@GALLERY TERRA TOKYO
東京都港区麻布台2-3-5 NOAビル1F
7/26(土)〜8/23(土)日祝休
10:00〜19:00
Haruko Gensho "SUISOU"
@GALLERY TERRA TOKYO
2-3-5-1F,Azabudai,Minato-ku,Tokyo
7/26(Sat)-8/23(Sat) closed on Sunday and national holiday
10:00-19:00
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緻密な筆致で紡がれる、ざらついた残像のような。
GALLERY TERRA TOKYOでの源生ハルコさんの個展です。
源生さんの作品はこれまでも拝見する機会があり、ていねいな描写で描かれる金魚などの姿が印象にこっているのですが、今回はそこにさらに展示全体の構成によって深遠な雰囲気が作り上げられ、作品が奏でる臨場感に、より説得力がもたらされているような感じです。
入口近くのモノクロームの作品。
鉛筆などによるていねいな陰影で描き上げられた金魚。それを覗き込む子供の無垢な表情。
濃淡だけでなく、異なる質感の黒がひとつの画面に用いられることで複雑な時間のイメージがもたらされているような感じがします。
また、モノクロームだからこその深みが、ざらりとした妖しい風合いや、その場面に登場するそれぞれの生命の関係性の脆弱さのようなものを滲ませ、さらにそれが強さへと転化しているようにも思えてきます。
実に緻密の描き上げられた蘭鋳。
水中にぷあぷあと佇むどこかコミカルで味わい深い姿。その背や尾鰭に蝶が止まることで、なんとも不思議なシチュエーションがつくり出されています。
画面中に添えられるように取り入れられた乾燥植物も、現実との距離感をさらに曖昧で不思議なものへと押し上げているよう感じられます。
女の子の顔を大きく描いた作品は、この展示の大きなアクセントとなっています。
「スイソウ」、水槽の音をカタカナ表記した展示タイトルに、他の女の子が登場する作品と呼応しあい、物語性に深みと重厚さをもたらしています。
ほぼ全体をモノクロームで描かれた、静かでやわらかい表情。閉じられた目蓋だけがほんのりと赤く染まり、それが現実的な生々しい感触をもたらしています。
いちばん奥に展示された作品は、萎んだ花と咲き誇るが登場し、さらにその萎んだ花のなかにモノクロームの光景が描き込まれています。
穏やかな大胆さを持つ空間性に、この複雑な構成で描かれた作品が、さらに深い物語の世界へと誘ってくれるような気がします。
金魚というある視点において日本的なモチーフを大きく取り入れ、その華やかなで儚げな姿をていねいに表現し、そこにひとつ統一感を通しておいたうえでおおらかな余白やバリエーション豊富な素材の使用、女の子や萎んだ花などの他の要素を絡めるなどにより、実に深く豊かな世界が繰り広げられているような印象を受けた次第です。
全体に満ちる深みと、作品それぞれの見応えとが、実に分厚いイメージをもたらしてくれます。