鈴木友昌展
@SCAI THE BATHHOUSE
東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
03-3821-1144
1/22(金)〜2/20(土)日月祝休
12:00〜19:00
Tomomasa Suzuki
@SCAI THE BATHHOUSE
Kashiwayu-Ato, 6-1-23,Yanaka, Taito-ku,Tokyo
1/22(Fri)-2/20(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
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むしろ肖像画のような深みを堪能。
SCAI THE BATHHOUSEでの鈴木友昌さんの個展に行ってきました。
たった4体の、しかも膝の高さほどの大きさの木彫の作品だけで構成されたインスタレーション。初日のレセプションでの大勢の人がひしめくなかでも決して埋もれることなく、むしろ小さいことがその存在を際立たせているかのようにも感じられ、日を改めて伺うと、今度は充分に余裕のある天井高を備えるこの空間の潜在的な力が表出し、作品の縮尺と再現性の高さも効いて、より壮大なスペースに圧倒的な静謐感が満たされ、ある種の荘厳な気配を伴って迫ってくるように感じられた次第。
僕が申し上げるのもおこがましいですが、昨今のアートに接していて木彫のユニークな個性に接する機会は多く、その流れの中で人物をモチーフとした木彫作品はひとつのスタイルとして捉えられると思います。その一方で、木彫によるスーパーリアルな表現も、シーンの一部をしっかりと担っているように感じられるのですが、鈴木さんの作品はそのどちらの面も備え、彫られる人物の顔立ちから指先の、着衣や手に抱えるさまざまなアイテムに至るまで、彩色も含めてモチーフとなった人物が精緻な縮尺で再現されます。
しかし、須田悦弘さんや前川冬樹さん他のスーパーリアルな作品を目にしていると、その再現性の高さ自体には正直なところそれほど驚かされないと感じます。それでもこれほどまでに引き込まれるのは、恐らくその制作の工程にあるように思えるのです。
プレスリリースを拝読すると、モチーフとなる人物と対面、対話しながら彫られるとのこと。それを踏まえて眺めていると、そこにいる木彫の人物のさまざまな自己表現の部分がより強い意味をもって迫ってくるように感じられてきます。
髪型や衣服からはもちろんのこと、「わざわざ」ドラムのスティックを握っていたり、レコードを脇に抱えている姿が、被写体の人物の強烈なアイデンティティの提示のように思えてくるのです。
さらにひとつひとつの仕草や徹底したディテールの再現にも想像が膨らみます。
例えば「ああ、この人は普段はこのメーカーのコーラを飲んでるのか」とか、さらにはもしかしたら、
「いつもそれ、飲んでますよね」
「そうなんだよこれマジでいけるんだよイェー」
みたいな会話も交わされたのかも...例えの陳腐さには目を瞑ってもらうとして、拘られたディテールのひとつひとつがいろんな空想のエピソードを脳裏に呼び込んでくるんです。
全方位で創り出される肖像画、そういう印象を覚えます。
この縮尺で指に挟むタバコや眼鏡などが緻密に木彫で再現されていることに対してはそれでも無論充分ぐっと引き寄せられる要素であり、しかしそれ以上に、その咲く品に置ける、その人物がそうのように再現されていることから始まっていく、そして深まっていく「対話」が心に残ります。
加えて、やはりこの縮尺というのも、作品との対話を深める大きな理由になっているようにも思えます。もしこれが実物大で制作れていたとしたら、もっと強いインパクトとしての臨場感に圧倒されるようにも思えるのですが(それはそれで体感してみたいです)、コンパクトに再現されているからこそ、想像の流れが自然にもたらされてさまざまなイメージが積み上げられていくのかも、とも。
何はともあれ、観られてよかった展示であり、このインスタレーションを体感できたことが嬉しく思えます。