2008年04月30日

review:坂口竜太 個展「退屈な一日を過ぎて夜になる」《4/26》

坂口竜太 個展「退屈な一日を過ぎて夜になる」
@Niche Gallery
東京都中央区銀座3-3-12 銀座ビルディング3F
4/23(水)〜5/2(金)日休
11:00〜18:30
坂口竜太080423.jpg

Ryuta Sakaguchi exhibition
@Niche Gallery
3-3-12-3F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
4/23(Wed)-5/2(Fri) closed on Sunday
11:00〜18:30
Google Translate(to English)



スクリーンで体感する映画のような分厚さ。


Niche Galleryでの坂口竜太さんの個展です。
壮大なスケールでダイナミックなシーンを描いたような大作、複雑なテクスチャーを取り込んで屋内を描く作品群などにより、画面の大きさで異なる世界が描き分けられています。

まず目に止まるのが大作群。
「引き」の視点で描き上げられ、ダークな色調でそのときそこで起こっているさまざまなことが盛り込まれて、視線を変えるごとに変化していく状況が、ひとつの静止画面からまさに分厚い時間のイメージがダイナミックな迫力とともに伝わってきます。


坂口竜太04 坂口竜太03 坂口竜太02

坂口竜太01



アバンギャルドな色調も相当なインパクトを放っているように感じられます。
力強く重厚なグラデーションと生々しい筆致とが、焦燥感を煽り、灼熱を帯びた深みを醸し出しているように感じられます。
小さく描かれる人々の様子からも動的なイメージが発せられ、さらに臨場感が分厚く感じられるんです。


坂口竜太08 坂口竜太06 坂口竜太07 坂口竜太09

坂口竜太05



室内のシーンを描いた作品では、今度はさまざまな筆の運びなどでもたらされる深みのあるテクスチャーを駆使し、大作の臨場感と通ずるとも異なるとも言える、不思議なシチュエーションを作り出しています。


坂口竜太16

坂口竜太18



油絵の具が画面を垂れた跡や滴の飛沫などによって壁の凹凸感などが表現され、重厚な色彩とあわせて重々しくも深い説得力を持った状況が伝わってきます。


坂口竜太11 坂口竜太12

坂口竜太10



その室内にあるさまざまなものがしっかりと細かく描き込まれているのも印象的です。
独特の筆致によって視界が揺らめき、歪むような感触があって、この空気感が画面からリアルに広がっているように思えてきます。
大作にある動的なダイナミズムはないものの、それでもそこに凝縮された分厚い時間のイメージにじわじわと呑み込まれていくような力強さに惹かれます。


坂口竜太14 坂口竜太15

坂口竜太13



実験的な、遊び心も感じられる小品も。
明るい色調が妙な妖しさを放ち、その中央に白と青の点で描かれる動物のシルエットが不思議な風合いを醸し出しています。


坂口竜太20

坂口竜太19



坂口さんの作品を拝見して、そのダークで激しい色調と筆の運びに触れ、ヴラマンクや佐伯祐三を観て面白いと思う感覚と通ずる印象を受けた次第です。
ただ、ヴラマンクや佐伯と比較すると、その「温度」のイメージはまさに逆で、ダイレクトに「熱さ」が感じられる風合いなのが新鮮で、相当なインパクトをもたらしてくれるような気がします。
また、そういったアバンギャルドな感触が広がる中で、どこか未来的なイメージを刺激してくるように感じられるのも不思議です。


坂口竜太17
posted by makuuchi at 08:44| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月29日

review:山下美幸「ノンシャランな時々」《4/19》

山下美幸「ノンシャランな時々」
TSCA Kashiwa
千葉県柏市若葉町3-3
4/19(土)〜5/17(土)日月祝休
12:00〜19:00
山下美幸080419.jpg

Miyuki Yamashita "des moments nonchalants"
TSCA Kashiwa
3-3,Wakaba-chi,Kashiwa-shi,Chiba-ken
4/19(Sat)-5/17(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
Google Translate(to English)



屋根裏から屋根裏へ。
なんだかこの空間のつながりが嬉しい・・・!



もとい。

TSCA Kashiwaでの山下美幸さんの個展です。
山下さんは昨年秋のBOICE PLANNINGでの個展も記憶に新しいところですが、それから期間をおかずに始まった今回の個展。
前回に引き続き、今のオイルペインティングの面白さを充分に備えた伸び伸びとした創造性に満ちたおおらかで瑞々しい世界が広がっています。


山下美幸014



階段を上がって最初のロフト。
広い壁面に展示された2点の大作。
水辺を思わせる深い青の透明感、随所に表れる光を放つような青白い色調。
ほぼ実際の大きさで人々が描かれていながらも、大人びたファンタジーが滲み渡っているような、フィクショナルな空間が描き上げられています。
ところどころにもたらされる、絵の具が画面を垂れた痕跡も、このシチュエーションの心地よい曖昧さに合っていて、自然に溶け込んでいるように感じられるのも不思議です。


山下美幸016 山下美幸017 山下美幸018 山下美幸019

山下美幸015



今回の個展のクライマックスのひとつが、TSCAの空間の大きな特徴であり特性でもある長い空間に展示された、およそ10mにも及ぶ絵巻風の展開の作品。
空を飛んでいるような気分になったかと思ったらいつの間にか海に潜っていたり...そんな塩梅で細長い画面で繰り広げられるダイナミックな展開、その随所に織り込まれるキュートなユーモアがまた堪らなく楽しかったり。


山下美幸010 山下美幸013 山下美幸011 山下美幸012

山下美幸009



前回に引き続き、ひとつの画面にさまざまな縮尺で人物が描き加えられている作品も出品されています。
大きな顔の不思議な表情と、のんびりとした感じの佇まいはなんとなくコミカルで、同時に不思議なディープさを醸し出しているように感じられます。


山下美幸006 山下美幸008

山下美幸007



いちばん奥のスペースに展示された大作も面白いんです。
水辺とも森の中とも言えそうなシチュエーションで、発光するような木々やそこにいる人々のシルエットの現実からかけ離れた感触、ところどころ静かに、ほのかに滲む暖色がアクセントとなって、全体から発せられるひんやりとしたイメージにやわらかなぬくもりをもたらしてくれているように思えます。
さらに、深い紺色の透明感も印象的です。筆跡がもたらすテクスチャーが、水の流れ、気の流れを想像させてくれて、このシーンに時間のイメージを与えてくれるひとつの大きな要素になっています。


山下美幸004 山下美幸005 山下美幸003

山下美幸002



冒頭に書いた、屋根裏繋がりのことは、無論ボイスプランニングとTSCAのことなのですが、立て続けにこういう特異な空間で山下さんの作品を拝見、体感できたのはすごくよかったなぁ、と。
いろいろと視覚的ノイズが多くて不器用ではあるけれども、むしろその不器用さが逆手に取られてポテンシャルとなって跳ね返り、展示される作品のクリエイティビティをぐんと立ち上げてくれているような。
そしてこれまでの展覧会もそうですが、今回の山下さんの作品もその空間が持つユニークな特異性に充分に応える実におおらかな世界を紡ぎ出していて。。。

今のアートの面白さを身体で感じ取れる、気持ちのいい展覧会です!


山下美幸001
posted by makuuchi at 10:45| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

review:大沢拓也展《4/19》

大沢拓也
ギャラリー広岡美術
東京都千代田区神田駿河台3-1-7 烏山お茶の水ビル2F
4/10(木)〜4/19(土)日休
10:30〜18:00
大沢拓也080410.jpg

Takuya Osawa exhibition
Gallery Hirooka
3-1-7-2F,Kanda-surugadai,Chiyoda-ku,Tokyo
4/10(Thu)-4/19(Sat) closed on Sunday
10:30-18:00
Google Translate(to English)



加速する緻密、広がる大胆。



アートフェア東京でのギャラリー広岡美術のブースで紹介されたのに続いてギャラリーで開催された、大沢拓也さんの個展に行ってきました。
昨年の個展も素晴らしかったのですが、今回はさらに新たな展開の作品も出品され、その世界に広がりと深みがもたらされるだけでなく、これまでのシルエットの展開もさらに緻密になったような印象で、見応えがあって、もう少し早く伺うベきだった、と。。。

まず、複雑なモチーフを縦横のシンメトリーで描かれた作品、シンプルな構成がその精度の凄みを際立たせているように感じられ、感服した次第で。


大沢拓也016

大沢拓也015



前回の個展に引き続いて展開されるシルエットの作品群。
人口建造物が連なる都市の情景の無機的、図形的なフォルムが発するクールな風合いと、そこに草花や蔓などのこれまで日本の絵画で連綿と取り上げられてきたクラシカルなモチーフとが重なり、独特の世界が作り上げられ、さらに複雑かつ緻密な構成で迫ります。


大沢拓也013 大沢拓也001

大沢拓也007



今回の個展では、大正時代の伝票らしき紙を支持体として採用し、当時の筆書きの文字がそのまま残され独特の臨場感が生々しく伝わる画面に墨が一閃、踊るようなダイナミズムがもたらされた作品が出品されていました。これまでも下地に広がる墨の作品を拝見していますが、それが前面に表れたときの迫力がこれほどの深みをもたらすとは、と、嬉しい驚きと発見が。
時空を力強く貫くような風合いが鮮烈な印象をもたらしてくれます。


大沢拓也014

大沢拓也002



おおらかな墨の広がり、もたらされる無数の飛沫、さまざまな要素が独特のスピード感を感じさせてくれます。
この大胆さが、都市と草花のシルエットの作品と激しいコントラストを生み出していて、複雑に共鳴しあい、これが同じアーティストによって制作されたことに対して大いに興味を抱きます。


大沢拓也009

大沢拓也008



踊り舞う墨の一閃と、蔦のシルエットとがひとつの画面に収まった作品も。
どちらも有機的でしなやかなフォルムで、それが繊細に響きあって、日本画らしい深みと、同時に今までの日本画にはなかったような輝きを醸し出しているように感じられます。


大沢拓也012

大沢拓也011



もうひとつの新たな展開として、蒔絵風の作品が1点展示されていました。
これがまた、いいんです。
緻密さはそのままに、漆の艶やかさが、和紙の作品と異なる質感を奏でます。
その艶やかさが、よりここに描かれルる光景の臨場感を際立たせ、雑踏や車の走る音など、さまざまなノイズのイメージも伝わってくるかのようです。


大沢拓也004 大沢拓也005

大沢拓也003



これまでのスタイルはさらに鮮度と精度を増し、そこに墨と漆とによる新たな展開が加わり、今後どんな作品が発表されるか、凄く楽しみです。
特に蒔絵風の作品は今回1点のみで、色調なども含めてどういったバリエーションが繰り広げられていくか興味津々です。


大沢拓也010
posted by makuuchi at 08:52| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月28日

review:生川晴子 野と薮《4/12》

生川晴子 野と薮
白土舎
愛知県名古屋市中区錦1-20-12 伏見ビル地階
4/12(土)〜5/17(木)日月祝休
11:00〜19:00
生川晴子080412.jpg

Haruko Narukawa
Hakutosha
1-20-12-B1F,Nishiki.Naka-ku,Nagoya-shi,Aichi-ken
4/12(Sat)-5/17(Thu) closed on Sunday,Monsay and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)



白土舎での生川晴子さんの個展です。
軽やかに取り込まれるモチーフと色彩が楽しく、奥深さも感じさせてくれる作品が並んでいます。


生川晴子08



さまざまなサイズの作品が並ぶなか、印象的なモチーフが多く登場します
百合が描かれた作品は、背景の色調に溶け込み、混ざりあうようなフォルムが独特の艶かしさを奏でているように感じられます。


生川晴子07



人物のシルエットが登場する作品も多く出品されています。
背景とのコントラストの淡さが不思議な感じを醸し出す色調が印象的で、さらにやはり人の姿という自然にメッセージ性を放つモチーフが取り上げられることで、さまざまな想像、物語が浮かんできます。


生川晴子01 生川晴子04

生川晴子02


さまざまなモチーフのなかでも特にユニークなのが、バナナ。
このキュートでユーモラスなかたちと色が他のモチーフと関係しあって、なんともいえない不思議な風合いをもたらしていて、距離感や奥行き、色調から独特の味わいが伝わってきます。


生川晴子03


なかでも、南国の森とバナナとが描き込まれた作品からにじみ出るユーモラスな風合いが堪らないです。
木々の枝々のシルエットの奥にもりっとその姿を晒すバナナ。

いったいどんな縮尺感なんだろう...(・。・)

と考え、その色合いとかたちから三日月の投影させているのかな、と思いきや、画面の上の方にしっかりと満月がその姿をしっかりと現していたり。
生川さんにもお話を伺ってみたのですが、この作風は今回初めて描いたそうで、でも特に狙いはないとのことで。
逆にその自然な感じ、思いつきの淡い痛快さが心地よく感じられます。


生川晴子06

生川晴子05



今年のART@AGNESに出品された作品の印象からも、もっとダークな色調の作品が揃うのかな、と拝見する間では思っていたのですが、思いのほかカラフルな色に囲まれた空間が作り上げられていたのも印象に残ります。
さらに、サムホールの小品の「穴」をモチーフに描いたコミカルな風合いの作品も楽しいです。

それぞれのモチーフや色彩が独特の味わいの奏でるユニークなクリエイションです。
どこかほのぼのとした感じが広がっていて、特に強いメッセージ性が感じられないのが、観ていて楽な気分に
させてくれるような気がします。

これからいろんなモチーフがひょこっと出てきそうな期待感も湧いてきて、楽しみです。


生川晴子09
posted by makuuchi at 07:21| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

review:居城純子展《4/8、4/9》

居城純子「春先は喪失感で胸がいっぱいなのです」
第一生命南ギャラリー
東京都千代田区有楽町1-13-1
4/8(火)〜5/9(金)土日祝休
12:00〜18:00

Junko Ishiro Filled with a sense on loss in early spring
Dai-ichi Life South Gallery
1-13-1,Yurakucho,Chiyoda-ku,Tokyo
4/8(Tue)-5/9(Fri) closed on Saturday,Sunday and national holiday
12:00-18:00
Google Translate(to English)



現実と非現実との曖昧な境界。



昨年は大阪のパンタロンでの個展を拝見し、印象に残っている居城純子さんの第一生命南ギャラリーでの個展です。

まず、入口正面に展示された作品のアバンギャルドな感触に驚かされます。


居城純子008


描きかけのような感じでありながら、その状態に説得力を感じるのが不思議です。
キャンバスに叩き付けられたような筆跡の生々しさと画面右下端のキャンバスの下地が生で晒されている部分が、岩山の風景を描いた部分と力強いギャップを生み出し、縮尺感のダイナミズムに凄みを感じます。


多くの作品で、マスキングの手法によってキャンバスの下地が画面に残され、緻密に風景のある部分を切り取るようになっていたり、またはまったくそこには存在しないかたちを思わせたりとさまざまなのですが、それが甘いフォルムで具象的に描かれる風景に抽象性をもたらしているように感じられます。
新緑の鮮やかさ、川面の瑞々しさ、自然の光景に射し込む光の眩しさが鮮やかに描かれるなかで、川面に反射する光の波がマスキングによって抜かれ、現実的な生々しさが自然に折り込まれて不思議なシチュエーションとなっているのがたいへん興味深いです。


居城純子001



今回初めて這い意見する、夜の景色を描いた作品の一角はマスキングの効果がさらに鮮烈に画面に表れています。
夜の公園で遊ぶ子供たちのシルエットが鮮やかに抜かれた光景。遠くに浮かぶ月のような白い丸とマスキングの白とのコントラストもユニークな風合いを立ち上げているように感じられます。


居城純子004


白いキャンバスの下地が夜の風景に鮮烈な光の姿を現し、同時にその上に描かれる絵の具の跡などによってその絵の「もの」としての実感が提示され、独特のギャップが面白く感じられます。


居城純子005 居城純子002

居城純子003



少し前のスタイルの作品も数点展示されています。
粗い目のキャンバスの生々しい素材感と具象的に描かれる風景のどこかのどかな感じとが同時に同じ平面から発せられています。


居城純子006



ロビーには他のアーティストの作品と合わせて、過去のVOCA展に出品された作品も展示されています。
緻密に施される色彩のグラデーションや大胆なマスキングが強烈なインパクトを放ち、新作と合わせてあらためて拝見できるのが嬉しい限りで。


居城純子007



メロウさとアバンギャルドさとが感じられる独特のスタイルが、今後どんな光景を生み出してくれるのかが興味深く、楽しみです。
posted by makuuchi at 06:01| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月27日

review:津上みゆき展《4/11、4/19》

津上みゆき展
SPACE355
東京都中央区東日本橋3-5-5 矢部ビル1F
4/11(金)〜5/10(土)日祝休
11:00〜19:00
津上みゆき080411.jpg

Miyuki Tsugami exhibition
SPACE355
3-5-5-1F,Higashi-nihonbashi,Chuo-ku,Tokyo
4/11(Fri)-5/10(Sat) closed on Sunday and natinoal holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)




イマジネーションを広げてくれる風景。




SPACE355での津上みゆきさんの個展です。
さまざまな場所の風景のスケッチをモチーフに、多彩な色とテクスチャーとで抽象表現を展開し、実におおらかでたおやかな世界が描き上げられています。

津上さんというと、ちょうど今回の前期が重なる時期に開催された展覧会も素晴らしかったです。

art-life+vol.10 津上みゆき展「24 seasons−つづるけしき、こころつづく」
スパイラルガーデン
東京都港区南青山5-6-23
4/8(火)〜4/20(日)
11:00〜20:00
津上みゆき080408.jpg

art-life+vol.10 Miyuki Tsugami "24 seasons"
Spiral Garden
5-6-23,Minami-aoyama,Minato-ku,Tokyo
4/8(Thu)-4/20(Sun)
11:00-20:00

1年を24に分け、二十四節気それぞれを抽象風景ですべて同一の大きなキャンバスに描き現し、入口からずらりと並べられ、動線に沿っておおらかな時間の流れ、季節の流れをイメージで感じ取れるように構成されていていました。
ゆっくりとその動線に導かれるように歩いて、めくるめく色彩の変化のダイナミズムに浸って、壮大なイメージを得られたような。。。

最初の長い壁面。一面の白のなかにぽわんと甘くひろがる赤が印象的な冒頭の作品から、しばらくピンク、青、グリーンなどの淡い色調とフォルムの風景が続いたかと思うと、生命の息吹の力強さをそのまま現したかのような濃厚な緑の世界が突如として迫ってきたような印象が残っています。

続いてホール、パノラマのように円形の壁面が設営されたパートへ。
こちらは、大地、海、空、さまざまな光景を連想させる壮大なスケール感を放つ作品群。
濃厚な色彩も大胆に取り込まれ、さらにダイナミックな色面の迫力とさまざまな色がひしめく混沌とが随所に配されたようになって、より鮮烈な臨場感が伝わってくる空間がつくり出されていました。

2Fのショップをくぐって最後の一角、階段沿いの壁面。
一転、濃厚濃密な世界が重厚に広がる空間。
濃い青と疾走するような赤の閃光、前面を覆う黒の隙き間から覗かせるヴィヴィッドな色彩など、シャープな線がこれまでの大きく広がるような光景から一変し、沈み込むような重々しさとともに凄まじい速度も同時に発していたような。。。

画面のサイズの統一感がバラエティに富んだ展開にひとつの統一感をもたらし、それがさらにそれぞれの光景の、そして全体の深みや奥行きを醸し出していたような感じで、それぞれの画面から伝わる風景、そして時間が与えてくれるイマジネーションの大きさに感服した次第で。



このコンセプチュアルな展覧会に続いて開催された個展。
こちらでは、さまざまなサイズの作品が真っ白な空間に展示され、スパイラルでの展開とはまた違うバリエーションに富んだ構成が楽しいです。

正面の鮮やかな青。
ダイナミックなうねりが壮大なイメージを醸し出しているように感じられます。


津上みゆき01



通りに面したガラス張りの入口、その両側に大作が展示されていて、右手の横長の作品2点が導き出す動線と、それと対面するもっとも大きな作品の、壁一面を完全に覆うほどのサイズから発せられる迫力にどこか遠い風景に包まれたようで。


津上みゆき04



横長の2点の作品のひとつ奥、こちらには小品が並んでいます。
コンパクトな画面がこの壁面の、さらにはこの展覧会のアクセントになっています。
小さな画面の連続がリズミカルで、しかしそれぞれの画面では鮮やかに色彩が絡みあっています。


津上みゆき05



奥まった一角には、正面の青の作品とまるで対を成すかのような、情動的な赤が前面を覆う作品が。
真っ白の壁が囲む空間に鮮やかに映え、「赤」という色が本来持つエネルギーがダイレクトに発散されているような、力強い印象を受けます。


津上みゆき03



今回出品された作品に限らず、津上さんがつくり出す抽象の世界には「元絵」となるスケッチが存在しています。
今回の個展ではそのスケッチは展示はされていないのですが、拝見させていただくと、油彩の抽象画とはまったく異なる質感で、実に穏やかに、その風景の空気も捉えているようなやわらかな風合いが伝わってきます。
そして、実際の風景とそのスケッチ、それをもとに描かれた抽象画の関係性がたいへん興味深く感じられます。

目の前の光景をていねいに紡ぎ、それをもとに描かれたパネルの作品は、制作の過程で沸き起こるインスピレーションも大きく影響し、その風景とはかけ離れた色彩も登場しているようです。ギャラリーの方から伺ったのですが、冒頭の青の作品がもともとは桜が咲く時期を描いたものだそうで、そういった色彩の自由さもたいへん興味深く感じられ、こちらに展示された作品だけでなく、スパイラルで拝見し、体験して得たイメージの記憶にもさらに奥行きを持たせてくれます。


津上みゆき02


今回、同じ時期にこの津上さんと、5/8(木)までの会期延長が決まったギャルリー東京ユマニテでの流麻仁果さんの個展を拝見し、抽象の面白さを再認識した次第です。
僕の中では色合いや風合いなどに共鳴しあっているような印象を持つこのお二人のクリエイションですが、それぞれのモチーフをどこから得ているかの差異、津上さんは風景で流さんは人物であることが、作品を拝見してきちんと違いとして伝わってくるのがたいへん興味深く感じられます。
もしこのお二人が偶然まったく同じ色調で同じ構図の作品を生んだとしても、きっとそれぞれが与えてくれるイメージは違うだろうなぁ、という確信が湧いてきます。

ぜひともこのふたつの展覧会を合わせて楽しんでいただければ、と思う次第です。
posted by makuuchi at 23:54| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月26日

review:奥原しんこ「眠る人」《4/11、4/19》

奥原しんこ「眠る人」
SCAI THE BATHHOUSE
東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
4/11(金)〜5/17(土)日月祝休
12:00〜19:00
奥原しんこ080411.jpg

Shinko Okuhara "Sleeping Figure"
SCAI THE BATHHOUSE
6-1-23,Yanaka,Taito-ku,Tokyo
4/11(Fri)-5/17(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
Google Translate(to English)


ウキウキと微睡むシチュエーション。



SCAI THE BATHHOUSEでの奥原しんこさんの個展です。
SCAIらしい、大きな画面の作品がおおらかに並び、鮮やかな色彩とキュートなユーモアで、清々しさがふわぁーっと膨らむようなシーンが繰り広げられています。


奥原しんこ04



描かれるさまざまな場所は、実は日常的で身近な感じのはず。。。
しかし、ヴィヴィッドかつどこか大人びた落ち着きも漂わせる色調で描かれることでファンタジックな雰囲気が広がり、、なんだか特別な場所のようなイメージが伝わってきます。


奥原しんこ01


そんな不思議なシチュエーションに描き加えられる「眠る人」。
「描く」と表現すると語弊があるのですが...これがおそらく雑誌か何かの印刷物の切り抜きによるコラージュであることに嬉しい驚きを感じます。

大きな作品で、しかも気持ちいいくらいに伸びやかな奥行きやその光景をおおらかに俯瞰するような視点が心地よいので、しばらく離れた距離から作品を眺めるのですが、いざ近付いてみると、そこに横たわる女性が実に巧みなコラージュで構成されていることに気付き、そのお洒落なユーモアに大いに感服させられます。

仕草といい表情といい、ホントにお見事で、見つけた瞬間から弾けるような発見の連続に「うわっ、楽しい!」って思わず内心で叫びそうになる次第で。


奥原しんこ07 奥原しんこ08

奥原しんこ06



大きな作品とあわせて比較的小さな画面での展開の作品も展示されているのですが、登場する人や風景の縮尺感が大きな作品と同じサイズで表現されているので、小さな画面でもおおらかなスケール感を放っているように感じられるのもまた楽しいです。
また、ほぼすべての作品で、登場する女性はモノクロームのコラージュで表現されているのですが、おそらく1点だけカラーなのがまた、ちょっとしたアクセントになっていたり。


奥原しんこ05

奥原しんこ02



奥の一角では、今度は全然違う展開のインスタレーションが。
ここまでふわっと明るくて大人びた微睡みの空間の心地よさに浸っていたところで、振り返った刹那




!Σ( ̄口 ̄;)



と思わずに入られない相当にショッキングな光景が。


奥原しんこ10

奥原しんこ11


大きな壁一面にびっしりと、さまざまな虫がくっついていて、壮観、圧巻。
相当にぎょっとするのですが、さまざまな印刷物をコラージュし、両面にプリントされて緻密にひとつひとつ作り上げられているのに加え、その行程がここにいる何千という数の虫たちついて行われたと考えると、やはりこちらも感服せざるを得ないのです。


奥原しんこ09



「眠る人」の一連のペインティングと壁びっしりの虫の群れ、どちらからも、奥原さんの「想像することの楽しさ」と「作ることの楽しさ」、このふたつの作り手の醍醐味が伝わってくるような気がします。
オープニングの際に奥原さんとお話できて、「こういう場所で眠れたら... 」みたいなお話をされたのが印象的で、そういう自然体で思い浮かぶ素敵なシチュエーションが絵の中で繰り広げられているのがホントによく伝わってきます。

今回の「眠る人」の作品、画集になるようなので、こちらも楽しみです。


奥原しんこ03
posted by makuuchi at 10:39| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月25日

〜4/24のアート巡り

《4/20》
松山賢展「探索」
新宿高島屋10階美術画廊
東京都渋谷区千駄ヶ谷5-24-2
4/16(水)〜4/29(火)
10:00〜20:00(土:〜20:30、最終日:〜16:00)
松山賢080416.jpg

まず何より、松山さんの「巧さ」が鮮烈に伝わってきます。
カブトムシやクワガタと女の子のツーショットの作品を眺めていると、キュートな佇まいで笑みを浮かべる女の子の天真爛漫さと、甲殻昆虫の無機的な感触とのギャップがユニークで強烈な雰囲気を発しているように感じられます。



ART IN TIME AND STYLE MIDTOWN VOL.3 DRAWING
TIME & STYLE MIDTOWN
東京都港区赤坂9-7-4 東京ミッドタウン ガレリア D-0301
2/1(金)〜5/31(土)
11:00〜21:00
TIIME AND STILE0802.jpg

お洒落でスマートな家具や生活アイテムがシンプルに並ぶ空間、その壁にさまざまなアーティストのドローイングが展示されていて、すごく面白いことになっています!

既知、未知のアーティストそれぞれで発見があったのですが、まず、大杉沙絵子さんの独特の明度の絵がぱっと目に入ってきます。どこか曖昧に滲むような感触に、独特の暖かみ、温もりが伝わってくるような感じです。

ジャンボスズキさんのジャンボじゃない(笑)作品も楽しい!ポップでライトな色彩感がモチーフをキュートに立ち上げています。

ひときわ目立つのが藁谷由香里さんのドレスを描いた作品、たしか壁面に直接描かれていて、ふわっとしたおおらかさが印象的です。

奥の方に展示されている横内賢太郎さんの小品2点。小さな画面にめくるめくような色彩の滲みと、そこによく見ると見えてくる線の輝きとが収められてて、静かで艶やかな風合いを醸し出しています。 ほか、

田口和奈さんや手塚愛子さんほか、さまざまなアーティストの小品がずらりと展示され、それらがお洒落な家具と空間と響きあって心地よい雰囲気を奏でています。



ARTIST FILE 2008 The NACT Annual Show of Contemporary Art
国立新美術館 企画展示室2E
東京都港区六本木7-22-2
3/5(水)〜5/6(火)火休(4/29、5/6開館、4/30休)
10:00〜18:00(金:〜20:00)
アーティスト・ファイル2008.jpg

実はもう2度、見に行ってます。
でも、もう一度見に行きます。



姉川たく Secret Allegory
NANZUKA UNDERGROUND
東京都渋谷区渋谷2-17-3 渋谷アイリスビルB1F
4/12(土)〜5/11(日)月火休
13:00〜20:00(土日:11:00〜18:00)
姉川たく080412.jpg

すごくいいです!
平面に展開されるシュールなイラスト、そこに絡む刺繍や糸での展開。それらが巧く絡み合っていて、ある部分では過剰に、ある部分では適当に...そのバランスも面白く、ユニークでキャッチーな世界が繰り広げられています。
画面に収まりきれない、というかおさめる糸が最初からおそらくないほどに長く垂れた糸など、実際に観てみないと分からない要素も多いんです。



《4/22》
MY Collection 2008 廣澤仁 洪昇恵 ―刷る―
Shonandai MY Gallery
東京都港区六本木7-6-5 六本木栄ビル3F
4/21(月)〜4/28(月)
12:00〜19:00(最終日:〜17:00)
廣澤仁 洪昇惠080421.jpg

木版画とシルクスクリーンプリント、それぞれ異なる版画作品を制作されるアーティストの二人展です。

廣澤仁さんは日本橋タカシマヤ美術画廊Xでのグループショーで拝見して、そのヴィヴィッドな色調とダイナミックな抽象性が印象に残っているのですが、今回もぱっと弾けるような色調ともりもりとしたテクスチャーが前面に押し出されるようなさまざまなサイズの作品がずらりと展示されています。


MC廣澤仁05

MC廣澤仁03


シルクスクリーンによる、ある意味での無機的な作業で施される彩色と、わずかにそれが何であるかをイメージさせるぎりぎりの具象性とが、コクのある味わいを放っているように感じられます。


MC廣澤仁01 MC廣澤仁04

MC廣澤仁02



洪昇恵さんの木版画は、木版特有の淡い色調で繰り広げられ、廣澤さんとはまた異なる抽象性が楽しいです。


MC洪昇恵04 MC洪昇恵02

MC洪昇恵01


いかにも木版らしい、版を彫って生み出されるストロークの膨らみがさまざまなかたちで重なり、ウォームな雰囲気とメロウな奥行きを作り出しているような印象です。


MC洪昇恵06 MC洪昇恵07

MC洪昇恵05


そして、2点だけ、事務所に通ずる狭いスペースに隠れるように展示されたタブロー。
これがすごくいい!


MC洪昇恵03



《4/24》
SEMEAR:川内倫子
FOIL GALLERY
東京都千代田区東神田1-2-11 アガタ竹澤
4/24(木)〜5/25(日)
12:00〜20:00(初日、日:〜18:00)
川内倫子080424.jpg

無邪気だなぁ...。
まず、そんな印象を受けます。
ふっと過ぎる、あまりにも何気ない瞬間や、偶然巡り会ったようななんだか楽しげなシーン。
視点もさまざまで、ひとつの展示として観てみてもそこに統一感があるようには感じられないのですが、むしろその「きままさ」がゆるやかな痛快さを放っているようにも感じられます。

そして、ひとつひとつの写真を眺めたときになんともいえない清々しさであったり、懐かしさであったり、意外な発見であったり、さまざまなエポックを与えてくれるような感じもなんだか嬉しくて。



エリザベス・コップフ air cigarette Tokyo Ideal
Gallery ef
東京都台東区雷門2-19-18
4/25(金)〜5/19(日)火休
12:00〜21:00
Elisabeth Kopf 080425.jpg

アイデアの「種」のようなクリエイションです。
作品を楽しむとともに、こういう表現もあるんだっていう新鮮さも感じられます。
posted by makuuchi at 15:57| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

review:永岡大輔「曖昧な庭」《4/4、4/13》

永岡大輔「曖昧な庭」
hpgrp GALLERY 東京
東京都渋谷区神宮前5-2-11 H.P.DECO 3F
4/3(木)〜5/6(火)
11:00〜20:00
永岡大輔080403.jpg

New works by Daisuke Nagaoka "ambiguous garden"
hpgrp GALLERY TOKYO
5-2-11-3F,Jingumae,Shibuya-ku,Tokyo
4/3(Thu)-5/6(Tue)
11:00-20:00
Google Translate(to English)



モノクロームの集積が発する迫力。
モノクロームの集積が奏でる美しさ。


hpgrp GALLERY 東京での永岡大輔さんの個展です。

永岡さんというと、鉛筆で描いては消し描いては消しを延々と続けて繰り広げられる超アナログ原始的コマ送りのアニメーションがまず思い浮かぶのですが、今回の個展では映像作品は出品されてはいないものの、鉛筆やペンを駆使して細かい線・作業を集積させた緻密なテクスチャーが観る者の意識をがっちりと掴む作品が多く展示されていて、映像での面白さと通じていながらいつもと異なる永岡さんのクリエイションの面白さを堪能できます。



・・・とはいえしかし。

階段を昇ってまず視界が捕らえるのが...



!Σ( ̄口 ̄;)


永岡大輔05



なんかぶら下がってるぞオイ!Σ( ̄口 ̄;)
なんかデカくて黒いモノがぶら下がってるぞオイ!Σ( ̄口 ̄;)


刹那、ぎょっとした次第。
とにかく圧巻です。
数十パターンにも及ぶ細かい線が凝縮されたペン画のコピーが幾重にも重ねられ、それぞれが放つ遠心状、もしくは求心状のベクトルが異様なエネルギーを生み出しているように感じられ、それよりなにより


何だこれはぁぁ!!!Σ( ̄口 ̄;)


と心の中に無数の「?」が表れ、同時にその「?」を片っ端から蹂躙していく迫力に大きく感性を揺さぶられるような。
とにかくファーストインパクトの凄みが鮮烈です。
全面を覆う無数の線、それらが不思議な静けさ、深みを放ち、重いとも軽いとも言い切れない独特の重量感がイメージとして浮かんできます。


永岡大輔10

永岡大輔09



だんだんとそのフォルムにも慣れ、しげしげと眺めてはその圧巻の集積に感心し、その裏側にまわってみると、その内側にさまざまな毛皮が重ねられ、そこにさらにひとつぶら下がる紙。なんとも妖しげな風合いが堪らない...。

毛皮のさまざまな色合い、本物の有機物の質感と、その中央の有機的な絵のモノクロームの非現実的な感触毛皮の立体感と、両面に描かれていながらも基本的には1枚の紙の平面感。さまざまなギャップがひとつの閉じた空間に凝縮され、その関係性が深いイメージをもたらしてくれます。
具体的なイメージに直結する毛皮が、例えば本来外側を覆うものが内側に広がっていることやいろんな種類のが無秩序に繋がっていることなどの要素が逆に非現実的な感覚を伝えてくれて、さらにその現実的なものを支配するかのように、絵といい平面性といい、現実性からもっとも遠い要素がその中央に浮かんでいてまわりを支配しているような感じがしたり。。。


永岡大輔06 永岡大輔08

永岡大輔07



平面作品は、モノクロームの硬質な感触と、細かい集積が放つ妖婉さとに引き込まれます。
動物たちの凛々しい表情、うねる線の重なりから「ぬぅ」と姿を現しているかのような風合いなど、妖しい感触を立ち昇らせていながらも、シンプルな色調と線の密度が生み出すグラデーションとが相当にクールな感触を放っているように感じられます。


永岡大輔02 永岡大輔04 永岡大輔03

永岡大輔01



小品が凝縮された一角も見応え充分で。
それぞれの画面で展開されるシーンはどこまでもクールでハードボイルド。
緻密に紡ぎ出されるテクスチャーによる原生的な要素や、そこから姿を現す動物たちの姿の堂々とした姿などの情報が一体となり、実にポジティブなイメージが伝わってきます。


永岡大輔12 永岡大輔13

永岡大輔11



ともあれ、一もニもなくかっこいい世界が展開されています!
発見に満ちていて、さまざまなクリエイションと響きあうポテンシャルを持ったクリエイションに溢れています。

永岡さんとお話しするとそれぞれの作品や制作のスタンスについて実に明解な説明が得られて痛快なのですが、今回に限らず永岡さんの作品を拝見していると自らが持つクールなイメージを加速させてくれるような印象を覚えるのは、そういったしっかりとしたバックボーンを持って制作されるからこそなのだな、と感じる次第です。


永岡大輔14
posted by makuuchi at 07:42| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月24日

〜4/19のアート巡り

《4/16》
鴻池朋子「隠れマウンテン&ザ・ロッジ」
MIZUMA ART GALLERY
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル
4/16(水)〜5/17(土)日月祝休
11:00〜19:00
鴻池朋子080416.jpg

鴻池朋子さんがミズマアートギャラリーの2階と5階を使って個展を開催、と聞いてただ事ではないことが起こる予感はもちろんしていたのですが、もうそれは予想以上に予想通りっていうか、予想通りによそう以上っていうか、なんとまあ立体的な展覧会なのだろう、と。
そして、そこに込められたメッセージ性、エンターテイメント性にもじっくりと浸って感じたい展覧会です。



《4/17》
JangーChi/チャンチ『精神の肉体』
T&G ARTS
東京都港区六本木5-9-20
4/17(木)〜5/22(木)日月祝休
11:00〜19:00
Jang Chi 080417.jpg

昨年のNEXT DOORで知った抽象画。
フォルムも色彩もふわりと曖昧に描かれていて、しかしそこにしっかりと抽象表現としての「ルール」が見え隠れしていたりして。



《4/18》
エマージェンシーズ!2008 八木良太「回転」
ICC 5階 ラウンジ・ウエスト
東京都新宿区西新宿3-20-2 東京オペラシティタワー4F
4/19(土)〜6/29(日)月休(祝日の場合開館、翌日休)
10:00〜18:00
八木良太080419.jpg

タイトル通り、八木良太さんの「まわる」クリエイションを一望できる、素敵な展覧会です。
さすがにおなじみの氷のレコードは映像での展示ですが、ターンテーブルをろくろとして使ったパフォーマンスの記録とともにそれぞれ大きなモニターに、しかも高画質の映像で上映されています。

ほぼ無人島プロダクションでの個展で発表された作品が出品されていますが、2点の新作がまたいい味を出しています。
3枚のターンテーブルを重ねて違う速度で回転させた作品、車窓から眺める過ぎ行く風景が至近はすぐに視界から消え、遠くの山並はずっとその風貌を視界で捉えられている、そういう様子をキュートに現していて、なんとも和めます。
もうひとつは、すっきりとしているんですけど、

あーもう!Σ( ̄口 ̄;)
すっごくもどかしいんですけど!Σ( ̄口 ̄;)

っていう感じの最高にシュールな作品で。
それぞれの作品がスマートに展示されていて、八木さんのクリエイションの楽しさがていねいに伝わってきます。



《4/19》
大沢拓也
ギャラリー広岡美術
東京都千代田区神田駿河台3-1-7 烏山お茶の水ビル2F
4/10(木)〜4/19(土)日休
10:30〜18:00
大沢拓也080410.jpg

昨年の個展と今年のアートフェア東京でも印象に残っていた大沢拓也さん。
緻密な構成による風景や草花のシルエットの作品に加え、大正時代の和紙を支持体に採用し、墨がダイナミックに一閃する大胆な作品や蒔絵風のものなど、新たな展開のものも出品されて、じっくりと見応えのある展覧会でした。



フローリアン・ズースマイヤー展
MIYAKE FINE ART
東京都江東区清澄1-3-2-5F
4/5(土)〜5/10(土)日月祝休
12:00〜19:00
Florian Sussmayr080405.jpg

一見して写真と思ってしまうほどの精度が何よりの凄みを感じます。
焦点がぼやけた風合いなども精緻に再現され、それがしかも油彩によって描かれていることで増す臨場感も印象的です。
そして、何かの走り書きを再現した作品がまたかっこいい!



津田久美恵「Perfect is Not Perfect」
TOMIO KOYAMA GALLERY
東京都江東区清澄1-3-2-6F
4/5(土)〜4/26 (土)日月祝休
12:00〜19:00
津田久美恵080405.jpg

磁器のオブジェがずらりと並び、澄んだ音が聴こえてきそうな臨場感が清々しいです。
ぽこぽこと連なる球体に人の半身が逆さに突っ込まれたようなコミカルな風合いの作品などもあって、なんだか不思議な雰囲気も。



山本磨理展
ぎゃらりぃ朋
東京都中央区銀座1-5-1 第三太陽ビル2F
4/19(土)〜4/26(土)
12:00〜19:00
山本磨理080419.jpg

昨年のgallery OPEN DOORでの個展や東京芸大の修了制作も印象に残っている山本磨理さん。
今回は女性の肖像や草花を描いた作品が展示されています。
何より、背景の黒の独特の味わい、広がりが何ともいえない風合いを奏で、妖艶な深遠さを醸し出しています。



企画-2008 そこからの景色 上出由紀 こづま美千子 豊泉綾乃
ギャラリーなつか&b.p
東京都中央区銀座5-8-17 GINZA PLAZA58 8F
4/14(月)〜4/26(土)日祝休
11:30〜18:30(最終日:〜17:30)
そこからの景色080414.jpg

3名の女性アーティストがフィーチャーされた展覧会、タイトル通りに風景を思わせる作風のクリエイションが揃えられています。

上出由紀さんの作品は、キャンバスに日常的な風景がプリントされ、その上からドローイングが重ねらる、というユニークな手法で制作されています。


そこからの景色 上出由紀03 そこからの景色 上出由紀01

そこからの景色 上出由紀02


透明感や曖昧さが画面全体からほのかに醸し出されているような感触が伝わってきます。
今回は個展で出品された球体の作品はお目見えしていないのですが、平面の展開だけでも充分に、そのデジャヴ的な感覚が印象に残ります。


そこからの景色 上出由紀05 そこからの景色 上出由紀06

そこからの景色 上出由紀04



ドライポイントで風景をダイナミックかつ繊細に紡ぎ出す豊泉綾乃さん。
昨年の個展なども印象に残っていますが、これまでの海や陸地などの広がりを感じさせてくれる作品から描く世界に広がりが出てきたのような印象を覚えます。
豊泉さんが描き出す「空」。
モノクロームの展開でありながらも清々しさが現れていているように感じられ、ずっと遠くまで続いていく空や風にたゆたう雲のダイナミックさが鮮やかに伝わってきます。


そこからの景色 豊泉綾乃01

そこからの景色 豊泉綾乃03


円形のプールがモチーフに登場する作品も。
シンプルな情景構成が、穏やかに感性を覆ってくれるかのような。凪の感情が広がります。


そこからの景色 豊泉綾乃02



-5人の今- 青木美歌 荒木知子 植木庸子 安岡亜蘭 渡邊早苗
@ギャラリーしらみず美術
東京都中央区銀座5-3-12 壹番館ビルディング4F
4/17(木)〜4/26(土)日休
12:00〜18:30(初日:14:00〜、最終日:〜17:00)
5人の今 080417.jpg

たいへん興味深いセレクションによる、女性アーティスト5名のグループショー。
まず、僕にとってはおなじみの安岡亜蘭さん。
春らしい艶やかな彩りに加え、箔なども随所に配され、いつもよりもメカニカルさが影を潜めたデフォルメでさまざまな動物がクールに描き出されています。


-5人の今-安岡亜蘭03 -5人の今-安岡亜蘭02

-5人の今-安岡亜蘭01



植木庸子さんの作品は、妖しげな色調とモチーフとが面白く感じられます。
僕はおそらく今回初めて拝見するのですが、2点のみの出品で、他にどんな作品あるのか拝見してみたいです。


-5人の今-植木庸子02

-5人の今-植木庸子01


渡邊早苗さんの抽象も、支持体のチョイスからユニークさが感じられます。
家、建物を思わせるモチーフが随所に見受けられ、楽しげな風合いが伝わってきます。


-5人の今-渡邊早苗04 -5人の今-渡邊早苗01 -5人の今-渡邊早苗03

-5人の今-渡邊早苗05



荒木知子さんの作品。
5点出品され、バリエーションに富んだ展開が印象的です。
ぼやけたように滲む赤の鮮やかさと、黒い線で描かれるイチゴの絵とが重なり。フレッシュさと妖しさが混ざりあって面白い風合いを奏でています。


-5人の今-荒木知子01

-5人の今-荒木知子02



滲んだ色彩と、多様な色調によるカラフルさとによって、不思議な時間の流れが感じられるような。
フォルムの曖昧さと色合いの爽やかさとが同時に伝わってきます。


-5人の今-荒木知子03

-5人の今-荒木知子04


荒木さんの作品はこれまで何度か拝見していて、それぞれで異なる展開の作品が出品されているので、来んごどういう作風が表れるのかワクワクしてきます。


-5人の今-荒木知子05



青木美歌さんのガラス作品。
TARO賞でもひときわ印象に残った、閉じた空間でのインスタレーションとは異なり、今回はテーブルの上であの有機的な広がりと繊細さを奏でる作品が、フラスコや試験管、注射器などを取り入れた作品と合わせて並んでいます。


-5人の今-青木美歌03



菌糸を連想させるさまざまなフォルムのユニークさがとにかく面白く、しげしげと眺めてしまいます。
有機的なフォルムが、さまざまな実験用具の機能だけが追求された無機的なかたちから生えてきているような感触がなんとも奇妙で、それでいてガラスの透明感や脆さとが繊細な緊張感を放っていたりして、さまざまなイメージが浮かんできます。


-5人の今-青木美歌01 -5人の今-青木美歌02 -5人の今-青木美歌05

-5人の今-青木美歌04



齋藤芽生 都市隠棲類図鑑 part 1「徒花園」
gallery ART UNLIMITED
東京都港区南青山1-26-4 六本木ダイヤビル3F
4/19(土)〜5/17(土)日火休
13:00〜19:00
齋藤芽生080419.jpg

過剰に緻密で繊細な描き込みによる、妖艶でグロテスクな世界。
ヴィヴィッドな色彩感がさらに奇妙な感触を加速させてくれているように感じられます。
ひとつひとつの画面から放たれる先鋭的な雰囲気に呑み込まれるような。



山下美幸「ノンシャランな時々」
TSCA Kashiwa
千葉県柏市若葉町3-3
4/19(土)〜5/17(土)日月祝休
12:00〜19:00
山下美幸080419.jpg

BOICE PLANNINGでの個展でのダイナミックな構成が未だフレッシュに思い出される、山下美幸さん。
今回は、というか今回も屋根裏、もとい、空間が持つ広さや動線が大きなポテンシャルを感じさせてくれるTSCA Kashiwaでの個展で、どこかシュールでゆらゆらとしていて、でもフレッシュな世界がまたまたダイナミックに展開されています!
posted by makuuchi at 08:55| Comment(0) | TrackBack(1) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年04月23日

review:―パチモン― 上田順平《4/12》

―パチモン― 上田順平
imura art gallery
京都府京都市左京区丸太町通川端東入ル東丸太町31
4/9(水)〜5/2(金)日祝休
10:00〜18:30
上田順平080409.jpg

- PACHIMON - Junpei Ueda
imura art gallery
31,Higashi-maruta-machi,Sakyo-ku,Kyoto-shi,Kyoto-fu
4/9(Wed)-5/2(Fri) closed on Sunday and national holiday
10:00-18:30
Google Translate(to English)



なんかもう、もりっとしてるんですよ。
そう、もりっと。
この焼物の感触が堪らないんです。


今年の岡本太郎賞で、敏子賞を受賞された上田順平さんの、京都imura art galleryでの個展に行ってきました。

TARO賞展で拝見したときも、さまざまなメディアのクリエイションが並び、フューチャリスティックなムードが加速するなか、なんだか妙にゴージャス、きらびやかな一角があって、そこが上田さんの作品のコーナーだった次第で。
のっしりと置かれた大きな焼物のオブジェ群に刹那、圧倒されたのですが、最終日の閉館時間間際ということもあっれじっくりと拝見することが叶わず、あらためていつかチェックできると嬉しいなぁ、などと考えていたら予想外に早いタイミングで展覧会を拝見することが出来て、いやもうホント嬉しいわけでして。


で、初めて伺ったimura art gallery、ガラス張りの路面の1階のスペースでは、TARO賞の再演が。

路面から射し込む陽の光を反射し、釉薬の艶がさらに艶やかに表れ、どことなくキッチュな感触が余計に強く感じられ、なんとも痛快で。


上田順平07



今回あらたてめて拝見できて嬉しく感じたのが、その堂々とした風貌の作品の全面に施される細工や塗りの細やかさをじっくりと時間をかけて眺めることが出来たことで。
絢爛の風合いを構築するさまざまな要素、内装まで再現された天守閣や身体を覆う緻密なパターンなど、これらが渾然一体となって独特の風合いを立ち登らせているように感じられます。

そして何よりこの表情と姿の迫力が素晴らしいんです。
強い意志を感じさせる目、ピンと張られた胸。すべてを説得してしまうような勇ましさが滲み出ています。
それを、小脇に抱える鯛や壺、そして拡声器。

え?

拡声器かよ!Σ( ̄口 ̄;)

なんて、まさに「パチモン」感出まくリのユーモラスな感触もしっかりと収められているのがまた楽しいです。


上田順平03 上田順平04 上田順平02

上田順平01


頭の上の日本庭園も最高。


上田順平05



で、この空間のど真ん中に鎮座していたのが...


上田順平06


こんなにちっさな一寸法師風のオブジェ。でっかい怪物っていうか、アクも相当に強そうなキャラクターを従えるようにして構成されているのがまたいいんです。



2階にも数点の小品が展示されていて、また違った味わいが堪らない...。

まず、霊柩車。
金と黒銀のツートーンの霊柩車。
でも荷台の部分が何故か誕生日に食べるようなデコレーションケーキ。
そのケーキの上に乗ってるのが、何故かお城。


上田順平09 上田順平10


おかしいだろ!Σ( ̄口 ̄;)
そんなの絶対おかしいだろ!Σ( ̄口 ̄;)


・・・・


「死んだその日が誕生日」か!Σ( ̄口 ̄;)
ど根性ガエル音頭」か!Σ( ̄口 ̄;)


・・・・


よくこのタイミングでその引き出しが開くのな俺!Σ( ̄口 ̄;)
ていうか、インターネットってすげぇな!あるのな!Σ( ̄口 ̄;)


・・・・


もとい!(゜∀゜)
面白いからいい!(゜∀゜)

側面のいちご柄も見逃せないポイントではありますが、この荷台の屋根が外せるんですね、外してもらうとまた

!!!Σ( ̄口 ̄;)

なんです。
しかし、深いメッセージ性というか、ユーモアとシリアスの相反する要素がせめぎあっている感じもまた面白く感じられます。


上田順平08



1階にいた作品の足型も。
そしてこれが版になっていて、足跡が魚拓風に刷られて展示されているのもいい感じです。


上田順平12

上田順平11


残念ながら上田さんとはお目にかかれなかったのですが、ぜひともコンセプトなどを伺ってみたいと思わずにはいられない、さまざまなイメージを与えてくれる不思議なファンタジーに溢れた作品群です。
posted by makuuchi at 08:49| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする