっている状況の表現の奥行き感がぐんと増した印象を受けます。
中学生くらいの頃にタミヤの1/35MMシリーズのプラモデルをさんざん作った身としては、この雰囲気のカッコよさにはまったく抗えず・・・、そのとき自分の心に植わったある衝動を再び呼び起こしてくれるような感触が堪らないです。
昨年の大丸東京店でのグループショーでも出品されていたシリーズの新作も、さらに凛としたフォルムで紙のオブジェが描かれているのが印象的です。
一風変わったアプローチの情景に加え、暗い空間を彩る絶妙な陰影が、絵画史に連綿と綴られる静物画の流れにもユニークなアクセントをもたらしているように思えてきて痛快です。
人の群れが登場する作品における特徴的なダイナミズム、切り紙を描いた作品の独特な渋さ。どちらのシリーズも今後の展開がすごく楽しみです。
続いて、秋山さんの個展スペースへ。
[ミクロマクロモノクロームカラー]秋山幸
@magical,ARTROOM
東京都渋谷区恵比寿1-18-4 NADiff A/P/A/R/T 3F
8/8(金)〜9/7(日)
12:00〜20:00

Miyuki Akiyama "micro macro monochrome color"
@magical,ARTROOM
1-18-4-3F,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo
8/8(金)〜9/7(日)
12:00〜20:00
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4つの要素を一まとめにした展示タイトルにより、最初に心に「ひっかかり」がもたらされます。
このタイトルは秋山さんの制作の過程を端的に現したものだそうで、今回発表された作品も、イマジネーションがそれぞれの要素を行き交い、関係性を伴って制作されているようで、それを頭の片隅に入れて拝見すると更に奥行きが増して伝わってきます。
ドローイングがばらばらと壁に配された一角。
この雑然とした壁面に配される無数のモチーフが、束になって迫ってくるような感触。
まさに、浮かんだイメージの断片をさまざまなかたちで切り取り、あるものによっては軽やかに展開させたような感じが伝わってきます。
比較的青が多く用いられているせいか、この季節に眺めていて涼しく感じられるのも嬉しい限りです。
このドローイングが「ミクロ」で、それら同一のキャンバス上で重なり、絡み合うことで「マクロ」が構成されていきます。
その壮大なマクロの世界のひとつ手前、キャンバスの小品では、ドローイングでひとつ転がったイメージのサイコロがもう2回くらい転がされたような軽やかさと、その分だけもたらされる深みが印象的です。
一転して、大きな画面の作品は、重厚でヴィヴィッドな混沌が生み出されています。
鮮やかな色彩感でダイナミックに描き上げられる世界。
素材感がそのまま表れるアバンギャルドな絵の具の飛沫によるパワフルなテクスチャー、そのシャープさとは裏腹の、アブストラクトな透明感をたたえた微睡むような色の広がり。それらが複雑に関係しあって、激しさと緩やかさとのギャップ生み出し、ここから溢れるストーリーに深みをもたらしているように感じられます。
今回の展示でもっとも大きな作品は、まさに圧巻です。
画面全体に広がる赤のエネルギッシュな迫力、その赤の侵食にまるで対峙するかのように、それぞれが力強い自然のイメージを思い起こさせる青や緑が存在感を際立たせているように感じられます。
そして、描き込まれるさまざまな動物のシルエット。大型哺乳類のおおらかで艶やかなラインと、小動物の脆弱さを詰め込んで画面の中のノイズとして機能している様子、そのかかわりによってダイナミックな時間の感覚が、過剰な曖昧の中で紡がれているように感じられます。
随所に見受けられる絵の具の垂れた痕跡や飛沫が、現実との距離感を複雑にしているような風合いも痛快です。
秋葉原での101アートフェアで秋山さんの作品を拝見した時は、多くの人が行き交う騒々しくもワクワクする雰囲気の中で、もっと雑然とした混沌が放つインパクトに圧倒されたのですが、今回はもっと強固なストーリー性が感じられ、印象に残ります。