2008年03月31日

review:服部公太郎展『物(モノ)』《3/24、3/29》

服部公太郎展『物(モノ)』
ガーディアン・ガーデン
東京都中央区銀座7-3-5 リクルートGINZAビルB1
3/24(月)〜4/3(木)日休
12:00〜19:00
服部公太郎080324.jpg

Kmitaro Hattori Exhibition_mono
Guardian Garden
東京都中央区銀座7-3-5-B1.Ginza,Chuo-ku,Tokyo
3/24(Mon)-4/3(Thu) closed on Sunday
12:00-19:00
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お洒落な突飛。オシャレでトッピ。



昨年のひとつぼ展グランプリを経てガーディアン・ガーデンで開催されている、服部公太郎さんの個展です。

服部さんの展覧会や作品は、これまでも何度か拝見して、表面的のキャッチーさと、実はそこに込められるコンセプトは明確で、そして壮大だったりするという、このギャップがたまらないのですが、今回はそれらがさらに洗練されて、空間にいて作品を眺めて、ワクワクするような感覚がよりいっそう高鳴っていくような印象です。


さて。
服部さんのクリエイションの面白さは、意表を突く引用、だと思ってます。
レディメイドのものに突飛な解釈を注ぎ込んで、「作品」へと高めてしまう、そんな感じです。
その「突飛感」が楽しい!
楽しすぎる!
「レディメイドであること」は強調されていなくて、

「こんなの思いついちゃったんですけどエヘヘ」

みたいなシャレっ気がとにかく痛快。

丸めた紙の折れた部分に色鉛筆で彩色を施した作品。
たったそれだけでその存在を立ち上がらせちゃう不思議。


服部公太郎02

服部公太郎01


案外、タイトルが面白かったりして、丸めた紙はたしか「自己紹介」みたいなもので、下の黄緑色の作品は「森」とかなんとかだったと記憶しているのですが、タイトルが作品の奥行きを深めて、イメージの膨らみを促すところも興味深いです。


服部公太郎03

服部公太郎04



この展示で、いちばん遠くの壁に展示されていながら、おそらくいちばん最初に気を引くと思われるのが、この作品。
「あれ、服部さんの平面かぁ、めずらしいなぁ」「それにしても随分ちゃんとした板に作ってあるなぁ」などと感心して順繰りに作品を眺めていきつつ、これを至近で眺めたとき



!Σ( ̄口 ̄;)

発泡スチロールか!Σ( ̄口 ̄;)



と。
まさに「やられた」感でいっぱい。


服部公太郎08 服部公太郎07


敢えてここでは書きませんが、お洒落な雰囲気が静かに満ちたこの空間で、この作品のタイトルが相当にオロロロロロロな感じで、けっこうなインパクトで。
無論、見え方も変わります。激変します。
そっちが後ろか!Σ( ̄口 ̄;)
って感じです(笑)。


服部公太郎06



雨雲。
綿のふわっとした感じと、そこから降る雨の白と水色のストライプが爽やかな雰囲気を醸し出しています。
雲から降る雨、それが雨を脚にして立っている...この逆説的なところも妙にツボに入ってきます。


服部公太郎10 服部公太郎11

服部公太郎09



タバコのケースを使ったグランドピアノ。
律儀に黒鍵と白鍵とがあるのがまたお洒落です。
おそらく同じ種類で長さが違うボックスのタバコがあって、それがアイデアの源泉だと思うのですが、そこからここへと繋げててしまうクリエイティビティに感服です。


服部公太郎15 服部公太郎13 服部公太郎14

服部公太郎12



カラフルなリボンで、「平面」と「空間」とが包まれています。
この辺りのコンセプトの提示の仕方がクールで、堅苦しくないのが服部さんの真骨頂、だと思うんです。


服部公太郎16



21世紀のレディメイド。
デシャンあたりから始まったスタイルが、現代アートのシーンでこんなにもポップに、軽やかに。
こういったレディメイドを取り入れたアーティストは今ももちろんいろいろといて、それぞれにユーモアや深いコンセプトを込めていてさまざまなかたちでイマジネーションを刺激されるのですが、服部さんの場合、そのキャッチーさが際立っていて、爽快で、ぱっと観てすぐに伝わるキュートなユーモアが堪らないんです。
また、それぞれの作品に込められたメッセージと言うか、コンセプトも、分かると「なるほど!」と膝を
パーン!!と叩きたくなるような明快さがまた、堪らなかったりします、

そして、これまで拝見してきたおなじみの作品をあっさりと引っ込めてしまうあたりも痛快です。
あらゆるところにあるさまざまな物が服部さんの感性のフィルターを通してどういうふうに意味を変化させていくか、これからどんな作品が出てくるかがすごく楽しみです。


服部公太郎05
posted by makuuchi at 20:33| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月30日

review:第2回 shiseido art egg 彦坂敏昭展《3/16、3/30》

第2回 shiseido art egg 彦坂敏昭
資生堂ギャラリー
東京都中央区銀座8-8-3 東京銀座資生堂ビルB1F
3/7(金)〜3/30(日)月休
11:00〜19:00(日祝:〜18:00)
shiseido srt egg 2008.jpg

Toshiaki Hikosaka exhibition
SHISEIDO GALLERY
8-8-3-B1F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
3/7(Fri)-3/30(Sun) closed on Monday
11:00-19:00(Sunday and national holiday:-18:00)
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精密の限界へ。



第2回shiseido art eggの3人目、彦坂敏昭さんの個展、最終日に再び観てきました。

黒と赤の作品が数点ずつ、これまで開催された全6回のアートエッグの展覧会のなかでもっとも空間をオーソドックスに展開し、ほぼ普段の視線の高さに合わせてそれぞれの作品が展示されていました。

彦坂さんの作品は実に複雑な行程を経ていて、それが魅力でもあるような気がします。
まず、下絵にデジタルの画像、もとい写真があり、その解像度を下げることで現れる矩形を銅版や絵の具によるペインティング、ペンや鉛筆によるドローイングでフォローしていく、そうやって、もともとの風景は光景が再構成され、作品によっては本来存在した3次元感が失せ、さらに当初はなかった奥行き感が生み出されていたりします。

色面、さまざまな線など、画面に存在するさまざまなテクスチャーが重なりあい、複雑な形態を表出していていて、至近で眺めているとさまざまな発見があります。
下地となっている写真の線の痕跡、それらを元に埋められるさまざまなかたちとそれを辿る輪郭、さらには鉛筆などによるグラデーションのうねり。
画面に残されるすべてのものが、感覚的な確信に基づいているように感じられ、その緻密な世界にどんどんとのめり込んでいきます。

距離をおいて眺めたとき、今度は画面で起こるダイナミズムに、壮大なイメージが喚起されます。
すべてのかたちが動的でアグレッシブに感じられます。しかも、広い画面でさえも相当な密度で展開されているために、ひとつの画面のさまざまな箇所で同時多発的に、核融合のような無限の爆発が繰り返されているかのような印象も。


彦坂さんのクリエイションの「肝」は、おそらく「どこまで小さな単位に迫っていけるか」ということのような印象を受けます。
「デジタル画像の線をフォローしていく」ということが根源にあるので、その細密な矩形をどこまで正確にフォローしていくか。そして、その過程でフィジカル的に機械の緻密さに追いつけないもどかしさや、彦坂さんの感性のフィルターを通過することにより、この個性的な世界が構築されていくのでは、と。
それは、ジャズのインプロビゼーションに通じる面白さを感じます。

ジョン・コルトレーンはジャズの理論を複雑化し、それを難しくしたとよく言われるのですが、セオリーを究極的に積み上げていった先に生み出された音楽が相当にフリーキーなものだったりするところに、彦坂さんのクリエイションとの共通点を感じるんです。
おそらく、彦坂さん自身が作品を制作される上でのルールはかなり明確に存在しているのでは、と思います。それであっても、構築される世界には相当にハプニングを伴っていて、それが彦坂さんのクリエイションの面白さを放ち、可能性を感じさせてくれるんです。


この緻密にして壮大な世界、どこまでその緻密さ、精密さが追求されるか、たいへん興味深いです。
もっと広い画面での展開も体感してみたい、という期待もありますが、それよりも、もっと小さな画面、10cm四方かもしれないし、もしかしたらもっと小さなサイズかもしれないのですが、そこにフィジカルもイマジネーションも集中させたときにどれほどの密度の作品が生み出されるのだろう、と想像すると、居ても立ってもいられないような高揚感が湧き起こります。

どんな展開が繰り広げられるか、すごく楽しみです!
posted by makuuchi at 22:37| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月29日

review:谷口ナツコ展《3/21、3/22》

谷口ナツコ展
Gallery Teo
東京都品川区東五反田2-5-15-3F
3/21(金)〜4/19(土)日月祝休
11:00〜19:00
谷口ナツコ080321.jpg

Natsuko Taniguchi exhibition
2-5-15-3F,Higashi-gotanda.Shinagawa-ku,Tokyo
3/21(Fri)-4/19(Sat) closed on Sunday,Mondayu and national holiday
12:00-19:00
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このサイズにしてこの密度。
圧巻の絢爛世界。



Gallery Teoでの谷口ナツコさんの個展です。
作品を前にすると立ち止まらざるを得ないほど、溢れるような色彩感と独特の手法による緻密な立体感が視界を占め、めくるめく世界が展開していきます。


谷口ナツコ07



この立体的な作り込みに対しては、言葉を失います。
とにかく凄い。凄すぎる。
おおらかでヴィヴィッドなな色彩で、画面から立ち上がる線やドットがすべて緻密に盛り上げられ、鮮烈なカオスを生み出しています。


谷口ナツコ02 谷口ナツコ06

谷口ナツコ03 谷口ナツコ05 谷口ナツコ04

谷口ナツコ01



至近で眺めたときの立体感の見事さのインパクトにぐんぐんと意識が呑み込まれていくのを実感すると同時に、画面全体が放つグロテスクな光景にも強烈なインパクトを感じます。
相当に生々しいモチーフが描き上げられているのですが、充分に広い画面であってもそこに収まりきれていないパワーに圧倒されるような気がします。


谷口ナツコ09 谷口ナツコ11 谷口ナツコ10

谷口ナツコ08



これほどまでに作り込まれた作品を、充分な距離を持って眺められるのはホントに贅沢だなぁ、と。
画面から盛り上がっている絵の具の立体感が僅かな影を生み出し、おそらく時間帯によって、あるい照明によっても表情を変化させ、それを画面全体からはな垂れルダイナミックな光景として味わえるのは、貴重です。
初日は夜に、翌土曜日は午後に伺ったのですが、自然光が入る時間帯はそのヴィヴィッドさがさらに押し出されたような印象で、陽が落ちた時間だと蛍光灯の明かりに照らされて、その危うさが鮮明に感じられたような印象を受けた次第です。


谷口ナツコ12



ふたつあるスペースのうちの奥のほうでは、複数のパネルを組み上げてちいさなハウス型のインスタレーションが2点出品されています。
無論、その迫力がより増して、相当な凄みを立ちのぼらせています。

1点は、床面に鏡面が取り入れられ、なんとも不思議な空間を構築しています。
足元深くへも続いていく、絢爛の色彩で繰り広げられる圧巻の装飾。
また、さらに大きく、そして複雑に組み上げられた画面のなかに注ぎ込まれた過剰な情報が絡み合い、混沌としたストーリーをつくり出しています。それが床面に反転して広がっているから、その混沌具合がさらに加速し、なんだかとんでもないことに...。


谷口ナツコ15 谷口ナツコ17

谷口ナツコ16 谷口ナツコ14

谷口ナツコ13



もう1点も凄まじい...。
壁全体を彩る鮮やかな赤のインパクトもさることながら、妖しげな装飾がうねるような動きをダイナミックに生み出し、その真ん中に奇妙な佇まいの女の子らしき後ろ姿があって、また相当にヤバい伝奇的なストーリーがそこで繰り広げられているように感じられます。
このスケール感は、ずいぶん前に読んでハマった高橋克彦の「総門谷R」の一連のシリーズを思い出してしまいます。


谷口ナツコ21 谷口ナツコ24 谷口ナツコ25

谷口ナツコ22 谷口ナツコ20 谷口ナツコ23

谷口ナツコ19



百聞は一見に如かず、この迫力を実際に目にして体感してほしい展覧会です!


谷口ナツコ18
posted by makuuchi at 11:09| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月28日

review:SHINCHIKA−シンチカ《3/15、3/22》

SHINCHIKA−シンチカ
OTA FINE ARTS
東京都中央区勝どき2-8-19-4B
3/15(土)〜4/19(土)日月祝休
11:00〜19:00
シンチカ080315.jpg

SHINCHIKA
OTA FINE ARTS
2-8-19-4B,Kachidoki,Chuo-ku,Tokyo
3/15(Sat)-4/19(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
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六本木から勝どきへと移転したOTA FINE ARTSのそのこけら落としでフィーチャーされたのは、5人組のアーティストユニット、SHINCHIKA

まさにオープニングにふさわしい展覧会です!
壮大なスケールのインスタレーションと、子供の頃に抱いた夢を思い起こさせてくれるような、そして同時に未来への希望へ思いを馳せるような、ファンタジックな映像作品で構成されています。


エレベーターで4階へ上がり、扉が開いて展示風景が目に飛び込んだ瞬間、そこで繰り広げられている世界に触れ、嬉しい高揚感が沸き起こります。
ギャラリーは、エレベーターを降りて右手にカウンター、左手には小さな展示室が。
ここを覗くと・・・


SHINCHIKA18


壁に「SHINCHIKA」の文字が浮かび上がっています。
壁に投影されているように見えるこの文字、実はブラックライトでの演出なのですが、これがホントに素敵なアクセントとなって、未来的な感触をひときわ鮮烈に盛り上げています。


SHINCHIKA17



メインスペースでまず目に留まるのが、ダイナミックなインスタレーションの数々。
暗めの調度のなかで、スチロールボードを駆使し、電車、重機、巨大な小鳥、電車のつり革と椅子などなど、さまざまなものがグラフィカルにデフォルメされ、再現されています。


SHINCHIKA06 SHINCHIKA08 SHINCHIKA11

SHINCHIKA07


「動き」を捉えたように設置されているさまざまなアイテム、それらに囲まれて、フィクショナルな世界へと入り込んでしまったかのような、ワクワクする感覚が心のなかに広がっていき、同時に白一色の静かな景色にさまざまなイメージが投影されてもいって、観ていていろんな感覚が鋭く立ち上がっていくかのよう。


SHINCHIKA10 SHINCHIKA12 SHINCHIKA13

SHINCHIKA09



一角には、ちいさな台が並び、その上にカラフルなミニチュアのオブジェが置かれています。
こちらもなんともかわいくて、スチロールボードのシャープなインスタレーションと一線を画し、程よく丸みを帯びて、どこかコミカルな感じも残しています。
スチロールボードのインスタレーションがイメージの拡張をもたらしてくれるとしたら、こちらのオブジェはミニマムな世界へと引き込まれていくような、どんどんと小さなほうへと進んでいくような印象。


SHINCHIKA02 SHINCHIKA05 SHINCHIKA04 SHINCHIKA03

SHINCHIKA01


緻密に設定されたスポットが、その小さな世界の輝きを演出しています。
そしてなにより、キュートにデフォルメされていながら、例えばコンセントのふたつの穴の長さが微妙に違っているところとか、段ボールの間に挟まっている波打つ部分など、それぞれのアイテムで「ここ!」という部分はしっかりと作り込まれているのも嬉しくなってきます。


SHINCHIKA16 SHINCHIKA15

SHINCHIKA14



これらふたつのインスタレーションは、すべて映像作品のなかから引用されているようです。
この映像が、ホントにいい!
いろんなポジティブな気持ちがよぎり、懐かしくもあり。。。


SHINCHIKA21


モノクロのとことがあったり、アニメーション、CGと使い分けられていたりと、さまざまな画風によって展開されていきます。
そうやって展開されるいろんなシーンが、ホントに懐かしさを喚起させてくれます。
昔プラモデルを作った頃のワクワクするような感じとか、ショーケースを眺めて目を輝かせていたのを思い出したり...。
主人公の女の子は携帯メールなんかもしたりしているので、「今」の物語なはずなのですが、いろんな場面で楽しかった想い出がよぎってきて、不思議と共感してしまうところがすごく多いんです。


SHINCHIKA27 SHINCHIKA22 SHINCHIKA25

SHINCHIKA23 SHINCHIKA26 SHINCHIKA29

SHINCHIKA24


この空間で繰り広げられているインスタレーションは、この映像に登場するさまざまなアイテムがモチーフとなっているようです。
映像世界と3次元に再現された、ふたつの縮尺、真っ白とカラードの世界。映像だから表現できるファンタジー、3次元だからこそのリアリズム。
これらが絡み合って、イメージの往来もより壮大になっていきます。


SHINCHIKA233 SHINCHIKA31 SHINCHIKA234

SHINCHIKA32


暗い展示スペースの白いインスタレーションに、映像のヴィヴィッドな色彩が映って彩りのある陰影をつくり出していくのを眺めていると、それがまたさまざまなイメージを膨らませてくれます。

加えて、サウンドトラック、音楽もかっこいい!
独り言を呟くような台詞が思い出すように現れては訥々と言葉が紡がれて、映像のクライマックスから始まるデジタルグルーブに音程があるお経系ラップが乗った曲がさらにフューチャリスティックな雰囲気を加速させます。


SHINCHIKA28


さまざまなポジティブな思いを喚起し、広げてくれる、爽快な展覧会です。
いろんな世代の人に観てほしい気がします。
posted by makuuchi at 17:41| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月27日

〜3/25のアート巡り

《3/21》
谷口ナツコ展
Gallery Teo
東京都品川区東五反田2-5-15-3F
3/21(金)〜4/19(土)日月祝休
11:00〜19:00
谷口ナツコ080321.jpg

そのヴィヴィッドな色彩感、さらに緻密なテクスチャー、そしてめくるめくストーリーのダイナミズム。
絢爛この上ない、最上級の見応え、ボリュームの作品が堂々と展示され、圧倒されっぱなしの展覧会です。



《3/22》
小林裕子展 ゆるやかな侵食
遊工房アートスペース
東京都杉並区善福寺3-2-10
3/20(木)〜3/30(日)月火休
12:00〜19:00(最終日:〜17:00)
小林裕子080320.jpg

半透明の紙に緻密なカットを施し、それを窓に貼るインスタレーション。
昨年の横浜赤レンガ倉庫での展示も印象のこっている小林裕子さんの個展です。
今回は、遊工房の展示スペースの扉での展開、入ってすぐには「あれ...何もないのかな・・・?」と戸惑ってしまうのですが、入口から奥の扉の右上に清楚で艶やか、緻密なカットが目に入ってきて、ふわりとした高揚感に包まれます。


小林裕子002

小林裕子001


もっといろんなシチュエーションで観てみたい気がします。
例えば、カフェの一角にこれがあったら嬉しいだろうなぁ...。



今津景 作品展
@NICHE GALLERY
東京都中央区銀座3-3-12 銀座ビルディング3F
3/21(金)〜4/3(木)日休
11:00〜18:30
今津景080321.jpg

GALLERY b.TOKYOの個展やシェル美術賞展などで印象に残っている今津景さん。
蜃気楼のように熱を帯びたような風合いで、ぼんやりと滲む風景が展開されています。
しかし、その色合いは力強く、暖色系はよりその熱っぽさを、青などの色彩は透明感をより強く奏でているように感じられます。


今津景102 今津景103 今津景104

今津景101


キャンバスの側面まで描き込まれた小品群も魅力的です。


今津景109 今津景108


色彩の臨場感がよりリアルになってきたような印象も覚えます。
そこで繰り広げられている時間へのイメージの距離感がより近付いたかのような。
鮮やかな深みもより増したような感じです。


今津景105 今津景106

今津景107



森千裕「アクシデンツ」
児玉画廊|東京
東京都港区白金3-1-15-1F
3/15(土)〜4/26(土)日月祝休
11:00〜19:00
森千裕080322.jpg

写真、ペインティングなど、さまざまなクリエイションが溢れます。
パネルのペインティングのやんちゃな個性が弾けている様子の痛快さといい、ドローイングの「面白いのが楽しい!」っていう感触が伝わってくる嬉しさといい、ポジティブな雰囲気が満ちています。
そういったなかで、入口すぐのスペースに展示されていた少し前の作品の奥ゆかしさというか、一歩引いた感じのシュールさも印象的です。



YAMAMOTO GENDAI future feature 児島サコ「Orphan and the Old Single」
山本現代
東京都港区白金3-1-15-3F
3/15(土)〜4/19(土)日月祝休
12:00〜19:00(金:〜20:00)
児嶋サコ080315.jpg

一度触れたら忘れられないこの世界。
なんだか見てはいけないものを見てしまったような、後ろめたい感覚が心のなかに仄かに広がっていく...そんな印象です。
ネズミやウサギなどの小動物を狂気の筆致で描ききったタブロー、人と小動物とが組み合わさったオブジェ、そして針が無数に刺さった小さな人形。それぞれから醸し出される危うさに、後ろめたさと表裏一体の好奇心が呼び起こされて、じっくりとその世界の脆弱さに浸ってしまいます。



藤田桃子「トネリコ・ユッグドラシル」
高橋コレクション(白金)
東京都港区白金3-1-15-2F
3/15(土)〜6/7(土)金土のみ
11:00〜19:00
藤田桃子080315.jpg

圧巻です。
まるで、この展覧会のためにこの場所があつらえられたかのような。
正面と左手の壁とほぼ同じ幅の大作が堂々と展示され、そのスケールの大きさに、展示空間に足を踏みい入れてからしばらくの間、言葉を失います。
至近で眺めると、日本画に用いられるさまざまな顔料を主に用いながら、力強い盛り上げが大胆かつ緻密に作り上げられています。マグマのようなとてつもないエネルギーを秘めているようにも感じられ、またどこまでも深い闇を思わせるような、独特な静謐感も伝わってきます。
これほどまでに作り込まれた作品を、充分な距離を持って眺められる...藤田さんの作品を「光景」として体全体で捉え、その雰囲気に浸れることを、凄く贅沢に感じます。

正面の横に長く展開する、どてっと大きなものや爪先立ちで舞うように空に浮かぶものなど、魑魅魍魎の世界が賑やかに展開されているもの、他の作品で広がる深い黒。昨年の「眼差しと好奇心」で拝見した小さな作品は思い返せば窮屈だったのかも、とあらためて思い返してしまうほどに、伸び伸びとおおらかに藤田さんが思う世界が作り上げられています。



富士登山/南条嘉毅
YUKARI ART CONTEMPORARY
東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階
3/22(土)〜4/26(土)日月火休
11:00〜19:00(土:〜20:00)
南条嘉毅080322.jpg

渋い。
真っ白な画面にていねいに描かれる富士の風景、シンプルなシルエットが辿られ、そこに南条さんの専売特許でもあるその土地の土が配色されています。
あらためて、ドメスティックなアーティストだなぁ、と再認識した次第です。



山下律子展
アトランティコギャラリー
東京都新宿区築地町13 赤城印刷ビル4F
3/22(土)〜4/19(土)木金土のみ
12:00〜19:00
山下律子080322.jpg

画面に塗布された絵の具に施された筋、そこにそれぞれの画面ごとにひとつの色が塗られ、緻密な世界が作り上げられています。
登場する人物の頭部がスキンヘッドに描き変えられ、不思議なシチュエーションに作り替えられているのもやっぱり面白い!



田中偉一郎個展「春の展示即売会」
YUKA SASAHARA GALLERY
東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F
3/22(土)〜4/26(土)日月祝休
11:00〜19:00
田中偉一郎080322.jpg


(笑)



《3/23》
写世術/photo project vol.1 萱原里砂
世田谷美術館区民ギャラリー
東京都世田谷区砧公園1-2
3/18(火)〜3/23(日)
10:00〜18:00
生活工房ギャラリー
東京都世田谷区太子堂4-1-1 キャロットタワー3F
3/16(日)〜3/31(月)
9:00〜20:00
萱原里砂080316.jpg

2ケ所で開催されている萱原里砂さんの個展です。
日曜日で終わってしまいましたが、最初に世田谷美術館区民ギャラリーへ。
こちらでは、萱原さんのこれまでのシリーズが同一空間で展示され、これまでの萱原さんの軌跡を辿れる機会が持てたのが嬉しい限りです。

「watershed」シリーズの、水があって、橋脚などの人工物がある風景。
機能だけが追求されたシンプルで殺伐とした造型の橋脚のラインに分割された画面。自然と人工物との共存が生み出す違和感と、それがつくり出すユニークな構図。経験している風が、萱原さんによって写真のなかに切り取られることで、無機的さと、その無機質な感触が水面の静けさにリアルさを加速させているようにも感じられ、ぐんぐんとその世界に入り込んでいくような感じです。

「mirror」シリーズは、緑の景色とそれを映し込む水面との風景としてのかかわり合いがたいへん興味深いです。1点、水面に映った風景が上にくるように、逆さまに展示され、不思議な違和感を奏でていました。

生活工房ギャラリーでは、展示されている作品こそ少ないものの、シンプルな展示によりその美しさ、静けさがより引き立てられて、その雰囲気に包み込まれるような感じが印象的でした。



グループ展 "無題/UNTITLED"
hpgrp GALLERY 東京
東京都渋谷区神宮前5-2-11 H.P.DECO 3F
3/15(土)〜3/30(日)
11:00〜20:00
無題080313.jpg

「無題」というタイトルなのに、こんなに雄弁な展覧会が繰り広げられているとは・・・!
平面と立体、合わせて8名のユニークな個性がひとつの空間にパッケージされていて賑やか。
・・・なんですけど、それぞれがしっかりとその個性を発揮していながら、お互いを活かしあい、信じられないくらいに違和感のない空間が作り上げられています。

先日の資生堂ギャラリーでの展示にも出品されていた窪田美樹さんの「彫刻」も、空間が変わると作品から感じる印象もずいぶん異なることに改めて驚かされます。

現在開催中のVOCA展にも出展されている元田久治さん、今回はタブローが出品されていて、これが素晴らしいです。リトグラフや銅版画もよいのですが、版ではない存在感に引き寄せられ、廃虚となった東京タワーの殺伐とした雰囲気に沈み込んでいくような。

伊藤一洋さんのブロンズ、戸塚憲太郎さんの黒い立体の作品、レントゲンヴェルゲでの「たからもののじょおうさま」では紙粘土の人形を出品されていた久保田珠美さんは艶かしい色彩が広がる不思議な雰囲気のドローイング、昨年の青参道アートフェアで印象に残っている澁谷忠臣さんの矩形を織り込んだクールなペインティング、永岡大輔さんの緻密なモノクロームの作品、郡司侑祐さんの遊び心が詰まったドローイング、それぞれが作用しあって、楽しいクリエイティブな空間となっています。



《3/24》
麻生志保展
ぎゃらりぃ朋
東京都中央区銀座1-5-1 第三太陽ビル2F
3/24(月)〜3/30(日)
12:00〜19:00
麻生志保080324.jpg

今回の麻生さんの作品は、いつになく西洋的な印象を受けます。
妖しげな風合いや艶やかさはそのまま、絵のなかの登場する女性の顔立ちが西洋っぽい、ということに加え、画面のなかに織り込まれるさまざまな花や色彩の飛沫などの色彩感がより鮮やかなものが増えたような...。
これまでの「和」のテイストを保ちつつ、どこに新鮮な味わいも加わって、いつもとはちょっとだけ異なる深みを持った風合いが奏でられています。



横田藍子展「森守り」
フタバ画廊
東京都中央区銀座1-5-6 福神ビルB1F
3/24(月)〜3/30(日)
11:00〜19:00(最終日:〜16:00)
横田藍子080324.jpg

光が滲んだようなフォルムと、軽やかな色調とで、おぼろげで爽やかな風景を思わせる絵がそれぞれの画面から広がっています。
小品が特によいです!
小さな画面のなかに小さく描かれた風景が、ずっと向こうの場所に思いを馳せるような気分と、夢のなかのような心地よい曖昧さが心になかに緩やかに灯ります。



脇谷内里絵展
GALLERY b.TOKYO
東京都中央区京橋3-5-4 第1吉井ビルB1
3/24(月)〜3/29(土)
11:00〜19:00(金:〜21:00、最終日:〜17:00)
脇谷内里絵080324.jpg

線でシンプルにその姿だけw辿られた動物のからだと、その頭部に人の顔がリアルに描かれてすごい違和感を放ち、ユーモラスな深みを発しています。
妙にシニカルな雰囲気を充満させている作品は、ポップな感触もありながら、意外とど真ん中のシュール路線の風合いも感じさせてくれます。



服部公太郎展『物(モノ)』
ガーディアン・ガーデン
東京都中央区銀座7-3-5 リクルートGINZAビルB1
3/24(月)〜4/3(木)日休
12:00〜19:00
服部公太郎080324.jpg

もう、面白いですよ、服部さん。
加えて今回の個展はなんだかお洒落。
直感がそのまま作品に注入された、楽しいクリエイションが並んでいます!



《3/25》
杉山尚子展 Eklipse−Ellipse
Wada Fine Arts
東京都中央区築地3-2-5 第2平和田ビル
3/25(火)〜4/18(金)日月祝休
11:00〜19:00
杉山尚子080325.jpg

枠から放たれる真直ぐな線。
その線の先が描き出す楕円の軌跡。
立体としての面白さも秘めた、さまざまなイメージを喚起してくれる作品群です。
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2008年03月26日

review:福井利佐『KI RI GA』《3/13、3/16》

福井利佐『KI RI GA』
Gallery ef
東京都台東区雷門2-19-18
3/14(金)〜4/13(日)火休
12:00〜21:00
福井利佐080314.jpg

Risa Fukui "KI RI GA"
GALLERY ef
2-19-18,Kaminarimon,Taito-ku,Tokyo
3/14(Fri)-4/13(Mon) closed on Tuesday
12:00-21:00
Google Translate(to English)



洗練された妖艶な線。



切り絵のアーティスト、福井利佐さんの個展です。
以前から個展で拝見したいと思っていたのですが、それがGallery efで開催されるとは・・・ホントに嬉しい限りです。
和の面影を重厚に残す空間に、さまざまなテイストが織り込まれ、独特な世界を紡ぎ上げている福井さんの切り紙作品が展示され、西洋文化が入り始めた時代の雰囲気を連想させるようでもあり、同時に、そのグラフィカルな鮮やかさが立ち上がって未来的な風合いがさらに強く感じられるような、さまざまな美しさに満ちた展覧会です。


カフェスペースに、すでに数点の作品が展示されています。
特に、入口すぐのショーケースに飾られた、DMにも採用されている赤い円の作品の存在感は格別で、福井さんの世界へと一気に誘われます。


いつもは閉じられている蔵の上方の扉が開かれ、そこから姿を覗かせる紙の長い女性の頭部のシルエット。
さらに期待が高まります。


福井利佐09



薄暗い蔵のなかへ。
妖しげな雰囲気が立ちのぼるような、独特の空気に包まれるような感触。
正面の作品は、内側から観るとその鮮やかで深みを帯びた色彩により、さらに繊細で鮮烈なインパクトを醸し出しています。


福井利佐08



幽玄、かつハードコアな世界。
髪の毛がモチーフとなり、それに包まれた犬の口、水鳥。
それらの立体的なフォルムに沿って渦を巻くように、鮮やかな流線が描かれています。
そこに起こる空気の流れをも現すかのような臨場感が伝わってくるような気がします。


福井利佐02 福井利佐03

福井利佐01



もうそれだけで充分に妖しい雰囲気が立ちのぼっているように感じられる、黒を背景に撮影されたゴシックなメイクの女性のポートレートにカットが施された作品群。
有機的なカットの美しさがよりいっそう引き立てられ、さらに本来別々に存在するはずのものがひとつの画面に重ねられる、レイヤー的なアプローチも興味深いです。


福井利佐07 福井利佐05 福井利佐06

福井利佐04


1階ではこれまでの福井さんの作品を一堂にチェックできる構成となっています。
紙のカットで緻密に細く残された部分が束になった箇所や、あるいは女性の顔の表面などで表現される、曲面を細い線の流れで現している部分など、そこに存在する気流を表出しているかのような、刹那的というかギリギリの緊張感を醸し出しています。
さらに、そういった線の揺らめきや速度感、たおやかさなどにより、エキゾチックな妖婉さを漂わせています。

写真で紹介したほかにも、昨年拝見した夏目漱石の「夢十夜」をテーマに制作された作品なども展示され、それぞれが妖しさ、危うさを鮮烈に放っていて、まるで短剣で急所をすらりと斬られたような、感性を瞬殺されたような錯覚を覚えます。



2階では、映像作品が上映されています。
ほぼすべての場面と登場人物、風景などを切り紙で描かれて制作された「たらちね」という作品。


福井利佐15



「たらちね・垂乳根」を辞書で引くと「母親」と出てきます。
物語は、切り紙が日本の伝統であることを再認識されるような、日本的な風合いで表わされた場面により、淡々と進行していきます。
「母なる大地」という言葉があるように、すべてを包み込むようなその存在のおおらかさ、そして、大切なものを守るための自己犠牲。深いメッセージを、一切の台詞なしで進んでいく物語から感じます。

音楽を担当しているのが、トンコリ奏者のOKIさんで、アイヌの民族楽器の素朴な音色が紡ぎ出すリズムとリフレインが、沈むように静かに訥々と流れたり、鮮やかな色彩を纏ったかのように軽やかに舞ったりと、福井さんの切り紙で綴られる物語に絶妙の彩りを添えています。


壁にはこのアニメーションの原画となっている切り紙の作品が展示されています。


福井利佐16



空気の揺らぎを現したかのような、妖艶に這い、舞うような線。
艶やかな感触を静かに際立たせています。切り紙ということもあり、その線の輪郭は鋭いのですが、それでもどこかやわらかさを感じさせてくれるような気もします。


福井利佐11

福井利佐10



壁に映り込む影が美しい展示もそこかしこにあり、さまざまな魅力が静かに広がる空間です。
壁に展示された原画を眺めているときにBGMとして聴こえてくるOKIさんの音色も心地よかったり。。。


福井利佐14 福井利佐13

福井利佐12



福井さんの切り絵を拝見していると、「切り絵」を構成するふたつの単語のうちの「切り」のほうにより重きが置かれたような印象を受けます。
「切る」という行為には常に刃物の存在があり、その道具の鋭利さ、危うさがそのまま作品の鋭さに投影されているような感じがします。
そして、何かのかたちをそのまま現すというより、その周りを巡る気の流れ、あるいは表面を剥がして現れる繊維といった、見えない部分を敢えて切り出していくように思える作風が、危うさ、妖しさ、斬新さを醸し出し、深く印象に残ります。

髪、血管など、有機的で生命感を内包するものを思わせる線が、スリリングで、センシティブな世界を生み出しているように感じられます。
さまざまな媒体で福井さんのクリエイションを目にする機会はありますが、作品そのものが放つ雰囲気は格別です。

今回の展覧会と同タイトルの画集、映像作品「たらちね」のDVDと原画集もその魅力をしっかりと伝えていて秀逸です。
ぜひともチェックしてほしいクリエイションです。
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2008年03月24日

review:Paul Johnson "Sensitive Chaos"《3/8、3/15》

Paul Johnson "Sensitive Chaos"
MIZUMA ART GALLERY
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
3/8(土)〜4/5(土)日月祝休
11:00〜19:00
Paul Jhonson 080308.jpg

Paul Johnson "Sensitive Chaos"
MIZUMA ART GALLERY
1-3-9-2F,Kami-meguro,Meguro-ku,Tokyo
3/8(Sat)-4/5(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)



みなぎる確信。ほとばしる好奇心。



青山悟さんのキュレーションで2006年に開催された「スーベニア・マイン」で紹介されたポール・ジョンソンさんの、今回は個展です。

まず、手製の何かの案内のポスターで軽いジャブを。ポップな感じが、緩くて楽しい雰囲気を醸し出しています。


Paul Johnson 14



この緻密さには圧倒されます。
執拗に繰り出されるカット&ペースト。
ひとつひとつの色面さえも細かいパーツによって構築され、隣り合うパーツがグラデーションを醸し出し、パーツ同士が接するエッジの部分が放つ僅かな陰影さえも作用して、たいへん深みのある色調の展開がなされています。


Paul Johnson 03 Paul Johnson 04

Paul Johnson 02



ひとつひとつのパーツの色彩は、それぞれの紙を水彩絵の具により彩色されています。
ひとつの作品を制作するのに、彩色、カット、貼り込みと、作業行程だけでもこれだけの種類が入っていて、しかもそれがすべて、どれも省くことができない大事な要素となっているところに、敬意すら覚えます。


Paul Johnson 06 Paul Johnson 08 Paul Johnson 07

Paul Johnson 05


「平面の展開」への自信と可能性とを強烈に感じるクリエイションです。
細部まで緻密に再現された人物のポートレートと、そこに描き加えられる貝殻のようなワンポイント、それらの関係性に「なんだろう・・・?」とさまざまなイメージが喚起させられるところなど、シンプルな「絵画」としての面白味も充分に備えていると感じられるのですが、そこに留まらず、それを上記のような複雑な行程を経ることで工芸的な面白さも加わっているように思えます。

最近、「アート・芸術」としての面白さと「クラフト・工芸」としての面白さの違いを強く認識するようになったのですが、その上で「過剰な工芸」は充分にアート的なインパクトを備えている、とも思うのです。
緻密な作業の積み重ねとしての作品を目にして、その手法で「表現しなければならない」という、どうにも抑えられないアーティストの表現者としての衝動や、それをやり遂げるために持続された強固なモチベーションの存在、そしてそれを支える「自分が作るものは絶対に面白い」という客観的な自信。それらすべては無論よい意味でのクレイジーさであって、それがひとつの作品に、そして展示に注入されて表に出てきたときに発するエネルギーの膨大さ、強烈さに、大きな感動を得させてもらっている、そういう気持ちです。



ポートレートが描かれたパネルの作品と合わせて、フラッグの作品も数点展示されています。
パーツによって組み上げられる面白さがさらに臨場感を伴って提示されているような印象です。


Paul Johnson 13


本来、布で作られるフラッグが、敢えて紙で、しかも緻密なかたちのパーツを組み合わせて再現されています。
驚きなのが、同一色の色面さえも、同じ紙をカットしているのではなく、別の紙からカットされたパーツで構成されているということ。
さらに文字の陰影も、細かく色ごとにパーツ分けされていています。
至近で眺めて「えーっ!!!」と驚きがさらに加速するんです。


Paul Johnson 12 Paul Johnson 10 Paul Johnson 11

Paul Johnson 09



奥のスペースにも数点の作品が展示されています。
エスキース的なドローイングの作品があって、淡い色調が緊張感を醸し出して、他の作品とは異なるテイストがスリリングです。


Paul Johnson 15



先に「どうにも抑えられない衝動」と書いたのですが、それはおそらくこういう作品を作るアーティストにとって、自身を含めたオーディエンスへの表現者としての「責任」や、こうやったらきっと素晴らしいものができるに違いないから誰よりもまず自分が作ってみたいという「好奇心」がその根源となっているような気がします。
そういう作り手の「心意気」には最上級の敬意を表したいと思うと同時に、そういうクオリティの作品に出会え、それを楽しめることをあらためて幸せに感じます。

衝動のホットさと緻密なテクスチャーのクールさが奏でる絶妙のクリエイション。
ぜひともじっくりと作品と直に対峙してほしいです。


Paul Johnson 01
posted by makuuchi at 08:04| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2008年03月23日

review:Sissi "Over the glance ties the rope"《3/8、3/15》

Sissi "Over the glance ties the rope"
ミヅマ・アクション
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル5F
3/8(土)〜4/5(土)日月祝休
11:00〜19:00
Sissi 080308.jpg

Sissi "Over the glance ties the rope"
MIZUMA ACTION
1-3-9-5F,Kami-meguro,Meguro-ku,Tokyo
3/8(Sat)-4/5(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)



和洋折衷の祝祭のインスタレーション。


ミヅマ・アクションでのSissiさんの個展です。
トーキョーサンダーサイト渋谷併設のカフェでのパフォーマンスも拝見したSissiさん。カラフルなロープでお客さんを繋げていくと言うものでしたが、今回の個展では、太さ、色などさまざまなロープが随所に配され、そこにタブローが組み込まれたインスタレーション的な作品がひしめいています。


まず入口、簾のように、カラフルなロープが吊り下がっています。
鮮やかな色調と、素材の質感とによって、大胆なインパクトとともにやわらかいイメージが出迎えてくれます。


Sissi 12



鮮やかな彩色のロープ、そして白くて太い綱。
それにまわりを巻かれた楕円のキャンバス。
それらが組み合わさってそれぞれの作品が展開されています。


Sissi 06



お祭りや相撲など、日本のハレの場に多く登場する綱が親しみやすく、馴染みのある雰囲気を醸し出す一方で、その日本のドメスティックな要素の大胆な引用と、まるで鏡のなかを覗いているかのような透明感が滲むタブローとのコントラストが、不思議な世界を作り上げています。


Sissi 03 Sissi 02

Sissi 01



それぞれのタブローは、ふわふわぼんやりと滲むような彩色が透明感を静かに放っていて、また画面によってはペンで細密に描かれた有機的なモチーフがその虚空に浮かぶように描かれていたりして、謎めいた風合いがより深く展開しているように感じられます。


Sissi 08 Sissi 09

Sissi 07



画面とその周りを巻く綱とのコントラストがひときわ強烈な作品。
太い綱の力強さ、そして不思議と馴染みのある質感。
それに押し込められるように、真ん中にある小さな画面。またそこに細かい線画が描かれているものだから、自然に意識がそこに吸い寄せられるような感触を覚えます。


Sissi 05

Sissi 04



展示スペース中央の柱を巻くロープもこの空間の大事なアクセント。


Sissi 10



オープニングのときにはたくさんの人がいて賑やかで、その雰囲気が作品のハレの感じと合っていて気持ちよく感じられたのですが、あらためて伺い、静かななかで拝見すると、その独特の神々しさが静かに伝わってくるような感じが印象に残ります。
今回の展示に多く登場しているロープと綱も、Sissiさんがそこに日本的なものを感じ取ってインスパイアされ、はじめてご自身の作品のなかに取り入れたのだそう。
親しみに溢れて、それでいて、というか、その親しみのある素材・モチーフがイタリア人女性アーティストであるSissiさんの感性のフィルターを通過することで、異国的な風合いも感じられる、新鮮な発見も見つかるユニークな空間です。


Sissi 11
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2008年03月22日

review:ART ADVANCE ADACHI 2008《3/20》

ART ADVANCE ADACHI 2008
THEATRE1010ギャラリー
東京都足立区千住3-92 千住ミルディスI番館11F
3/20(木)〜3/30(日)
10:00〜20:00
AAA2008.jpg

ART ADVANCE ADACHI 2008
THEATRE1010ギャラリー
3-92-11F,Senju,Adachi-ku,Tokyo
3/20(Thu)-3/30(Sun)
10:00-20:00
Google Translate(to English)


!!!Σ( ̄口 ̄;)


なんだお前はぁぁっ!Σ( ̄口 ̄;)


アダチン登場


目が!Σ( ̄口 ̄;)

目が怖ぇ!Σ( ̄口 ̄;)



・・・・・!



あ、




あ、



合言葉か!Σ( ̄口 ̄;)



あだち・アダチン・アートだチン!



微妙だ!Σ( ̄口 ̄;)
激しく微妙だ!Σ( ̄口 ̄;)


(゜Д゜)<でも安心しろ!
(゜Д゜)<受付で合い言葉言わないと入れてくれない、なんてことはないから!


(゜Д゜)<だが気をつけろ!
(゜Д゜)<気ぐるみのアダチンがいるから気をつけろ!


・・・アダチンの写真撮り損ねたorz



ええぃ!
もとい!
もとーい!


この展示、面白いです!
アトリエオモヤの主要メンバー3名をはじめ、昨年のART AWARD TOKYOでもひときわ注目を集めたアーティストら、ユニークなクリエイションがずらりと揃っていて見応え充分、エンターテイメント性に富んだ企画です。


まず出迎えてくれるのが、鈴木太朗さんの作品。
一昨年の個展とC-DEPOTで発表された、近付くとくるくると浮上する紙の羽根のインスタレーションが、よりゆったりとした空間で展開されています。
足を踏み込むと、ふわぁっと浮かんでいってなんともその感じがのんびりしていて、和めるんです。


AAA鈴木太朗02



岸乃瑠さんの作品は、モニターの映像と人形のオブジェとが組合わさったインスタレーション。
それぞれ、映像と人形とが呼応しているような印象です。


AAA岸乃瑠02

AAA岸乃瑠01



昨年のART AWARD TOKYOと、ギャラリーエスでの「眼差しと好奇心」で強烈なインパクトと過剰な美しさを放っていたのが印象に残っている岩本愛子さん。
ART AWARD TOKYOのときの、巨大な真っ赤なハイヒールが再登場、そのなかで眠る美しい女性の姿に、わかっていても一瞬ぎょっとします。
それを見張る巨大な目も凄いインパクト。


AAA岩本愛子02

AAA岩本愛子01


別のコーナーでも、トランプと女性のインスタレーションが。


AAA岩本愛子03



北川貴好さんのコーナーは、シュールなシチュエーションながら、その静謐な美しさが際立ちます。
ベッドの上に排水口。その上に頭を垂れるストロー。整然と、しかし大胆に穴が開けられた壁から射し込む光やベッド側のライトでさまざまな光が演出され、不思議な雰囲気をつくり出しています。


AAA北川貴好02

AAA北川貴好01



小松宏誠さんも、すでにおなじみの羽の作品。
しかし、今回はスケールがこれまでから格段にアップしています。
天井高を充分に活かし、高さ4メートルほどの透明の筒が整然と並ぶ空間で、白い羽が美しい3次元配列を繰り出し、改めて拝見して、よいいっそう壮大な未来的なイメージが心のなかに広がります。


AAA小松宏誠01 AAA小松宏誠02

AAA小松宏誠03



素晴らしいクリエイションが揃っているのですが、敢えて今回のハイライトといいたいのが臼井英之さんのインスタレーション。
昨年開催された神戸ビエンナーレ「アート・イン・コンテナ」でグランプリを獲得した作品「40%」が左舷去れています。

もう、圧巻!

ボチボチボチボチボチボチボチボチボチボチボチボチボチボチボチボチてもう凄まじい臨場感!

まさに百聞は一見に如かず、眼前で繰り広げられる光景の鮮やかさを体感してほしい!


AAA臼井英之01



小川香織さんのモノクロームの作品は、今回のインパクトがあるインスタレーションがずらりと配された展示のなかで、ひときわ静かに展開されています。
ていねいな陰影で描き出される生物の有機的なフォルム、緻密なレース模様などをじっくりと観られて、この展覧会のやさしいアクセントとなっています。


AAA小川香織03 AAA小川香織02

AAA小川香織01



松枝悠希さん、昨年のC-DEPOT展で発表されたミサイルが再登場。
リアルなサイズのミサイル、その弾頭にプレゼントを抱えた人が詰め込まれていて、それがなんともキュートです。


AAA松枝悠希02 AAA松枝悠希03

AAA松枝悠希01



塚本智也さんは、展示室の壁と柱をいっぱいに使い、無数のドローイングが掲示されていて圧巻!
ひとつひとつも魅力的なのですが、何せその数と広さに圧倒されます。


AAA塚本智也02 AAA塚本智也01

AAA塚本智也03



奥の視聴室では、3名の映像作家の作品が上映されています。


・・・、が、これがまた面白い!

半崎信朗さんの淡々としていながら、ダイナミックな展開へと続いていくモノクロームの作品、小柳祐介さんのめくるめく展開の鮮やかさが楽しい作品、そして青木純さんの『ゴーダーヅーネーゴォォォォォァ』に凄まじく涙目。



バラエティに富んでいて、とにかく楽しい、足立区GJ!な展覧会です。
会期が短いのが惜しい!

ぜひ観に行ってみてくださいまし!


AAA鈴木太朗01
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2008年03月21日

〜3/20のアート巡り

《3/18》
梵岩直感 峯地孝明 吉田晴弥
GALLERY蓮
東京都渋谷区神宮前2-5-6
3/12(水)〜3/25(火)
11:00〜19:00
梵岩直感080312.jpg

昨年同じギャラリーで個展を拝見して印象的だった「宇宙陶芸」の吉田晴弥さんと、DMには「あきらめない人」とクレジットされている峯地孝明さんとの2人展。
吉田さんの陶器の味わい深さとおおらかさ、大判の板の作品などが放つ深遠さなどは、人柄もにじみ出るような感じが心地よいです。
峯地さんの作品でインパクトがあるのが、なんといってもギャラリーの中央の台の上に置かれたオブジェ。さまざまな物を取り入れ、迫力を持った生物が再現されているかのような、力強さが印象に残ります。
所用でじっくりとチェックできなかったので、今週末にあらためて行ければ...。



《3/20》
堀藍
ギャラリーなつかb.p
東京都中央区銀座5-8-17 GINZA PLAZA58 8F
3/17(月)〜3/22(土)
11:30〜18:30(最終日:〜17:30)
堀藍080317.jpg

昨年度の武蔵野美術大学の学内修了制作展示で、工事現場で働く人々の姿をコミカルに描いた銅版画が印象に残っている堀藍さんの個展です。

今回は工事現場を描いた作品はないのですが、何やら山登りをしている団体客など、余白を大胆に活かし、ちっちゃく描かれた人々が何ともユーモラスでかわいい雰囲気を醸し出しています。


堀藍07 堀藍06

堀藍05



小品も同じように、余白と人の姿の縮尺感がたまらなくコミカルな味わいを醸し出しています。
銅版画らしい繊細な線と、それがすらりと画面を漂って独特の雰囲気を作り上げていて、余白がまた不思議な奥行き感とどこか霞の中のような曖昧な風合いを奏でています。


堀藍03 堀藍01 堀藍02

堀藍04



- 心音 - 小川奈々誉
Gallery Q
東京都中央区銀座1-14-12 楠本第17ビル3F
3/17(月)〜3/22(土)
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
小川奈々誉080317.jpg

もはや年中行事、毎年春に開催されている小川奈々誉さんのGallery Qでの個展です。
毎回、インスタレーション的な展開を展示に取り入れている小川さんですが、いつもの淡い色調に彩られた紙が、今回は筒状に丸められ、壁沿いに展示され、ふわふわとした浮遊感を生み出しています。


小川奈々誉202 小川奈々誉204 小川奈々誉203

小川奈々誉201


今回は、それぞれの作品に、植物やたまごを思わせるモチーフが切り紙で再現され、それらが画面に貼られて、いつもよりもシャープなフォルムが取り入れられることでキャッチーさが生み出されています。
イメージの基点が定次されているような感じが嬉しいです。


小川奈々誉210 小川奈々誉209 小川奈々誉208

小川奈々誉211


小品では余白を「抜く」切り紙が多いのですが、1点だけ展示されている大きな作品では、かたちを重ねて展開しています。
咲く花のおおらかさを思わせる風合いが独特の淡い色調で紡ぎ出され、それぞれの要素がそのよさを引き出しあって、繊細な美しさが提示されています。


小川奈々誉206 小川奈々誉207

小川奈々誉205



伊藤香奈展