2007年12月31日

2007年を大晦日に振り返る

毎年年末恒例のお節作りもさすがに何年もやってるせいかあっさりと5品(鮭と鰊の昆布巻、紅白なます、田作り、栗きんとん、黒豆)をほぼ前夜に作り終え、迎えた大晦日。

思い返すと今年もそれなりにいろいろとあったなぁ、と。
自転車事故に遭って左手の手のひらの中指を骨折し、病院に行ってレントゲン撮って包帯巻いてもらって帰宅して包帯とったらトムとジェリーのジェリーにいたずらされたトムの手みたいにパンパンに腫れ上がっていて痛いの忘れて思わず笑ったり、その自転車もしばらくして後輪のスポークが根こそぎ折れるという聞いたことも想像したこともない最期を迎えたり、と、それなりの災難を乗り越えつつ、月刊ギャラリーの展覧会案内を担当させていただくことになったり封筒の中のギャラリーの第3弾として企画したあるがせいじさんのマルチプル「ひらき」がレントゲンヴェルゲさん他のご尽力のおかげで多くの方々に行き届くまでになったりと、アートシーンの中でも観るだけでなく、このブログも含めて「伝える」という立ち位置でそれなりに何かができたのかな、とも思えて、さらにそういったさまざまなことを通じて2007年もホントにたくさんの素晴らしい出会いに恵まれて。

いやぁ、今年も楽しかったです。
そんな2007年のアート巡りを振り返って。

2007年の大晦日の夜、この時点で2007年に観た展覧会で印象に残った10展を敢えてピックアップするとしたらこんな感じです。


政田武史 −New Paintings review
WAKO WORKS OF ART
東京都新宿区西新宿3-18-2-101
9/15(土)〜10/13(土)日月祝休
11:00〜19:00
政田武史9/15DM.jpg


大畑伸太郎 個展 ひかり review
YUKARI ART CONTEMPORARY
東京都目黒区鷹番2-5-2 市川ヴィラ1階
10/25(木)〜12/15(土)日月休(火水:事前予約制)
12:00〜20:00
大畑伸太郎10/25DM.jpg


野口里佳「マラブ・太陽」 review
ギャラリー小柳
東京都中央区銀座1-7-5 小柳ビル8階
10/27(土)〜11/30(金)日月祝休
11:00〜19:00
野口里佳10/27パンフ.jpg


青山悟「Crowing in the Studio」review
ミヅマアートギャラリー
東京都目黒区上目黒1-3-9 藤屋ビル2F
10/17(水)〜11/17(土)日月祝休
11:00〜19:00
青山悟10/17DM.jpg


佐伯洋江展
TAKA ISHII GALLERY
東京都江東区清澄1-3-2-5F
12/22(土)〜1/26(土)日月祝・12/29〜1/7休
12:00〜19:00
佐伯洋江 071222.jpg


小谷元彦「SP2 New Born」review
山本現代
東京都新宿区西五軒町3-7 ミナト第3ビル4F
6/30(土)〜7/25(水)日月祝休
12:00〜19:00
NEW BORN01.jpg

NEW BORN02.jpg


内海聖史展 review
GALERIE ANDO
東京都渋谷区松濤1-26-23
7/10(火)〜7/28(土)日月休
11:30〜19:00
内海聖史7_10DM.jpg


田代裕基 個展「HARMONY」review
ギャラリーエス
東京都渋谷区神宮前5-46-13 ツインエスビル
9/20(木)〜10/7(日)月休
11:00〜19:00
ギャラリーエス パンフ.jpg


「25×4=□」展 尾崎真悟・大平龍一・柴田鑑三・飯田竜太 review
東京画廊
東京都中央区銀座8-10-5-7F
4/4(水)〜4/28(土)日月祝休
11:00〜19:00(土:〜17:00)
25×44/4DM.jpg


Eternal Spring アダム・ブース 日本画展 永遠の春 review
Gallery ef
東京都台東区雷門2-19-18
3/16(金)〜4/15(日)火休
12:00〜21:00
アダム・ブースef.jpg


2007年は、キャンバスの作品の勢いに蹂躙された印象が強いです。
油彩、アクリルともに、もっともスタンダードなスタイルで、自身のクリエイティビティに対して素直なリアクションをぶつけたような痛快なものから、独特の手法や精緻な具象表現を織りまぜながら、さまざまなオリジナリティが再現されていて、見応えがある展覧会がホントに多かったです。それこそ、これだけで10個以上選べるくらい。
選にはなかでも印象が強かった政田武史さんと大畑伸太郎さんの個展を挙げました。それぞれ個展で拝見したのは初めてで、もう「あなたがこれから作るものはすべて好きです!」と断言できるほどに惹かれた次第です。

一方で、日本画、それも岩絵の具の絵画は強く迫るものが少なかった気がします。
アダム・ブースさんのGallery efでの個展は、その空間の特徴と相まって、インスタレーションとしても極上でした。
印象に残った日本画の展覧会を思い返すと、和紙であったり、あるいは墨であったりと、岩絵の具以外の素材の魅力が追求されているものが多かったり、岩絵の具そのものの美しさを特徴的な画題をセレクトすることでこれまでにないかたちで引き出したものが目に留まりました。
もともと日本画は大好きですし、岩絵の具の美しさや膠の盛り上げなどの工芸的な素晴らしさには抗い難い魅力を感じるので、新鮮なクリエイションとの出会いを期待したと思っています。

キャンバスの作品とともに、木彫でインパクトがあるものが多かった印象もあります。
田代裕基さんの巨大なニワトリの作品が発するダイナミズムはホントに凄かったですし、信じられないくらいに緻密に再現された大平龍一さんの畳は、同時期にヴァイスフェルトで開催された展覧会での段ボールとともに、木彫であることに気付いた瞬間の衝撃は忘れ難いです。

アーティスティックな写真の展覧会も多く拝見しました。
暗い空間にトリミングされた照明が当てられた写真がていねいに配された野口里佳さんの個展は、野口さんの魅力にあらためて気付かされただけでなく、時間の流れをももたらされた構成にぐっと引き込まれました。

もともと好きな緻密なクリエイション、やはりそれぞれの展覧会で見入ってしまいます。
フューチャリスティックなグラフィカルイメージを立体で表現した小谷元彦さんのオブジェ群には心底参りました。
また、つい先日始まったばかりの佐伯洋江さんの個展も、目の醒めるような鋭さをたたえた緻密な鉛筆画は圧巻です。佐伯さんは目黒区美術館での展覧会も印象的でした。

そして、青山悟さんと内海聖史さんの展覧会は、大きな期待をもって拝見したものの、その期待が素晴らしいほうへと大きく裏切られました。分かっていても、その素晴らしさに感服した次第です。
内海さんは、東京で開催されたふたつの展覧会のどちらも相当な見応えで、しかもそのふたつの個展が比較的短いインターバルで行われ、資生堂ギャラリーで体感した壮大な余韻が残った状態で、ギャラリエ・アンドウでの個展を観ることができたのは貴重な体験でした。四国での展覧会も観たかったのですが...。
青山さんは、究極的な刺繍のスキルを駆使し、それぞれの作品の相変わらずのハイパークオリティな見応えを提供するに留まらず、実にエンターテイメントに富んだ構成で目一杯楽しませてくれました。


上に挙げた展覧会以外にも、コメントしたい展覧会はいっぱいあるのですが、断腸の思いで選ばせていただいた次第です。アーティストの名前だけでも挙げようと思ったのですが、それでも相当に膨大な数になってしまうので...根性なくてすみません...。

ざっと自分のブログを見返してみると、今年に限ったことではないですが、そのときの感動が蘇ってきます。
とにかく全部、面白かった!


この1年も、ホントにたくさんの方にお世話になりました。
この場を借りて、お礼申し上げる次第です。
そして、このブログをご覧いただいている皆様にも感謝です。
今後もよろしくお願いいたします。


ありがとう、2007年。






さあ来い、2008年。
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2007年12月30日

review:TWS-EMERGING 089 メルヘンじゃいられない こんどうさちほ展《12/22》

TWS-EMERGING 089 メルヘンじゃいられない こんどうさちほ
TOKYO WONDER SITE本郷
東京都文京区本郷2-4-16-2F
12/22(土)〜1/20(日)月(祝日の場合開館、翌火休)・12/29〜1/3休
11:00〜19:00
こんどうさちほ071222DM2.jpg こんどうさちほ071222DM1.jpg

TWS-EMERGING 089 Sachiho Kondo exhibition
TOKYO WONDER SITE Hongo
2-4-16-2FHongo,Bunkyo-ku,Tokyo
12/22(Sat)-1/20(Sun) closed on Monday and 12/29〜1/3 (If Monday is a national holiday,the following day will be closed instead.)
11:00-19:00
Google Translate(to English)



モノクロームで繰り広げられるシュールでキュートな世界。



TWS本郷でのこんどうさちほさんの個展です。
着せ替え人形あり、顔だけが抜けた作品在あり、と、作品の中に取り込まれるとなんとも不思議な雰囲気が感じられる作品も出品されていて、妙に気になり始めるところから。。。


こんどうさちほ01




入口すぐのところの壁に設置された棚の上で、鉄道模型を使った小さなジオラマが展示されています。
肝心なところに芝が生えた化粧用具、そこに経つ人々の姿が何ともシュールで。この人形たちの視界では、何と世界の狭いことかと小一時間(笑)。


こんどうさちほ12 こんどうさちほ11

こんどうさちほ13



平面作品は、和紙に墨や顔料、ペンを用い、さまざまな黒のコントラストと絶妙の空間の活かし方によってユニークな世界がツ生み出されています。


こんどうさちほ04



思わず「平面って凄いな」と思ってしまった作品。
なんとも派手なドラゴンに追い詰められたお姫さま。
断崖を背に、巨大な剣を振りかざし、対面するドラゴンといざ戦わんとする勇敢な姿。

しかし、このシチュエーションに至る過程を考えるとどこまでも笑いが込み上げてきます。
どう考えてもお姫さまが追い詰められているのですが、

その剣も持って逃げてきたのかよ!Σ( ̄口 ̄;)
その剣、片手で持てる太さじゃないだろ!Σ( ̄口 ̄;)
そのな重たそうなもの持ってたら崖崩れるわ!Σ( ̄口 ̄;)

と再現なく湧いてくるツッコミ。
素材が醸し出す渋さとのギャップも独特なユーモラスさを放っています。


こんどうさちほ06 こんどうさちほ07

こんどうさちほ05



たいへんていねいに人物の姿が描かれているのですが、多くの作品で顔のパーツが省略されていて、匿名性が強調されているのも興味深いです。
モノクロームというより、描かれるそのものの色が「黒」であることを印象づけるような感触も面白いです。


こんどうさちほ10 こんどうさちほ09

こんどうさちほ08



そして、強烈なインパクトを充満させているのが、正面奥の壁で展開されている無数のパンツ。
描きも描いたり、となかば呆れるような感じで感心しつつ、しげしげと見るのも気が引ける一角でして(汗)。
これがまたディテールも細かかったりするものだから。。。


こんどうさちほ03



取り上げるテーマの大胆さ、画面構成の大胆さ。
和紙の渋味と墨や顔料の深み。
さまざまな要素がそのよさを引き出され、なおかつ和の感性と洋の感性、その両方のバランスも絶妙で。
さらに独特の空間性やユーモアも織り込まれていて、それぞれの画面で繰り広げられる物語や時間にまで奥行きを与えているように感じられます。

いくつかの素材が取り入れられているとはいえ、「黒」というひとつの色で描かれることにより、グラフィカルに仕上げられていることで、それがポップさ、キャッチーさを紡ぎだしているところも見る側にとって分かりやすくて嬉しく感じられます。
もちろん、展示空間にもたらされる統一感も素晴らしいです。

いろんな題材の作品をたくさん観てみたいと思わせてくれるクリエイションです。


こんどうさちほ02
posted by makuuchi at 17:08| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月29日

review:椛田有理 空の反復《12/24》

椛田有理 空の反復
ART TRACE GALLERY
東京都墨田区緑2-13-19 秋山ビル1F
12/1(土)〜12/26(水)
11:00〜19:00(金:〜21:00)
蒲田有理071201DM.jpg

Yuri Kabata -Empty reception-
ART TRACE GALLERY
2-13-19-1F,Midori,Sumida-ku,Tokyo
12/1(Sat)-12/26(Wed)
11:00-19:00(Friday:-21:00)
<Google Translate(to English)


白と黒。
ふたつのトーンがせめぎあう。


ART TRACE GALLERYでの椛田有理さんの個展です。


椛田有理02



白に黒。
あるいは黒に白。
下地となる色の上にもうひとつの色が侵食するように広がっていき、細やかな抽象のバランスが世界地図のようなスケールの大きなイメージが発せられています。

ゆったりとした大きなホワイトキューブに、横長の画面の作品がバランスよく配置され、壁の白との調和もユニークな感触を生み出していました。


椛田有理04 椛田有理05

椛田有理03



小品での展開も魅力的です。


椛田有理07

椛田有理06



入口から続く壁と、左手に設けられたコンパクトな空間に小品がまとめて展示されていました。
パネルの作品は、その厚みがそのまま3次元的なものとして活かされ、パネルのサイドへも侵食する黒、あるいは白が醸し出すクールな風合いに惹かれます。


椛田有理09 椛田有理08

椛田有理10



もうひと種類、鉄のプレートに描かれた作品も。
こちらは薄い板がそのまま壁にマウントされ、小さな作品ながらものとしての重量感も感じさせてくれて、エネルギーが凝縮した感触が印象的です。


椛田有理13 椛田有理12

椛田有理11



色と黒だけを用いて制作される抽象世界でありながら、その色のバランスなどで時に青っぽいグレーも登場したりと、思いのほか豊かな色彩感ももたらしています。
その感触は、実にクールです。
また、時おり水墨画的な渋味も感じられるのがまた興味深いです。

シンプルな画風だからこそ、追究し甲斐があるような印象も受けた次第です。
意図的にコントロールされない平面的なアプローチによって偶発的に生み出される奥行きや立体感が、さまざまなイマジネーションの喚起を促します。

あらゆるサイズの画面で展開されるモノクロームの世界。
どういう方向へと進むのか、楽しみです。


椛田有理01
posted by makuuchi at 12:29| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月28日

review:五月女哲平 Teppei Soutome −それでも世界は美しい−《12/15》

五月女哲平 Teppei Soutome −それでも世界は美しい−
青山|目黒
東京都目黒区上目黒2-30-6
11/19(月)〜12/15(土)日祝休
11:00〜19:00
五月女哲平071119DM.jpg

Teppei Soutome "The world is stil beautiful"
AOYAMA|MEGURO
2-30-6,Kami-meguro,Meguro-ku,Tokyo
11/19(Mon)-12/15(Sat) closed on Sunday and national holiday
11:00-19:00
Google Translate(to English)



CHASE!



五月女哲平15



会期最終日に滑り込みで観ることができた、青山|目黒での五月女哲平さんの個展です。
ペインティング、写真、多様なメディアによるインスタレーションと、実に豊かな幅の広さと懐の深さでユニークかつユーモラスな展開が随所に見受けられ、観る側の意識を右へ左へと揺さぶるクリエイションが凝縮していました。


通り沿いの全面ガラス張りのウィンドウ越しにも「あれ?」と興味をそそられるペインティング。
入口からすぐの壁にまず3点。スクエアの大画面に描かれ、ワンポイント的な構成がおおらかな空間を無切り出しているペインティング。
これがホントにイイ味を醸し出しています。

支持体の地の色がそのまま活かされる中に、ちょこんと、しかし緻密に描かれるドラゴン。
鮮やかな赤色を纏うドラゴンの背中には、続く作品にも登場するキャラクターが乗っています。
左上にその姿を覗かせる太陽も、なんだかかわいくて。


五月女哲平03 五月女哲平02

五月女哲平01


それぞれの画面が独立しているようにも、ひとつのストーリーのようにも思える展開がまた楽しいです。
結構大きな画面の作品ですが、それ以上のスケールの大きさが伝わってきます。


五月女哲平04



その向かいに展示されていた、宇宙を思わせる作品。
黒の背景に、カラフルな色彩のドットがどこまでも続くような奥行きとダイナミックな空間性・時間性を発しているように感じられます。
違うシチュエーションでは意見する機会があったらまた異なる印象を受けそうな。


五月女哲平05



いちばん奥、一人掛けのイスの上に掛けられた作品もまた楽しいです。
ホント、「たったこれだけかよ!Σ( ̄口 ̄;)」って感じの情報量なのですが、それがいい!
この空間性が放つユーモアが堪らないのです。


五月女哲平13 五月女哲平14

五月女哲平12



さまざまなインスタレーション的な作品もユニーク極まりなく。
メッセージが繰り返し流れる電飾。


五月女哲平06


壁沿いの隙き間で展開される緑化計画。


五月女哲平07



写真の作品は、プレートにマウントされてずらりと並べられ、そのカラフルな感触が楽しい雰囲気を生み出していました。
展示を拝見してからずいぶんと時間が経ってしまったので記憶が曖昧なところもあるのですが、ギャラリーの青山さんから伺ったところでは、遊園地の中のさまざまな光景を切り取ったものだったかと。
ヴァーチャルなムードを演出する場所で散見されるカラフルな景色がこういうふうにカットされ、再構築されると、現実感とフューチャリスティックな雰囲気とが混ざりあい、不思議な感覚が沸き上がってきます。


五月女哲平08 五月女哲平10 五月女哲平11

五月女哲平09


他に、キャンディをモチーフにした展開もあったり。



・・・おっと。


冒頭のカーチェイス、続行中。
先ほどより少し離れて俯瞰すると、ハイウェイらしき場所をルーフを開けたセダンが先行し、それをパトカーが追う展開。


五月女哲平16



一体何所かと。




けっこう話題になった作品だそうで、ご存じの方も多いようなのですが...














五月女哲平17



ルームランナーか!Σ( ̄口 ̄;)


参った!
これにはやられました(汗)。

磁石をうまいこと使った作品。
スイッチを入れるとちゃんと2台のミニカーの車輪も回る。

眺める光景はまるで超アナログなアニメーション。
動画的。「画」じゃないけど、動画を楽しむ感覚に限りなく近い印象を受けた次第です。


いろんな作品がパッケージされた展示を拝見して、ペインティングにおける絶妙で大胆な空間の活かし方は、さまざまなインスタレーションでの展開から生み出されているのかも、などと想像したり。。。


いや、もっと早く見に行っておけばよかった、と少々後悔しつつも、観ることができたことを嬉しく思っています。
今後の展開も楽しみです!
posted by makuuchi at 15:27| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月27日

review:神戸智行展《12/15、12/22》

神戸智行展
ギャラリー広田美術
東京都中央区銀座7-3-15 ぜん屋ビル1階
12/12(水)〜12/22(土)日休
11:00〜19:00
神戸智行071212DM.jpg

Tomoyuk Kanbe exhbition
Gallery Hirota Bijutu
7-3-151F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
12/12(Wed)-12/22(Sat) closed on Sunday
11:00-19:00
Google Translate(to English)



繊細の極地。



昨年に続いてギャラリー広田美術で開催された神戸智行さんの個展です。
昨年は大きな会場で、屏風の大作が中心の展覧会も行われ、それは僕は見逃してしまったのですが、その制作と展示とがひとつの転機となったような印象を受けます。

すらりとしなやかな稜線と淡い色彩とが描き出す軽やかで瑞々しい風景。
前回の個展では、画面の前面に風景が描かれた作品が多く出展されていましたが、今回の個展ではそこに食う感性がもたらされ、清らかな緊張感がもたらされているような印象を強く受けます。


神戸智行002



繊維のひとつひとつが分かるほどに薄い和紙、その裏側に貼られた銀箔。
和紙の隙き間から箔の輝きがふわりと広がります。
そこに描かれる枝葉の影。淡い緑色が実に鮮やかで、映る影の中に、さらに泳ぐ魚の姿が描き出されています。

緑の濃淡によって織り成される深み、魚影がもたらす時間的な奥行き、そして美しい余白が大胆に持ち込まれることによって生み出された空間性。
どれもが「これしかない」というバランスで一体となり、実に滋味に溢れ、穏やかな緊張をやわらかく放っているように感じられます。


神戸智行007 神戸智行006

神戸智行005



神戸さんの作品を拝見していると、その風景、そこに在る自然への敬意が感じ取れるような気がします。

自然の素朴さ、生命の持つ鋭い感覚などが、緻密な筆致とていねいな描写とによって再現されていて、そこに描かれた風景の絵だけで充分に、純粋な感動が得られるような印象を受けます。


神戸智行001



時にユーモラスに切り取られた風景も。
自然が見せてくれるさまざまな表情のなかから「これ」というところを引き上げる神戸さんのセンスにもあらためて脱帽です。


神戸智行004



他に、神戸さんの名刺代わりと言える、大きな画面で展開されている沢の絵なども展示されていました。

その作品を眺めているだけで、「他になにもいらない」と思わせてくれる作品に出会えるのはホントに嬉しいです。
日本画が「日本画」と呼ばれる前から積み上げてきたいわゆる「わび、さび」といった情緒的な要素が、実に現代的に表現されているような感触です。

素材の美しさも独特の感性で引き出された、軽やかで繊細な日本画。

次の展開もホントに楽しみです。


神戸智行003
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2007年12月26日

〜12/24のアート巡り

《12/20》
佐々木加奈子 Walking in the jungle
MA2 GALLERY
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
12/20(木)〜1/31(木)日月祝・12/27〜1/7休
12:00〜19:00
佐々木加奈子071220DM.jpg

今年のVOCA展にも作品が出品されていた佐々木加奈子さんの写真展。
重厚なテーマと、ユニークなスタンスでのセルフ・ポートレート的表現などで繰り広げられる世界が深く印象に残ります。


《12/22》
シナプス40%OFF 打越月見・岡本東子 二人展
@Gallery銀座フォレスト
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル5F
12/17(月)〜12/22(土)
12:30〜19:00(最終日:〜17:00)
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日本画のアーティストの二人、打越月見さんと岡本東子さんとがそれぞれのコーナーで同じテーマを据え、想像で描くというユニークな企画です。


シナプス40%01


打越さんは昨年の個展での印象とは打って変わり、ユーモラスな風合いの作品が揃っていたのが印象的です。
線描の精度の緻密さが、キャッチーな感触をぐんと引き立てています。


シナプス40%06

シナプス40%04


岡本さんの作品は、静謐感が漂うていねいな写実描写に惹かれます。
落ち着いた渋めの色調による統一感により、小さい画面からも深遠な雰囲気が漂うような感じです。


シナプス40%05

シナプス40%03


お互いの個性が引き立てあいつつ、シンプルな構成でその違いもしっかりと提示されて、楽しい展覧会でした。
お互いのポートレートを描いた「他画像」というのもあったり。
来年はそれぞれの個展も企画されているようなので、楽しみです。


シナプス40%02



西川芳孝展
アートスペース羅針盤
東京都中央区京橋3-5-3 京栄ビル2F
12/17(月)〜12/22(土)
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
西川芳孝071217DM.jpg

折りに触れて拝見している西川芳孝さんの都内では今年2回目の個展です。
事前にどういう感じになるかを西川さんより伺っていたのですが、壁中にびっしりとおそらく墨で妖しい線が敷き詰められた紙が貼られ、圧巻の世界が作り上げられていました。

その過剰さ、クレイジーな印象を漢字で「阿呆」と表現したくなるような展覧会。
ここまでやり切ったことで、次に出てくる作品がどういうものになるかたいへん興味深いです。


西川芳孝102 西川芳孝103 西川芳孝104

西川芳孝101



TWS-EMERGING 089 メルヘンじゃいられない こんどうさちほ展
TOKYO WONDER SITE本郷
東京都文京区本郷2-4-16-2F
12/22(土)〜1/20(日)月(祝日の場合開館、翌火休)・12/29〜1/3休
11:00〜19:00
こんどうさちほ071222DM2.jpg こんどうさちほ071222DM1.jpg

紙にモノクロームで展開されるキュートでシュールでユーモラスな世界。
壁中に飾られるパンツの絵には後ずさりしてしまいますが(笑)。



TWS-EMERGING 090 タニケニタ ショートストーリーズ
TOKYO WONDER SITE本郷
東京都文京区本郷2-4-16-3F
12/22(土)〜1/20(日)月(祝日の場合開館、翌火休)・12/29〜1/3休
11:00〜19:00

キャンバスの上をボールペンがぐりぐりと走りまくったような絵。
ぼやけたシルエットの中にもたらされる濃淡が、そのモチーフの輪郭を妙な感じに現していて、なんとも不思議な魅力を放っています。


タニケニタ03 タニケニタ01

タニケニタ02


ふたつある展示スペースの奥のほうで展開されているプリントの作品も面白いです。
一昔前の「念写」を思い起こさせるぼやけた感じが、独特の妖しさとともに、斬新な感触も発しています。
向かいのモニターに上映されていた、おそらくこれらの作品に文字の羅列を絡めた映像作品もたいへん興味深いです。


タニケニタ05 タニケニタ06 タニケニタ07

タニケニタ04


プリミティブな画風に不思議と引き込まれ、不思議な魅力が感じられます。


タニケニタ08



佐伯洋江展
TAKA ISHII GALLERY
東京都江東区清澄1-3-2-5F
12/22(土)〜1/26(土)日月祝・12/29〜1/7休
12:00〜19:00
佐伯洋江071222DM.jpg

全てを観てしまうのがもったいない...
目黒区美術館での鉛筆画のアーティストによるグループショーでもひときわ印象に残った佐伯洋江さんの個展です。



《12/23》
この日は美術館を一気に観て回りました。
それぞれ見どころがあって面白くて。

目黒の新進作家 −七人の作家、7つの表現
目黒区美術館
東京都目黒区目黒2-4-36
12/4(火)〜1/13(日)月休(12/24開館、12/25、12/28〜1/4休)
10:00〜18:00
目黒の新進作家パンフ.jpg


ピピロッティ・リスト からから
原美術館
東京都品川区北品川4−7−25
11/17(土)〜2/11(月)月休(祝日の月曜日は開館)12/25〜1/4、1/15休
11:00〜17:00(水:〜20:00)
ピピロッティ・リストDM.jpg


日本の新進作家vol.6 スティル/アライヴ
東京都写真美術館 2階展示室
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
12/22(土)〜2/20(水)月(祝日の場合開館、翌日休)・1/1休
10:00〜18:00 (木金:〜20:00、12/28:〜18:00、1/2〜1/4:11:00〜)
スティル|アライヴパン.jpg


文学の触覚
東京都写真美術館 B1F展示室
東京都目黒区三田1-13-3 恵比寿ガーデンプレイス内
12/15(土)〜2/20(水)月(祝日の場合開館、翌日休)・1/1休
10:00〜18:00 (木金:〜20:00、12/28:〜18:00、1/2〜1/4:11:00〜)
文学の触覚パンフ.jpg



《12/24》
椛田有理 空の反復
ART TRACE GALLERY
東京都墨田区緑2-13-19 秋山ビル1F
12/1(土)〜12/26(水)
11:00〜19:00(金:〜21:00)
蒲田有理071201DM.jpg

白と黒とのせめぎ合いが生み出す空間性。
滲むように、あるいは飛び散るように画面に乗る黒、あるいは白が、スケールの大きなイメージを喚起させてくれます。
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2007年12月25日

review:麻生知子 個展 -としわすれ-《12/16》

麻生知子 個展 -としわすれ-
Gallery Uehara
東京都渋谷区上原1-21-11 BIT代々木上原II1F
12/12(水)〜12/18(火)
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
麻生知子071212DM.jpg

Tomoko Aso exhibition
Gallery Uehara
1-21-11-1F,Uwhara,Shibuya-ku,Tokyo
12/12(Wed)-12/18(Tue)
11:00-19:00(last day:-17:00)
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緩いぃぃ〜。
温いぃぃ〜。



Gallery Ueharaでの麻生知子さんの個展を観てきました。

TWS本郷での個展ではじめて拝見したときは、その独特すぎる色彩とモチーフの切り取り方、角度の捉え方、そしてなにより温い雰囲気に逆に度胆を抜かされ、この人はこれからどうなっていくんだろうと期待というよりむしろ心配って感じで。。。
で、それからしばらく間をおいて開催されたGallery Jinでの個展で拝見したとき

















変わっとらんじゃないかぁぁ!Σ( ̄口 ̄;)





と、こんだけ緩いのに芯は強いのか、と、よく分かりませんけど、ていうかこのスタイルで





精度が上がっとるじゃないかぁぁ;`;:゙;`(;゚;ж;゚; )





って感じで思わず笑ってしまったわけでして。
もうそうなるとコリャ楽しむしかないでしょと、以降、シェル美術賞だったり先日のTHE SIXだったりと、作品を拝見するたびにほんわかとした雰囲気に和ませられて。


麻生知子003



今回はタイトル通り、年末の風物詩が主題となった作品が多く出展されていました。
クリスマスとか、大晦日とか、小忙しいこの季節のそこを取り上げますか、と、イイ感じのツッコミどころが満載で。

一瞬、「なんだろコレ」と思うわけです。
しかし、気付くと「なんだソレ!」と嬉しくなると同時に、膝の力が一気に抜ける脱力感がまた堪らなかったり。
下の同じようなモチーフが並んだ2点の作品など、入口のガラス扉越しに目に入ってきた瞬間は「少し違う作品を描くようになられたのかな」と思ったのですが、右がチキン丸焼き中の電子レンジ、左が紅白歌合戦放映中のテレビだそうで、「相変わらずじゃないかぁぁ」と期待に違わぬ緩さに一安心(笑)。


麻生知子005 麻生知子004

麻生知子001



お風呂がモチーフとなった作品。
浮かぶ柚とか、掃除中とか。。。
よく見ると本物の絆創膏が画面に貼られていたりして、妙なところで芸が細かかったりするのもツボです。


麻生知子008

麻生知子002



食品がモチーフとなった作品は、麻生さんの真骨頂。
七輪の網を真上から捉えて不思議な光景を生み出したり、一瞬どこかの冬の風景が描かれているのかと思いきや、実はケーキに乗る小さなチョコレートのお家やミニチュアのもみの木が生クリームの絞りに囲まれているののアップだったり、または闇夜に浮かぶ梅の花かと思わせといて、お節の重箱の蓋だったり。

いい加減にしろ!Σ( ̄口 ̄;)

とツッコミの勢いも加速。


麻生知子010 麻生知子007

麻生知子009



淀んだような茶系の色彩といい、描かれるモチーフのもわっとしたフォルムといい、麻生さんの作品における独特のつかみどころのなさが、「としわすれ」という忙しくもどこかほっこりとしたムードのなかで炸裂しています。
もしかしかたら、濃い茶色で描かれる人のシルエットなどから、何故か覚えている曖昧な記憶を思わせるような感じがして、それが年末のその年を振り返る気持ちとオーバーラップするのも、今回の展覧会の雰囲気を盛り上げていたのかも、と思ったり。。。

決して「巧さ」は感じさせない作風ですが、そこに充満するユーモアは格別。
そこからにじみ出る味わいは、親しみに溢れているような印象を受けます。

これからどうなるんだろう、という好奇心は今も持っていますが、作品と出会うその都度に楽しませてくれるような気がします。


麻生知子006
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2007年12月24日

review:彫刻の本能 vol.3 伊藤一洋/木下好美/高梨裕理/戸塚憲太郎《12/14、12/20》

彫刻の本能 vol.3 伊藤一洋/木下好美/高梨裕理/戸塚憲太郎
hpgrp GALLERY 東京
東京都渋谷区神宮前5-2-11 H.P.DECO 3F
12/13(木)〜1/14(月)12/31〜1/2休
11:00〜20:00(12/30:〜18:00)
彫刻の本能071213DM.jpg

THE INSTINCT OF SCULPTURE Vol.3 KAZUHIRO ITO/YOSHIMI KISITA/YUURI TAKANASHI/KENTARO TOTSUKA
hpgrp GALLERY TOKYO
5-2-11-3F,Jingumae,Shibuya-ku,Tokyo
12/13(Thu)-1/14(Mon) closed on 12/31-1/2
11:00-20:00(12/30:-18:00)
Google Translate(to English)



4名の立体のアーティストがパッケージされたグループショーです。
しかも、それぞれが異なる手法、素材を用いて、独特の世界を繰り広げています。


ショップの階段を登り切るまえに目に飛び込んでくるのが、高梨裕理さんの大きな作品。
巨大なお椀のような形状に、木片が編むようにつなぎ合わせられています。
底の部分の穴とおおらかな曲面が動的なイメージを喚起させてくれて、底の部分へと吸い込まれる、あるいは底から発せられるような印象を受けます。


高梨裕理hpgrp02 高梨裕理hpgrp03

高梨裕理hpgrp01


もう1点の有機的なフォルムの作品も見応えがあります。
脚部を除いて1本の木から彫り出され、その姿は実に有機的。
網目の部分は内側が空洞になっていて、それが余計に奇妙な感覚を醸し出しています。


高梨裕理hpgrp06 高梨裕理hpgrp05

高梨裕理hpgrp04



木下好美さんの作品は、塑像です。
焼かない土の作品。
手で形成された感触が、硬化した後もよりリアルに残っているように感じられます。
表面のざらつきも独特の深みを感じさせてくれます。


木下好美hpgrp05


王冠とベールとをモチーフにした作品も印象的です。
ベールの部分の、布のやわらかなラインを表現したなめらかな感触と、王冠の部分での細やかな作り込み。
それらが、誰かが被っているように作られていて、匿名性と、ストーリーの奥深さを醸し出しています。


木下好美hpgrp04 木下好美hpgrp02 木下好美hpgrp03

木下好美hpgrp01


塑像はアート作品としてお目にかかる機会は少ないと思うのですが、木下さんから伺ったところによると昔の仏像などに多く取り入れられた手法だそうで、そのせいか、だからもっとプリミティブな部分で親しみを感じるのかもしれないです。
靡く布を彷佛させる有機的な動線と、彩色されず素材の色がそのまま表面に出ているしっとりとした感触など、優しい風合いが嬉しい作品です。


木下好美hpgrp06



戸塚憲太郎さんによって形成される立体は、その形からそのまま臓器を連想させます。
床置き、台上、壁掛けで、ギャラリーのコーナー部分で展開され、石膏やセラミックなど、それぞれ異なる素材を用いつつも、色と形がこの一角に統一感をもたらしています。


戸塚憲太郎hpgrp01


つるりとした曲面と、ごりごりとした部分とのコントラストがアバンギャルドな雰囲気を生み出しています。
しかし、白い色彩がその危うさ、妖しさを中和させ、さらに素材の重量感をも解放し、不思議な軽やかさを放っているように思えるのも興味深いです。


戸塚憲太郎hpgrp02


群がるような床と台との作品と較べ、壁に設置された作品は、1体1体の臨場感がよりリアルに迫ります。
素材の艶、重厚な銀色の作品の白いものとはまた異なるテイストの生々しさ、スポットによって壁に写し出される影。それぞれが戸塚さんのクリエイションの有機的な風合いをよりぐんと押し上げているように感じられます。


戸塚憲太郎hpgrp04 戸塚憲太郎hpgrp05 戸塚憲太郎hpgrp06

戸塚憲太郎hpgrp03



ブロンズの伊藤一洋さんの作品は、鋭さをたたえたフォルムが印象的です。
剣の柄を思わせる危うい風合い、ブロンズの金属の輝き。さまざまな要素が一体となり、洗練と重厚とのコントラストによって冷徹とも感じ取れるほどの静謐感を漂わせます。


伊藤一洋hpgrp03

伊藤一洋hpgrp04


金属素材によって鈍い光が放たれつつも、他の3名と同様に、そのフォルムは実に有機的です。
鋭く伸びる部分、ぐしゃりと潰れたような部分。美醜それぞれがひとつの作品に織り込まれ、さらにお互いを引き立てつつ、美しい部分はより洗練された美しさを、潰れたような部分はそれだからこその存在感を放ちます。


伊藤一洋hpgrp02

伊藤一洋hpgrp01



床置きの作品も魅力的です。
壁掛けの作品もそうですが、伊藤さんの作品にはなんともいえぬ危うさと、そこから醸し出される緊張感が静謐な刺激をもたらしてくれます。
それでいて、安定したバランス感。危うさと落ち着きとが渾然一体となって迫ります。


伊藤一洋hpgrp09



先に「剣の柄」と表現しましたが、時おり「骨」に感じられることも。
全てが削がれ、晒されているようなソリッドな感触も。
そして、角度によって無限の表情を見せてくれます。
工芸的なスキルによる緻密な仕上がりも見応えを感じさせる、アバンギャルドな、スキャンダラスな匂いが放たれるクリエイションです。


伊藤一洋hpgrp07 伊藤一洋hpgrp08 伊藤一洋hpgrp06

伊藤一洋hpgrp05



これだけバリエーションに富んでいながらも、「有機的」という共通のイメージが、空間に筋の通ったイメージをもたらしているような気がします。
床の木目、白い壁、コンクリートが剥き出しの天井と、空間自体が持つコントラストもパッケージされた作品群に豊かな表情をもたらしているかのようです。

さまざまな角度から眺めることでたくさんの発見を見出せる展覧会です。
posted by makuuchi at 10:52| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月23日

review:風間サチコ展 満鉄人 VS プリズン・ス・ガモー《12/13、12/14》

風間サチコ展 満鉄人 VS プリズン・ス・ガモー
無人島プロダクション
東京都杉並区高円寺南3-58-15 平間ビル3F
12/13(木)〜1/26(土)木金土のみ(月〜水は要予約)日祝・12/29〜1/9休
11:00〜19:00
風間サチコ071213DM.jpg

Sachiko Kazama exhibition "Mantetsujin VS Prison Su-Gamo"
MUJIN-TO production
3-58-15-3F,Koenji-minami,Suginami-ku,Tokyo
12/13(Thu)-1/26(Sat) Thu-Sun only (Mon-Wed:appointment only) closed on Sunday,national holiday and 12/29-1/9
11:00-19:00
Google Translate(to English)



天を突く超弩級の迫力。



無人島プロダクションでの風間サチコさんの新作展です。

前回の個展の際にも年末に新作展が開かれることを伺っていて楽しみだったのですが。
高円寺の線路沿い、いかにも中央線沿線らしい「いなたい」雰囲気が充満した一角にあるちいさなスペース、無人島プロダクションへ伺い、窓から中の様子が目に入ってきた瞬間






どーん!


風間サチコ002


でけぇなおい!Σ( ̄口 ̄;)


でけぇ木版画だなおい!Σ( ̄口 ̄;)



それより「どーん」て何ね「どーん」てΣ( ̄口 ̄;)




もとい。

ダイナミックな木版画2点とドローイング、アニメーション作品が出品されています。

今回の展覧会のテーマを凝縮させた、一昔前の昭和初期の香りが漂うポスター風の作品。
こちらももちろん木版画。


風間サチコ008


絵柄の独特の躍動感といい、ユーモラスな書体の文字のといい、採用された紙の色といい、イイ味わいです。
風間さんの個性がパッケージされているような感触も嬉しくなってきます。
この作品、いちばん奥に展示されているのですが、手前の大作を目にした後で拝見すると、かわいくデフォルメされたそれぞれのキャラクターの佇まいにも妙にそそられたり。


鉛筆による緻密なドローイング、書での楷書の深み。
味わいの異なるモノクロームの作品が、空間にもたらすアクセントも絶妙。


風間サチコ010


風間さんが初めて手掛けるアニメーションも上映されています。
うねうねと浮かぶ題字に始まり、もわもわとして微妙につかみどころがなさそうで、しかしそこにけっこうな鋭さで、皮肉めいたメッセージのようなのものも込められているような感じがまた。


風間サチコ009



圧巻の木版画2点。
展示タイトルにもあるふたつのキャラクター、「満鉄人」と「プリズン・ス・ガモー」とが画面いっぱいに描き出されています。

入口正面の「満鉄人」。
バックに聳える汐留・新橋の風景。新しい日本テレビのビルの先進性が印象的なフォルムや新橋駅前の商業ビル群の看板などの陰影、さらには有り得ない方向から一直線に突っ込んできている「ひかり号」の曲面などの表現の緻密さに感服。
ビルの窓など、異なる形状もしっかりと描き分けられていることへの驚きは、尋常ではなく。。。木版画、すなわち凸版画、木版を彫って残した部分が画面に写し出されるわけで、つまりはビルの窓のひとつひとつはその枠の部分が版に残されているということで。ガラス窓の光る部分が白く抜けていて、そこをを彫り抜き細い枠の部分を残すというスキルの高度さと、その作業をこの画面の広さだけを貫徹するだけのモチベーションを保てる持久力にも感嘆してしまいます。

そういった光景をバックに、正面から大胆に描かれた「満鉄人」。
機関車の前面がそのまま頭部となり、機関部分、動力部分が左足側面に付いている、この細やかなディテールにも思わずニンマリ。
絶妙な陰影によって表現された、ボディの黒光りにも呑まれます。


風間サチコ007

風間サチコ006



かたや、「プリズン・ス・ガモー」。
太平洋戦争のA級戦犯が拘置されたという巣鴨拘置所がそのまま名前になったキャラクターは、その拘置所の跡地に建てられた池袋サンシャイン60に登場。
下方から見上げるような構図が、ただでさえ大きい画面にさらに巨大な迫力をもたらしています。
「罪」の文字が正面に刻まれる深い編み笠を頭部に据え、これまたよくぞ彫り上げたとあっぱれな仕上がりの格子状のボディが放つ力強さ、躍動感、重量感はただ、凄い、のひとこと。
さらに、ここから始まる破天荒な展開を予言するような闇夜の雲の蠢きや、ス・ガモーの左手から逃れようとする軍用ヘリのリアルなフォルムなど、男の子心もおおいに煽られます。


風間サチコ005 風間サチコ003 風間サチコ004

風間サチコ001



これらの作品の力強さに、感性が蹂躙されていく痛快さが堪らないです。

今回取り上げられたテーマの詳細については、ギャラリーに設置されているレジュメや無人島プロダクションのサイト内の紹介文をチェックしていただくとして、日本の近代史から引用した重厚な主題をモチーフに、ふたつのキャラクターやそれらが登場する場所に投影させ、ダイナミックかつキャッチーに、コミカルに表現し切っています。

歴史が持つ「暗さ」が、木版画のモノクロームによってさらに臨場感を伴って迫るような感触も印象的です。
また、直接画面に行為の痕跡が投げ込まれていくペインティングではなく、構図・下絵を作るまでを「創る」行為だとしたら、作品になるまでに「反転させる」「彫る」「摺る」という純粋な「作業」が作品が完成するまでの時間の多くを占める木版画という手法で表現されることが、歴史のテーマの重々しさからの程よい距離を生み出し、観るものに(想像ですが、おそらく作り手である風間さんにとっても)冷静な考察をもたらすような印象も受けた次第です。


・・・と、四の五の書きましたが、やはり風間さんの作品の迫力はぜひ「生」で、敢えてこのちょっと窮屈な空間で、臨場感たっぷりに、浴びるように体感してほしいです。
posted by makuuchi at 11:35| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月21日

review:大塚泰子 新作展 空の彫刻《12/14》

大塚泰子 新作展 空の彫刻
KENJI TAKI GALLERY/東京
東京都新宿区西新宿3-18-2-102
12/1(土)〜12/26(水)日月祝休
12:00〜19:00
大塚泰子071201DM.jpg

Yasuko Otsuka Sclupture of the Sky
KENJI TAKI GALLERY/Tokyo
3-18-2-102,Nishi-shinjuku,Shinjuku-ku,Tokyo
12/1(Sat)-12/26(Wed) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
Google Translate(to English)



どこまでもシンプルに提示される色彩、かたち。
そこから得られる無限のイマジネーション。



KENJI TAKI GALLERY/東京での大塚泰子さんの個展です。

展示空間に触れた刹那、呆然としてしまうほどに、敢えて表現すると「何もしないことを目指した」ような作品が並んでいます。
2色に塗り分けられた角材、パネル。
全面が白く塗られたキャンバスの作品。
細長いガラス片らしきもの。

しかし、それぞれの作品に添えられたタイトルが、イマジネーションを触発する触媒となって、思いっきり膝を叩いて納得してしまったり、壮大なイメージに思いを馳せたり。。。


ギャラリースペースに床置きされた、鮮やかな青色と茶色のツートーンに塗り分けられた角材、パネルの作品。
割合でいうと、ボトムの部分が僅かに茶色で、そこから上は全面が、青。

この展覧会に冠されたタイトル。「空の彫刻」。
「空」というかたちのないものをかたちにしようとしたとき...。
色が象徴するものを活かす...この場合だと、空の色と土の色をそれぞれの色彩に象徴させることで、何の変哲もないはずの角材やパネルがいくつものステージを突き抜けて壮大なイマジネーションの源泉となり得ていることに感動を覚えると同時に、そこに込められているユーモラスなアプローチがまた嬉しかったり。

大空がこのなかにパッケージされている、そういうスケールの大きなイメージが堪らない作品群です。

また、ガラス張りの壁に並んだカラフルな作品群にも惹かれます。
こちらは、上と下がちょうど半分で描き割けられているツートーン仕様で、やはり上は空の色、下は陸の色を表現しているように感じられます。
グレーや黒の空が、曇天、夜をイメージさせてくれたり、さまざまな色で塗られた陸の様子が、街並や海辺などを連想させてくれたり。それらがていねいに並んでいるのも、時間や経過や過ぎ行く日々の記録のようにも思えてきます。


このシリーズでは、もっとも印象的なのが、事務所へと続く一角に設置された台の上に置かれた、手のひらに乗るほど、片手で包めそうなほどにに小さな作品。

・・・手のひらに乗る、大空。
かわいいのに、大きい。
小さいことが、実際の空の大きさとのギャップをより大きなものへと押し上げていて、ホントにただの小さな角材、木片を塗っただけのもののはずなのに、そこに壮大なエネルギーが凝縮されているようなイメージが湧いてきて、大いに心を揺さぶられるのです。



壁に展示された平面の作品。
こちらも、むしろ過剰なほどにシンプルな絵画です。
さまざまな方形のキャンバスの表面のみが、真っ白に彩色されたものを中心に、指先ほどの大きさのものがいくつかちょこんと並び、カラフルに塗り分けられたもの、チョコレート色のもの。

最後のチョコレート色のものは、入口すぐのところに展示されているのですが、大きさがまさに板チョコ。
たしかタイトルも「チョコレート」だったと記憶しているのですが...。
要するに、モチーフそのものの大きさのキャンバスに、そのサイズのを描いた作品のようで。

それが分かると、この一角が面白くて堪らない!
「そういうことか!」と単調な画面におおいに納得。
描くモチーフに対する感情を過度に排除したようなアプローチと、そこに生み出されるシュールなユーモアに喝采。
こういったアプローチへと至る過程もたいへん興味があるところです。


他、ガラスの作品や、事務所に展示されたグリーンが用いられた作品など、ユニークなイマジネーションが投影されたものが溢れています。


おそらく、大塚さんの作品から何かを得るためにはある程度の現代アートに対する「慣れ」のようなものが必要な気はします。
作品そのものからのヒントは究極的に排除されているように感じられる、というのもあります。
しかし、やはりここにはこれでしか表現し得ないイメージがふんだんに存在していると思うのと、「面白い!」と思った瞬間に、ここまでのイメージの道程の紆余曲折も思い浮かんでくるのです。

「堪らない人には堪らない」インスタレーションが繰り広げられています。
posted by makuuchi at 08:50| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年12月20日

review:富樫智子展 色彩の軌跡 vol.3 PARADOXICAL AMBER《12/11、12/15》

富樫智子展 色彩の軌跡 vol.3 PARADOXICAL AMBER
art gallery closet
東京都港区西麻布2-11-10 霞町ビル3F
12/11(火)〜 12/25(火)水休(日:要予約)
12:00〜18:30(土祝:11:00〜)
富樫智子071211DM.jpg

Tomoko Togashi exhibition trace of colour vol.3 PARADOXICAL AMBER
art gallery closet
2-11-10-3F,Nishi-azabu,Minato-ku,Tokyo
12/11(Tue)-12/25(Tue) closed on Wediesday (Sunday:appointment only)
12:00-18:30(Saturday and national holiday:11:00-)
Google Translate(to English)



偶然が生み出す、色彩のミニマムな重なり。



art gallery closetでの富樫智子さんの個展に行ってきました。
もう、こういうのは一も二もなく好きなのです。
至近でじっくりと観ていったときに無限に見つかる発見。
うねるような色彩が放つ妖しげなリズム。


富樫智子10



富樫さんの作品に用いられるのは、ペンキだそう。
絵画に用いるには特殊な絵の具、もとい塗料の質感が、それぞれの作品に特徴的な重厚感を与えているように感じられます。

黒や深い赤など、濃い色彩が多く取り入れられていることも、さらにその世界の深遠さを強めてます。
それらの色彩が絡み、複雑な模様を作り上げ、画面上で渾然一体となって迫ります。
いわゆる大作は出品されていないものの、ひとつひとつの画面における情報量の多さは尋常でないのです。


富樫智子06 富樫智子05

富樫智子04



白を使った作品も見応え充分です。
広がる白の色面を侵食する黒、さらにそこに重なっていく、質感の異なる白。
画面に登場する色同士のせめぎ合いがアグレッシブな雰囲気を充満させ、超動的な感触により、観るもののイマジネーションの爆発を引き起こすかのようなエネルギーを、そのなかに内包しているように思えます。
ひとつの画面のなかにもたらされる、複雑と平坦のギャップもかっこいいんです。


富樫智子03 富樫智子02

富樫智子01



ギャラリーの入口左手の一角には、小品が凝縮して展示されています。
それぞれ異なる空間バランスからバリエーション豊かな印象を受けると同時に、全ての作品を見渡しても登場する色彩が限られていることによって統一感がもたらされています。
また、伺った時間帯が遅かったこともあり、抑えられた照明によって深い渋味や妖しげな風合いもさらに臨場感を伴って迫ってくる印象を受けた次第で。


富樫智子13 富樫智子14

富樫智子12



art gallery closetは今回はじめて伺ったのですが、外苑西通り沿いがカーブする部分と小道との角にあるビルの3階ということもあり、複雑なかたちの空間で、さらにソファなどのインテリアが配置されています。
そういった空間のなかでそのポテンシャルが引き出された富樫さんの作品群。
ソファの背もたれの上の壁で展開されるインスタレーション、絵のなかに凝縮されたミニマムに世界が組になり、さらにソファがある空間が醸し出す落ち着きと相まって、ユニークな味わいが滲み出ているように思えます。
陽が高い時間帯だと自然光も射し込んでくる空間なので、そのときにはまったく違う表情を見せてくれるのだろうな、と想像したり。


富樫智子09 富樫智子08

富樫智子07



独特な雰囲気のなかで繰り広げられるアーバンでミニマムな世界。
空間全体のゆるやかさと作品から放たれるアバンギャルドな緊張感とのコントラスト。
そこから沸き上がるイメージを、ゆったりと味わいたい展覧会です。


富樫智子11
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2007年12月18日

〜12/16のアート巡り

《12/11》
富樫智子展 色彩の軌跡 vol.3 PARADOXICAL AMBER
art gallery closet
東京都港区西麻布2-11-10 霞町ビル3F
12/11(火)〜 12/25(火)水休(日:要予約)
12:00〜18:30(土祝:11:00〜)
富樫智子071211DM.jpg

ペンキを用いてつくり出される、複雑で有機的な画面。
呑み込まれるような力強い深みが放たれています。



《12/13》
風間サチコ展 満鉄人 VS プリズン・ス・ガモー
無人島プロダクション