2007年11月29日

review:片平菜摘子展「small silence/小さな静寂」《11/23、11/24、11/25》

片平菜摘子展「small silence/小さな静寂」
Gallery Jin Projects/JinJin
東京都台東区谷中2-5-22 山岡ビル1F
11/23(金)〜12/2(日)月火休
12:00〜19:00(最終日:〜17:00)
片平菜摘子071123.jpg

Natsuko Katahira "small silence"
Gallery Jin Projects/JinJin
2-5-22-1F,Yanaka,Taito-ku,Tokyo
11/23(Fri)-12/2(Sun) closed on Monday and Tuesday
12:00-19:00(last day:-17:00)
Google Translate(to English)



穏やかな、淡い色彩の広がり。


これまで折りに触れて拝見している、片平菜摘子さんの個展です。
若手のプリンターやペインターを積極的に紹介するGallery Jin Projects/JinJinで、タイトルにあるとおり、実に静かに、しかし仄かな暖かみを感じさせてくれる優しい色彩が広がっています。


限られた画面の中で、ふわりとおおらかに繰り広げられる光景が描き出されています。
一見して何もない、ただ広がる海の景色のなかに、サーフィンか何かに興ずる人がちょこんと登場していたり。
その小さなアクセントが、さらに画面の中の世界を大きなものへと押し上げています。


片平菜摘子002 片平菜摘子003

片平菜摘子001



空間の広がりを意識した作品が多く出展されているのが印象的です。
前出の海の作品よりも若干深い青が用いられた作品。たったそれだけで、夜の深い時間が洗わされているように感じられ、また、その青の中に浮かび漂う何かとその光の影とが、揺らぐ時間の流れのイメージも喚起させてくれます。


片平菜摘子009

片平菜摘子008



グラフィカルなアプローチも楽しげです。
指先よりもちいさい大きさで描かれている、ランドセルを背負った女の子二人。
たったこれだけで、そこに描かれる空間へのイメージがより具体的に、キャッチーに伝わってくるのが面白いんです。


片平菜摘子011

片平菜摘子010



描かれる風景へのさまざまな目線の角度もユニークです。
これまで拝見してきた作品は水平の目の高さで描かれているものが多かったと思うのですが、もちろんその角度で取り上げられ、画面に再現された場面のていねいさにも、その風景を眺める視線の温かみを感じます。
そして、今回は上方から俯瞰するような光景も多くて、より立体的に空間の広がりが表現されているような印象を受けます。


片平菜摘子012 片平菜摘子006

片平菜摘子004



片平さんの作品を眺めていると、ふっ、と、ことばや具体的なイメージか解放されるような錯覚を覚える気がします。
木版の木目によって、自然に織り成されるグラデーションを伴いながら広がっている淡い色彩に、いろんなことを忘れる心地よさがもたらされるような。。。

2年ほど前にたまたま入ったギャラリーで開催されていたグループ展ではじめて片平さんの作品を目にして以来、続けてチェックしていて、表現の変化の流れも実感しながら、今回始めてソロでの展覧会を拝見できたのも感無量、そんな思いもよぎります。


この優しくて味わい深い世界、忙しくなってくるこの季節に、ちょっと時間を忘れさせてくれたような。。。


片平菜摘子005
posted by makuuchi at 09:01| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月28日

review:SKIP!《11/17》

SKIP!
Gallery Stump Kamakura
神奈川県鎌倉市十二所848
11/17(土)〜12/15(土)金土日のみ
13:00〜20:00
SKIP! 071117パンフ.jpg

SKIP!
Gallery Stump Kamakura
848,Juniso,Kamakura-shi,Kanagawa-ken
11/17(Sat)-12/2(Sun) Friday,Saturday,Sunday only
13:00-20:00
Google Translate(to English)



Gallery Stump Kamakuraに所属するメンバーを3つの空間に分け、それぞれで作品を展示するという企画です。

アーティストが集って運営されるインディペンデントなアートスペースで、鎌倉のちょっと奥へ入ったところにある民家をそのまま使用しているということもあり、なんだか、展覧会を「観に行く」というより、「遊びに行く」「お邪魔する」感覚も楽しかったり嬉しかったり。


まず、栗原一成さんと内山聡さんによる「エアメールを受け取る手」。
庭に面したふたつの部屋で、それぞれのインスタレーションが展開されています。

stumpの代表でもある栗原さん、うねうねと細かく、有機的なフォルムと色彩の線が、画面に走ります。


SKIP栗原一成02


筆が這う痕跡を示しているかのような不思議な線の軌跡。そのなかに人のフォルムや文字・言葉などの存在も織りまぜ、空間的・時間的な奥行きを醸し出しています。奇妙なのに爽やかな感触がするのもまた不思議です。

画面からはみ出て壁や、コタツの掛け布団などにも増殖しています。


SKIP栗原一成04 SKIP栗原一成03

SKIP栗原一成01



内山聡さんの作品。
床にズラッと並ぶ、角材のフェイク。
紙で作られていて、ぱっと見はホンモノ。


SKIP内山聡01


よい意味で「よく作ったねスゴイ精度だね」と呆れちゃうほど。
無理矢理折り曲げて繊維が酒田様子なども絶妙に再現されていたり、妙に笑える作品群なのです。


SKIP内山聡05 SKIP内山聡06


いくつもの作品の中に紛れて、お菓子などの袋の切れっ端も
まあ、こういうのも紛らせて、角材の本物感を演出しているわけで。


SKIP内山聡07




・・・!!Σ( ̄口 ̄;)



これもか!Σ( ̄口 ̄;)

これも紙か!Σ( ̄口 ̄;)


油断したorz


だってなぁ、鉛筆の削りカスとかも混じって展示されてるし、油断するわなぁ。
すっかりだまされた気分。


SKIP内山聡03 SKIP内山聡04



・・・!!!



これも紙かぁぁ!!!Σ( ̄口 ̄;)


いやはや。。。
この他にもカッターの刃を折ったものだとか、消しゴムとか。

ここまでやられるともう、完全に白旗です。このユーモアに完全に負けました(笑)。


SKIP内山聡02



裏のほうへと回り、続いては村岡佐知子さん、村山伸彦さん、坂本美和子さんによる「f」。
斜めになった床。暗室に設置された2台の映写機が淡々とスライドを壁に映していきます。


SKIP f 02

SKIP f 01


暗がりに展示された3名のアーティストの作品、村岡さんは縦長の画面を並べ、それぞれポップな色彩の光景が描き出されています。


SKIP村岡佐知子02 SKIP村岡佐知子04 SKIP村岡佐知子03

SKIP村岡佐知子01



村山さんの作品は、奇妙なかたちの画面の作品によってインスタレーションされ、抽象的な色彩の重なりが醸し出す幻影的な風合いにさらに深みをもたらしているように感じられます。


SKIP村山伸彦02

SKIP村山伸彦01


スライドが上映されている壁の下に床置きされた坂本さんの作品は、画面をケレン味なく横切る線が描かれていて、敢えて水平に提示されることでユニークな奥行きが創出されているような感触です。


SKIP坂本美和子01



さらにぐるりと回り込んで、新井啓太さん、高松伊穂さん、安永太郎さんの「locked room」。
こちらはオーソドックスに、シンプルに絵画が展示されています。

ユーモラスな新井さんのネクタイ。
本物が画面にくっつけてあるのか、と一瞬思ったのですが、しっかりと描かれています。


SKIP新井啓太02

SKIP新井啓太01


ふわふわと画面を漂うループが印象的な高松さんの作品。
ユーモラスなうごめきが画面に動きをもたらしているように思えます。


SKIP高松伊穂02

SKIP高松伊穂01


安永さんの作品は、透明感が広がる色彩の重なりの鮮やかさが清々しいです。
時に強く、時に淡く、作品によってさまざまな厚みで展開されています。


SKIP安永太郎02 SKIP安永太郎03

SKIP安永太郎01



こういうパッケージは楽しく、興味深いです。
それぞれのソロでの展開もぜひ観てみたくなったり。

会期も当初より延長され、栗原さんのパフォーマンスも予定に織り込まれている模様。余裕があればあらためてぜひ伺いたいところ。

鎌倉界隈は鎌倉画廊やポラリスなどの画廊から神奈川県立稀代美術館・鎌倉ちおいった美術館など、興味深いアートスペースが多く、時間を作ってしっかりと回ってみたいです。


ところで、アーティストが運営するスペースというとBOICE PLANNINGが思い浮かぶのですが、山下美幸さんの個展の最終日に開催された「よく研いだサーベルの柄で殴れ!」と題されたトークイベントはどうだったんだろう...。
行く予定でいたのが伺えず・・・。
posted by makuuchi at 07:18| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月27日

review:TOKYO EYE 色山ユキ江 内海陽介 安田悠《11/14、11/19》

TOKYO EYE 色山ユキ江 内海陽介 安田悠
大丸東京店10Fアートギャラリー
東京都千代田区丸の内1-9-1
11/14(水)〜11/20(火)
10:00〜20:00(最終日:〜17:00)
TOKYO EYE1111/14DM.jpg

TOKYO EYE Yukie Iroyama Yosuke Uchimi Yu Yasuda
Tokyo Daimaru10FArt Gallery
1-9-1,Marunouchi,Chiyoda-ku,Tokyo
11/14(Wed)-11/20(Tue)
10:00-20:00(last day:-17:00)
Google Translate(to English)



このところ、百貨店の画廊でのコンテンポラリーアートの企画も目立つようになってきましたが、この秋新装開店した東京駅から徒歩0分の大丸東京店のなかのアートギャラリーでもそういった流れに沿う展覧会が開かれました。

このスペースでのふたつめの企画だったこの展覧会、まず、アーティストのクレジットを見てびっくり。
いろいろとアート巡りをしていて今すごく元気で面白い世代のアーティスト3名がピックアップされ、 「ここからやるか!」と思わず唸ってしまうほど。
アーティストだけでなく、スペースのレコメンーション、デモンストレーションとしては、ある意味これ以上ないのでは、と思った次第です。

こちらのアートスペースは、床に敷居がない空間で、それほど広くはないものの、フレキシブルな人の出入りが期待できるような感じです。



まず、横浜で開催された多摩美術大学の油彩の修了制作展示と、それに続くART AWARD TOKYOで印象に残っている内海陽介さん。

とにもかくにも、圧巻です。
大きな画面に注入された情報量の多さ、それらが複雑に重なり、絡み、イマジネーションを刺激して広がるストーリーの重厚さに圧倒されます。


TOKYO EYE内海陽介05


小さな人々のシルエット、テント、遠くに広がる山並み...ひとつひとつの要素が緻密に、ていねいにキャンバス上に再現され、さまざまな縮尺の差異やモチーフ同士が放つ大胆なコントラストを、ダークな陰影によてひとつのダイナミックで力強いストーリーに纏め上げているといった印象が強く感じられます。大きな画面を見上げたときに感じる押し倒されそうな圧迫感も痛快です。
加えて、その物語全体を俯瞰するようなどこか醒めた目の高さも、観る側にイメージさせてくれるような気も。


TOKYO EYE内海陽介02 TOKYO EYE内海陽介03 TOKYO EYE内海陽介04

TOKYO EYE内海陽介01



小品では、大きな画面の作品と色調的な統一感のなかで、紙を切った人形をモチーフにしたどこか軽やかで儚げな風合いに、大作とはまた異なる魅力を感じます。


TOKYO EYE内海陽介06

TOKYO EYE内海陽介07



b.TOKYOでの個展やグループ展などで、今年に入って拝見する機会の多い安田悠さん。
大きな作品は先日開催されたばかりの個展にも出品されたものが再び登場していましたが、小品は新作、こちらがまた実に安田さんらしい、独特の溶けるような色の広がりが味わい深い作品が並んでいました。


TOKYO EYE安田悠03


個性的な色使いと、全体を覆う湿度。。。
暑い空に映る蜃気楼のような、曖昧なフォルムの重なりに、さらに深みを増したかのような、穏やかでもあり、他に例えるのが難しいユニークな緊張感も醸し出していたり。


TOKYO EYE安田悠01

TOKYO EYE安田悠02



色山ユキ江さんの作品は、上記の二人の個性的なダークネスで統一されたカラフルな雰囲気とは一線を引き、無彩色による、無機的なダークさを重厚に醸し出しています。
仄かに青味がかる深み溢れるグレーを背景に、鉛筆で描かれた有機的なフォルムの線が、画面を這い、複雑な軌跡を辿りながら、伸びやかに走ります。


TOKYO EYE色山ユキ江03 TOKYO EYE色山ユキ江02

TOKYO EYE色山ユキ江01



このクールさが堪らないです。
ぎらりと危ない芳香を醸す鉛筆の鉛の色。
花弁を感じさせる線の流れが有機的なイメージを喚起させてくれて、その無機的な色調とのコントラストが絶妙な世界感を放っています。

大画面の壮大さもいいし、その一部を切り取ったかのような小品のミニマムな雰囲気も面白いです。


TOKYO EYE色山ユキ江04

TOKYO EYE色山ユキ江05


ドローイングも出品されていて、こちらも興味深かったです。


安田さんは既に個展も拝見していますが、内海さんと色山さんもぜひソロでの展覧会を拝見したいです。
posted by makuuchi at 08:56| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月26日

review:Dialogue Mifuyu Yasunaka Luna Yasunaka《11/23、11/25》

vDialogue Mifuyu Yasunaka Luna Yasunaka
PROMO-ARTE
東京都渋谷区神宮前5-51-3
11/22(木)〜11/27(火)
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
安中みふゆ・るな071122.jpg

Dialogue Mifuyu Yasunaka Luna Yasunaka
PROMO-ARTE
5-51-3,Jingumae,Shibuya-ku,Tokyo
11/22(Thu)-11/27(Tue)
11:00-19:00(last day:-17:00)
Google Translate(to English)



さまざまな彩りに溢れた、微笑ましく、素敵なコラボレーション。


PROMO-ARTEでの安中るなさんと、お母様で華道家の安中みふゆさんとの二人展です。

写真、しかもコンテンポラリーな風合いが漂う写真と、活け花。
どういう感じの空間が作り上げられているか興味津々だったのですが、ダイアローグ、対話をコンセプトに据え、お互いの個性が軽やかに調和した実に爽やかな空間ができあがっていました。


安中08



空間を豊かに使った大きな展開のインスタレーション。見事です。
るなさんのとしては珍しいアプローチで、額に収めずにそのまま壁にピンで留められた大判の作品、それをバックにみふゆさんの大振りな活け花が配されています。


安中14 安中12 安中13


写真も、並ぶ3点にかかわりがあって、両端の場面をひとつの画面に重ねたものが真ん中に位置していたり。


一方、モノクロームでひとつの風景を陰影でふたつに分けた作品も。
その風景にあるさまざまな要素が輪郭で表現されたクールさがなんともかっこいいです。


安中11 安中10


その前には、吊られた皿状の籠に活けられた艶やかな花。
横への広がりのおおらかさが爽快で、その影がモノクロームの作品が飾られる壁に映り込んでいるのも示唆に富んでいるような感じが印象的です。


安中02 安中03



この籠の花越しに、ピン留めの大きな写真の一角を眺めて見えてくる色彩のコントラストもまた面白いです。
花の赤と、写真のさまざまな色の中に映える赤とが響きあっているように感じられます。


安中01



さまざまな組み合わせの作品も、自然光が注ぐ空間の中に並びます。
いろんな支持体にプリントされたるなさんの写真を背景に、手のひらに乗るちいさな花瓶に活けられたみふゆさんによる活け花が収まり、お互いが持つ面白さ、ユニークな視点とアプローチによる写真と常に変化し続ける植物の生命感が放つ艶やかさとが引き出され、ひとつのパネルの中で素敵な世界が展開されているもの。


安中05

安中04


紙や布の素材感のやわらかな感触に、プリントされたある風景のシルエットのシャープさ。このコントラストも面白く、そこに活け花が絡んでさらに深みを増しています。


安中07

安中06



今回の展覧会は、母娘ならではの駆け引きも相当にあったようで、それが実に素敵な方向に作用しているように感じられます。
るなさんの写真も、モチーフをはじめ、用いる素材など、これまでにないアプローチによる展開が新鮮だったり。
また、普段あまり接することがない活け花をこういった空間、シチュエーションで拝見できたのも嬉しいです。

写真と活け花との組み合わせながら、奇を衒う感じはまったくといっていいほど感じず、ナチュラルな雰囲気が満ちているのが心地よい展覧会です。

2度伺って、昼と夜と異なる時間で拝見したのですが、自然光がたっぷりと広がっているときの明るく爽やかな雰囲気と、夜の照明に映えた空間の深みと、どちらも味わい深いです。


安中09
posted by makuuchi at 07:53| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月24日

review:上田風子 個展 アクアリウム幻想《11/21》

上田風子 個展 アクアリウム幻想
span art gallery
東京都中央区銀座2-2-18 西欧ビル1F
11/20(火)〜12/1(土)日休
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
上田風子11/20DM.jpg

Fuco Ueda exhibition Aquarium Dreamy
span art gallery
2-2-18-1F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
11/20(Tue)-12/1(Sat) closed on Sunday
11:00-19:00(last day:-17:00)
Google Translate(to English)



ひとつの画面の封じ込められるさまざまな要素が醸し出す妖しさ、独特の時代感覚。



上田風子さんのspan art galleryでの個展です。
上田さんの作品は、福原画廊での個展で拝見したことがあり、そのときも繊細な描き込みとシュールさと鋭さが同居する独特の雰囲気が強く印象に残っているのですが、今回の個展でもその雰囲気は相変わらずの妖婉さで、ぐっとそのムードに呑み込まれていくような印象です。


上田風子10



実に繊細な筆致に見入ってしまいます。
髪の毛の1本1本や、赤い稜線など、緻密に描き切られ、そこから放たれる先鋭的な感触が、作品の場面の19世紀末〜20世紀初頭辺りを彷佛させる(といって歴史に特別詳しいわけではないのですが、イメージとして...)、特有のセピア的ムードのそこかしこから伝わってきます。
加えて、画面に薄らと散る飛沫が、妖しい雰囲気を更に過剰に演出しているように感じられます。


上田風子07 上田風子06

上田風子08



今回の展示での大きな見どころは、何といっても空間の中に突如現れた「和室」。

畳敷きの一角に、職人によって精緻に採寸、設計、組み上げられ、建てられた四方が襖で囲まれた小部屋。

これが凄い・・・!

計8枚の襖に、今回の展示タイトルにある海中をモチーフに幻想的な場面や風景が織り込まれた絵が大きく描き出されています。

外側は、比較的浅い海中のイメージだそう。


上田風子03 上田風子01

上田風子02



中に入ると、こちらは深海。
奇妙な生物がそこかしこに登場し、上田さんらしい妖しげな表情と仕草をたたえた女性も独特のオーラを発していて、さらに、まさに深遠な世界が繰り広げられています。
畳敷きの床の上に座って、見上げるようにして眺めるのが気持ちいいです。


上田風子04

上田風子05


すべての面が見どころといってもいいくらいのインスタレーションとなっています。

壁掛けの作品の小さな世界と襖絵のおおらかで深遠な雰囲気。
その両方から、上田さんの繊細にして大胆なユニークさを堪能できる展覧会です。


上田風子09
posted by makuuchi at 10:31| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月23日

review:NEXT DOOR Vol.5《11/15、11/17》

NEXT DOOR Vol.5
T&G ARTS
東京都港区六本木5-9-20
11/15(木)〜11/29(木)日月休
11:00〜19:00
NEXT DOOR vol.5DM.jpg

NEXT DOOR Vol.5
T&G ARTS
5-9-20.Roppongi,Minato-ku,Tokyo
11/15(Thu)-11/29(Thu) closed on Sunday and Monday
11:00-19:00
Google Translate(to English)


今回で5回目、今年最後のNEXT DOOR。
4名のユニークでフレッシュなアーティストがパッケージされています。


各アーティストの作品が飾られたウィンドウを通り過ぎ、入口でまず、今回唯一の女性のアーティスト、西祐佳里さんのペインティングがお出迎えしてくれます。


ND5西祐佳里01


スタンダードなマチエルのペインティングが、入口沿いの壁にスムーズに並んで展示されています。
誠実ささえも伝わる、ていねいな写実表現。深みと奥行きを放つ、沈み込むようなダークな色彩。
描かれるシーンもそのひとつひとつが現実と非現実との狭間を絶妙に行き交っているような風合いです。
一見するとユーモラスに感じられるはずのアクセントも、逆に作用しているような気がして、さらに作品のなかの妖しげな雰囲気が強められているような。。。


ND5西祐佳里04 ND5西祐佳里03


今回は比較的小さめの作品がずらりと並んだ展示でしたが、ぜひ大きな画面での作品を拝見してみたいと思わせてくれるクリエイションです。


ND5西祐佳里02



西さんの深い世界とスペースを共有するのが、伊達久誌さんのダイナミックな作品。
嫌が応にも目に飛び込んでくる3本の柱。


ND5伊達久誌03 ND5伊達久誌04 ND5伊達久誌02


有無を言わさぬ凄み。
圧巻の仕上がり。


ND5伊達久誌06 ND5伊達久誌07 ND5伊達久誌05


段ボールを重ねてノコギリで切り、それをさらに再び組み合わせたものとのこと。



切っただけか!Σ( ̄口 ̄;)
段ボール重ねて切っただけなのか!Σ( ̄口 ̄;)


思わず内心で嬉しい絶叫をあげてしまいたくなるほどの大胆さ。
しかも、ただ重ねただけではなく、斜めに重ねてカット面に異なる動線をもたらしてみたりと、そのざっくりとした仕上がりには実は細やかなアイデアも盛り込まれていたり。


ND5伊達久誌01


段ボールを用いた作品がずらりと並び、各所に配置されています。
それも、角材に挟んだだけのもの、ブロックと合わせてみたもの、とその外見は段ボールの素材感がそのままに表出。段ボールの断裁面がアバンギャルドでリズミックな感触を鮮烈に放っています。


ND5伊達久誌12 ND5伊達久誌10

ND5伊達久誌09 ND5伊達久誌11 ND5伊達久誌13

ND5伊達久誌08


もうひとつ圧巻なのが、重ねた段ボールをぎゅっと圧縮した様子を提示したもの。
必要とか不必要とか、意味とか無意味とか、そういうことは全然関係ない、ただシンプルに提示されていることの痛快さが堪らないです。もちろん、このかたちもかっこいい。


ND5伊達久誌14

ND5伊達久誌15



バースペースには、渡辺おさむさんのテーブルの上のインスタレーション。
一見本物と見違えるほどの精度で、スポンジケーキや生クリームを模したオブジェが配されています。
なんだか楽しくなってきます。


ND5渡辺おさむ03 ND5渡辺おさむ04 ND5渡辺おさむ02

ND5渡辺おさむ01



2階、長田哲さんのドローイング。


ND5長田哲01


軽やかに染まる色彩、しなやかに走る線。
それぞれが織り成すキュートでキッチュな風景。山のシルエットに浮かぶ人の顔の素朴な表情。
実にシンプルな場面が描かれていて、その軽妙さが実に楽しげ、そして浮かぶ表情は仄かに淋しげで。。。


ND5長田哲02

ND5長田哲03


ふっとナチュラルに入り込める、やさしい風合いが嬉しです。
紙、色鉛筆など、親しみある画材・素材が用いられているのも親近感を沸き起こさせてくれます。

今回始めて制作されたというアニメーションも。


ND5長田哲04


土曜日は、長田さん自らにより、ウォールペインティングが行われていました。
僕が伺った時点ではおおきなラインが引かれ、そこに少しずついろんなモノがこれから描き加えられていく最初のところを拝見していたのですが、今、どんなふうになっているか興味津々です。


ND5長田哲06



いちばん遠いところに、額に渡辺さんのクリームのレリーフが施された共作が。
微笑ましいコラボレーション、いい感じです。


ND5長田哲05



このフロアの渡辺おさむさんの展示は、主に大画面のもで構成されています。
大画面にびっしりと生クリームの模様が敷き詰められた真っ白な作品は圧巻の一言。
すごいです。単純に、仕事量を考えてもすごい、ひとつひとつのクリームのリアルさも凄い、全体のダイナミックな動線も、すごいです。


ND5渡辺おさむ08 ND5渡辺おさむ06 ND5渡辺おさむ07

ND5渡辺おさむ05


カットしたいちごのほんのりとした赤色が、視覚だけで無く味覚も刺激する作品も。
なんかもう、口のなかが甘いものを求めてきてしょうがない!


ND5渡辺おさむ12 ND5渡辺おさむ11

ND5渡辺おさむ10



デコレーションケーキを目の前にしたときのワクワクする感じ。
それと似た衝動が渡辺さんの作品からも感じられます。
で、これだけフレッシュな視覚アピールをしていながら、実際はむろん食べられない、というもどかしさもまた、作品を面白くしているように感じられます。

ちょっと穿った見方ではありますが、渡辺さんの食べられそうで食べられない作品と、伊達さんの、小致死ニュースで報じられたように肉まんのなかに入れたら食べられる段ボールとが同居しているのが何ともシュールに感じられます。


ND5渡辺おさむ09



このフロアの渡辺さんの作品で、もうひとつのディープインパクトは下の作品。
チョコレートケーキを思わせる、金縁の額もゴージャスな作品。
一部拡大で留めておきますが、使用素材が絶句もの(爆)。ぜひ実際にご自分の目でチェックなさってくださいまし。


ND5渡辺おさむ13
posted by makuuchi at 12:22| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月22日

〜11/21のアート巡り

《11/15》
NEXT DOOR Vol.5
T&G ARTS
東京都港区六本木5-9-20
11/15(木)〜11/29(木)日月休
11:00〜19:00
NEXT DOOR vol.5DM.jpg

面白い!
5回目となるこのシリーズも今年は今回が最後。
弾けるようなフレッシュなクリエイションが今回もぎゅっと凝縮されています!



《11/16》
荒川眞一郎 'レントゲン'
ヴァイスフェルト
東京都港区六本木6-8-14 コンプレックス北館3F
11/16(金)〜11/30(金)日月祝休
11:00〜19:00
荒川眞一郎071116DM.jpg

ファッションデザイナーの荒川眞一郎 さんがレントゲンヴェルゲで展覧会、ということで「一体どんな展覧会に...」と想像ができなかったのですが、蓋を開けてみたら...

「お見事!」の一言。

ちゃんと「平面」と「立体」の展示になっていてびっくり。
布や毛糸を使った作品は実にポップな仕上がりで、鮮やかな赤の素材のあたたかい雰囲気も嬉しいです。
同じ赤の糸の作品というと塩田千春さんのKENJI TAKi GALLERYでのオブジェが思い浮かぶのですが、複雑に行き交う赤い線が放つイメージはそれと通じるような印象もあるようで、真反対でもあるようで。

立体は、本物の葉っぱの葉脈を使った究極的に繊細な作品。そこに織り込まれたイメージにも深みを感じます。



石川直樹 「POLAR」
SCAI THE BATHHOUSE
東京都台東区谷中6-1-23 柏湯跡
11/16(金)〜12/22(土)日月祝休
12:00〜19:00
石川直樹071116DM.jpg

SCAIで写真、という意外な組み合わせ。
よく存じ上げないのですが、写真家というより「冒険家」といったイメージが強そうな石川直樹 さんによる、冬の景色を収めた写真がずらりと並び、おそらく日本からずいぶんと遠い場所の光景が届けられ、その鮮やかな白と淡い青が放つ幻想的ともいっていい美しさに「いいなぁ、行ってみたいなぁ...」と心を揺り動かされます。

氷山の壁面を走る線の力強さ、流氷が浮かぶ海面がどこまでも続くスケールが大きな光景、深い雪に埋まり、十字架が僅かに顔を出す墓場、寒気のなかに人々の行き交う熱気のようなものを感じる港町...さまざまな風景が爽やかに展示され、観ていて実に気持ちがいい展覧会です。

目黒区美術館でのグループ展にも参加される石川さん、そちらではどんな場所の風景が届けられるか、そちらも楽しみです。



《11/17》
物語の彫刻
東京藝術大学大学美術館 陳列館
東京都台東区上野公園12-8
11/16(金)〜12/2(日)月休
10:00〜17:00(最終日:〜16:30)
物語の彫刻071116パンフ.jpg

さまざまな世代の彫刻の作家の作品が一堂に会した展覧会。
確かなスキルをバックボーンに、ダイナミックなイマジネーションが投入された大作、力作が揃います。

まず、1階の小部屋での小谷元彦さんのインスタレーションが...。
まず一瞬、そのおどろおどろしさに腰が引けます。骨が露出した能面、過剰なまでに原始的な仕上がりの巨大な人の頭部の木彫。そして、映像。
凄まじいチェーンソーのノイズが延々と鳴り響く、荒れた映像で展開されるアバンギャルドな作品。
・・・しかし、最後には何故か吹き出してしまった次第。人によって違うかも知れないもですが、かなり笑える!

棚田康司さんの立像。
穏やかで繊細な彩色、人の心の奥底を覗き込むような味わい深い表情。
淡く、深々と醸し出される雰囲気に、ぐっと心を捕まれます。

大竹利絵子さんの木彫も印象的。
細かく組み合わさった組木を彫られた作品で、すっと立つ箒と椅子に座る人がなんとも優しく、仄かにユーモラスな風合いも醸し出しつつ、木の素材の温かみも感じさせてくれます。



SKIP!
Gallery Stump Kamakura
神奈川県鎌倉市十二所848
11/17(土)〜12/2(日)金土日のみ
13:00〜20:00
SKIP! 071117パンフ.jpg

アーティストが集まって運営されるインディペンデントスペース、Gallery Stump Kamakuraに所属する作家が3つに分かれてそれぞれ展開されるさまざまなインスタレーション。
提示される可能性も興味深いです。



《11/19》
渡邊香月 個展 憧景 〜The GARDEN〜
@Gallery銀座フォレスト
東京都中央区銀座1-9-8 奥野ビル507
11/19(月)〜11/24(土)
12:30〜19:00(最終日:〜17:30)
渡邊香月071119DM.jpg

油彩で展開されるジャパネスク。
今、個人的に、シーンのなかで一番おもしろい部分だと感じているのですが、渡邊香月さんはそのなかで思いつくアーティストの一人。

今回は、キャンバスだけでなく、板や和紙に描いた小品を組み合わせ、小さなスペースに凝縮してユニークな空間を作り上げています。


渡邊香月01 渡邊香月02


異なる画面が繋げられ、ひとつの大きな流れのなかに詰め込まれていて、独特の雰囲気が」醸し出されているのが印象的です。


渡邊香月03



鹿野氏郎展「シロップ」
ギャラリーツープラス
東京都中央区銀座1-14-15 白井ビル2&3F
11/19(月)〜11/24(土)
12:00〜19:00(最終日:〜17:00)
鹿野氏郎11/19DM.jpg

いい!

昨年に続いて開催されている鹿野氏郎さんの個展。
前回は油彩とドローイングとの展示でしたが、今回はパネルの油彩の作品のみ。
取り上げられるモチーフに幅が広がり、描かれる場面が敢えてフィクショナルな雰囲気をつくり出していた以前のと比べて、ナチュラルな構成なのも印象的です。


鹿野氏郎106 鹿野氏郎101 鹿野氏郎103

鹿野氏郎102


そして、さらに鮮やかに、艶やかに発せられる色彩。
それぞれの色が持つポテンシャルが存分に引出され、濃厚な色彩はさらに深く、軽やかな色彩はよりポップに発色、隣り合う色彩同士のコントラストも鮮烈です。

過剰にエッジの効いた色面が独特の緊張感を醸し出しながら、どこかほっとするようなユーモラスな雰囲気も味わえた次第です。


鹿野氏郎108 鹿野氏郎105 鹿野氏郎107

鹿野氏郎104



《11/21》
上田風子 個展 アクアリウム幻想
span art gallery
東京都中央区銀座2-2-18 西欧ビル1F
11/20(火)〜12/1(土)日休
11:00〜19:00(最終日:〜17:00)
上田風子11/20DM.jpg

繊細な線と未来的なセピア風、といった感じの独特な色彩、そしてシュールな場面が印象的な上田風子さんの絵の世界。
妖しい雰囲気がそれぞれの画面に充満しています。
そして、ギャラリーのなかに突如現れた襖に囲まれた部屋。これがすごい!



内なる領域 / Inner realm
東京画廊
東京都中央区銀座8-10-5 第4秀和ビル7F
11/21(水)〜12/8(土)日月祝休
11:00〜19:00(土:〜17:00)
内なる領域071121DM.jpg

4名の若手のアーティストが」ピックアップされた、ユニークなアプローチとフレッシュな世界が楽しいグループショー。
ペインティング2名、興味深いメディアの作品のが2名。それぞれが充分に個性を発揮しています。
posted by makuuchi at 06:54| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月21日

review:Liquid/Crystal《11/10》

Liquid/Crystal
MA2 GALLERY
東京都渋谷区恵比寿3-3-8
11/9(金)〜12/8(土)日月祝休
12:00〜19:00(19:00〜20:00アポイント可)
Liquid/Crystal11/9DM.jpg

Liquid/Crystal
MA2 GALLERY
3-3-8,Ebisu,Shibuya-ku,Tokyo
11/9(Fri)-12/8(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00 (apponintment:19:00-20:00)
Google Translate(to English)



重なり、絡み、響きあう3つの個性。


MA2 GALLERYで開催されている、3名の女性アーティストをピックアップした展覧会です。

それぞれ、ユニークな個性が主張しあっていて、しかしそれがぶつかりあうのではなく、お互いの存在が複雑なイメージを喚起してくれるような印象です。


1階と2階のフロアがあるこちらのギャラリー、入口の大きなガラスの窓からも1階の様子が覗けるのですが、なによりもまず目に飛び込んでくるのが諸橋明香さんのおおらかなインスタレーション。
水回りのプラスチックの諸道具を大胆に取り入れて、実にカラフルでフレッシュ。伸び伸びとした自由さが感じられる空間が提示されています。


L/C諸橋明香02 L/C諸橋明香04

L/C諸橋明香03 L/C諸橋明香05

L/C諸橋明香01


諸橋さんのインスタレーションは、フタバ画廊での個展や平櫛田中邸でのグループショーでも拝見していて、そのケレン味のなさが痛快なのはよく知っているのですが、天井が高く、加えて上方から自然光も入る空間でさらにその快活さが発揮されているような気がします。

ギャラリーのスタッフのお話によると、このギャラリーの前を通る子供達がガラス窓から諸橋さんの展示を観て激しく反応するとのこと。そのシーンを観たい(笑)。


一転して、モノクロームのくすんだような妖しい世界を放っているのが、仙谷朋子さんのオブジェ群。
過剰に有機的なフォルムの陶のオブジェと、細やかに紡がれる糸とが、神妙で深遠な雰囲気を鮮烈に、しかしじんわりと床や壁を這うような独特の重々しさで醸し出されています。


L/C仙谷朋子03 L/C仙谷朋子04 L/C仙谷朋子05

L/C仙谷朋子06 L/C仙谷朋子07


空間のほぼ中央に垂れ下がる糸の束、その床面には白い陶のオブジェ。
諸橋さんのインスタレーションが華やかなだけに、この渋味が異彩を放ち、そのコントラストも圧巻です。


L/C仙谷朋子01

L/C仙谷朋子02



渡辺紅月さんのタブローは、1階には大きな作品が2点、展示されています。
こちらはまた、諸橋さんとはまったくテイストが異なる鮮やかな色彩による作品。
もっと直接的に、日本的な繊細な表現や色彩感覚を伴わせながら、妖しく、危ない感性を刺激してくるような印象です。
鮮やかな色彩のなかに引かれる線が織り成す女性の表情が強烈に印象に残ります。


L/C渡辺紅月02 L/C渡辺紅月04 L/C渡辺紅月03

L/C渡辺紅月01



階段を登り切ったところには、仙石さんの繊細なオブジェが壁に。
以前拝見した、ポーラミュージアムアネックスでのインスタレーションの印象が蘇ってきます。
紡がれた紐でさらに有機的なかたちへと仕上げられ、どこか抜け殻のようなもの悲しさに似たようなものを感じさせつつ、まるで蝋燭の炎のように妖艶な雰囲気を緩やかに漂わせています。
僅かな一角での展開が、より深いイメージを思い起こさせてくれます。


L/C仙谷朋子08 L/C仙谷朋子10

L/C仙谷朋子09



2階のフロアは少し小さめの作品により、さまざまなクリエイションぎゅっと詰め込まれているような印象。

やはりまず目に留まるのが諸橋明香さんの作品。
1階のインスタレーションをコンパクトに纏めたようなものがふたつ。


L/C諸橋明香09 L/C諸橋明香10


なによりインパクトが強いのが、下のトラの作品。
遠目で見ると一体何で作られているのか分からない、いやむしろ布を編んだ作品かと思い込んでいたのですが、実際に直に観てみてびっくり。そして諸橋さんらしいと納得。
この展開が今後どういうふうに発展していくかもすごく興味深く、楽しみす。


L/C諸橋明香08 L/C諸橋明香07

L/C諸橋明香06



仙谷さんのオブジェは、1階とは異なり、黒の展開。
この黒の深みが、有機的なモチーフの妖しげな風合いをさらに奥深いものへと押し進めているような印象です。
何より興味深いのが、編んだ糸の細やかさと、それに相反するような半端な感触。
充分に作り込んでいない、精度を究極まで追求していないふうな素振りが垣間見られるような仕上がりが、いかにも女性らしい雰囲気を漂わせているように感じられます。
この雰囲気は、おそらく男性には出せないだろうなぁ、と。黒の色彩のインパクトもかなりのもの。


L/C仙谷朋子13 L/C仙谷朋子12 L/C仙谷朋子14

L/C仙谷朋子11


同じく展示されている、仙石さんによるモノクロームの写真作品群も独特の深みを放っています。


L/C仙谷朋子15



渡辺さんのペインティングも、1階の作品に続き、独特の妖しさが漂う世界が繰り広げられています。
ばっと散る鮮やかな色彩の飛沫のなかに、線描の女性が、そして手が、鋭さをたたえた深みある表情でその存在を覗かせています。


L/C渡辺紅月05


真っ白な余白と色彩とのコントラストも実に鮮烈。
漂う「和」の風合いが油絵の具で展開されている斬新さが堪らないです。


L/C渡辺紅月08 L/C渡辺紅月07

L/C渡辺紅月06



1点、映像作品が出品されています。
ふたつのパターン。最初のかたちがだんだんと溶け出すように歪んでいき、再生する...。
じっと見入ってしまう、瑞々しくも妖艶な世界が流れ出しています。


L/C渡辺紅月09



三者三様の、バラエティにとんだメディアが集まった作品がそれぞれに放つ強烈に「女性」的な雰囲気が互いに関係しあい、「リキッド」の水溶性と「クリスタル」の輝きとが新たに創出、発散されているような...。

さまざまなイマジネーションが湧いてくる展覧会です。
posted by makuuchi at 16:17| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

review:阪本トクロウ展「呼吸」《11/3、11/15》

阪本トクロウ展「呼吸」
GALLERY MoMo
東京都港区六本木6-2-6
11/3(土)〜12/1(土)日月祝休(初日除く)
12:00〜19:00
阪本トクロウ11/3DM.jpg

Tokuro Sakamoto exhibition "Breath"
GALLERY MoMo
6-2-6,Roppongi,Minato-ku,Tokyo
11/3(Sat)-12/1(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
Google Translate(to English)



あらためて、ホワイトキューブがよく合うことを実感。


阪本トクロウさんのGALLERY MoMoでの個展です。


阪本トクロウ001


阪本さんの作品や展覧会は観続けているのですが、ホワイトキューブでの個展を拝見するのはギャラリー山口で初めて阪本さんの個展を拝見して以来、実に久し振り。
白い空間に白熱灯で明るい照明設定がなされた空間に展示され、いつになく明るい、爽やかな雰囲気が画面から発散されているように感じられます。


阪本トクロウ003 阪本トクロウ004

阪本トクロウ002


意識に入らない要素を削ぎ落とし、軽妙さと仄かに漂う孤独感とが滲む風景。
それと同時に、描かれるモチーフ、残されるもののディテールの細やかさにも目を見張ります。穏やかな支店の存在を感じつつ、阪本さんの作品が醸し出す淡いユーモアが印象的です。


阪本トクロウ008

阪本トクロウ009



おなじみのモチーフ、林のシルエット。
こちらの作品の色調構成のシンプルさと有機的な構図との面白さはいろんな阪本さんの作品のなかでも特別な感じがして印象的。

なんてったって、このワンポイントが嬉しい。
複雑に入り組んだシルエットのなかに一羽。


阪本トクロウ006


これを見つけるのが結構楽しい作業だったりします。


阪本トクロウ005



描かれる光景は、身近なものが多く取り上げられているにもかかわらず実にドリーミーで、静かです。
ノーグラデーションの空の淡いブルーやアスファルトのグレーなどを背景に、幾何学的な印象さえ受けるほどにクールに再現されるさまざまなシーン。
たったそれだけで、そこに込められる「心地よい孤独感」のようなものがふわりと漂います。


阪本トクロウ010 阪本トクロウ011

阪本トクロウ007



作品の精度から感じる「描くこと」への誠実さ。
穏やかな静謐感、大胆な省略から放たれる、安心感と緊張感。

観る人ごとに思い浮かぶイメージや蘇る記憶が違うだろうなぁ。そんな想像が浮かんできます。
観る人の数だけのイメージの広がりを持つクリエイションだと思います。


阪本トクロウ012
posted by makuuchi at 07:10| Comment(1) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2007年11月20日

review:輪派絵師団展《11/10》

輪派絵師団
maru gallery
東京都港区海岸3-7-18-902
11/10(土)〜11/24(土)日月祝休
12:00〜18:00
輪派絵師団11/10DM.jpg

Rinpa Eshidan exhibition
maru gallery
3-7-18-902,Kaigan,Minato-ku,Tokyo
11/10(Sat)-11/24(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-18:00
Google Translate(to English)


めくるめく変化を遂げていく、「ライブペインティング」。


輪派絵師団での展覧会です。
YouTubeにアップされた映像は膨大なアクセスを記録し、注目を集めるクリエイティブ集団。BOICE PLANNINGでの展示も印象に残っているのですが、今回は会期中延々とライブペインティングを敢行、それをすべて撮影するというかっ飛んだ企画。


輪派絵師団101



僕が伺ったのは初日のオープニングパーティーの時間、夜8時頃でしたが、既に広い画面は一度描き尽くされ、そこにオーバーダブが始まっているところのようでした。


輪派絵師団105 輪派絵師団103 輪派絵師団104



メンバーの内の3名が参加し、粛々と、しかし遠慮なくどんどん上描きされていく画面。
モノクロームで描かれたポップでダイナミックな線画の上に、鮮やかな色がどんどんと侵食していき、時おりお下の絵のラインをそのままトレースしたり活かしたりしながらグラフィカルな展開がどんどんと進んでいきます。

この様子はなんとも痛快!
映像作品では速回しによる展開がクールで面白いのですが、リアルタイムで眺めていると、スピードこそ映像に慣れていると遅く感じてはしまうものの、まるで将棋とかの実況を眺めているかのように、「次、どう出るか・・・」というなんともいえない緊張感によって画面に目が釘付け。


ライブペインティングの経過は写真にも撮影され、その都度掲示されていっているのもありがたい。


輪派絵師団106


それに加えて、パネルの作品も数点展示されているのもまた嬉しいです。
小さな画面でも溢れるポップな感覚。


輪派絵師団107



現時点では結局のところ初日しか伺えて無いのですが、何とか最終日にも覗いてみて、荒れからどんな感じに画面が変化しているかをチェックしたいと思っています。
また、撮影された映像がどうなるかもすごく楽しみです。


輪派絵師団102
posted by makuuchi at 08:38| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

review:中村ケンゴ "スピーチバルーン・イン・ザ・ビーナスと21世紀のダンス"《11/10》

中村ケンゴ "スピーチバルーン・イン・ザ・ビーナスと21世紀のダンス"
MEGUMI OGITA GALLERY
東京都中央区銀座5-4-14 銀成ビル4F
11/6(火)〜12/1(土)日月祝休
12:00〜19:00
中村ケンゴ11/6DM.jpg

Kengo Nakamura "Speech Balloons in the Venus and Dance for 21st century"
MEGUMI OGITA GALLERY
座5-4-14-4F,Ginza,Chuo-ku,Tokyo
11/6(Tue)-12/1(Sat) closed on Sunday,Monday and national holiday
12:00-19:00
Google Translate(to English)

「スピーチバルーン・イン・ザ・ビーナス」と「21世紀のダンス」。
ポップに、キャッチーに繰り広げられるふたつのシリーズ。


MEGUMI OGITA GALLERYでの中村ケンゴさんの個展です。

中村さんのアプローチはいつも楽しい!
まずなにより、テーマのピックアップや引用の軽妙さが堪らない感じです。
これまで、延々と携帯メールの返信のマーク「Re:」が延々と続くシリーズや部屋の間取りを描いたものなど、

敢えてこれを描くか!Σ( ̄口 ̄;)

という、鑑賞者の膝の力を「スパーン!」と抜く展開を軽々とやってのけちゃう痛快なテーマが面白くて、さらにそこにどこかシュールな視点が込められているように感じられるのも興味深いのです。


そして今回、大胆な引用がこれまた痛快なふたつのシリーズが発表されています。
小さなスペースの四方の壁に、いい感じのバランスで展示された作品群。

まず、「スピーチバルーン・イン・ザ・ビーナス」。
中村さんの名刺代わりのモチーフでもある「スピーチバルーン」、いわゆるマンガの「吹き出し」。
これまでも富士山やら日の丸やらに登場してきたこのモチーフが、今回は誰でも知ってる名画のシルエットのなかにぎっしり。


中村ケンゴ04

中村ケンゴ05


敢えて言うまでもなく、ビーナスと言ってまず思い浮かぶボッティチェッリの「ヴィーナスの誕生」が大胆に引用されています。
岩絵の具独特の粒子の美しさも際立つマッドな質感でつくり出される深みのある霞みを背景に浮かび上がる、世界でいちばん有名なビーナスのシルエット。

珠玉の名画を前にしていろんな人がいろんなことをしゃべっている様子が思い浮かんできて、なんとも愉快な気持ちに。
もうひとつのビーナスは黒が基調となっていて、また違う鮮やかさを放ち、上の作品とのコントラストも鮮やかです。


もうひとつのシリーズ、「21世紀のダンス」。


中村ケンゴ03 中村ケンゴ02


なんだこの既視感は。。。

僕はすぐに気付くことができず、作品を前にしてずいぶんともどかしい気持ちが続いてしまっていたのですが。
分かると思いっきり膝を叩きたくなった次第。


中村ケンゴ01


こちらもやっぱり痛快!


中村さんの作品でモチーフとはまた別に印象的なのは、日本画の画材である「岩絵の具」を用いていること。
いわゆる「花鳥風月」を描くのではなく、このようにポップでシュールでキャッチーなモチーフを取り上げて描くことで、岩絵の具の持つ美しさを逆に引き出しているように感じられるのも痛快です。
パネル側面の絵の具の垂れた痕がまた、すごくかっこよく感じられたり。

何を持って「日本画」とするのか、今の時代はますます曖昧になっているのですが、はじめて中村さんとお会いしたときにいろいろとお話しして、そのときの「江戸時代以前の頃には今で言う『日本画』という概念は無かったはず」という指摘がすごく印象に残っていて、「日本画の画材を使っているから日本画」というざっくりとした見方への醒めた視点も、中村さんの作品から強烈に発せられているような気がして、その辺りもすごく痛快に感じられて好きだったりします。


Tシャツにプリントされたスピーチバルーンなど、作品から離れて他のメディアへまったくナチュラルに転化されるのも面白い!

昨年の横浜美術館でのダイナミックなインスタレーションも強く印象に残っていますが、例えばもっと大きな画面、もとい壁面での展開なんかも観てみたい気がします。
posted by makuuchi at 07:32| Comment(0) | TrackBack(0) | review | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする