@TARO NASU
東京都港区六本木6-8-14-2F
11/24(土)〜12/22(土)日月祝休
11:00〜19:00
Kaoru Usukubo "Wandering season"
@TARO NASU
6-8-14-2F,Roppongi,Minato-ku,Tokyo
11/24(Sat)-12/22(Sat) closed on Sunday Monday and national holiday
11:00-19:00
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繊細に、おおらかに紡がれる、淡く仄かなファンタジー。
TARO NASUでの薄久保香さんの個展です。
薄久保さんの作品は、今年のART AWARD TOKYOに出品されていた、大きな画面に清々しさと渋さとをたたえた色調で描き上げられた子どもの鷹匠(という表現でいいと思うのですが...)の作品がたいへん印象に残っています。
ふわっと眼前に広がる光景の鮮やかさ。かつ、ていねいに写実的に描かれていながら、仄かに揺らぐフォルムのやわらかい風合いが、記憶と未来とを同時に織り上げていくような独特の時間の流れが連想された次第で。
今回の個展では大作を中心に、独特の雰囲気がそれぞれの画面からやわらかな色彩が発せられ、それらが展示された空間全体に満ち広がって、やさしく包み込まれるような...清々しさと心地よさ、さらにそこからさまざまな想いも溢れる、素敵な世界が繰り広げられています。
それぞれの作品の独特なシチュエーションが、想像を膨らませてくれます。
奇妙なフォルムの両開きの扉。その有機的なかたちが放つ妖しげな感触、そこに映り込んでいるのか、扉の枠の中の茶色の中にさまざまなシルエットが浮かび上がっているような...もしかしたら錯覚かも知れないのですが、僕はそこに映り込む風景に太古の世界を思い浮かべます。
ノブに手をかけてしゃがみ込む少年の後ろ姿。現代的な服を纏っていて、それが妖しげな扉が醸し出す時間のイメージとの間にギャップを生み出しているのもたいへん興味深く、それがさらに大きな想像を喚起するような気がします。
薄久保さんの作品をじっくりと眺めていると、さまざまな表情がそこかしこに織り込まれていることに気付かされます。
緻密なグラデーションで施された陰影。写真家と見紛うほどの精度で描き上げられる少年の素肌、髪の毛。。。
それはもしかしかたらそこに存在しない...虚像かも知れない。そんなイメージが浮かぶ、消え入りそうなほどに甘く、曖昧な色彩同士の境目。
往年の印象派の風合いを仄かに感じさせてくれる、遠くに広がる暖かで穏やかな草原の緑。
こういった異なるテクスチャーがまったくナチュラルに重なり、ある部分は立ち上がり、またある部分は淡く広がりながら、響きあって、独特の不思議な世界が作り上げられているのもたいへん印象的です。
薄久保さんの作品には、ペーパーワークス、紙の立体のオブジェが多く登場します。
それらは、(ご本人から伺ったのではないのですが)ご自分で作り、それをモチーフにして描いているのだそう。
風景とペーパーワークのオブジェとがひとつの画面で、ユニークな縮尺で重ねて描かれたとき、ますますユニークな世界が生み出されます。
そのペーパーワークのオブジェが大きくフォーカスれた作品、この鮮やかさも素晴らしいです。
実際のものは、もっと紙の質感が感じられたりするのだろうなぁ、と思い浮かべるのですが、紙のエッジの鋭さオブジェそのもののシュールな風合いが、こうやって画面の中に収められ、独特のタッチで描かれることで消え失せて、繊細で優雅で、仄かな華やかさもふっと画面から広がっているように思えます。
ここでしか味わえないような洗練さえ感じさせてくれるファンタジー。
登場する少年、子供達は一様に表情が隠され、匿名性が仄かに漂います。
そういったところからも、さまざまな想像、登場する彼や彼女への感情移入や俯瞰といった異なるアプローチを可能にさせてくれているような気がします。
薄久保さんの作品に囲まれて、過去の記憶が立ち上がってきたり、あるいは知らない世界、未来へと思いを馳せたり、と、いろんな印象が心の中に去来するなかで、もうひとつ感じることがあります。
キャンバスに油彩、という、過去から連綿と続き、ある種やリ尽くされた感もある手法によって描かれた作品でありながら、大きな意味ですごく「新しいなぁ...」と思ったんです。
あらゆるクリエイションにおいて、「新しい」ものはない、と常々思っているので(「誰もやっていない」ことが「新しい」わけではないと確信しています)、「斬新」とか「未来的」とは違った視点で、また「鮮度」という意味ともちょっと違う、「新しい」という感触が僕にとって嬉しいです。
このテイストの作品をこれから先も続けて拝見していったとして、そのときそのときで常に「新しい」と思わせてくれるような期待感がある、といった感じなのかも知れません。
今後もチェックし続けていきたいクリエイションです。



