2008年05月31日

review:村田朋泰展「ブロンズと胸像と」《5/3、5/13》

村田朋泰展「ブロンズと胸像と」
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6 サンビル第3 2F
5/3(土)〜5/31(土)日月祝休 5/3開廊
12:00〜19:00
村田朋泰080503.jpg

Tomoyasu Murata "With a Bronze and a Busts"
GALLERY MoMo
6-2-6-2F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo
5/3(Sat)-5/31(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
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全編を貫く「黒」が奏でる、交錯する時間性。



GALLERY MoMoでの村田朋泰さんの個展です。

いつものように、レトロ風味と未来的なイメージとが混ざりあったような独特な描き味のキャラクターがそれぞれの作品で登場し、ユニークでユーモラスな物語をつくり出しています。

・・・しかし、今回はその物語のなかの時間の流れが格段に複雑な時空の絡まりを思い起こさせるんです。



まず、入口に入る瞬間。
人影を見つけて


「あ、こんばん・・・」

と素で挨拶しかけたところで



人形かよ!Σ( ̄口 ̄;)


村田朋泰301


実物大かよ!Σ( ̄口 ̄;)
ていうか実物より大きい!Σ( ̄口 ̄;)

これ、2度目に伺ったときも、階段を昇っているときに「いるんだよな...」と意識してから入ったのにも関らず、やっぱり

あ、こんばん...ハッ!!!Σ( ̄口 ̄;)


とまたもや素で挨拶しようとしてしまった次第で。

この人形は平塚市美術館でも登場していたので、いったい何体あるのかと。
ずらっと並んだところを想像したらちょっとシュール、もとい、かなりシュール(汗)。



昨年の個展に続いて、今回もパステル調のコンテ作品が手前の壁に並び、やさしい静けさがおだやかに広がっています。
描かれる人々のやわらかい表情がぬくもりを醸し出して、気持ちよく心に満ちていきます。


村田朋泰302



で、今回はいままで以上にペインティングを中心に据えた構成。
ほぼすべての作品の背景が黒で、これまでの村田さんのペインティングの「日常のなかの不思議」的な世界から一気に飛んで、「『壮大な』日常のなかの不思議」といった感触の作品が並びますってこの表現で伝わらなかったらごめんなさいごめんなさい。

おなじみのへんてこな植物の巨大オブジェ(こんなに大きな設定だったのか!Σ( ̄口 ̄;))と隣り合わせで展示されている大きな作品。
キッチュな縮尺感がユニークな奥行きと空間性を生み出しています。


村田朋泰305 村田朋泰304 村田朋泰306

村田朋泰303



そして、暗めの照明のなかにずらりと展示されたペインティング群。
ひとつひとつを眺めていって、そこに登場するキャラクターたちをヒントに関係性を考えながら繋げていくのがとにかく面白くて刺激的です。


村田朋泰315



一見して桃屋「ごはんですよ」のCMのキャラクターを数割増しでかっこよくしたような肖像、その肖像の男が違う画面でブロンズ像になっていたり。


村田朋泰307

村田朋泰309



また、ある作品ではウィッグみたいに頭部から離れているような感じで登場している髪が、別の画面で西洋的な衣装に身を纏うある女のものであると分かったり。


村田朋泰313 村田朋泰308

村田朋泰312



この宇宙服を着た人がもしかしたら例のイケメン桃屋という設定かも、と思い浮かべたり、他にもさまざまなキャラクターやアイテムが画面を出たり入ったりしながら、さらに「ココは何所?」的ないろんなシチュエーションで繰り広げられていて、多数展示されている作品にひとつひとつ目を向けながら、その順番を頭の中で組み換えていって、勝手に自分のストーリーをつくり出すことを惹起するような感触です。


村田朋泰311 村田朋泰310

村田朋泰314



昔思い描いた宇宙の壮大さ、時間を経るにつれてより宇宙へのイメージが具体的になってしまったおかげで想像の部分が相当に修正されていったのですが、今回の村田さんの作品群を眺めていると、修正前のイメージに、むしろその想像をより具体化、具現化していくような印象を受けます。
そしてそこには、言うまでもなくこれまで村田さんが紡ぎ出していったクリエイティビティがしっかりと入っていて、あの独特な未来レトロ風味も随所に織り込まれているように感じられるのもなんとも嬉しい限りです。

ここから始まっていく物語も、そこに例のイカやさかだちくんが絡んでいくかも知れないと考えたりすると、さらに楽しみになってくるんです!


村田朋泰317



村田さんと言えば、その平塚市美術館の大規模な個展も実に楽しかったです。


村田朋泰 個展 “夢がしゃがんでいる”
平塚市美術館
神奈川県平塚市西八幡1-3-3
4/12(土)〜5/25(日)月休(祝日の場合開館、翌日休。5/6開館)
9:30〜17:00
村田朋泰080412.jpg

シチュエーション設定といい、動線の随所に投入されるたくさんの映像作品といい、村田さんのエンターテイナーっぷりが十二分に発揮された展覧会でした。
掴めそうで掴みきれないようなもどかしさがあって、それがまた味わい深いと言うか...。一昨年の原美術館での束芋さんの個展にも通じる、クリエイションの懐の深さを感じ取れるような印象を受けました。

機会があれば、旧家屋1軒をまるまる使った村田さんのインスタレーションを観てみたい気がします。
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2008年05月30日

〜5/27のアート巡り

《5/23》
楊雅淳「at the point of turning」
MEGUMI OGITA GALLERY
東京都中央区銀座5-4-14 銀成ビル4F
5/23(金)〜6/14(土)日月祝休
12:00〜19:00
楊雅淳080523.jpg

まず、「変わったなぁ・・・!」という印象。
そして、変わった中でも楊さんの面白い部分、独特のユーモアはしっかりと残っていて、それがまた堪らない感じで!



Identfy IV -nca group exhibition
nca|nichido contemporary art
東京都中央区八丁堀4-3-3 ダヴィンチ京橋B1
5/23(金)〜6/21(土)日月祝休
11:00〜19:00
Identity 080523.jpg

なんといってもピュ〜ぴるさんのオブジェに視線が釘付け!
初日でお客さんも多かったこともあり、ピュ〜ぴるさんの作品のインパクトに他の作品の印象が薄く(汗)、あらためてしっかり観に行きたいと思います。



debut! ver.NANA IIZUKA 飯塚菜菜 個展
谷門美術
東京都港区北青山3-3-7 第一青山ビル1F
5/23(金)〜6/14(土)祝休(日月:要予約)
12:00〜19:00
飯塚菜菜080523.jpg

アルミニウムの支持体に、独特のテクスチャーで紡がれる、鈍い色調ながらも透明感ある抽象世界。
そして、画面から立ち上がる絵の具の立体感がまた違う面白い一面をつくり出しています。



《5/24》
山元勝仁 "PLANETIZE ME"
YUKA SASAHARA GALLERY
東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F
5/17(土)〜6/21(土)日月祝休
11:00〜19:00
山本勝仁080517.jpg

文句なしに面白い!
紙を使ったファンシーな展開と、それを支持するパネルに描かれたヴィヴィッドな色彩の抽象表現がもたらす壮大なスケール感とが、ハッピーな雰囲気に溢れつつも、だからこそそれが逆に振り、アバンギャルドな感触も充満させていて、とにかくかっこいいんです。



西松鉱二・藤戸美和世・片野まん展「うひょ〜!!!」
mori yu gallery
東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F
5/17(土)〜6/14(土)日月祝休
11:00〜19:00
うひょ〜080517.jpg

入っていきなり


く、くどい!Σ( ̄口 ̄;)


と心の中で叫んでしまうほどに、壁を埋め尽くしまくるペインティング群。


まず、入口沿いの壁が片野まんさんのおおらかでヴィヴィッドなペインティングで占められています。
描かれていてなお膨張中拡大中、楽しくってしょうがなくて、止めどなく溢れるイマジネーションの勢いを感じざるを得ない、痛快きわまりないクリエイション!


うひょ〜!!! 片野まん01


モノクロームの展開の作品も、このシンプルでクールな色調ながらその勢いに減速の予兆をいっさい感じさせない、むしろ色に制限があることで観るものの空間的なイマジネーションをおおいに刺激してくれるような印象です。


うひょ〜!!! 片野まん05 うひょ〜!!! 片野まん04 うひょ〜!!! 片野まん03

うひょ〜!!! 片野まん02



藤戸美和世さんの作品は、色とかたちのシャープなヴィヴィッドさが鮮烈!

「毒」て!Σ( ̄口 ̄;)
花柄で「毒」て!Σ( ̄口 ̄;)

と、なんかもういろんなことがどうでもよくなってきちゃうようなラリラリな感じがたまらないっていう!


うひょ〜!!! 藤戸美和世03 うひょ〜!!! 藤戸美和世01

うひょ〜!!! 藤戸美和世02



そのなんとも幸せ〜な感じを締める西松鉱二さんの作品。

勝新か!Σ( ̄口 ̄;)
座頭一か!Σ( ̄口 ̄;)

・・・

急に渋くないか!Σ( ̄口 ̄;)
ケーキ屋でショートケーキ食べて最後に渋い緑茶が出てきたように渋くないか!Σ( ̄口 ̄;)

板に箔、という激渋の組み合わせで超ドメスティックなクールネスが突然現れます。


うひょ〜!!! 西松鉱二01


なんかもう、この構成に脳内が揺さぶられてついていけないような(汗)



車明熹展
SPACE355
東京都中央区東日本橋3-5-5 矢部ビル1F
5/12(月)〜5/31(土)日祝休
11:00〜19:00
チャ・ミョンヒ080512.jpg

遠目で眺めると水面に浮かび立つ草のように見えるのですが、近付くと背景のグレーに黒い線がすらりすらりと入っている、実にシンプルな絵画。
見えるものを何か知っているものに変換しようとする自然な感性の存在を改めて認識しつつ、静謐な色調でおだやかに心象を表現したような作品の渋さがじわりと心に静けさをもたらしてくれるような感じです。



重野克明「いつもあこがれ。」
KIDO Press
東京都江東区清澄1-3-2-6F
5/17(土)〜6/28(土)日月祝休
12:00〜19:00
重野克明080517.jpg

重野さんのリトグラフ。

重野さんというと、銅版画がまずあって、クリームのような油彩も印象的なのですが、そのふたつのクリエイションの隙き間を埋めるような印象を受ける作品です。
一貫した古めかしさ、少なくとも、おそらく僕ら以上のの世代までの日本人が共有していると思うある種の「懐かしさ」「あたたかみ」が、いかにもリトグラフらしい滋味溢れる濃淡をもたらす線で表現されているように感じられます。

うぶで朴訥として、ほんのりと滑稽な感じもありつつ、それがこの時代に生み出されていることのシュールさ、危うさも思い浮かんだり。。。
記憶と想像とが脳裏を行き交って、不思議な時間の流れをもたらしてくれるような印象です。



川島秀明 "wavering"
TOMIO KOYAMA GALLERY
東京都江東区清澄1-3-2-7F
5/17(土)〜6/7(土)日月祝休
11:00〜19:00
川島秀明080517.jpg

現代の、もとい、23世紀の美人画だと思います。
やわらかで繊細な色彩感、これだけシュールに進化したような頭部でも、美しく見えて、自然なんですけど、不思議にも感じられます。



笹岡啓子 写真展
TAMADA PROJECT CORPORATION
東京都中央区月島1-14-7 旭倉庫2F
5/24(土)〜6/27(金)日月祝休
12:00〜19:00
笹岡啓子080524.jpg

今年のVOCA展にも出品されていた笹岡啓子さんの、これまでの作品を一堂に集めたような展覧会です。
力強さを感じる自然を捉え、そこにほぼどの作品にも人の姿がいっしょに捉えられていることに気付き、小西真奈さんのペインティングを思い浮かべ、写真でありながら、この風景に人を描き加えているような絵画的な感触が思い浮かび、新鮮な印象を受けた次第です。



Recent Drawings−加藤泉 小西真奈 小西紀行 梅津庸一 渡辺豪
ARATANIURANO
東京都中央区新富2-2-5 新富二丁目ビル3A
5/24(土)〜6/28(土)日月祝休
11:00〜19:00

ARATANIURANOおなじみののアーティストの作品が一挙に展示された展覧会です。
まず、小西紀行さんの作品群、丸の内でのNEW TYOKO CONTEMPORARIESでエスカレーターのところに展示されていたペインティングをあらためて観られるのが嬉しい!
すべてが人の頭部を描いていて、思いのほかさまざまな色彩や筆の流れが入っているにもかかわらず、すべての作品で、顔のパーツが赤い線や点で描かれていることによりひとつの強固な統一感がもたらされているような印象を受けた次第で。

渡辺豪さんの出力作品の美しさにも強く魅せられます。
黒い画面に絶妙の白のグラデーションで描かれる、渡辺さんらしい無機的な佇まいの女性を感じさせる姿。
もう1点、カウンター越しの壁に展示されている、こちらも例によって無機的なリアリズムをたたえる表情の女性に淡いシルエットが重なる作品。
どちらも独特の未来的な雰囲気を鋭くクールに、そして儚く充満させています。



青木良太展
TKG Editions
東京都中央区銀座1-22-13 銀座カーサ1F
5/24(土)〜6/7(土)日月祝休
11:30〜19:00
青木良太080524.jpg

ほのかに土の色が感じられる白の涼しげな風合い、厚めの底から縁に向かうに従って薄くなっていく洗練冴えれたフォルムの、手に取ったときの心地よい重み。
さまざまな接し方でその心地よさが伝わる、美しくていとおしい陶の器が並んでいます。
壁沿いの、さまざまな色や柄が施された大きめの器のひとつひとつの美しさも印象に残ります。


青木良太03 青木良太01

青木良太02



横井山泰 個展「西の窓」
@元麻布ギャラリー
東京都港区元麻布3-12-3
5/19(月)〜5/30(金)5/23、5/26休
12:00〜19:00(最終日:〜17:00)
横井山泰080519.jpg

近作と新作とが合わせて展示されていることもあり、これまでの横井山さんのクリエイションを一度にチェックできる展覧会です。

キャラクターの緩い感じ、それぞれの作品に登場するさまざまな表情を浮かべる人たちが醸し出す空間性のユニークさが印象に残ります。
背景を染めるヴィヴィッドで深い色のケレン味のなさが、その個性的なキャラクターと空間性の面白さを更に強調しているように感じられます。

この独特の深みによって生み出される世界、今回は1点1点が独立した場面を現しているような印象を受けたのですが、機会があればひとつのストーリーの展開をひとつの展覧会で感じさせてくれるような、展示されている作品同士の関係性がより具体的に思い浮かべられるような構成の展示を観てみたいです。



牛島孝「陽炎」
GALLERY SIDE2
東京都港区東麻布2-6-5
5/24(土)〜6/20(金)日月祝休
11:00〜19:00
牛島孝080524.jpg

箔の輝きが薄い和紙の奥で独特の静謐を醸し出す、美しく仕立てられた支持体。
そこに、敢えてと表現したくなるくらいに殺伐な風合いで描かれる、ユニークな空間性を放つ作品。
ある種のケレン味のなさが面白く、また、空間を支配する力も発しているように感じられるクリエイションです。



《5/25》
ArtGaia Nominees 9 ebc展 Hand in Hand
アートガイア・ミュージアム東京
東京都品川区上大崎3-1-4 RE-KONW目黒4F
5/17(土)〜5/30(金)火休
11:00〜19:00
ebc 080517.jpg

各メンバーの作品がそれぞれ一角にまとめて展示され、それぞれが隣り合う位置にそのメンバーの共作が展示される構成になっています。
金丸悠児さんのおなじみのカメが井上さんによってアニメーションになっていたり、その金丸さんと茂木あすかさんのカラフルなドットがひとつの画面に収まっていつもと違う楽しげな雰囲気をつくり出していたり、井上さんの映像を深海武範さんの女子高生が観て涙している作品がクスッとさせてくれたり。



《5/27》
個展 中本智絵 ―夢走―
みゆき画廊
東京都中央区銀座6-4-4 銀座第ニ東芝ビル2F
5/26(月)〜5/31(土)
11:00〜19:30(最終日:〜17:00)
中本智絵080526.jpg

院展を拝見すると、そのほっこりとした風合いがいつも印象に残る中本智絵さん。
いつか個展を拝見したいと思っていて、今回はじめて伺うことが出来た次第です。

どこかほのぼのとしてやさしい風合いが広がる作品が並んでいます。
独特の味わいの色調を背景にさまざまなモチーフが配される平面的な展開はどこかコミカルで、思わず笑みがこぼれてしまいそうな滋味に溢れています。


中本智絵03 中本智絵01

中本智絵04



おもちゃ箱のような、楽しさを詰め込んだ感じも、嬉しい懐かしさを思い起こさせてくれるような感じです。
画面のそこかしこに広がる途切れるような線やふわっと走る色彩の飛沫が、時間的な奥行きを演出しているように感じられるのも楽しげに伝わってきます。


中本智絵02



チェ・ウラム "anima machines"@SCAI THE BATHHOUSE
東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
5/27(火)〜6/28(土)日月祝休
12:00〜19:00
チェ・ウラム080527.jpg

究極的に洗練された機能美と、アーティスティックな美しさと。
ここで構築されている未来的な感触は圧巻です。

極めてメカニカルな作品が3点、それぞれ機械的な音をたてながら動きます。このノイズも心地よいんです。
その立体的なフォルム、そこにある緻密さを眺めているだけでも充分に掻き立てられるものがあるのですが、それがさらに動きを伴うと、ワクワクする感じもよりいっそう高まります。
いつまでも眺めていられる、至高のクリエイションです。

チェ・ウラムさんの作品は初台のNTT ICCのオープンスペースでも展示されていて、こちらは今回の個展に出品されている無数の花が灯る作品の、その花のひとつを巨大化したようなもので、まずその迫力に呑み込まれるのですが、こちらは「動いているらしいけど本当に動いているの?」と疑いたくなるほどに実にゆったりと動いていて、1時間後のかたちがまったく異なっていたことの驚きは相当なインパクトをもたらしてくれます。
ぜひともいっしょにチェックしてほしいです。
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2008年05月29日

review:鈴木健司展《5/23》

鈴木健司展
ギャラリー惣
東京都中央区銀座7-12-6 銀座トキワビル5F
5/20(火)〜5/31(土)日休
11:00〜18:30(最終日:〜16:30)
鈴木健司080520.jpg

Kenji Suzuki exhibition
Gallery So
東京都中央区銀座7-12-6 -5F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
5/20(Tue)-5/31(Sat) closed on Sunday
11:00-18:30(last day:-16:30)
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シルバーに染まるキャンバスの力強さのインパクトが鮮烈なクリエイション。


ギャラリー惣での鈴木健司さんの個展です。

まず、正面に展示された大作に目が向かいます。シェル美術賞にも出品された作品とのこと。
全面に広がるシルバー、そこに乗る色面、細かく描かれていくビル群を思わせる無数の白い線。
いくつもの景色がひとつの平面で展開され、異なる奥行きやスケール感が重なってユニークな世界を構築しています。


鈴木健司04 鈴木健司03 鈴木健司02

鈴木健司01



全体の無彩色の色調が、シャープな感触をと立ち上げます。
そして、白い線での細かい展開は、ここからまだどんどんと続いて描かれていく過程、未完成の風合いを醸し出しているように感じられます。


鈴木健司08 鈴木健司07

鈴木健司06



さまざまな大きさ、かたちのパネルでの展開も興味深いです。
大きな作品での壮大なスケール感と比較して、小作品ではより凝縮し、ある光景にスポットが当てられたかのような印象を受けます。


鈴木健司09 鈴木健司12 鈴木健司10

鈴木健司11



シルバーでない作品も数点展示されていて、他の色調での展開がいっしょに展示されることで、イメージの奥行きに深みが出てきます。


鈴木健司14

鈴木健司13



アーバンな混沌と、世紀末的な殺伐とした感触とが独特のクールな世界を作り上げているような感触です。


鈴木健司05
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2008年05月28日

review:ペインティングの恋人 Lovers of Painting《5/17》

ペインティングの恋人 Lovers of Painting 田中奈津子、渡辺紗知子、羽部ちひろ、吉田典子、樫木知子
MEM
大阪府大阪市中央区今橋2-1-1 新井ビル4F
4/30(水)〜5/24(土)日月祝休
11:00〜18:00
海岸通ギャラリーCASO
大阪府大阪市港区海岸通2-7-23
4/29(火)〜5/18(日)
11:00〜19:00
ペインティングの恋人080429.jpg

Lovers of Painting Natsuko Tanaka,Sachiko Watanabe,Chihiro Habu,Noriko Yoshida,Tomoko Kashiki
MEM
2-1-1-4F,Imabashi,Chuo-ku,Osaka-shi,Osaka-fu
4/30(Wed)-5/24(Sat) closed on Sundey,Monday and nationali holiday
11:00-18:00
Gallery CASO
2-7-23,Kaigann-dori,Minato-ku,Osaka-shi,Osaka-fu
4/29(Tue)-5/18(Sun)
11:00-19:00
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女性アーティスト5名をフィーチャーし、MEM海岸通ギャラリーCASOで同時開催された企画です。
MEMでは小品を展示、一方で海岸通ギャラリーCASOでじゃその広い空間を活かして大作を展示しダイナミックにそのクリエイティビティが発揮されていて、今のこの世代のオイルペインティングの面白さが充分に詰まった、実に楽しく見応えのある展覧会で、またこういった機会に未知のクリエイションに出会えることも、毎度のことながら嬉しい限りで。



渡辺紗知子さん。
幾何学的なかたちと有機的なかたち、それぞれが織りまぜられて、楽しげな混沌を生み出しています。


MEM渡辺紗知子01


描かれるシチュエーションのユーモラスさが際立ちます。
明るめの色調で、思いのほか具体的なものが多く描き込まれて、それらがドライなストーリー展開を思い浮かばせてくれるような感じです。


MEM渡辺紗知子03 MEM渡辺紗知子05 MEM渡辺紗知子04

MEM渡辺紗知子02


CASOでの大作は、縮尺感はそのままに、さらに多くの情報がひとつの画面に注ぎ込まれ、そこに起こっているストーリーにキャッチーでキュートなダイナミズムをもたらしているように思えます。


CASO渡辺紗知子01

CASO渡辺紗知子02


ざくっと筆を走らせて伸びやかな色面の広がりをもたらしているところと、細かい描き込みとが絡み合って、独特のスピード感を放っているのも印象に残りました。


CASO渡辺紗知子05 CASO渡辺紗知子04 CASO渡辺紗知子06

CASO渡辺紗知子03



吉田典子さんの作品は、甘いフォルムとくっきりとした色調とで、キャッチーな風合いがもたらされたシュールな世界がめくるめく繰り広げられています。
深め、濃いめの色調の、色そのものの重みが強調されているように感じられる構図も印象的です。


MEM吉田典子01

MEM吉田典子02



大作でのさらなる迫力!
けっこうなインパクトをもたらしています。
思いきりのよさ、ケレン味のなさが痛快で、ぶわっと膨張するような溢れる勢いが痛快です。


CASO吉田典子02

CASO吉田典子01



今回唯一、拝見したことがあるアーティスト、樫木知子さん。
ギャラリーなつかでの二人展で拝見していたのですが、こういった場所で再びお目にかかれ、しかもそれが素晴らしかったのがホントに嬉しくて・・・!


MEM樫木知子01

MEM樫木知子02



ベージュ系の淡い色調、そこに潜むように描かれる人の姿。
生活感が滲むような風合いがリアルな臨場感を生み出していて、同時にだからこそ現実からの遠さ、シュールな妖しさ、色めきをも思い起こさせてくれます。


MEM樫木知子04 MEM樫木知子06 MEM樫木知子05

MEM樫木知子03



CASOでの大作も、やっぱり素晴らしいです!
広い画面に儚げな風合いを醸し出しながら穏やかに広がるやさしい色調。
ぶわっと広がる青白い花、上方に浮かぶような女性、すらりゆらりと舞うような淡くくっきりとしたベージュの色面。その傍を沿うように漂う仄かな青。
その色から滲む未来的なか感覚と懐かしいような雰囲気を背景に、細かい描き込みとアンバランスな構成とでうまく言葉で表現できないような妖しい世界を紡いでいます。


CASO樫木知子04 CASO樫木知子05 CASO樫木知子06

CASO樫木知子03



何よりその色調の風合いが存分に活きた、どこか古めかしい雰囲気もあり、かつ観たことのない未来的な感触も伝わるクリエイションです。


CASO樫木知子02

CASO樫木知子01



羽部ちひろさんの作品は、吉田さんのと同様に、濃厚な色調のインパクトにまず引き寄せられます。
そして、もっと身近な印象のある事物が引用され、しかもその組み合わせの違和感がシュールな感触をぐんと全面に押し出されるようなユニークさが独特の世界を作り上げているように感じられます。


MEM羽部ちひろ02

MEM羽部ちひろ01



膝丈のスカートを履いた女の子を思わせるような白の色面、足の部分が山道のような感じにも。
そしてそのスカートの部分、全体を俯瞰すると空のようにも思えますが、そこに淡い赤の線で描かれる石積みのゲートと舟が、時空の複雑な絡みを思わせます。


MEM羽部ちひろ04 MEM羽部ちひろ05

MEM羽部ちひろ03



色調、世界観ともに濃い印象なだけあって、CASOでの大作のインパクトはかなり重厚に感じられました。


CASO羽部ちひろ02 CASO羽部ちひろ03

CASO羽部ちひろ01



重厚であるのですが、小品、MEMに出品されていた作品に加えて同時期に開催されていたFUKUGAN GALLERYでのグループショーで拝見した作品での濃密さと比べるとよりおおらかな色使いで、それが羽部さんの独特の世界の雰囲気に作用し、コミカルさも感じさせてくれたような気がします。


CASO羽部ちひろ04 CASO羽部ちひろ06

CASO羽部ちひろ05



田中奈津子さんの作品は、MEMでのぎゅっと詰まった構成により、画面から盛り上がるシャープな立体感がより際立ち、アバンギャルドなクールさが伝わってきます。
それぞれ、煌めくようなヴィヴィッドさを強く発しているように感じられます。


MEM田中奈津子03 MEM田中奈津子04 MEM田中奈津子02

MEM田中奈津子01



ひとつひとつの画面にひとつの世界を描いたシンプルな小品と比べると、大作では混沌の度合いがぐんと高まります。
さまざまな筆の運び、表現法により、それぞれの色調のヴィヴィッドさがキレを増し、力強い迫力を伴って眼前に迫るような感じが印象に残っています。


CASO田中奈津子02 CASO田中奈津子03

CASO田中奈津子01



ピップアップされた5名のアーティストは、ふたつの空間で大作と小品を同時期に発表することでそれぞれがその個性をしっかりと発揮しているように思えて痛快だったと同時に、まだまだ未完成な部分、おそらく自身が伝えたいイメージと描いてこの時点でできあがっている世界との詰め切れないギャップの存在のもどかしさのようなものも伝わってくるような感じもあり、逆にその不安定さというか、完成されていないからこその魅力も鮮烈に感じられました。

それぞれのクリエイションがこれからどういう方向へと向かっていくか、ホントに楽しみです!
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2008年05月27日

review:「お釈迦様の掌」宮永愛子 人長果月 塩保朋子《5/17》

「お釈迦様の掌」宮永愛子 人長果月 塩保朋子
ARTCOURT Gallery
大阪府大阪市北区天満橋1-8-5 OAPアートコート1F
5/7(水)〜6/7(土)日月休
11:00〜19:00(土:〜17:00)
お釈迦様の掌080507.jpg

Oshakasama no Tanagokoro Aiko Miyanaga,Kazuki Hitoosa,Tomoko Shioyasu
ARTCOURT Gallery
1-8-5 -1F,Tenmabashi,Kita-ku,Osaka-shi,Osaka-fu
5/7(Wed)-6/7(Sat) closed on Sunday and Monday
11:00-19:00(Sat:-17:00)
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ダイナミックなクリエイションを繰り広げる3名の女性アーティストがパッケージされた展覧会です。
それぞれのインスタレーションが空間を隔てて繰り広げられ、迫力と臨場感に満ちた展開がなされています。


宮永愛子さん、おなじみの塩の結晶のインスタレーション。


ACG宮永愛子02

ACG宮永愛子01



正面の、通常ではふたつの空間を繋ぐ長い空間を用いての展開で、その長い空間の両端を繋ぐように張られた無数の糸。そこにびっしりと、大阪湾の海水から抽出された塩の結晶が付き、自然光を受けてキラキラと輝いていました。

宮永さんのインスタレーションはいつも、さまざまなイメージをを心にもたらしてくれます。
「塩」がこの空間と海とを繋いで壮大なイメージを提供してくれたり、または、その塩の結晶のかたちの偶然性と脆さとが、どこか儚げな、切ないような風合いも醸し出しています。


ACG宮永愛子04 ACG宮永愛子05

ACG宮永愛子06



今回はじめて拝見する、人長果月さんの作品。
インタラクティブな映像インスタレーションです。

暗い空間、正面の壁に大きく映し出された映像。
それをその反対側の壁にもたれて眺めているうちは変化しないのですが、ギャラリーの中央に置かれた横長の黒いセンサーに近付くと、それにより、ダイナミックかつ重厚に映像が展開していきます。


ACG人長果月03 ACG人長果月02 ACG人長果月01


展覧会タイトルの「掌」を連想させる、画面右からぬっと突き出る巨大な手。
反対側からは無数の人の肢体が花吹雪さながらにくるくると舞い広がっていきます。
そのシーンに続いて、今度は観る人の立つ位置に泡が湧き、そこからさまざまな事物がどんどんと現れ、画面上方へと浮かび消えていきます。

大きな画面で体感する非現実的な情景、キャプションによると芥川龍之介の「蜘蛛の糸」もアイデアの基のひとつにあるようで、この力強い妖しさ、魑魅魍魎の雰囲気に呑み込まれるような感触が深く印象に残ります。


ACG人長果月04



塩保朋子さんの作品は、人長さんの映像作品が上映されているスペースの手前の小さな空間にまず小品が展示されています。
合成紙を用い、細かなカットや、おそらく合成紙を熱で加工するという手法で制作されたと思われる作品。


ACG塩保朋子02

ACG塩保朋子01



ただただ、この細やかさで綴られる華やかな情景に惹かれていきます。
塩保さんのこのサイズの作品をじっくりと拝見したのは今回が初めてでしたが、このサイズだからこそ感じられる臨場感、そこに施されたテクスチャーの緻密さをよりしっかりと感じ取れたのが何より嬉しく思えます。


ACG塩保朋子06 ACG塩保朋子05

ACG塩保朋子04



そして、人長さんのスペースと反対の、天井が高い空間。
こちらでは、塩保さんの大きな作品によって、実におおらかで深遠な世界がつくり出されています。


ACG塩保朋子08 ACG塩保朋子10 ACG塩保朋子09

ACG塩保朋子07



高い天井から降るように設置された4本のタペストリー。
そこには、信じられないほどにびっしりと、細かいカットが施されています。
見上げて、どこまでも続いていく有機的で妖艶な世界。

圧巻の一言に尽きます。
薄い紙の素材感。天女の羽衣、そんな言葉を連想させる神々しさ、華やかさ。
また、空間的につくり出されている「縦」の動線が、実にダイナミックなインパクトをもたらしています。
うっすらと映り込むシルエットもまた美しく感じられます。
ここにあるのは紙の色だけ、何の色彩も用いられていないのに、イメージの中でこの空間が彩りに溢れていくのも興味深いです。

そして、このサイズになると、全体すべてをひとつの視界で捉えたときの印象も。よりダイナミックなものになります。至近で眺めたときの緻密なカットを実感し、全体をを見渡したときに、そこにある凄まじいほどの情報の渦に、目から受けるインパクト以上の迫力に埋もれる...そんな、身震いするような情動に包まれます。


ACG塩保朋子11



それぞれが実に見応えある展開を繰り広げています。
会期も6/7まで延長されたそうで、ぜひとも一人でも多くの方にこの荘厳さを実感してほしいです。
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2008年05月26日

review:松原健個展「水の中のナイフ」《5/17》

松原健個展「水の中のナイフ」
eN arts
京都府京都市東山区祇園北側627 円山公園内八坂神社北側
5/2(金)〜5/31(土)金土日のみ
12:00〜18:00
松原健080502.jpg

Ken Matsubara solo exhibition "KNIFE IN THE WATER"
eN arts
,Gion-kitagawa,Higasiyama-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu
5/2(Fri)-5/31(Fri) only Friday to Sunday (appintment only on anather days)
12:00-18:00
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「問われる」ことの心地よさ。



eN artsでの松原健さんの個展です。
複雑な動線のeN artsの空間に、ほぼひとつの壁に1点ずつ、穏やかで知的で、大いに謎めいている写真作品がゆったりと静かに展示されています。


松原健03



展示されている作品は、すべて、動と静とが組み合わさった構成になっています。
「動」を現す、刹那的な事物のさまざまな「瞬間」を捉えたもの。
「静」を現すのは、機能美と表現するには「美」の要素があまりにも少ないと思える、オフィス家具。
それぞれの画面で、これほど異なる要素を持つ画像がひとつの画面に並べて収まっているのですが、それらは驚くほどにギャップを感じさせず、当たり前のように、最初からこういうふうに並ぶべくして生み出されたかのように、実に自然に隣り合っています。


松原健02



炎、ミルククラウン、噴射する煙、コップからこぼれ落ちる水。。。
それぞれ、あまりにも刹那的な、一瞬たりとも同じかたちでいることがない事物。
そのある種の決定的な瞬間が、まるでそのかたちにぴたりと静止したかのように、画面の中で、穏やかな緊張感を漲らせています。

その一方で、オフィス家具は、その機能のみを徹底して追求されているフォルムをより際立たせるかのように、殺人の残り香はおろか、生命の存在をまるで否定するかのような殺風景な空間に朴訥に存在しています。
しかし、わずかにインスタレーションが施されていることで、微妙にその存在の意味を匂わせているように感じられるのも興味深く...。


松原健01



このある種の相対関係を感じさせる2つ、もしくは3つの画像が自然に穏やかに並んでひとつの作品として目の前に現れたとき、そこにあるかもしれないメッセージをの存在を、自然に静かに探り始める自分に気付きます。

そして、そこに込められた何かは何故か、分からなくてもいい、そういう静かな気分に満たされるんです。
そうやって問われることが何故か気持ちいい...。
作品と観る者との言葉のない対話が沸き起こり、導かれ、緩やかな時間を自ら紡いでいくような感じがなんとも心地よく感じられるんです。



eN artsの大好きな場所、地下のブラックキューブには2点の作品が展示されています。


松原健06



それぞれ、モノクロームの作品です。
1階のカラーの作品も充分に、落ち着きに満ちた色調の静かな力強さが印象的なのですが、窮屈な黒い空間にモノクロームの作品という組み合わせが、「知」の密度をさらに濃く展開しているように感じられます。


松原健05



八坂神社の北側の通りの実にエキゾチックでドメスティックな雰囲気に満ちた場所に突然現れるコンテンポラリーアートの空間というシチュエーション、そしてさらに、そのなかで繰り広げられている世界の独特の静けさ。

さまざまなかたちでイマジネーションを刺激してくれるだけでなく、深く静かに押し拡げてくれる、知性と静謐に満ちた展覧会です。


松原健04
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2008年05月24日

review:荒木恵信展《5/17、5/19、5/22》

荒木恵信展
新生堂
東京都港区南青山5-4-30
5/14(水)〜5/24(土)日祝休
11:00〜18:00(最終日:〜17:00)
荒木恵信080514.jpg

Keishin Araki exhbition
Shinseido
5-4-30,Minami-aoyama,Minato-ku,Tokyo
5/14(Wed)-5/24(Sat) closed on Sunday and national holiday
11:00-18:00(last day:-17:00)
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あたたかい風、穏やかな空気。



新生堂での荒木恵信さんの個展です。
スルガ台画廊での個展で拝見して、ていねいな景色の描写と独特のマチエルに大いに惹かれて以来、主に院展で発表される作品を中心に観続けてきたのですが、今回の個展ではパネル3枚組による大作と小品とが拝見でき、眼前の光景への慈しみ、やさしい視線が伝わるあたたかい作品が揃い、久々に荒木さんが紡ぐさまざまな情景を堪能できる機会を得られた感じです。


ふたつの展示室、まず正面の大作に目が止まります。
夕暮れ、仲間のシルエット、どこまでも続いていく茜色の空。
支持体のやわらかな風合いとそこに施される無数の筋が、色彩のやさしい感触をさらにおだやかに、ふわりと演出し、そこに流れる時間の緩やかさがじんわりと伝わってきます。
画面の広さは迫るような力強さを発することなく、ただ静かに、穏やかに広がりをもたらしているのも印象的です。


荒木恵信11 荒木恵信10

荒木恵信09



2点並べて展示されているスクエアの小品が素晴らしいです。
赤く染まる海景、そこにぽつねんと浮かぶ船影。この画面にしてこの空間性の深み。
もう1点の、日常の人々が行き交う慌ただしさが過ぎ去り、広がる穏やかさを想わせるシーン。
どちらの作品にも、色彩の落ち着いた鮮やかさが満ちています。


荒木恵信01

荒木恵信02



いつもと同じ目の高さで触れる光景を描く作品が並びます。
たとえ、描かれている景色を知らなくても、「分かる」感覚。
このやさしい印象が、荒木さんが描く日本画の大きな魅力に思えます。


荒木恵信06

荒木恵信07



日本の田園、南の島の椰子の木々、それぞれが、多すぎず少なすぎずの情報の量と色彩とで描き上げられ、なんだか懐かしい感覚も心の中に広がっていくような気がします。


荒木恵信05 荒木恵信04

荒木恵信03



膠などの盛り上げによる工芸的な作り込みのインパクトとは反対の、画面の細かい凹凸。
緻密に、かつ流れる時間をやさしく捉えるように描かれる情景。
そこには「軽み」「軽やかさ」が満ち広がっています。
そして、描く情景は、目の前の場面を描くと同時に、「光」を描いているような印象も受けます。

確かな技術と感性によって導かれる、やさしい風景、場面。
慌ただしさから解かれたような穏やかな心地よさが心の中に灯ります。


荒木恵信08
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2008年05月23日

〜5/22のアート巡り

《5/21》
一美里展 -MOTHER-
フタバ画廊
東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F
5/19(月)〜5/25(日)
11:00〜19:00(最終日:〜16:00)
一美里080519.jpg

透明感溢れる青が画面いっぱいに広がる作品が、ちいさな言葉が添えられた一風変わった丸いキャプションと合わせて展示されています。

青の美しさ、瑞々しさが印象的です。
艶やかな仕上げが施されていて、それが抽象の世界に不思議な奥行きをもたらしています。
ひとつの色彩による展示の構成がやや情報の厚みに欠けるような印象も受けたのですが、涼しげな色に囲まれるのは心地よいです。



池田路世
ギャラリー椿GT2
東京都中央区京橋3-3-10 第1下村ビル1F
5/19(月)〜5/24(土)
11:00〜18:30(最終日:〜17:00)
池田路世080519.jpg

油彩の肖像画、木彫に油彩が施されたお面、それらを配した風景の写真が展示されています。

クオリティが高いです!
ペインティングの妖しげな雰囲気も、すべて木彫りで作り込まれ、微妙な顔の凹凸も緻密に再現されたお面の存在感も、1点1点ちお対峙しているときに感じる説得力に力強さを感じます。
なかでも、お面に腕、手を加えて構成した作品が漂わせる深みが特に印象的です。
機会があれば、お面と平面、それぞれの展開での展示も拝見してみたいです。



LIGHT SCAPE 高木彩展
Gallery K
東京都中央区京橋3-9-7 京橋ポイントビル4F
5/19(月)〜5/24(土)
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
高木彩080519.jpg

この色彩感が気持ちいいです。
ふわっと膨らむような、それでいてしんとただ静かに広がるような明るめのパープルに、不思議なフォルムの光が灯るような、あるいは水面に映り込む明かりのような...そういう印象の抽象の世界。
紙とキャンバス、それぞれの作品のテクスチャーの差も興味深いです。
高木さんが想い描く情景と、今回の作品との差はまだまだあるのかな、という印象も持ちます。もっと深みのある世界を観せてくれるような気がして、今後の展開が楽しみです。



<極めて明白展> 村尾成律 うらうらら 河野紋子 鹿野氏郎
Gallery Q
東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F
5/19(月)〜5/24(土)
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
極めて明白展080519.jpg

参加されている4名のなかで、唯一はじめて拝見する村尾成律さんの作品がとにかく凄いです。
モノクロームで描かれる場面、そこに人の姿だけヴィヴィッドな色調と緻密な写実的表現で、それでいてしかもその一部が消えていたり、ありえない位置に浮遊していたりと、危うい雰囲気も鮮烈に、そして深遠に放っていて、強く印象に残ります。

TWS本郷での展開がそのまま持ち込まれている感じのうらうららさんのアバンギャルドな立体、艶やかで鋭い発色の鹿野氏郎さんのペインティング、河野紋子さんのどこかのんびりとしていてポップ、同時にメランコリックな肖像も。



渡辺香代子展
巷房・1
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル3F
5/19(月)〜5/24(土)
12:00〜19:00(最終日:〜17:00)
渡辺香代子080519.jpg

先日のGEISAIミュージアムで拝見した渡辺香代子さん。
個展では、落ち着いた照明により、そのウォームな色調で穏やかに、仄かに紡ぎだされていく遠い記憶のような世界がより臨場感を伴って現れているように感じられます。


渡辺香代子02 渡辺香代子03

渡辺香代子01


やさしく、やわらかなグラデーションが印象的です。
蝋燭の炎のような儚げな風合いも。


渡辺香代子04



劉孝澄 Liu XioaCheng 日照香爐生紫烟
東京画廊
東京都中央区銀座8-10-5-7F
5/21(水)〜6/14(土)日月祝休
11:00〜19:00(土:〜17:00)
劉孝澄080521.jpg

実際に拝見すると、こんなにも印象が変わるのか...とあらためて気付かされる、ギリギリの最終日貴銀杏が印象的な油彩のペインティング。
そこに込められた、どこか達観したような風合いも心に残ります。
時間をかけてじっくりと味わいたい世界です。



《5/22》
古賀充
a・Pex
東京都渋谷区猿楽町2-12 相野谷ビル201
5/17(土)〜5/25(日)月休
11:00〜20:00
古賀充080517.jpg

これまでも折りに触れて拝見し、河原で拾った小石で作るちいさなオブジェがホントに素敵な古賀充さん、今回の個展では落ち葉を使った作品が発表されています。

実際に目にすると、その細やかで温かみに溢れた仕上がりにぐっときてしまいます。
落ち葉に施された緻密なカット、それによって表現される、虫たちや木々などのシルエット。
素材の素朴さと、シルエットのシャープさとが、お互いの味わいを引き立てあっているように感じられます。


古賀充02 古賀充04

古賀充03



おなじみの小石のオブジェも。
丸い木調のテーブルの上に置かれ、それだけでちいさな宇宙を作り上げています。


古賀充05

古賀充06


a・Pexは伺う度にそこに置かれているアンティーク家具が異なっていて、空間としてさまざまな表情を持っているのですが、今回はひぼひとつの色調で統一され、まるで秋の装いを感じさせてくれます。
そこに、落ち葉の作品が並び、渋くも軽やかな空間が広がり、落ち着いた感触が実に心地よいんです。

古賀さんの作品はぜひ直に拝見して、その細やかさを堪能してほしく、あわせて渋い家具に囲まれた独特の空間も合わせて味わってほしい、素敵な展示です。


古賀充01
posted by makuuchi at 16:37| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月22日

review:田中麻記子「sigh/kehai」《5/9、5/15》

田中麻記子「sigh/kehai」
hpgrp GALLERY 東京
東京都渋谷区神宮前5-2-11 H.P.DECO 3F
5/9(金)〜6/1(日)
11:00〜20:00
田中麻記子080509.jpg

Makiko Tanaka "sigh/kehai"
hpgrp GALLERY TOKYO
5-2-11-3F,Jingumae,Shibuya-ku,Tokyo
5/9(Fri)-6/1(Sun)
11:00-20:00
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突然、ヴィヴィッドな世界へ。


hpgrp GALLERY 東京での田中麻記子さんの個展です。

新宿タカシマヤでの個展など、これまでも田中さんのクリエイションは多く拝見しているのですが、今回の個展が端丸ずいぶん前から「次は油彩で」というお話を伺っていて、そのときから楽しみだったのですが...


いや、これほどまでに濃密な世界が観られるとは... と。


入口の階段の黒い壁に2点。
見上げるようにして眺める作品。ここから、よく知っているはずの世界の未知の領域へと一気に誘われます。


田中麻記子412

田中麻記子411



田中さんというと、細かな描き込みで生み出されるファンシーでファタジックな鉛筆画をまず思い浮かべるのですが、僅かに水彩絵の具でちょっとしたアクセント的に色が灯されているとはいえ、ほぼ無彩色の世界をずっと観続けていたところで今回の油彩の作品を拝見して、そのヴィヴィッドな色彩感と、それでいいてこれまで体験したことがないような深み、ゆらゆらと揺らめくような風合いに触れ、これまでのイメージとのギャップがぐんと心の中で膨張します。


田中麻記子405



そこに描かれる世界は、どこまでも妖艶。
無数の色彩が重なり、それが描き出すさまざまな場面。大きな作品ではひとつの画面にたくさんのシーンが収められていて、画面の上に視線を這わせていると、その連なりがおおらかな時間の流れを提供し、壮大でな物語が綴られていくような感じです。
また、これだけのシーンがひとつの画面に収められていながら、むしろその違和感が心地よいのも印象的です。流れ落ちる滝やヴィヴィッドな色調で描き上げられる水面の輪を思わせるもの、さらに底に登場する人物。それらの縮尺感が不思議なくらいに自然に受け入れられる感じがするのも面白いです。


田中麻記子404 田中麻記子402 田中麻記子403

田中麻記子401



小品では、ひとつの画面にひとつのシーンが描かれているような感じです。
小さいながら、実におおらかな光景で、そこで繰り広げられる場面もロマンチックだったり、アグレッシブだったり。。。


田中麻記子407 田中麻記子408

田中麻記子406



この短い期間に今回出品されている作品が制作されたようなのですが、そのなかで変化が感じられるも興味深いです。
比較的早い段階で制作された作品群がまとめて展示された一角、そこに描かれているシーンは、そのひとつの場面がより具体的で、硬質な構成に感じられます。


田中麻記子409



hpgrp東京の戸塚さんが今回の油彩の作品とこれまでの鉛筆画との関係性を、鉛筆画がより俯瞰した景色で、今回の油彩はそこにズームアップしたような感じと仰っていたのですが、なるほどなぁ、と。
よりそれぞれのシーンを具体的に、濃密に伝えているような感じがホントに堪らなく、力強く感じられるんです。

そして何より、油彩の面白さを感じられる展覧会です。


田中麻記子410
posted by makuuchi at 09:04| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年05月21日

〜5/18のアート巡り

《5/15》
荒木恵信展
新生堂
東京都港区南青山5-4-30
5/14(水)〜5/24(土)日祝休
11:00〜18:00(最終日:〜17:00)
荒木恵信080514.jpg

日本画家、荒木恵信さんの久々となる個展です。
さまざまな風景が、個性的な仕上がりによって描き出され、描き手の想いが伝わるやさしい世界が紡ぎ上げられています。



松下康平 SUMI ART -大地-
COEXIST
東京都港区赤坂3-8-8-2F
5/12(月)〜6/6(金)日休
11:00〜19:00
松下康平080512.jpg

主に炭を素材として制作される松下康平さんの個展です。
環境問題を一風変わったアプローチで提示する作風も興味深いです。



《5/16》
東島毅展 Nio,Life doesn't frighten me.
第一生命南ギャラリー
東京都千代田区有楽町1-13-1
5/16(金)〜6/13(金)土日祝休
12:00〜18:00
東島毅080516.jpg

でけぇ!Σ( ̄口 ̄;)

まずそのサイズに驚嘆。

入口の右手は床全面を占める作品、左手には壁全面を覆うほどの作品。
オープニングで大勢の方がいらっしゃる中でしたが、油絵の具の鈍い黒光りが絵の前に立つ人々の影を打つ仕込む感触がすごくよくて。
描かれた風景、そういった思いを抱かせる作品です。



TOKYO EYE 04 大瀧歩美 永戸鉄也 山下春菜
大丸東京店10Fアートギャラリー
東京都千代田区丸の内1-9-1
5/14(水)〜5/20(火)
10:00〜20:00
TOKYO EYE 04 080514.jpg

今年の武蔵野美術大学での卒業制作も印象に残っている大瀧歩美さん。
独特の鮮やかさと深みをもった色使いで描かれるキュートさと影を感じさせる女の子。仄かな緊張感も漂わせつつ、透明感とメロウな風合いとが伝わってきます。

山下春菜さんの作品は、独特の色調で描かれる混沌の中にさまざまな生命の存在などが描き込まれていたのが興味深かったです。

もう一度伺うつもりが時間が取れずに再訪ならず...あらためてそれぞれの個展なども拝見したいです。



東恩納裕一「rerfact!」
CALM & PUNK GALLERY
東京都港区西麻布1-15-15 浅井ビル1F
5/16(金)〜6/5(木)
11:00〜19:00
東恩納裕一080516.jpg

作品はずいぶん前、アートを見始めるょり以前にも拝見したことがある東恩納さん、個展で拝見するのは今回が初めて。それも、天井も高く容量としての充分な広さの空間を持つCALM & PUNK GALLERYでの展覧会ということで、始まる前から楽しみにしていたのですが、中央に吊られた蛍光灯のシャンデリアや、床に置かれた円形の蛍光灯が輪になって連なる作品など、独特の迫力と説得力に満ちた不思議なゴージャス感が広がるインスタレーションが繰り広げられています。

蛍光灯の作品の他では、黒のスプレーで吹き付けて制作された平面の作品、マスキングを駆使したりカーテンの上からスプレーをかけるなどして描き出されたシルエットが光を捉える感触。蛍光灯の作品ともイメージを共有できる感じがして、面白いです。



《5/17》
「お釈迦様の掌」宮永愛子 人長果月 塩保朋子
ARTCOURT Gallery
大阪府大阪市北区天満橋1-8-5 OAPアートコート1F
5/7(水)〜5/24(土)日月休
11:00〜19:00(土:〜17:00)
お釈迦様の掌080507.jpg

ユニークなメディアでの作品を発表されている3名のアーティストによるグループショーで、各々のアーティストごとに空間を分けて展示されています。
3名とも与えられ